評価制度を設計する際に、また評価者トレーニングを担当させて頂く際に、現在お使いの評価制度を分析いたします。この評価制度の分析を通して、導入している評価制度の基本的な思想や仕組みを把握するのです。

例えば、評価制度を設計する際には、新しい評価制度で実現したいことと、現在の評価制度で実際に行っていることとの乖離を把握します。また評価者トレーニングを担当させて頂く際には、現在使っている評価制度の思想や仕組みを把握し、それらの思想や仕組みに沿って研修プログラムを作成して、評価者トレーニングを行います。

職業柄、多くの評価制度の思想や仕組みに触れています。評価制度の思想や仕組みは百社百様で、各社の評価制度は、いろいろな工夫を凝らして設計されています。言わずもがなですが、企業理念や事業戦略に沿った行動を喚起・実現し、成果や結果を創出ていく上で、評価制度に工夫を凝らしているわけです。

評価は、社員が生み出した成果や結果、また行動を振り返って行います。前期の成果や結果、また行動を振り返って評価を行うと共に、その評価結果をもとに、次期にはどのような行動を通して、どういった(またどの程度の)成果や結果を実現していくのかを決めるのが評価の本質です。しかし残念ながら、これらの本質が捉えられていない評価制度も中にはあります。場合によっては、評価することそのものが目的になっていることもあります。

評価の目的とは

では、評価とは、そもそもどのようなことを目的に行うのでしょうか。評価を行う目的は、大きく3つに分けることができます。

  1. 査定を決める
  2. 人材を育成する
  3. 双方向のコミュニケーションを実現する

査定を決める

社員の活動の成果や結果、行動に対する評価を行い、その評価結果(また評価結果の累積)から、昇降給/昇降格の是非、またその他の処遇を決定します。しかし、評価は行うものの、最終的な処遇の決定(査定)は"鉛筆を舐めて決める(評価結果とは異なる感覚的な評価を別で行う)"ことから、評価結果と処遇が連動せず、また場合によってはバラつきが生じ、評価制度が正しく機能していないケースがあります。

人材を育成する

社員の活動の成果や結果、行動に対する評価を行い、その評価結果を通して、社員の次期の成長に向けた課題(育成課題)を明らかにし、その課題の克服や改善計画を立案するために行います。しかし、評価を通して浮き彫りになった課題はあるものの、その課題の指摘だけに留まり、次期の具体的な育成計画や方法まで昇華されていないケースがあります。

双方向のコミュニケーションを実現する

日々の業務においては、業務や仕事の指示の観点から考えると、上司から部下に対しての一方向のコミュニケーションになりがちです。評価という改まった場や機会を持つことで、日々の業務の中では話されない、社員の意見や考えを吸い上げる(また耳を傾ける)ためにも、評価の場や機会は活用できます。しかし、評価は、半期、四半期に行う、改まったコミュニケーションを行う場や機会であるものの、フラットな場や機会として活用されることなく、日々の業務と同じように、一方向のコミュニケーションに終始しているケースがあります。

このように、評価という取り組みには、大きく3つの目的があります。これら3つを実現する過程の中で、部下を褒め、また上司・部下双方で課題を認識することで、次期の目標や目的の達成に向けたモチベーションを喚起するわけです。

目的を達成できない評価制度の傾向

目的を達成できない評価制度の傾向
評価制度の中には、これらの目的が実現できる評価制度になっている場合もあれば、そうでない場合もあります。もちろん意図的にいくつかの目的にフォーカスして評価制度を運用している場合もあるでしょう。しかし、多くの場合は、この3つの目的を達成させたいが、実際には実現できていないケースが多いようです。実現できていない場合に見られる傾向として、以下のようなケースが挙げられます。

  • 評価者・被評価者が評価の目的を理解していない
  • 評価制度の仕組みそのものが目的を実現できる仕組みになっていない
  • 評価制度の運用面での場や機会が整備・準備されていない

評価者・被評価者が評価の目的を理解していない

評価制度を実際に使う社員、つまり、評価者となる上司と被評価者となる部下が、上記の評価の目的(また各社で設定している評価制度の目的)を、正しく理解せぬまま、評価を行っている場合があります。評価者は評価者トレーニングや評価者説明会などを通して、評価に触れる機会があるものの、評価の目的を正しく理解していない、また評価するスキルが十分に育まれていない場合も少なくありません。

被評価者においては、そもそも評価制度に触れる機会も少なく、自らの成長課題(育成課題)の解決ツールとしては捉えてはおらず、会社や上司からの一方的なものとして捉えているケースも見られます。

評価制度の仕組みそのものが目的を実現できる仕組みになっていない

評価制度は正しく運用されているものの、評価の仕組みそのものが自社の意図する成果や結果、また行動を喚起する仕組みになっていない場合があります。例えば、会社・部門・個人の業績結果を役職・役割沿って重みづけをして評価したいが、そのような仕組みになっていない。

また、会社の企業理念に沿った行動を高く評価したいが、そういった行動を評価する項目は組み込まれていない。またあるいは、部下の育成課題(次期テーマ)を抽出できる仕組みになっていない等のケースが見られます。

評価制度の運用面での場や機会が整備・準備されていない

評価の是非は、その評価制度の内容だけでなく、その評価制度の運用のあり方からも垣間見られます。例えば、評価は、各部門や現場で行った評価結果を持ち寄り、評価の目線や評価結果を擦り合わせる場が必要なのですが、この擦り合わせる場を、「査定会議」や「評価調整会議」と呼ぶ会社もあれば、「人材開発会議」と呼ぶ会社もあります。

また場合によっては、こういった場そのものを持たない会社もあります。つまり、この場の呼び方やあり方が、評価そのもののあり方を表している場合があるのです。しかし、各社の呼び方やあり方から想定するに、評価の目的と実態が合致していないことが、容易に想像がつくケースもあるのです。

みなさんの会社の評価及び評価制度は、どのような内容でしょうか。またどのように運用されているでしょうか。

評価制度のクイック診断

今回のコラムの要点を簡単なチェック項目にして、以下にまとめました。

  1. 評価者・被評価者が評価の目的を理解して、評価制度を運用している
  2. 評価者・被評価者には評価を行うスキルが身についている
  3. 評価結果に沿って公正・適正に処遇や決定されている
  4. 企業理念や事業戦略の実現に向けて求める行動が評価項目に盛り込まれている
  5. 各役職・役割に呼応した評価項目が設定されている
  6. 評価を通して社員の育成課題が明らかになっている
  7. 各部門や現場の評価結果を擦り合わせる場が設けられている
  8. 評価結果を擦り合わせる場は評価の目的に沿って適切に運用されている

みなさんの会社の評価制度は、目的に沿って設計・整備・運用されているでしょうか。これら3つの観点から評価のあり方を見直すと、効果的な改善が実現できるかもしれません。

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