ポストコロナ時代の中間管理職のあり方

コロナ禍のなかで、中間管理職のあり方が大きく問われている。テレワークの急拡大により、一定程度の中間管理職が機能不全に陥っているからだ。どのようなことが起きているかというと、機能不全の中間管理職は大きく2つのタイプに分かれる。

機能不全の中間管理職の2タイプ

1つは、「マイクロマネジメント上司」だ。常に目の前に部下が居る環境から、物理的に分断された環境に変化したため、不安にかられ、四六時中、部下を追いかけまわす上司である。部下の業務の進捗ぶりを把握するために、メールやテレビ会議、電話などを駆使し、部下の行動を徹底的に把握しようとする。確かに、上司は部下の行動を把握できて安心するかもしれないが、部下にとってはたまったものではない。自宅というプライベート空間において、上司に常に監視される気分になるのは、メンタルに悪影響を及ぼす。テレワークの環境下では、社員は孤独を感じやすいため、なおさらである。「マイクロマネジメント上司」が社員の意欲を大いに下げるのは言うまでもない。

もう1つのタイプは、「丸投げ上司」だ。今までは目の前に部下が居たので、適度にコミュニケーションが取れていたが、物理的な距離が出来た途端に疎遠になる上司である。テレワーク環境下では、敢えてコミュニケーションを取りにいかなければ、コミュニケーションは限りなくゼロになる。極端な場合、上司・部下の間で1カ月の間に1度も会話をすることが無いケースもあるようだ。このような上司の場合、部下は自分のペースで快適に仕事をすることはできるが、果たして「上司とは必要なのだろうか?」という疑問がわいてくる。昨今、「中間管理職は本当に必要か?」という意見を聞くことがあるが、「丸投げ上司」が増えていることとも関係があるだろう。

日本企業の人事制度は成果評価と行動(プロセス)評価を組み合わせることが多い。物理的に分断されたことで、部下の行動(プロセス)が見えにくくなっているため、行動(プロセス)評価を無くし、成果主義へと舵を切るべきという意見を聞くこともある。しかし、これは、「丸投げ上司」を是認しているようでもあり、極端な意見のように思える。評価の仕組みを考える以前に、中間管理職のコミュニケーションのあり方や役割そのものに立ち返る必要があるだろう。

テレワーク環境下でのコミュニケーション


まず、テレワーク環境下においては、中間管理職はコミュニケーションのあり方を変えなければならない。テレワーク環境下において、オフィスで働くときと同様のコミュニケーションを取ることは、現実的ではない。オフィスに居るときは、毎日顔をあわせ、雑談を交わすことで、業務面や家庭・健康面の豊富な情報を得ることが自然にできていた。しかし、物理的に分断されたことで、情報量が極端に減少することが起きた。そこで、オフィスと同レベルの豊富な情報を求めたのが「マイクロマネジメント上司」であり、情報を取るのを諦めたのが「丸投げ上司」と位置付けることができる。しかし、これはどちらも上司としては不正解である。

テレワーク環境下で中間管理職が取るべきコミュニケーションのあり方は、「一定量の情報頻度の確保(量)」×「情報の質の向上(質)」で考えなければならない。上司と部下の信頼関係は、一定のコミュニケーションを必要とする。部下からの報告を待つような受身的なスタンスだと、コミュニケーションは激減する。一方で、過干渉をおこなってしまうと、部下は上司からの圧力を感じてしまう。あくまでも適度な頻度とするのがポイントである。筆者は週次あるいは隔週単位で定期的にコミュニケーションを取ることを推奨する。チーム会議なども有効ではあるが、やはり情報の質をあげるためには、11でのコミュニケーションがベターである。いわゆる1 on 1とも称されるミーティングだ。1 on 1では、「部下のための時間」ということを意識して、部下の話にじっくりと耳を傾ける姿勢が重要である。雑談も交えながら、部下の仕事上の悩みや進捗なども聞きつつ、腰を据えて部下の悩みに向き合うことがウィズコロナ時代の中間管理職に求められるコミュニケーションのあり方であろう。コロナ禍によりもたらされたテレワークは一過性の働き方とする見方もある。しかし、テレワークを経験したビジネスパーソンの満足度は総じて高い。ポストコロナの時代において、テレワークの可否は、給与・賞与などの金銭報酬ほどでは無いかもしれないが、重要な労働条件のひとつになるであろう。そのため、中間管理職のコミュニケーションもオフィス中心のコミュニケーションを前提とするのではなく、テレワークも織り込んだコミュニケーションへと変容する必要がある。

マネージャーの10の役割

コミュニケーション以上に重要な課題は、中間管理職に期待される役割だ。コロナ禍に直面し、中間管理職に期待される役割は変わりつつある。その変化を米国の組織学者のヘンリー・ミンツバーグが1970年代に提唱したマネージャーの役割をベースに解説したい。ミンツバーグによると、マネージャーは以下の10の役割に分類される。

  1. 看板 :組織の代表者としてのシンボル的役割
  2. リーダー :部下のモチベーションを高め鼓舞する
  3. リエゾン :組織外部と交渉し、ネットワークを構築する
  4. 監視役 :組織上必要な情報を監視し、集める
  5. 配布役 :必要な情報を組織内に伝達する
  6. 広報役 :必要な情報を組織外に伝達する
  7. 起業家 :変革を起こし、組織を活性化させる
  8. トラブルシューター :トラブルに対応する
  9. 資源配分者 :的確にリソースを配分する
  10. 交渉者 :組織外と折衝する

これらの役割がマネジメントに求められる普遍的な役割であることは、言うまでもない。しかし、ビフォアーコロナの日本企業の中間管理職がこれらの役割を全て担っていたかと言うと、そういうわけではないようだ。多くの日本企業の中間管理職が主に担っていたのは、看板、監視役、配布役、広報役、トラブルシューター、資源配分者の役割であろう。例えば、課長という役割は、課の看板を担い、課のリソースをうまく活かしながら、課内外の情報のパイプ役となり、部下の管理(監視)を行っていた。しかし、職場が物理的に分断されることで、情報が滞り、それらの役割が果たせなくなったというのが実態と言える。

だからといって、前段で述べたようなコミュニケーションの改善をおこない、今までと同じ役割をこなせるようになれば万事オーケーという単純な話ではない。コロナ禍が企業に与えた学びは、企業は先行き不透明なVUCAの環境にさらされているという事実である。マネージャーとリーダーは異なる。マネージャーは組織を効率的に管理・運営し、リーダーはメンバーを動機づけて導く。平時の中間管理職に求められるのはマネージャーとしての役割であり、従来の日本企業の中間管理職が担ってきた役割と言える。しかし、有事の中間管理職に求められるのはリーダーとしての役割である。リーダーの役割はミンツバーグの提唱する10の役割では、リーダー、リエゾン、起業家にあたるだろう。すなわち、社外の変化を察知し、人々を動機づけながら、新しい組織・事業モデルへ変革させることである。

コロナ禍でのリーダーシップ事例

コロナ禍のなか、いち早く行動を起こし、大胆な方針を示して組織を導いた経営トップが存在感を示した。家電メーカーのシャープはマスクの生産を開始し、世間の賞賛を浴びた。アパホテルは医療崩壊を防ごうとする政府の要請に応え、新型コロナ感染者のうち軽傷者や無症状者の一時療養先として、自社のホテルを提供した。「柿の種」で有名な地方菓子メーカーの三幸製菓は、地元の雇用状況の悪化に対応し、未経験者の大量採用をおこなった。

経営トップだけではなく、中間管理職のなかにも、リーダーシップを発揮する人材が数多く現れた。あるドラッグストアのエリアマネージャーは、店舗を回り、不安と戦う店員を支え、励まし続けた。ある金融機関の管理職は、取引先の危機を救うために奔走し、クラウドファンディングを提案し取引先を救った。あるメーカーでは、社員の安全確保のために、経営陣を説得し、テレワークにシフトさせる部長もいた。いずれのリーダーも、不確実な環境下で変化に対応し、メンバーを動機づけながら、組織の変革をリードしていったことは間違いない。

ポストコロナで進む中間管理職の選別

ポストコロナの時代において、中間管理職の選別は進んでいくであろう。コロナ禍で多くの日本企業で業績悪化は避けられない。企業は生き残りをかけて、スリムな企業体質に転換しなければならない。終身雇用や年功序列の人事慣行は崩壊し、ジョブ型制度へのシフトは進んでいく。それらの構造的な変化のなかで、コロナ禍で機能不全に陥った従来型の中間管理職は行き場を失う可能性は高い。コロナ禍が収束した後も、予想もつかない様々な変化が起こり、ヒトも組織も常に変化し続ける必要があるだろう。組織の中核を担う中間管理職に期待される役割はマネージャー(管理者)ではなく、リーダー(先導者)でなければ務まらない時代が来ている。ポストコロナの時代の中間管理職は周囲を導き、周囲からも信頼されるリーダーでなければならない。だからこそ、日本企業の中間管理職はその役割の変化を強く認識しなければならない。これから、中間管理職に対する風当たりは厳しくなるだろう。環境に流されているようでは、自分の雇用や職場を守ることはできない。中間管理職こそ、意志を持って行動しなければならないのだ。ビフォアーコロナでは中間管理職として機能していても、ウィズコロナ・ポストコロナでは通用しない。多くの中間管理職が、早くその事実に気づき、行動変容することが期待される。

リーダーへの変容は一朝一夕に出来るものでは無い。しかし、自己変容の重要性に気づき、実際に行動を起こすことで、最初の一歩を踏み出すことができる。中間管理職が全く不要になることは無い。むしろ、強いミドルは会社を強くする。日本企業の中間管理職が従来型のマネージャーとして行き場を失うのではなく、会社を力強く導くリーダーに変容し、日本企業の成長を支えていく未来を期待したい。本稿が日本企業の悩める中間管理職の気づきに繋がれば、幸いである。

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