先日、トヨタが静岡県の東富士に「Woven City」という実証都市を設置すると発表しました。トヨタといえば、世界的に有名な自動車メーカーです。その自動車メーカーが車の生産だけではなく、物の「移動」という観点から、ビックデータを活用した実証都市を創出するモビリティカンパニーへと変わりました。PDCAに着眼したトヨタ生産方式から、OODAループを取り入れた時代を見据えた革新ともいうべき内容を見ていきましょう。

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時代はPDCAサイクルからOODAループへ

PDCAは1950年代に日本に入ってきた業務改善を目的とした考えです。当時は物の大量生産や品質向上が重要とされた時代であり、現在も多くの企業もしくは部署によってPDCAサイクルは利用されています。しかし現在は時代の変革期にさしかかっており、一つの物を大量に生産する時代から、いかに多様性に対応するかの時代に変わってきています。一時期「トヨタ生産方式」という言葉が一人歩きをし、業務改善にはこの方法がベストとされてきました。

トヨタは自動車を大量に、かつ正確に生産しなくてはいけない企業として、その生産部門においてPDCAを利用し、これまで多くの実績を残してきました。これを成功例として、企業はこぞって「トヨタ生産方式」を活用し、今でも多くの企業が生産性を上げる努力をしています。しかし現在トヨタは、車の概念そのものが変わってきている時代と判断し、ただ単に自動車を大量に作る企業から、モビリティカンパニーへと移行しています。

そこで重要となってくるのがOODAループです。OODAループは会社全体の方向性を位置付けるためには必要な考えで、生産部門などの部署改善に特化したものではありません。これはトヨタにかぎって言えることではなく、どの企業においても必要なものと言えます。トヨタの基本理念の一項目に、「国際社会から信頼される企業市民を目指す」という一文があります。このようにすでにトヨタは現在の国際情勢を見据えた企業へと変貌しつつあります。
PDCAサイクルからOODAループへ

OODAループは山登りに似ている

OODAとPDCAの大きな違いは、その視点にあります。PDCAはその字のごとくP(プラン・計画)からスタートします。先ほどのトヨタの自動車生産に例えると、今月は何台の車を生産しなくてはいけないとか、生産性を上げるためにはどこを改善するべきか?という、目の前にある事象に対して着眼し計画することと言えます。一方、OODAループのスタートはObserve(観察)から始まっています。プランとの違いは目先を見下ろすことではなく、全体を見渡すことと言えるでしょう。

これを山登りに例えるとわかりやすくなります。プランの方は登るための靴や道具、衣服や食料、全体行動の見直しを行います。つまり、登山に必要とされる目に見える物の計画です。一方OODAループのObserve(観察)で、頂上へ行くための情報収集をします。登山ルートや天候の確認、それに伴った実行の判断です。登山を始めるにあたって、もちろんプランの部分の目に見える道具などのチェックも重要ですが、それ以上に必要なのが、「登山」を行うための全体像の方向性と判断です。

さらに、Do(実行)以降のCheck(評価)Action(改善)も同様です。PDCAの場合、道具を確認したら、登山を開始します(実行)。そして途中でこの道であっているのかを確認(評価)します。間違っていればアクション(改善)を行い道を変更します。OODAの場合は最初に最善の情報収集を行いますから、大きく道をそれることもありません。また、途中で評価するのではなく最初の段階で天候などの情報も集めるので、登山の開始判断を誤ることもありません。登山におけるPDCAも大切ですが、それ以前に登山を安全に行うため、どのルートにするべきかを決めるOODAループが必要になるといえます。
OODAとPDCAの違い

時代に視点を据えたOODAの活用

現在は100年に一度の変革期と言われています。変革期の真っ只中にいるときはあまり気付かないかもしれませんが、トヨタがコネクティッド・シティを先日掲げたように、時代は確実に方向性を変えてきています。トヨタは自動車だけを生産する会社から、将来を見据え大手電池メーカーとも合併会社を設立するなど、確実にOODAループの観察、情報取集を最大限に利用しています。コネクティッド・シティでは人をはじめとした「物」を移動するための暮らしやすさを追求しています。その一方、社内ではToyota New Global Architecture(TNGA)を掲げ、生産部門の改善も同時に行なっています。

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