iPaaSのメリットとデメリット

IT革命と言われた2000年代初頭からすでに20年以上が経過し、今では誰もがクラウドサービスを利用する時代になりました。あなたもオンラインストレージから業務管理ツール、チャットなどのコミュニケーションツールに至るまであらゆるクラウドサービスを毎日利用しているのではないでしょうか。

一方で業務ごとに異なるクラウドサービスが乱立していることに頭を悩ませている方もいます。どうすればクラウドサービスをより効率よく活用できるのでしょうか。そこで今回はクラウドサービス活用の最新トレンドであるiPaaSについて解説します。

iPaaSとは?IaaSやSaaSとの違いは?

iPaaSは最新のテクノロジーであるため、まだ聞きなれないという方も多いのではないでしょうか。まずはiPaaSの概念と意味について紹介します。

iPaaSとは?

iPaaSとは、Integration Platform as a Serviceの略で複数のITシステムを統合して使いやすくするサービスです。複数のITシステムをつなぐことで、業務の自動化や効率化を実現します。iPaaSの主な機能は、複数のサービスに分散したデータの統合、システム間の連携を行うことです。

iPaaSを使用すれば、例えば複数のクラウドサービス同士の間でデータをやりとりできるほか、前工程のシステムと後工程のシステムをつなげて、タスクが完了したらメールが配信されるといった連携ができます。しかもクラウドサービスだけではなく、旧来のオンプレミス型システムとの連携も可能です。まさに現代の業務効率化に求められているツールではないでしょうか。

SaaS、IaaS、PaaSとの違い

iPaaSを従来のIT用語と混同する方もいらっしゃるかもしれません。特にクラウドサービスにはSaaS、IaaS、PaaSという概念があります。それぞれどのような違いがあるのでしょうか。

SaaS

SaaSはSoftware as a Serviceの略で、インターネット上で提供されるソフトウェアを意味しています。最近では多くのサービスがクラウド上で提供されており、SaaSはクラウドサービスの総称としても定着していると言えるでしょう。

IaaS

IaaSは、Infrastructure as a Serviceの略で、サービスを稼働させるためのインターフェイスなどをインターネット上で提供するサービスです。代表的なサービスとしてMicrosoftのAzureやAmazonのAWS、GoogleのGoogle Cloudなどがあります。高性能な計算能力を持つ仮想マシンなどの提供により、高度なソフトウェア開発環境をリーズナブルに整えることができます。

PaaS

PaaSはPlatform as a Serviceの略で、アプリケーションの稼働に必要なプラットフォームをインターネット上で提供するサービスです。IaaSと混同されやすい概念ですが、IaaSが仮想マシンなどハードよりのサービスを提供するのに対し、PaaSはハードウェアに加えてソフトウェアも提供します。

例えば代表的なサービスであるMicrosoftのAzureは、オンラインストレージと高度な処理能力を持つサーバーだけではなく、動画処理やビッグデータ解析などのソフトウェアをセットで使用できます。PaaSを使用すれば、高性能なマシンと高額なソフトウェアを用意しなくても、すぐに様々な開発やデータ解析に取り組むことができるでしょう。

このように、SaaS、IaaS、PaaSはクラウドサービスの提供方法を示した言葉です。一方でiPaaSはクラウドサービスだけではなく、オンプレミス型システムも含めてシステム同士をつなぐサービスを意味しています。

iPaaSがいま注目される理由

iPaaSはいままさに注目されているサービスです。なぜいま、iPaaSがトレンドになっているのでしょうか。

クラウドサービス利用における日本の現状と課題

総務省の「令和2年版情報通信白書」によると、2019年時点でクラウドサービスを一部でも利用している日本企業は全体の64.7%であり、2015年の44.6%から4年で約1.5倍に増えました。また、クラウドサービスの利用の効果として、「非常に効果があった」「ある程度効果があった」と回答する企業が85.5%にも上り、クラウドサービスの普及が日本でも確実に広がっていることがわかります。

参考:「企業におけるクラウドサービスの利用動向」(総務省)

一方で日本では企業の多くがレガシーシステムを抱えていることが経産省の調査で明らかになりました。経産省は「デジタルトランスフォーメーションに向けた課題の検討」で8割以上の大企業で老朽化したシステムが残存していると指摘しています。日本企業では過去に構築したシステムをそのまま使用しながら、クラウドサービスへ移行したため、本来であれば不要であるはずの古いシステムと新しいクラウドサービスを併用しながら業務を行っている企業も少なくありません。

その背景には、日本企業が業務に合わせて短期的視点でITシステムを開発してきた歴史があります。また全体最適ではなく、部門最適でのシステムを優先してきたことにより、社内に複数のレガシーシステムが残存してしまっている企業も少なくないでしょう。このように、日本企業ではクラウドサービスと複数のレガシーシステムを併用しながら業務を運用しているケースが多く存在しているのです。

参考:「デジタルトランスフォーメーションに向けた課題の検討」(経済産業省)

乱立するクラウドサービス

先ほどご紹介の通り、日本ではクラウドサービスが急速に普及しています。特に新型コロナウィルスの影響によりテレワーク導入が進み、今後はさらにクラウドサービスの利活用が進んでいくと考えられます。一方でクラウドサービスは利用目的ごとに細分化されており、複数のクラウドサービスを使用しながら業務をすることも当たり前になりつつあるのではないでしょうか。

例えば人事部であればMicrosoftのTEAMSでコミュニケーションをとりながら、Trelloでタスク管理をし、タレントマネジメントシステムで社員情報を分析、承認はクラウドサインで行うといった具合です。ほかにも人事部であればクラウド型の給与システム、勤怠システム、ストレスチェックツールなどを使用しているかもしれません。

このように、1つの部門でも複数のクラウドサービスを利用しているため、大企業の全社レベルでは相当な数のクラウドサービスを利用していると考えられます。複数のクラウドサービスを使用すると、サービスごとにパスワード管理が必要になるほか、データをいちいちCSVなどでエクスポートしてExcelで加工したうえで他のシステムに投入するといった手間も必要になります。クラウドサービスは便利な一方で、目的ごとにシステムを使い分けなければならないというデメリットもあるのです。

このようなシステム間のデータのやりとりが求められる現代社会では、システムとシステムをつなぐ仕組みが必要です。そこでiPaaSが注目されるようになってきたのです。

iPaaSの発展性と成長性

海外の調査会社VynZResearchが発表したレポートによれば、世界のiPaaS市場は2020年時点で19億ドル(約2,050億円)であるとされています。そして2025年には103億ドル(約1.1兆円)に到達するとのことです。

2020年から2025年までの年平均成長率は40%と想定されており、急速な勢いでiPaaSサービスが普及することが予想されています。その背景には世界的なクラウドサービスの普及があります。世界中の企業ではITシステムのクラウド化が急速に進み、かつ複数のクラウドサービスを活用しているのです。

一方で日本ではまだまだiPaaSのサービスが普及していません。先ほどご紹介したDXの課題をまとめた経産省のレポートで指摘されているように、日本では企業がレガシーシステムの維持にIT予算の多くを投じており、ITシステムのクラウドへの完全移行が難しい状況にあります。

レガシーシステムは情報漏洩などのセキュリティリスクが高くなるため、日本企業はデータ資産をクラウドサービスに移行していく必要があるでしょう。たとえば企業や自治体の多くで採用されているWindows Server2012は2018年にサポートが終了しましたが、依然として使用する企業が多いため2023年10月までサポートが延長されています。サポートが終了するとウィルス対策のアップデートがメーカーから実施されなくなるため、データが流出するリスクがかなり高まるはずです。

そのため、この2021年から特に2023年にかけては日本でもITシステムをクラウドサービスに順次切り替える企業が増えることが予想されます。日本でも2021年現在、クラウドサービスを活用する企業が増加しつつありますが、今後さらに急速に普及し、複数のクラウドサービスを利用することが当然になれば、iPaaSの需要もかなり高まるのではないでしょうか。

参考:「Global iPaaS Market – Analysis and Forecast」 (VynZResearch社)

iPaaSの3つの機能とメリット・デメリット

ここまでご紹介したように、iPaaSはこれからまさに求められるシステムです。ではiPaaSにはどのような具体的な機能があるのでしょうか。メリットとデメリットについてもご紹介します。iPaaSには大きく分けて3つの機能があります。

サービスとサービスをつなぐ

iPaaSの活用シーンで最もイメージしやすいのがサービスとサービスをつなぐ機能です。API(Application Programing Interface)を提供して異なるサービス間での連携を容易にします。APIはパソコンでいえば「変換コネクタ」のようなものです。変換コネクタは異なる形状の端子と端子をつなぎますが、APIは異なる形態のソフトウェア動詞をつなぎます。

具体的には、勤怠システムと給与計算システムをつなぎ、勤怠システムで入力した残業時間から自動的に給与計算がされるといった事例が考えられます。

データを同期する

近年では異なるクラウドサービス間でのデータのやりとりが必要になる場合があります。例えば人事部の場合、クラウド型の人事情報システム(HRIS)やタレントマネジメントシステムの導入が最近活発化しています。

一方で給与計算システムは計算ロジックの都合でカスタマイズされたオンプレミス型を使用している企業も少なくありません。社員情報の管理はHRISやタレントマネジメントシステムで行い、給与計算は給与計算システムで行うため、社員の入退社データを両方のシステムで同期する必要があるのです。従来はHRISのデータを手動でCSVにダウンロードしてから給与計算システムにアップロードしてきました。

しかし、iPaaSがあれば自動で両者のデータを同期できます。データを同期できるiPaaSを活用すれば業務を大幅に効率化できるのです。

異なるシステム間のフローをつなぐ

iPaaSのユニークな特徴の一つが、異なるシステム間のフローをつなぐ機能です。例えばタスク管理ツールのTrelloであるタスクを完了したら、TEAMSやSlackなどのコミュニケーションツールで自動的にメッセージが発信されるといった動作ができます。異なるシステム間のワークフローをやりとりして、前工程と後工程をつなぐことができるのです。

またiPaaSがあれば異なるクラウドサービスを連動させた業務設計が可能になります。例えば、インサイドセールスであれば、これまでは手動で行ってきた問い合わせ受付から資料送付、コンタクトメール送信、契約までの一連の流れをほぼ自動化することもできるでしょう。iPaaSは大掛かりなツールを新たに導入することなく、複数のクラウドサービスを連携できる点がとても便利です。

iPaaSのメリットとデメリット

ここまでご紹介したようにiPaaSの大きなメリットは既存のクラウドサービスをそのまま使用して、API連携により複数のクラウドサービスを接続できる点です。但し、使用しているクラウドサービスでAPIが公開されていない場合はiPaaSを使用できません。どうしても連携させたい場合は使用しているサービスを変更する必要があります。

例えるなら、外部入力端子がないテレビに無理矢理ケーブルを差し込もうとするイメージです。一方でまだクラウドサービスをそこまで導入していない企業はラッキーです。これからAPI連携ができるクラウドサービスを選び、さらにそれぞれを連携する方法も一緒に検討しましょう。

また希にAPI連携がうまくいかない場合もあります。導入の際は必ずトライアルを行ってから導入しましょう。このように、iPaaSには大きなメリットがあるものの、全てのサービスが連携できるわけではない点に注意が必要です。

iPaaSのメリットとデメリット

iPaaSとRPAの違い

iPaaSを使用すれば業務の一部自動化を実現できます。一方で自動化と言えばRPAを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。RPAとiPaaSはどのような違いがあるのでしょうか。

定型業務はRPA

RPAはRobotic Process Automationの略で、ソフトウェア上で動くロボットを意味します。ある程度ロジックを覚えさせることで、定型業務を人手なしで遂行できることが特徴です。RPAはロボットであるため、あらかじめプログラミングした通りの手順で動きます。

また、最近のRPAは学習能力もあり、業務をこなしていくうちに徐々に習熟度が向上して作業スピードが早くなっていきます。RPAは人がやらなくてもいい単純定型業務を人の代わりにこなす仕組みです。そのため、システムを連携するiPaaSとは異なり、やや複雑な業務もこなすことができます。

連携ならiPaaS

iPaaSは連携により自動化を実現します。RPAのように自立的に稼働することはできず、システムとシステムの接続をあらかじめ設定しておくことで作動するサービスです。iPaaSの自動化はAPI連携によって行われます。人事部であれば社員情報システムからデータがエクスポートされたら、給与計算システムへデータを運びます。

また、前工程が完了した信号を受け取って、後工程をスタートさせます。つまりiPaaSは自らの意志で作業を進めるのではなく、何らかの信号を受け取って動作するスイッチのような機能を果たしていると言えます。

このように、RPAとiPaaSには大きな違いがあります。RPAは単純作業を自立的に遂行しますが、前工程と後工程を含む簡単な自動化であればiPaaSが便利です。

iPaaS製品の代表例

ここまでのご紹介を読んで、きっとあなたもiPaaSを導入したいと思ったのではないでしょうか。最後にiPaaS製品の代表例をご紹介します。

Workato

多様なクラウドサービスに対応しながらも、日本でも安心して使えるサービスがWorkato(ワーカート)です。誰でもプログラミングや専門知識不要で、簡単にサービス同士を連携できます。対応するサービスは400種類以上で、SalesforceやSAP、Workdayなどの業務基幹システム、SlackやTEAMSなどのコミュニケーションツールなど幅広いサービスと接続可能です。

さらにはアプリケーション同士を連携するための「レシピ」を公開しており、簡単に業務の連携や自動化も実現できます。日本では、Trelloなどの製品メーカーであるAtlassianの大手代理店で上場企業であるリックソフトウエアがサービスを提供しています。安心して日本でも使えるサービスです。

informatica

世界中で使われ始めているiPaaSがinformatica(インフォマティカ)です。IT調査会社大手であるガートナー社のレポートでiPaaS業界のトップリーダーとして選ばれています。Informaticaは目的ごとに複数の製品を提供しており、データ連携、サービス統合など幅広い機能が使用できます。人工知能を搭載し、単なる接続と統合だけではなく、膨大なデータを監視・管理できる機能も提供しています。特に大企業におけるデータ同期やシステム統合、クラウドへの移行に強みを発揮するiPaaSです。

Anyflow

Anyflowは日本初の国産iPaaSです。Warkatoと同様、ノーコードで様々なクラウドサービスを連携できます。国産サービスであるため、日本国内でよく使われるクラウドサインやSmart HR、freeeといった国内向けサービスとの連携が可能です。海外製品ではなく国内のクラウドサービスを利用している企業に特におすすめのサービスです。

iPaaSはまだ日本国内ではサービス提供者が少ない状況ですが、国産サービスも生まれ、徐々に盛り上がって来ています。まずはぜひ製品を試してみるところから始めてみてはいかがでしょうか。

まとめ

iPaaSはクラウドサービスを統合するサービスです。まさにクラウド時代ならではのサービスといえるでしょう。一見iPaaSは難しい概念のように感じます。しかしその実態はプログラミング不要で複数のサービスの連携を可能にするほか、自動化やデータ同期を実現する便利なものです。もしあなたがクラウドサービスの乱立に悩まされているなら、iPaaSを使用してみる価値はあるのではないでしょうか。

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