経営戦略の実現には人事成長が必須!企業に見る戦略人事の例

企業が業績を上げるためには実現可能な企業戦略を策定し、達成しなければなりません。しかし、そのために必要な人材の確保は年々難しくなっています。また、人材が足りても、企業目標や方針が共有できていなければ、一致団結して仕事に取り組むのは難しいでしょう。このような問題に対処すべく、人事部門が直接経営戦略に参加する戦略人事を導入する企業が増えています。ここでは、一例をご紹介します。

戦略人事とは何か

21世紀の企業環境は取引や決定に至るまでの速度が上がり、企業の方針に適した人材をどのように集めて配置するべきかが重視されるようになっています。戦略人事では、従来的な人員の労務管理だけでなく、事業目標の達成をサポートできる業務の効率化や人的マネジメントを考慮します。なお、戦略人事とは「戦略的人的資源管理(Strategic Human Resources Management)」の略称です。では、戦略人事と一般的な人事では具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

日本企業で行われてきた従来型の人事には、経営戦略を達成するための機能がセンターオブエクセレンス(CoE)とオペレーションズ(OPs)の2つしかないと言われています。センターオブエクセレンス(CoE)は、組織が所持しているリソースを集中することで企業目標を達成する機能や役割です。企業内には優秀な人材だけでなく、他部署が把握していない施設やノウハウががあります。それらをまとめることで、組織の効率化を図るというものです。オペレーションズ(OPs)は一般的な人事業務です。給与計算や退勤時間の処理などの労務管理を指します。

戦略人事ではこの2つだけでなく、「ビジネスパートナー(BP)」の機能が加わります。人事という仕事に就く者が経営戦略を理解し、経営者をサポートするという考えが戦略人事には必須です。さらに、人材を発掘して育成するために採用や労務制度を改革し、人事業務の視点から組織開発を図る「組織開発と人材開発(OD TD)」の機能も加わります。

では、なぜ戦略人事が求められるようになったのでしょうか。ビジネスのIT化や技術の発展によって、ビジネスにはスピードとより状況に合わせた個別的な戦略が求められるようになっています。しかし、現在の日本は労働人口の低下や働き方の変化によって、必要な人材の確保が困難です。終身雇用を前提とした育成制度や労働制度では変化についていくのは難しいと言えます。そのため、経営戦略の立場から人的リソースの活用を考える戦略人事が注視されるようになりました。

日産自動車株式会社では人材開発に着目し部署を創設


2011年、社内の優秀な人材を発掘して次世代のビジネスリーダーとして育成するために、日産自動車株式会社ではグローバルタレントマネジメント部を設けました。各部署から優秀な人材を抜擢し、経営陣が審査します。優秀であると認められた人材はハイポテンショナルパーソン(HPP)として登録され、ビジネスリーダーとしての教育が施されます。

日産自動車株式会社は2017年に発表した「日本タレントマネジメントの取り組み」の中で、同社が考えるビジネスリーダー像とその育成のプランを次のように示しました。まず、入社後3年以降をめどにビジネスリーダー候補を発掘し、5年から7年目に候補の選抜と育成をします。これによって、40歳代にはビジネスリーダーやそれに見合うポストで働ける人材が育つという流れです。同社では、主要な役職の多くに日本人ではないグローバルな人材が着任しています。特に2002年以降は日本人が重要な役職に就任する機会が減っています。日産自動車株式会社は、この戦略人事によって企業内に優秀な後継者を誕生させ、企業の活性化を狙っていると言えます。

日清食品株式会社のグローバルSAMURAIアカデミー


世界に通じる次世代の人材を確保・育成することは、現代の企業にとってとても重要なミッションです。日清食品株式会社ではそのような人材を社内で育成するために、社内の役割を経営層と一般職・監督職・管理職の4つの階層に分け、それぞれに人事研修を施しています。さらに、企業内の各階層にいる次世代の経営を担うであろう人材を倍増させる施策の1つとして、「グローバルSAMURAIアカデミー」と呼ばれる企業内大学を創設しました。この制度では、企業内で選抜された人材を若手からキャリアまで5つの階層に分けて教育し、企業経営の中心となるべく育てます。

「グローバルSAMURAIアカデミー」の構成は、若手から中堅の人員が対象になる「若武者編」と係長から課長の「侍編」、次期経営者となる次長から役員に対する「骨太経営者編」、経営者候補の人材には「エグゼクティブ編」となっています。この制度に選抜された者はマネジメントや論理的思考力といった経営能力だけでなく、異文化理解や語学といったグローバル人材に必要な要素についても教育を受けます。2015年からは、女性の経営幹部候補を育成する「カタリスト編」が制度に追加されました。

この他にも、日清食品株式会社には10年3部署ジョブローテーション制度や若手からキャリアを積んだ人員まで参加できる公募制度など、さまざまな人事制度が用意されています。

「TOGA(The Omron Global Awards)」で企業理念を共有するオムロン株式会社


成長していく会社は社内において企業ミッションの共通認識があります。共通認識を持たない企業は組織力が育ちづらいだけでなく、社員のモチベーションを維持させることが困難です。特に近年では企業のグローバル化や人員の多様化が影響して、企業内で共通の価値観を維持することが難しくなっています。そんな中、オムロン株式会社は新たな価値を生み出す風土を共通意識とするべく、社内表彰である「TOGA」を2014年に開始しました。

TOGAは「The Omron Global Awards」の頭文字を取って作られた言葉です。営業成績や目標達成度ではなく、企業理念の実践事例や優秀な取り組みを評価します。例えば、自動車工場の離職率を低下させるために高校教育を提供した事例や糖尿病における合併症の患者の費用負担を軽減させる取り組みなどが表彰されています。この取り組みは、企業内で理念の共有を推進するだけでなく、同社の社会的有用性を世間に伝えられる方法です。企業成長を長期で支える戦略人事と言えるでしょう。

株式会社サイバーエージェントは人材管理に着目


株式会社サイバーエージェントは多くの関連会社や子会社を有し、従業員4,000人を超えるIT企業です。ですが、その人事制度は進歩的と言えるものではありませんでした。そこで、同社では人材管理という点に着目した戦略人事に注力しています。具体的には、同社で人材管理システムである「ゲッポウ(GEPPO)」を導入しました。

社内にいる人材を適切な部署や役職へと割り当てるためには、人員の情報を詳しく精査する必要があります。このシステムは数問の設問に回答するだけで、人材の人物像や課題を見える化します。また、このシステムのデータを十分に活用するために、情報を収集して精査する人材科学センターと面談やヒアリングを担当するキャリアエージェントグループを持つ人材開発部が設置しました。この部署の設置によって、同社は必要な事業に最適な人材を配置できるようになりました。

加えて、同社では各部署の業務内容や必要な人員を見える化できる「キャリパー」というシステムも導入しています。キャリパーは社内版求人サイトと言えるシステムです。スキルや仕事内容から人材を求めている部署を検索できます。これによって、社内にあるポジションのニーズが可視化され、その仕事にチャレンジしたい人材が積極的に応募しやすくなりました。

導入への課題が解決できない場合

成長企業の事例を見る限り、戦略人事の導入は企業の進歩に効果的と言えます。しかし、導入は難しいと考える企業も多いのではないでしょうか。戦略人事を導入するには、経営戦略の実現に足りない要素の把握と経営戦略を正確に把握できる能力を持つ人事担当者が必要です。自社でこれらの課題の解決が困難な場合には、外部サービスの利用を検討してみると良いでしょう。

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