人事評価を公平に、かつ効率的に行うために、人事評価システムの導入を検討している企業が増えています。しかし、実際にシステムを導入しても、自社の人事評価制度の運用に合わない、機能がハイスペックであるため使いこなせないなど、問題のあるケースも少なくありません。そこでこちらでは、評価システム選定の失敗例や、より最適な人事評価制度を運用するための考え方などについてご紹介していきます。
人事評価システムを検討する企業が抱えている課題
まずは、人事評価システムの導入を検討する企業の状況や抱える課題についてみていきましょう。
従業員のモチベーションを向上させたい
自身の目標やその進捗、評価結果をいつでも見えるような状態にすることでモチベーション向上に繋げたい
曖昧な評価基準を明確にしたい
評価者や部署毎に評価の基準にばらつきがあるため、評価システムによって基準を明確にし、ばらつきを防ぎたい
評価シートの配布や回収作業を効率化したい
紙やExcelで運用している評価シートの配布・回収に時間がかかり、評価調整会議や次期の目標設定の開始が遅れたりするため、システムで運用・管理することで効率化したい
人事評価制度が無い、評価シートがない
評価基準や結果の反映先は決まっていないが、評価システムに合わせて評価制度を構築していきたい
このような課題を、すべて人事評価システムで解決することは可能なのでしょうか?次に、企業が評価システムを選定される際に重要視されている基準について見ていきましょう。
■選定基準
- 従業員が使いやすいこと
- 安価であること
- 柔軟に設定できること
- ダッシュボードやサーベイ等の様々な機能がついていること
先程のような状況、課題を抱える中で、上記のような基準だけでシステムを選定し、運用していくことは、状況の改善・課題の解決方法として適切なのでしょうか?
人事評価に関する課題の整理
先程あげたように、人事評価に関する課題は様々ありますが、それらをすべて人事評価システムだけで解決するのは不可能です。以下に、お伺いすることの多い人事評価に関するお悩みと、それによって引き起こる問題についてまとめます。
上司の好き嫌いや印象で評価が決まっている
評価に納得性がないため、被評価者は上司や会社への不信感・不満が募り、最悪の場合は退職を決断してしまいます。
評価調整用の資料作成に手間がかかっている
紙やExcelで評価シートを作成している場合、各署からシートを回収するのに時間を要し、評価結果をまとめ直す作業に時間や手間が生じてしまいます。その結果、調整会議前の人事の方の業務が忙殺されたり、シートの誤送信、転記ミス等の人為的なミスが発生したりする可能性があります。
評価制度がない
評価基準や結果の反映先が定まっていないと、被評価者は、どのような行動や実績が評価されるのかが見えないため、パフォーマンスや働きがいの向上に繋がらない。
こうした人事評価に関する状況は、人材マネジメントのフレームワークを活用し、「仕組み」「人」「運用方法」に整理することで、解決の方向性が明確になります。
こちらのフレームワークで、よくある人事評価におけるお悩みを整理すると、以下のようになります。
そして、それぞれに対する解決の方向性としては、以下のようになります。
人事評価に関する課題の具体的な解決策
先程お伝えした3つの解決の方向性について、それぞれ具体的にお伝えします。
人事制度や育成体系の整備
そもそも人事評価制度の目的には、①人材育成②適切で公正な処遇③業務の最適化を実現するという目的があります。しかし、制度がない状態で評価システムを導入すると、評価の種類や基準をシステムに合わせて設定することになりますので、自社としての「あるべき人物像」や処遇の実現に向けた適切な評価を運用することはできないでしょう。そのため、会社としてなにを評価するのかという評価制度はもちろんのこと、求める役割や能力、職務内容等で等級を定義し(等級制度)、そして成果に対してどれだけ報いるのか(報酬制度)、また、従業員の能力を高めるためにどのように育成していくのか(育成体系)という仕組みを構築していく必要があります。
また、人事制度は、経営計画の達成に向けた人材のマネジメントをするためにあるものですから、経営計画や会社として目指すビジョンなども明確にし、制度に落とし込んでいく必要があります。
評価者・被評価者への研修
評価の仕方や目標の設定方法に問題がある場合は、評価者及び被評価者に対して、自社の人事制度についてはもちろん、人事評価や目標の目的や意義の理解を促す必要があります。そして、実際に運用していく際にも、各被評価者が自分に合った目標を設定できているのか、評価者が恣意的な評価を行っていないかを事業部単位、全社単位で確認する必要があります。
人事評価システム
評価シートの配布や回収、調整に手間がかかっている場合は、評価システム上でシートの作成や配布を行なうことで、業務の自動化・効率化を図ることが可能となります。また、過去から現在までの目標や評価結果をいつでも振り返らえる状態にしておくことで、自身が成長した点や今後の課題などについて意識して行動することが期待できます。
そして、面談内容や研修の受講履歴などのデータを同じシステムで一元的に管理することで、評価結果のフィードバックの際や目標設定時、日頃のコミュニケーションにおいても、従業員の成長や理想のキャリアに最適なサポートができるようになります。
評価システムの導入を成功させるには
人事評価システムで解決されたい課題や状況、そして人事評価制度によって達成されたい会社としての目標は、それぞれの会社によって異なります。仕組みやそれを動かす人に問題がある場合はまずそちらを解決しなければ、評価システムを導入しても根本的な解決には至りません。最適な人事評価を行い、自社の経営計画を達成するために、まずはどこから手をつけていくべきかをきちんと整理していきましょう。
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