企業は、自社で働く従業員の特性、経歴や能力などを把握しておかなければいけません。企業の理念や規模により、把握者は経営者である場合もあれば、人事担当者である場合もあるでしょう。いずれにしても、従業員の把握はマネジメントにおいて重要な意味を持ちます。特に「スキル管理」は、企業や人事担当者にとって非常に重要です。本記事では、スキル管理の必要性やメリット、管理方法などについて解説します。

スキル管理とは?

スキル管理とは、自社の従業員の保有するスキルをデータ化し一元管理する作業を指す表現です。スキルの中には、数値化できるものとできないものがあるでしょう。そうしたものも含め、従業員の持つ知識や技術、能力等を可視化し、社内の誰がみてもわかるような形で管理を行います。管理したスキルを、マネジメントを含め、さまざまなところで活用するのが一元管理する目的です。結果、効率化や生産性の向上、ひいては企業全体の業績の向上が期待できるでしょう。

スキルの種類

管理を行うスキルには、さまざまな種類があります。企業によっても管理が必要なスキルは異なるでしょう。ここでは、ビジネススキルを3つの種類に細分化し、それぞれについて紹介していきます。

テクニカルスキル

業務の遂行に不可欠な知識や技術などがテクニカルスキルです。分野や職種により求められるスキルは異なります。学習や経験によって身につけられるものが多いでしょう。例えば、販売職であれば、取り扱っている商品の知識や接客能力が挙げられます。事務職では、パソコンを扱うための知識や資料作成のための能力があてはまります。製造業であれば、製造技術や機械の取り扱いに関する知識や資格が、代表的なテクニカルスキルです。

ヒューマンスキル

人間関係の構築や他者への影響力などに関連した能力がヒューマンスキルです。育成で身につくものもありますが、もともと持ち合わせているその人特有の性質であるケースも多いでしょう。例えば、コミュニケーションスキルが挙げられます。プレゼンテーション能力やリーダーシップなども代表的なヒューマンスキルです。コーチングスキルも、この種類に該当します。

コンセプチュアルスキル

物事の本質を見極め、正しい判断を行うための能力がコンセプチュアルスキルです。ロジカルな思考や、客観的な視点、俯瞰的に全体を捉える能力などが、これに該当します。課題の発見力や解決力、状況の変化への対応力などもコンセプチュアルスキルです。発想力や創造力もあてはまるでしょう。ヒューマンスキル同様に、鍛えられる部分もあれば、その人にもともと備わっている能力であるケースも少なくありません。

スキル管理の必要性やメリット

マネジメントなどに活用可能なスキル管理ですが、ここでは、スキルを管理することの必要性や、それがもたらすメリットをさらに細かく解説します。

個々や組織のスキルが把握できる

スキル管理により、従業員の個々のスキルが把握可能です。チームなど組織のスキルの総量も確認できるでしょう。足りないスキルの把握もしやすくなり、そうした情報を採用を含めた人事戦略に行かせます。個々や組織のスキルの把握は、プロジェクトを構築したり実行したりする際にも欠かせません。スキルに見合わないプロジェクトでは、成功が期待できないためです。

スキルの共有や引き継ぎができる

従業員のスキルを可視化できるよう管理しておくと、例えば、異動があった際にスムーズな共有や引き継ぎが可能となります。本人や元の上司などに確認する必要もありません。プロジェクトごとにチーム編成を行う際や、上司やリーダーの変更があった際にも、スキルの共有や引き継ぎのメリットが発揮されます。

必要なスキルの持ち主を発掘できる

新たな事業の展開やプロジェクトの発足などに際し、必要なスキルの持ち主を即座に発掘できる点もスキル管理のメリットです。新事業に興味のある人を集めただけでは成功できません。上司やリーダーの思い込みや私情などによるプロジェクトへの選抜も、失敗を招く恐れを高めます。スキルがある程度数値化・文字化されまとめられていれば、新事業や新プロジェクトにマッチした人材を社内で見つけられるでしょう。新たな採用や育成の手間やコストを省けるメリットも生まれます。社内のさまざまなリソースの有効活用が可能です。

スキルの継承や育成ができる

保有スキルは従業員ごとに異なります。自社やプロジェクトに必要なスキルであるにもかかわらず保有している人の数が少ないのであれば、新たに育成する必要が生じます。スキルの保有者から、若い世代の従業員へと継承していかなければなりません。その際、スキルの保有者やポテンシャルのある従業員の発掘に、管理データが役立ちます。また、定年退職が迫っている従業員で、かつ特定のスキルを保有している人を見つけ出し、スキルの継承に早めに取り掛かることも可能です。

適切な配置転換ができる

従業員の保有するスキルを存分に発揮してもらうための、スキルの種類や程度に見合った配置転換を可能とします。同じ企業内でも、部署や与えられる業務によって、発揮できる能力やその程度は異なるでしょう。適材適所の人材配置を実現するためのツールとして、スキルの管理データが機能します。一時的に人手不足が生じた部署や業務への要員補充などにも活用可能です。

正当な人事評価ができる

人事評価制度にスキルの管理データを用いることで、より正当な評価へとつながります。成果とスキルのバランスをみながらの評価は、より、従業員に納得感を抱かせるでしょう。スキル以外にも着目しやすくなり、成果が出なかった原因をスキル以外のところに見出しやすくなる点もメリットです。

スキル管理の方法

スキル管理は、単に従業員のスキルを書き出せばよいというものでもありません。可能な限り簡略化し、社内の誰がみても従業員の能力が把握しやすいものにする必要があります。ここでは、スキル管理の一般的な方法を解説します。

1.スキルマップを作成する

スキル管理の際に不可欠なものとなるのがスキルマップです。従業員の名前やスキルの項目などを表にまとめたもので、一目で個々の保有する能力や資格が確認できます。まずは、スキルマップの作成を前提として、どのような仕様の表が適切かを決定しておきましょう。その後の作業によって、スキルマップの仕様も柔軟に変更しながら作成していきます。

2.スキルの項目を設定する

それぞれの部署や業務に必要なスキルの項目を設定します。役職によっても必要なスキルは異なるため、細かく設定しておくとよいでしょう。経験職種や資格、習得言語などは比較的文字化できますが、言葉で端的に表現するのが難しいスキルもあります。社内で共有するためにも、スキルの表現を決定し、その内容を定義づけておくことも重要です。閲覧者によって解釈に違いが出ないようにしておきましょう。

3.スキルのレベルを設定する

同じスキルを保有していても、同じレベルであるとは限りません。それぞれのスキルのレベルを設定し、スキルマップにまとめます。項目と同様に、レベルの定義には注意が必要です。資格であれば1種や2種、言語であればTOEIC800〜900点など数値化しやすいでしょう。しかし、製造技術や接客技術などは容易に数値化できません。自社で独自のレベル設定を行い、やはり、誰が確認しても同じような認識となるような工夫が不可欠です。

4.スキルをデータ化しまとめる

従業員ごとにまとめたスキルをデータ化し、社内で共有できる状態とします。必要に応じてグループ化し、より閲覧しやすい状態としておきましょう。項目ごとやレベルごとなど、閲覧者が知りたい情報をまとめてすぐに取り出せるような仕組みも必要です。スキル管理システムの導入により、データ化や閲覧がしやすくなります。自社に合ったシステムを取り入れ、よりスキル管理のメリットが最大化できる状態としておくとよいでしょう。

5.スキルの活用や更新を行う

スキルデータは、まとめて終わりではありません。マネジメントや配置転換、人事評価などに活用して、はじめてスキル管理の意味が生まれます。また、従業員が新たなスキルを身につけた際や、保有しているスキルのレベルが上がった場合には、随時更新作業を行いましょう。リアルタイムの更新が、よりスキル管理を意味あるものとします。形骸化しないよう、積極的かつ全社的な活用も重要です。

スキル管理は活用してこそメリットを発揮する

企業が自社で働く従業員のスキルをデータにより一元化してまとめる作業がスキル管理です。従業員のスキルが一目で確認でき、人事評価や配置転換などへ活用できます。数値化が困難なデータに関しては、社内で基準や認識を統一したうえでの管理が不可欠です。スキル管理の目的の一つはデータ化ではなく、適切な活用にあります。効率化や生産性の向上などのメリットを享受できるよう、まとめたスキルは積極的に活用しましょう。

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