近年よく耳にするようになった「リスキリング」。ワード自体は聞いたことがあるものの、具体的な意味はよく知らない人もいるかもしれません。リスキリングは、企業が社会の変化とともに成長するための重要なアクションです。本記事では、リスキリングの概要とともに、リスキリングがどのような目的で行われるものなのかを詳しく解説します。また、リスキリングを導入する際、成功させるために意識したいポイントなども紹介します。

リスキリングとは

リスキリングとは、「学び直し」を意味する言葉です。企業が従業員などに対し、これから成長が見込まれる分野のスキルを育成することを言います。リスキリングは2018年に開催された世界経済フォーラムで、その必要性が訴えられたことなどをきっかけに世界で急激に注目を集め始めました。経済産業省もリスキリングに関する施策を実施し推進しており、日本国内でも重要視されている状況です。

なお、リスキリングと似た意味の言葉にOJTがあります。企業で行う人材育成という点は同じです。ただし、OJTは実際の業務を行う中で、その業務に必要なスキルを身に付けていくことであるのに対し、リスキリングは現在の業務とは異なる分野を学ぶことであるため別物と言えます。また、リカレント教育も類似するものですが、こちらは個人が主体となって学び直しを行うので、企業主導で行われるリスキリングと主体が誰であるかが大きく異なります。

リスキリングの目的

それでは、リスキリングを行う主な目的を見ていきましょう。リスキリングの目的は1つではなく、成功すればさまざまなプラスの影響が期待できます。

社会の変化に耐え得る強い企業づくり

リスキリングを行う大きな目的は、社会の変化に耐え得るような強い企業づくりのためです。現在、社会の大きな変化などにより、企業に求められるものや企業のあり方もめまぐるしく変わっています。例えば近年注目されているDXやAIなどもそうです。このような変化を耐え、新しい時代の流れに乗りながら成長を続けられる強い企業になるためには、新しいスキルを身に付けた人材の確保が必要です。リスキリングは、現在雇用している従業員をこうした人材に育成することを目的として行われています。

人材不足への対策

現在、慢性的な人材不足に悩まされている企業が少なくありません。今後社会のデジタル化などがさらに進めば、専門的なスキルを有した人材の確保なども必要性が増し、将来的にさらに人手不足が深刻となる恐れもあるでしょう。しかし、今後のそうした流れを見越し、必要なスキルを身に付けた人材をリスキリングで育成しておけば、将来新たに人材を確保する必要がなくなります。したがって、人材不足への対策としても、リスキリングは有効だと考えられます。

業務の効率化

リスキリングによって従業員のスキルアップが実現できれば、業務の効率化も見込めます。既存の業務の効率化が進むことで、新たに他の事業に注力できる可能性も広がるでしょう。結果、企業の生産性がアップするなど、企業の業績へのプラスの影響も期待できます。

従業員のスキルアップ

リスキリングは企業にとってのメリットが大きいように見えるかもしれませんが、学ぶ側の従業員にとっての魅力もあります。それは、これからの仕事で役立つスキルを身に付けられることです。自分の持っているスキルは多ければ多いほど、業務の幅が広がります。例えばリスキリングの過程で資格を取得した場合、それは今後自分のスキルを証明する武器にもできるでしょう。その企業で働き続けるにしろ、将来キャリアチェンジをするにしろ、リスキリングでできることを増やしておけば自分にプラスに働きます。

従業員のエンゲージメント向上

リスキリングで従業員が習得したスキルは、企業にとって良い影響をもたらすだけでなく、従業員自身の力としても活用できます。このような自己研鑚は、従業員の満足度向上にもつながりやすいでしょう。従業員の中には、もっと自分の能力を磨きたいものの、スキルアップの機会を見出せず行動できない人もいるかもしれません。スキルアップを望む従業員にとってリスキリングは絶好のタイミングです。リスキリングで従業員の満足度が高まれば、エンゲージメントも向上し、離職率の低下など企業への従業員の定着も期待できます。また、従業員のエンゲージメントが高い企業となれば、より優秀な人材が集まってくる可能性もあるでしょう。

リスキリング導入のポイント

リスキリングを自社に導入し、成功までつなげるためには、次に挙げるようなポイントを押さえながら進めることが大切です。リスキリングは導入すればそれで自然に上手くいくというわけではありません。自社にとって有効な制度になるよう、さまざまな検討を重ね準備する必要があります。

何を学ぶか明確にする

リスキリングの導入において、明らかにしておきたいのは従業員が何を学ぶかです。「会社に役立ちそうなもの」など、ぼんやりとしたビジョンしかなく学ぶものが曖昧な状態では、リスキリングの効果は期待できません。自社に今後どのような人材が必要か、そして現在自社にいる従業員はどのようなスキルを有しているのか、現状を細かく分析し、課題をはっきりさせた上で、課題解決のために必要な学びを考えましょう。

制度を整える

リスキリングを上手く導入するためには、制度づくりも重要です。学ぶことを決めたら、効果的な教育カリキュラムの検討も必要になります。また、従業員がスムーズにリスキリングを進められるような学習環境の整備も行わなければいけません。また、企業がリスキリングをしっかりサポートしていくための体制も不可欠です。その他、リスキリングが企業にも従業員にも有益で必要なことなのだと、企業側から積極的に発信することも大切。リスキリングは現状まだ広く認知されているとは言い難く、従業員の中には、なぜ業務の合間を縫って新たなスキルを習得しなければならないのか、疑問を感じる人がいないとも限りません。リスキリングの必要性を社内に周知し、従業員の理解を得ることも導入成功のためのポイントになります。

従業員のモチベーション維持を意識する

リスキリングを導入すれば、従業員に学び直しのアクションを起こしてもらわなければいけません。リスキリングが成功するか否かは、従業員の学びの習熟次第と言えます。働きながら新たなスキルを習得することは、従業員にとって簡単ではないでしょう。リスキリングの途中で従業員が大きな負担を感じストレスを溜めたり、モチベーションを下げたりすることがないよう、企業がしっかりフォローする必要があります。例えば、リスキリングの学習時間は勤務時間内に設定するなども有効です。勤務時間と学習時間を分けてしまうと、従業員はリスキリングのために自分のプライベートな時間を消費しなくてはいけなくなります。自分の自由な時間が減ると、モチベーションが大きくダウンしかねません。

また、リスキリングで学んだスキルを発揮できる場をつくることも重要です。せっかく身に付けた知識やスキルも、発揮する機会がなければ宝の持ち腐れ。リスキリングには意味がないと従業員が感じてしまえば、それもモチベーションが下がる原因になります。リスキリングを進める仕組みだけでなく、学んだことを実際の業務で活かせる仕組みも整えることが大切です。

リスキリングは変化する社会で企業が生き残るための重要なアクション

リスキリングは社会の変化の中で企業が強く生き残るため、非常に重要なアクションだと言えます。自社に導入するだけでなく、実際リスキリングの対象となる従業員にとって学習のしやすい環境づくりなども意識しながら、社内の整備を進めることが成功のポイントです。この記事で解説した内容を参考にしながら、ぜひ自社のリスキリング導入について具体的に考えてみてください。

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