最近、「働き方改革」の浸透により、大企業を中心にワークスタイルについての取り組みが増えています。当初は労働時間削減から始まった働き方改革も、現在では職場や働き方に関するあらゆる変革が「ワークスタイル変革」として推進されているようです。ワークスタイル変革とはどのような取り組みなのでしょうか。今回はワークスタイル変革についてまとめてみました。

ワークスタイル変革(働き方改革)とは?

今年4月、中小企業に働き方改革関連法が施行されました。昨年4月に一足早く施行対象となった大企業に続き、中小企業にもついに働き方改革の流れが押し寄せることになります。これから日本におけるワークスタイル変革はますます加速していくことになりそうです。

ところで、そもそもワークスタイルの変革とは何なのでしょうか。

日本の働き方改革は、2007年に政財界と労働界が同意して「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)憲章」を策定したことに端を発します。働き方改革は当初、ワークライフバランスの言葉に代表されるように長時間労働の削減から始まりました。

以前の日本では長時間労働することが慣習になっていました。しかし、2000年代ごろから長時間労働や女性の社会進出により、仕事と介護や育児などの生活の両立が難しい現実に直面し始めました。
さらには非正規雇用者や過労自殺者も増加傾向にあったことから、海外では日本で働くと生きていけないと言われるほど日本の労働環境は先進国の中でも特によくない状態でした。

労働者が安心して働くことができなければ、労働生産性は高まりません。そこで、日本が今後も経済大国であり続けるために、生産性の低い労働慣習を打破することを目的として日本のワークスタイル変革が始まりました。

いまではワークスタイル変革は、単に労働時間を削減するだけではなく「働く」価値観そのものを根底から変えようとしています。

これまでのワークスタイル

最近ではあまり「ワークライフバランス」という言葉を聞く機会が少なくなってきました。働き方改革の取り組みが浸透し、少しずつ過去のワークスタイルが忘れ去られようとしています。
ところで、これまでのワークスタイルとはどのようなものだったのか、少し振り返ってみましょう。

これまでのワークスタイルは「長時間労働」「男性中心」「会社への拘束」が特徴でした。

長時間労働

バブル期の流行語に「24時間働けますか」という言葉があります。実際に昭和の時代は深夜まで働くことが美徳とされてきました。人事評価でも成果より残業時間が長い社員の方が評価されることもよくありました。

男性中心

2000年代前半までは男性が労働力の中心で、女性は家庭を守るものとされてきました。
今では信じられませんが、かつての共働き家庭では、母親が働いて家にいないことが珍しいものとされた時代もあったそうです。

会社への拘束

満員電車に乗って毎日、会社に通い、朝から晩まで会社にいることがこれまでのワークスタイルでした。出社時間には必ず会社に出社し、1日中同じデスクで過ごす毎日。家で過ごす時間はほとんどありませんでした。
昭和の時代には当たり前だったこのような働き方がいま、変化しつつあります。こうした従来型のワークスタイルの何が問題だったのでしょうか。

なぜワークスタイルを変革するべきなのか?

なぜいまになってワークスタイルの変革が推進されるようになってきたのでしょうか?その背景を探ってみましょう。
現在日本で推し進められているワークスタイル変革の背景には、低い生産性と時代の変化があります。

低い生産性

日本は先進国の中で特に生産性が低い国です。日本生産性本部が発表する「労働生産性の国際比較 2019」では、日本の時間当たり労働生産性はOPEC加盟36カ国中21位、主要先進7カ国でみるとデータが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続いています。

長時間労働

日本では長時間労働が横行し、成果労働ではなく時間労働が定着していました。時給単価を基本にした時間労働では、時間をかければ給料があがるため、残業代を稼ぐために長時間労働する人が多くいます。しかしそれでは生産性が下がるばかりです。

生産性人口の減少

日本では少子高齢化とともに、生産性人口が減少しています。働く人を増やさなければ経済を維持できません。そこで日本では男性に加えて、これまで社会進出が難しかった女性も働くことで労働人口を増やそうとしています。そのため女性も働ける社会づくりを行ってきました。

価値観の多様化

IT技術の進化によりボーダレスな時代となり、どこでも誰とでも働けるようになりました。さらにはゆとり教育などの教育改革により、世代ごとに世の中に対する考え方も変化しつつあります。価値観の多様化は働き方の多様化にも影響を与えています。

このように、これまでのワークスタイルでは日本の経済を維持することができません。また、価値観の多様化により働き方も変化してきました。それにより日本のワークスタイルは変化せざるを得ない状況にあります。

ワークスタイル変革を成功させる施策例

ワークスタイル変革を成功させる施策例
では、実際にワークスタイル変革を成功させるにはどうすればよいのでしょうか。具体的な施策例をご紹介します。
多くの場合、ワークスタイル変革の施策は生産性向上を目的に、業務を効率化することやコミュニケーションのスタイルを変えることから取り組まれています。

定型業務の整理

日々の定型業務(ルーティンワーク)を整理することで、業務を効率化することができます。毎年行われている業務の中には不要になっているものもあります。こうした無駄な業務を整理することで業務効率化を図れます。またシステム導入などによって、定型業務を自動化することも有効です。

コミュニケーション改革

社内のコミュニケーションを改善することで業務効率や組織生産性を高めることができます。メールをチャットにする、社内向け資料を廃止するなど形式的なコミュニケーションを排除することで簡単に業務効率化を図れます。

こうした施策を実行する前に、何よりもワークスタイル変革の目的が重要です。生産性を高めたいのか、エンゲージメントを向上したいのか、あるいは昨今のテレワーク推進のようにリスク対策としてワークスタイル変革を勧めたいのか、それぞれの目的に応じた施策を実施しましょう。

ワークスタイル変革成功事例3選

企業では実際にどのようなワークスタイル変革が行われているのでしょうか。ワークスタイル変革成功事例を3つご紹介します。

リコー

リコーは2018年からリモートワークに積極的に取り組んできました。まだテレワークを実施する企業が少ない中、全社でのリモートワークを導入しました。リモートワークでは在宅勤務だけでなく、社内外のサテライトオフィスでの勤務も可としました。2019年11月には厚労省と総務省からテレワーク先進企業として表彰を受けています。

早期からリモートワークに取り組んだ結果、2020年の新型コロナウイルスによる緊急事態宣言時でも事業を止めることなく、ほとんど仕事に影響がなかったそうです。

パソナ

パソナは新型コロナウイルスの感染拡大伴い2020年に、本社を東京の丸の内から兵庫県の淡路島に段階的に移転することを発表しました。1,400万人が住む東京では、災害が起こった際に身動きが取れなくなる可能性が高いためBCP(事業継続計画)の観点から、本社を移転することにしました。

今後はテレワークも活用しながら、淡路島を拠点に引き続き事業を展開するとのことです。もともとパソナは2008年から淡路島で地方創生の事業を手掛けてきたため、淡路島にいくつかの拠点も持っていました。そのため、本社移転による人員の異動もスムーズにできたそうです。

リクルート

リクルートは、2021年4月から「週休2.8日」を導入しました。「週休2.8日」は、有休を除いた年間休日を130日から145日に増やし、同時に1日の労働時間を30分増やすことで年間労働時間の減少を抑えて、給料も据え置きとする制度です。

具体的にはこれまで7.5時間の所定労働時間だったところを8時間に変更したうえで、年間で自由に取得できる休日を15日増やしました。リクルートグループの全従業員約1.6万人が対象で、これだけ大規模なワークスタイルの変革は他に例を見ない事例と言えるでしょう。

ワークスタイル変革の具体的な取り組み方法

では実際にワークスタイル変革に取り組む際に、どんなことに気を付けたらよいのでしょうか。注意点をまとめてみました。

外形的なものだけでなく、文化を変える

残業削減や育休の推進はある意味簡単です。しかし、残業削減や育休推進に取り組んでも、元々の働き方への意識が変わらなければ生産性はあがりません。また、長時間労働が評価される風土のままでは本末転倒です。ワークスタイル変革は文化を変えることだと認識しましょう。

全員で取り組む

働き方改革は単なるブームではありません。国をあげて取り組む政策です。ワークスタイル変革では、人事部が主導になるのではなく経営者や現場の社員も巻き込みながら全員が当事者という意識で取り組みましょう。

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