竜巻

この数年を振り返ってみると、AI、ロボティクス技術の進化や米中貿易摩擦、そして新型コロナウィルスの流行など様々な変化がありました。こうした変化は、私たちの生活に大きな影響を及ぼしています。そこで今回はこの激変の時代を乗り越えるために、VUCAについて解説します。

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VUCAとは?

VUCA(ブーカ)とは変化の激しい現代を4つ言葉の頭文字で表した言葉です。企業の経営を取り巻く環境や、個人のキャリアに影響する状況を端的に表しています。それぞれ4つの言葉はどのような意味なのでしょうか。

Volatility(変動性)

VUCAの最初の文字であるVは、Volatilityのことです。英語で「落ち着きのない様子」を意味します。Volatilityはもともと、金融業界でよく使われてきた言葉でした。市場が変動する可能性が高まることや株価が乱高下する様子に対して、日本語でも「ボラティリティが高まる」と表現します。こうした金融市場の変動のように、私たちは変化の激しい時代に生きています。新型コロナウィルスの影響といった世界的変化から、個人のキャリアが転職・副業中心に変化していく働き方の変化など、大小を問わず予測できない変化が起こることを示したのがVolatilityです。

Uncertainly(不確実性)

VUCAのUは、Uncertainlyです。Uncertainlyは英語で「不確実性」を意味する言葉です。現代は将来を予測することが困難な時代です。例えば、右肩上がりに成長してきた企業でもAIやロボティクスなどの高度な情報技術の発展により、突如として市場を失い倒産の危機に直面する場合があります。

例えば、古本売買で成長してきたブックオフも、メルカリなどITプラットフォーマーの台頭により店舗数の縮小や成長の鈍化に直面しています。また新型コロナウィルスの影響による経済の停滞で、世界中で多くの人が仕事を失いました。つまりこうした不確実性の高い状況は、企業だけではなく、個人レベルでも起こりえるのです。Uncertainlyは、先行きの見えない現代を的確に表した言葉です。

Complexity(複雑性)

続いてVUCAのCはComplexityです。Complexityは、英語で複雑に絡み合っている様子を表します。現代は原因の特定が困難な時代になりつつあります。例えば売上高減少の原因を探る場合、かつては市場調査により原因をある程度特定できました。

しかし、現代は消費者の趣味嗜好が多様化しているだけではなく、VolatilityやUncertainlyに表されるように予測できない変化が常に起きています。また企業の外部環境だけではなく、転職による雇用の流動化、社員のエンゲージメント低下など従業員を取り巻く環境変化も業績に大きな影響を与えています。このように、私たちが目にする変化は、様々な要因が絡み合って起きているのです。Complexityはこうした要因が複雑に絡み合う現代の姿を表しています。

Ambiguity(曖昧性)

VUCAを構成する最後の言葉はAmbiguityです。Ambiguityは英語で「曖昧さ」を意味します。かつてモノが不足していた高度成長期では、人々は欲しいものがはっきりとわかっていました。テレビ、冷蔵庫、洗濯機は「3種の神器」とよばれ、人々は生活を充実するために同じものを求めました。しかし生活水準が高まった現代では、人々は本当に欲しいものを自分で理解することが困難になっています。

例えば食事をするにしても食べログなどのサイトで口コミを確認して評価の高い店へでかけます。人々は飲食店で単に空腹を満たすだけではなく、快適さや居心地の良さを求めるようになりました。飲食店がどんなに美味しい食事を提供したとしても、お店の快適さがなければ人々のニーズを満たすことができません。このように現代を生きる私たちのニーズは曖昧です。かつての飲食店のように「大盛無料サービス」が誰にでもフィットする時代ではなくなりつつあります。Ambiguityは、VUCAの中では少しイメージしづらい言葉ですが、私たちの生活をよく考えてみると、私たちは曖昧な時代に生きていることがわかるでしょう。

VUCAは当初1990年代のアメリカの軍事領域で主に使われてきた言葉です。1990年代初頭にソ連が崩壊したことにより、アメリカは冷戦で対立していた敵を突如として失いました。その結果、アメリカは新たな国としての在り方を模索することになったのです。その後、こうした突然の変化が頻繫する現代を示す言葉としてVUCAは「VUCAの時代」「VUCAの世界」といった用例でビジネスシーンに定着していきました。

VUCA時代とはどんな時代なのか?

ここまで説明を読まれたあなたは、VUCAという言葉を少し難しい概念だと感じられたかもしれません。そこでもう少し具体的に私たち個人にとってVUCAがどんな時代なのかを考えてみましょう。

ビジネスパーソンにとってVUCAはどんな時代?

私たちビジネスパーソンにとって、VUCAは無視できない言葉です。すでに多くの方が現代の環境変化の激化を、身をもって体験されているのではないでしょうか。例えば新型コロナウィルスの影響は、ビジネスパーソンに急激で大きな影響をもたらしました。

あるB to B企業A社では、対面での商談による営業力を強みとしていました。対面営業での信頼関係の構築や、食事をしながらの接待が毎月の売上成長の源泉だったそうです。しかし、新型コロナウィルスの影響により突如として対面での商談が不可能になりました。営業活動ができなくなったA社では、それまでの強みに固執するあまり「新型コロナウィルスの影響はすぐ終わる」と考え商談のオンライン化に取り組みませんでした。その結果、新型コロナウィルスの影響が長期化する間に顧客のほとんどを失う結果になったのです。

顧客はオンライン商談ができる競合他社へ乗り換え、「オンライン商談ができないA社は古い」というレッテルを貼られるほどでした。A社の優秀な社員も、オンライン商談ができる競合他社へ転職。A社は顧客だけではなく、従業員も失いました。このようなVUCAの時代では、私たちビジネスパーソンは仕事内容の変更、収入の激減、転職といったリスクに常に直面しています。

VUCA時代の人事の在り方は?

1年後の未来さえも予測困難なVUCAの時代では、人事はどうあるべきなのでしょうか。企業の視点と従業員の視点、両方から考えてみましょう。

企業の視点

VUCAの時代、企業は常に事業継続が困難な状況に直面する可能性を考えておかなければなりません。例えば新型コロナウィルスの影響でテレワークが急速に普及した際には、以前からテレワークに取り組んできた企業とそうではない企業で対応が大きく分かれました。以前から世の中の働き方の変化に備えてテレワークに取り組んできた企業では、新型コロナウィルスによる外出自粛の中でも仕事に全く影響なく、以前と変わりない仕事の進め方を実現できました。

一方で緊急事態宣言が発令されてからテレワークに取り組んだ企業では、仕事の生産性が低下する状況に陥った企業も少なくありませんでした。このように常にリスクに備え、どのような状況であっても事業を継続できる仕組みを考えなければなりません。人事においても常に起こりうる数パターンのシナリオを考え、状況変化に応じて素早く人財を確保できる仕組みや、変化に合わせた働き方ができるように準備しておくべきでしょう。

従業員の視点

VUCA時代は変化が激しい一方で、従業員にとっては選択肢が広がる時代でもあります。1年前までは社内で不要とされてきたスキルが、今になって必要になり、それまで窓際にいた社員が注目されるようなことが実際に起きています。

また、転職市場や副業市場の活性化により、誰もが就きたい仕事をいつでも選べるようになってきています。こうした雇用環境の中では、人事は常に従業員の保有能力を把握しておくとともに、働く人から選ばれ続ける会社にならなければなりません。そのためには、例えばタレントマネジメントシステムを導入して社員のスキルを見える化しておくとともに、従業員アンケートを定期的に実施して「良い会社」になるにはどうするべきなのかを常に考え対策を検討しておくと良いでしょう

VUCA時代の激変の波を乗り越えるために必要な知識・スキル

分岐点
VUCA時代は求められるスキルが頻繫に変化する時代です。こうしたVUCAの時代を乗り越えていくためには、どのような基本的知識やスキルが必要になるのでしょうか。

ビジョン構築力

求められるスキルが変化する現代では、「どうしたいのか」「なにをやりたいのか」ではなく「どうありたいか」を考えることがとても重要です。常に自分や会社が「どうあるべきなのか」を考えることで、変化する環境でも確固たる判断軸を持てます。

将来のビジョンと判断軸さえあれば、環境変化によってそれまでの手段が変わったとしても新たな手段を選ぶことができます。例えば先ほど紹介したA社の事例でも、もしA社が「対面営業」という手法にこだわるのではなく「顧客に選ばれ続ける企業」という「ありたい姿」にこだわっていれば、すぐにオンライン商談への切り替えができたかもしれません。このように、常にビジョンを描き実現する行動力がVUCA時代には求められるスキルです。

レジリエンス

レジリエンスは、どのような状況でも柔軟に対応できる能力のことです。高ストレスの状況でも折れることなく、新たな活路を見出して前向きかつ生産性高く物事に取り組む姿を現しています。変化の激しい現代では、緊張感が高まる高ストレスの状況が常に存在しています。
こうした緊張感のある状況でさえも楽しむことができ、新たな状況に対しても創造的に取り組む姿勢は現代人に必須のスキルです。

共感力

いつ大きな変化が起こるのか分からない現代では、「誰を知っているか」「どのようにコミュニケーションを取っているか」がとても重要です。急に事業内容の変更を余儀なくされたとしても、新たな事業を始めるために必要な知識・スキルを持っている人材を見つけることができれば、大難を小難に変えることができます。

このような対応を実現するためには、常に人と人のつながりを大切にする必要があります。人と人とのつながりを維持するには、相手に共感する共感力が必要です。相手の状況や価値観に寄り添い、時には相手が必要とする支援を提供する取り組みが欠かせません。共感力は現代の人間関係づくりにとても重要な要素なのです。

VUCA時代のビジネスパーソンの姿とは?

洞窟
一般的に、VUCA時代には新たなマネジメント手法が必要であると言われています。私たちビジネスパーソンには、これからの時代にどのようなリーダーシップが期待されるのでしょうか。

オーセンティックリーダーシップ

近年、注目されているリーダーシップスタイルがオーセンティックリーダーシップです。オーセンティックリーダーシップは、医療機器大手メドトロニック社の元会長でハーバード・ビジネススクールの教授であるビル・ジョージによって提唱され、大きく4つの特徴があります。

卓越した自己認識をもち、常に誠実であること

オーセンティックは、英語で「確固たる」という意味があります。オーセンティックなリーダーは、自分自身の価値観や考え方を認識して、強みを発揮できる場面とそうではない場面を理解しています。変化の激しい現代では、自分自身の強みが発揮できない場面も多く発生します。そのため、素直に自分自身の弱みを受け入れ部下に助けてもらう姿勢が求められます。そのためにはリーダー自身が日ごろから自分との対話を繰り返し、自己認識を高めていく必要があります。

使命によって動かされ、結果に焦点を当てる

オーセンティックリーダーは、「何をするか」ではなく「自分が何を成し遂げたいか」を考えます。そして組織のゴールと自分自身の使命を重ね合わせて、どうすれば最大の結果を得られるのかを常に追求するのです。かつてのリーダーは、権力欲や金銭欲やエゴをモチベーションとしてリーダーシップを発揮してきました。しかし共感力が重視される現代では、リーダーが使命感に動かされる姿そのものに部下はついていきます。そのためリーダーは自分の使命は何かを理解し、使命の達成のために努力を惜しまない姿勢が求められます。

頭ではなくハートでリードする

かつてのリーダーは、感情を見せない姿勢が美徳とされてきました。しかし共感力が重視される現代では、素直に感情を見せながら人とつながり合うことが求められます。論理的に説得するのではなく、時には部下に感情的に訴えることも重要なのです。頭ではなく、リーダーのハートでリードするのがオーセンティックリーダーシップです。

長期的な結果を重視する

これまでのリーダーは、売上高や営業利益などの短期的業績に注目してきました。しかし、オーセンティックリーダーシップでは株主などのステークホルダーに対して長期的利益をもたらすことを重視します。変化の激しい現代では、事業継続のために安定株主と長期的に働いてくれる従業員が欠かせません。オーセンティックリーダーは、企業に対しても「何をするべきか」ではなく「どうあるべきか」を重視するのです。

このように、環境変化によりいつ何が起こるかわからない現代では、多様な価値観を認め、手法よりもリーダーのぶれない価値観やビジョンに基づいたリーダーシップが求められます。

オープンマインド

もし、あなたがリーダーでなくとも、VUCA時代ではオープンマインドでいることが重要です。オープンマインドとは、ここでは常にあらゆる可能性を受け入れる姿勢を意味します。またオーセンティックリーダーシップ同様に、自分に素直でいて、素直に感情を表現することも重要です。もともと英語の「open-minded」は偏見がない心を意味しています。変化の激しい現代では、昨日まで不要だと思っていたことが今日は必要になることも十分にあり得ます。あらゆる出来事に心を開くとともに、どんな人や物事にも偏見を持たず常にあらゆる可能性があることを考えておきましょう。

弱い紐帯を持つ

弱い紐帯(ちゅうたい)の強さとは、人間関係の「ゆるいつながり」を意味します。1973年にスタンフォード大学のマーク・グラノヴェター教授が提唱しました。ゆるいつながりとは、職場の同僚や家族など強い絆でつながった関係に対して、ちょっとした知り合いや顔見知り程度の関係を意味します。

社会的に強いつながり(=強い紐帯)を持った家族や友人の関係は、主に同じ価値観で結ばれています。そのためつながりの中の情報はすでに知っているものである可能性も高いのです。しかしVUCA時代ではあらゆる可能性に目を向け、新しい、重要な情報を得るためにゆるいつながりの、価値観の異なる人とつながっておくことが強みとなります。

価値観が異なる相手であってもSNSなどを通じてつながることで自分では思いつかない情報やアイディアを手にできるのです。こうした弱い紐帯を持っておくことは、VUCA時代を生き延びる上で、ビジネスパーソンにとって重要なスキルの一つと言えます。

VUCA時代の思考法:OODAループとは?

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最後にVUCA時代を生き抜くために必要な思考法として、「OODAループ」(ウーダ・ループ)をご紹介します。

OODAループは、アメリカ空軍のジョン・ボイド大佐によって提唱されました。もともとは航空戦術の用語として、主に指揮官の意思決定に使われてきた言葉です。しかし次第に作戦や戦略立案にも使われるようになり、現在はビジネスシーンでも使用されるようになっています。OODAは4つの言葉の頭文字を合わせた造語です。

Observe:観察する

最初のOは、Observeです。Observeは英語で「観察する」という意味です。OODAループはまず、意思決定者が直面する状況をありのままに観察してデータを集めることから始まります。

Orient:状況を判断する

次の段階はOrientです。Orientは、英語で順応させる、適応するという意味です。状況を観察してデータを集めた後は、情勢を判断して意味のある情報へと加工していきます。データを意味ある情報へ変換するためには、単に分析するだけではなく、過去の経験や自分と異なった視点などの新たな情報も必要です。

Decide:意思決定する

状況を判断したら、次に意思決定します。意思決定の際には、状況に対してどのように動くべきか、具体的な対策や施策を検討します。そして状況に最も適切な対応策を選びぬくのです。

Act:行動する

最後はAct、行動するです。意思決定の内容に基づいて、実際の行動を起こします。行動したことにより結果が生まれ、そして新たな状況が発生します。そのため、新たな状況に対してまたOODAループが始まるのです。

VUCA時代は計画が困難な時代です。従来のPDCAサイクルは、計画に対して検証を行い、新たに計画を立案していました。しかし先行きが見えない現代では、まず起こった状況に対してどのようにアクションを起こすのかを常に判断することが求められます。そのため、まずは状況からデータを集めて解析する「OODAループ」が適切な思考法であると言えます。

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