働き方改革の重点項目である長時間労働の是正。過労死など深刻な事故に至る過去の経緯もあり、日本が真剣に取り組むべき課題であるといえるでしょう。けれども業務量はそのままに、残業時間を減らすということは簡単ではありません。企業が長時間労働対策にとれる施策や具体例をご紹介します。

長時間労働対策の具体例

長時間労働を減らすための対策はさまざまに考えられるでしょう。まずは企業において実践しやすいと思われる6つの案を紹介します。

  • 全社的な目標として残業を減らすことを経営陣や人事部から従業員に周知しましょう。社員に残業を奨励しないことを意識付けすることが目的です。
  • 労働時間の目標値を設定しましょう。個人や部門の実労働時間を目標対比で把握することにより、達成度合いは明確になります。部門ごとに結果を毎月開示すると、目標達成へのモチベーションとなるでしょう。
  • 経営や管理の部門が長時間労働によって起こりうる問題について把握をしましょう。一般的に上長を残して事情なく部下が退社することは難しい傾向にあります。各部門の管理職は問題点を意識して、率先して定時退社を心がけましょう。
  • 各個人が一日の業務計画と実際の業務における時間の使い方を記録してみましょう。計画時間を超えて遂行した業務について、具体的にどうして時間がかかったのかを把握することが改善への一歩です。
  • 業務一覧表を作成し、それぞれの所要時間を整理しましょう。その中から効率化をして時間を削減できそうな項目に取り組みます。
  • 各個人の業務レベル向上を図るために、業務能力のレベルを指標化してみましょう。効率化に必要なレベルを設定し、達成度合いや改善点について上司は部下と面談を行ってサポートします。

このように長時間労働を是正するために企業ができる努力はたくさん考えられます。取り入れやすい項目から始めてみましょう。次の項では改革の一手を担う厚生労働省が推奨する事例について紹介します。

厚生労働省から見た長時間労働対策の好事例

厚生労働省から見た長時間労働対策事例

厚生労働省は長時間労働削減のための対策を行う企業の取り組みから好事例を紹介しています。その中から3つの事例について紹介します。

■ノー残業デーの設定
例1)社員おのおのが週に1度ノー残業デーを設定し、スケジュールを共有することで業務に支障が出ないように調整しつつ、積極的に残業をしない雰囲気作りをした。
例2) 忙しい日をあえてノー残業デーに設定し、業務の効率化を社員自らに考えさせた。その結果、残業をしないことを肯定的にとらえ、業務の効率化も進んだ。

■業務効率化を顧客一体で実施
自社と顧客の両方で使用する書類について統一を持ち掛け、行き違いや無駄な作業を減らす取り組みをしたその結果、顧客には無駄を省いてコスト削減につながると提案し、実現することに成功した。

■残業事由の申告制
残業をした場合はその成果とともに申請し、労働時間が適切であるかどうか管理職が把握をする。さらに労働時間が80時間を超える場合には管理職は管理部門へ報告する。その結果、管理職や管理部門が稼働時間や内容について把握した上で、指導ができるようになった。

各企業の実際の取り組みを知ることで、残業時間の削減に向けた具体的な取り組みについてイメージしやすくなったのではないでしょうか。厚生労働省は他にもたくさんの事例を紹介しているので、目を通すと具体的な施策設定の指針になるでしょう。

(引用:厚生労働省が公開している「時間外労働削減の好事例集」)

次は海外における長時間労働の是正対策について紹介します。

海外における長時間労働対策

多くの諸外国では、日本と比較をすると、長時間労働は積極的に回避されています。その理由のひとつには残業をするということは、仕事の遂行能力が低いとみられる傾向があるためです。他にも海外で行われている対策についてご紹介します。

海外(おもにヨーロッパ諸国)では、過去の長時間労働による事故により、労働者を保護する施策が講じられてきています。例えば、フランスでは残業時間を定める項目において、使用者は労働者を10時間以上働かせてはいけないと法律で定めています。

(引用:諸外国の労働時間制度の概要)

さらに、朝礼や会議などは必要最低限にとどめられており、参加する人員も当事者のみ、大人数で集まることはあまりありません。

また日本語の過労死という言葉がKaroshiとして国際的に知られるようになったことで、長時間労働が行われていた国や企業においても対策が進んでいるといわれています。日本では定時に退社することが、好ましくない、と捉えられてきた習慣があります。しかし世界的にも問題視される長時間労働は習慣を変えて是正していかなければならないでしょう。

まずは厚生労働省の好事例集を見てみよう

「長時間労働を減らす、なくしていく」ということは、日本における働き方改革のひとつの柱であるだけではなく、世界的な潮流でもあります。しかしこれまで通りの成果を出しつつ、労働時間を減らせるのかという不安もあるでしょうし、何から手をつけたら良いのか分からない場合もあるでしょう。そんな場合には、この記事で紹介をした取り組み案や厚生労働省が紹介する企業の実例を参考にして、自社に適した項目を実施してみるとよいでしょう。

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