働き方が変わると、仕事を進めていく上で、人材を管理する上で、またあるいは人事を運用していく上で、必要とされるインフラも同じくして変わっていきます。これまでは、とある決まった場所に、とある決まった時間に出社し、仕事をすることが当たり前の時代でした。

しかし働き方が変化していくと、とある決まった場所に、とある決まった時間に出社していることが“当たり前でない”世界になっていきます。

働き方改革によって、会社や職場、仕事、労働、雇用などの在り方に変化が求められていく一方で、「どこかで、何かの仕事をし、その仕事の対価を得る」、この基本的な構造は変わりません。そのような変化の中でも、これまで通り欠かせない、また新たに必要性が高まるであろう、“働く”を支えるインフラを、「働き方改革の4種の神器」として、経営や人事の目線から考察しました。

コミュニケーションツール

働き方改革が進むにつれて欠かせない、また必要性が高まるインフラのひとつめは「コミュニケーションツール」です。今でも一般的になってきているビジュアルコミュニケーションツール、いわゆる、テレビ会議システムやFaceTime/Skypeに代表されるテレビ電話、またVR(virtual reality/バーチャルリアリティ)などを使ったコミュニケーションが、更に一般的になっていくでしょう。

一昔前、電話でのコミュケーションが当たり前、FAXでの連絡が当たり前だった頃に、Eメールが出てきて一般化したように、ビジュアルコミュニケーションがビジネスにおけるコミュニケーションの当たり前になっていくわけです。

既に大手企業や拠点がある企業では、それ相応に会議室毎にテレビ会議システムが設置され、またFaceTimeやSkypeに代表されるように、ひとり一台のビジュアルコミュニケーションが一般的に行われるようになっています。

今はまだ、社内でのコミュニケーションにおいて一般化されてきているレベルですが、社外の方とのミーティングや会議はもちろんのこと、営業活動時のコミュニケーションにおいても、ビジュアルコミュニケーションツールの利用は少しずつ一般化してきています。

勤務管理の仕組み

ふたつめは「勤務管理の仕組み」です。この勤務管理の仕組みも欠かせないインフラになるでしょう。ここで“勤務管理”と表現しているのは、時間が労働の程度を測る計算単位とした勤怠管理だけでなく、仕事の処理量、また完成度・到達度などといった、時間以外の全く新しい労働を測る計算単位が現れるかもしれないからです。

今の労働の多くは時間を計算根拠として管理・把握されているため、現段階においては、勤怠管理の仕組みが欠かせないインフラです。

しかし、労働を測る新しい単位や計算根拠が出来た時には、“勤怠管理”はマイノリティになり、変化した働き方に沿って、新しい“勤務管理”が確立されていくでしょう。

これまでに、自動車産業の発展に伴って道路交通法が発展したように、また人材業の発展に伴って労働者派遣法や職業紹介法が発展したように、労働や雇用の管理に関する法律も、働き方改革による労働や雇用の在り方の変化や発展に伴って発展して、時間が労働を測る単位や計算根拠としない世界観がこれから広がっていくのかもしれません。むしろ、その発展が働き方改革を後押しするのかもしれません。

給与支給の仕組み

「給与支給の仕組み」も無くなることはなく、大切なインフラです。勤務や労働に対する対価を支払う仕組みとして、これからも存在し続けると考えられます。特に日本における源泉徴収の仕組みは税金を徴収する仕組みとして有効に機能しており、国の大きな財源にもなっています。

そのため、働き方が変わっても、雇用の在り方が変わっても、国が会社や団体などを通して税を徴収する仕組みを崩す(崩れる)とは考え難く、「労働の対価を会社や団体などが払う仕組み」は存在し、推奨され続けるのではないかと考えられます。

働き方改革が進むと、そもそもの“会社と呼ばれる存在の定義”が変わってくるかもしれません。その定義とは、“単なる物理的な場所”、“とある共通の目的をもったコミュニティ”、場合によっては“労働や雇用に関する代理手続機関”等に変化するのかもしれません。

しかし、その定義は変わっても、この“会社と呼ばれる物体”は存在し続け、その会社という物体を通して給与を払う仕組みは無くならないだけでなく、強化されていくのではないかとも考えられます。

人材管理・把握の仕組み

人材管理・把握の仕組み
最後は「人材管理・把握」の仕組みです。“働く”の在り方が変わると、今のやり方で回っているものが、回らなくなる時が必ず訪れます。例えば、働き方が変わり、場所や時間を問わない労働環境が広がると、今は何の気もなく、立ち話や伝え聞き、噂といった方法で収集できている人物に関する情報はどんどん少なくなり、場合によっては皆無になることもあるでしょう。

つまり、とある人物に関して極めて少ない情報から判断して、仕事を依頼し、評価をし、昇降格等を行わなければいけなくなる世界です。

「社員のキャリアニーズ」、「仕事に取り組む姿勢」、「仕事や職場に対する不満」、「とある社員同士の関係性」など、実に人事を進めていく上での判断や選択に用いられている情報は、“人同士の物理的な接点から収集される情報”が多く、またその情報で判断や選択をされている傾向が強いです。

例えば、とある山田太郎さんが退職するとします。その山田太郎さんの後任を検討する際に、「あいつが良い」「こいつはどうだ」などと、日々収集している記憶から情報を辿って、後任が決まることも少なくない。

また更に、この後任を検討する会議を責任者数人で行う場合、出席する責任者が変われば、辿られる記憶も異なるため、その後任となる人物が変わることも十分にあり得る。つまり、判断や選択のもとになっている情報は記憶を辿って引き出され、その記憶情報によって決定されているわけです。これが今の人事の実態ではないでしょうか。

今は、とある場所に、とある時間に、人が集まり仕事をしているため、その記憶情報もそれなりの蓋然性があり、納得感のある人事が行えているかもしれません。

しかし、とある場所や時間に集まらずとも仕事が成り立つようになると、その蓋然性は崩れてしまい、劇的に納得のいかない人事になってしまいます。働き方改革が進むと、人材の情報を把握する仕組みは、人事実務面においても、判断や選択の蓋然性においても、これから欠かせないインフラになっていくと考えられます。

働き方改革が進む中で、マネジメントの在り方や、帰属意識の醸成の方法、仕事の成果の定義と評価の仕方など、今の人事の在り方を前提とした課題について、よく議論がなされていますが、今、本当に人事や経営が取り組むべき課題は、これからの変化に備えたインフラの整備なのかもしれません。

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