ピアボーナスという人事評価制度を知っているでしょうか。これまで一般的だった上司が従業員を評価する仕組みとは全く違う人事評価制度ということで、注目を集めています。人事評価制度を改善するために、ピアボーナスを導入しようと検討している企業もあるかもしれません。そこで、今回はピアボーナスについてどういったメリットやデメリットがあるのか、導入企業の事例などをご紹介していきます。

ピアボーナスとは?

ピアボーナスというのは、仲間や同僚を意味する「peer(ピア)」と報酬を意味する「bonus(ボーナス)」を合わせて作られた言葉です。アメリカで主流になっている人事評価制度ですが、日本でも導入する企業が多くなっています。ピアボーナスの特徴的な点は、一緒に働く従業員がお互いを評価し、報酬を贈り合うということです。

日本では業務の成果や貢献などを加味し、上司が部下を評価するという形が一般的でした。しかし、ピアボーナスは立場の差に関係なく、従業員同士がお互いの働きを見て評価を行い、少額のインセンティブを贈ることができます。日本では働き方改革が推進されたことで雇用形態の多様化が進み、労働者を取り巻く環境が大きく変化しました。それに伴って、新しい人事評価制度としてピアボーナスが注目されるようになったのです。

ピアボーナスを取り入れるメリット

ピアボーナスを取り入れることにはどういったメリットがあるのでしょうか。

部署を超えて従業員同士のコミュニケーションが増える

従業員同士のコミュニケーションを活性化させるために、ピアボーナスを取り入れる企業も多いです。ピアボーナスは従業員同士で評価を行う制度のため、従業員同士がお互いの仕事ぶりをしっかりチェックしておく必要があります。そのためには、他部署の従業員のことも見ておかなければなりません。普段の業務では触れ合う機会が少ない人達と部署を超えた関係性を築けるというのは、ピアボーナスの大きなメリットでしょう。従業員同士がお互いに褒め合うことで連帯感が生まれますし、他部署の人達がどういう役割を担っているのか、普段どのような仕事をしているのか理解することで仕事の効率もアップします。

従業員エンゲージメントを高められる

従業員エンゲージメントというのは、従業員がどれだけ会社のことを理解しているか、愛着心を持っているかを表すものです。従業員エンゲージメントが高い企業は優秀な業績を残しているケースが多いということで、従業員エンゲージメントの向上に力を入れる企業が増えています。ピアボーナスは、従業員の評価を従業員同士に任せる評価制度です。そのため、会社に対する信頼、仕事に対するモチベーションの向上に繋がります。また、一緒に仕事をしている仲間から評価をされることで、仕事に対するやりがいや自信が高まり、従業員エンゲージメントが向上するケースが多いです。

優秀な人材の流出が起きにくくなる

優秀な人材が流出してしまい、頭を悩ませている企業も多いです。原因は様々ありますが、会社からの評価に不満があって転職を考える人は少なくありません。従来の評価制度は従業員の成果や働きぶりなど、実際に目に見える部分だけで評価を下すケースが多くありました。そのため、業績などの数字に直結しない従業員の取り組みは、評価されにくいという問題があります。評価をする上司と評価される従業員の間で評価に対する考えの相違が生まれることで、仕事に対するモチベーションが低下するといったリスクがありました。

そういった問題もピアボーナスを導入することで解決できるかもしれません。上司にはなかなか届きにくい取り組みも、身近で一緒に働いている従業員であれば漏れなく評価することができます。自分の仕事が漏れなく評価してもらえるようになれば、従業員のモチベーションもアップするでしょう。評価制度に対する不満をなくすことで、優秀な人材が流出するリスクが少なくなるというわけです。また、ピアボーナスのような満足度の高い評価制度を取り入れている企業の取り組みが広がれば、優秀な人材が集まりやすくなります。

デメリットにも注意が必要!

ピアボーナスの導入にはデメリットもあります。メリットばかりに注目するのではなく、デメリットも理解した上で検討しましょう。ここでは、発生し得るデメリットを具体的に見ていきます。

ピアボーナスを重視して仕事に取り組む社員が増える可能性がある

ピアボーナスを導入することで、従業員の仕事に対するモチベーションをアップさせることができますが、評価を得ることに固執してしまう従業員が発生するリスクがあります。評価が上がればインセンティブを得ることができるため、利益を得るために評価に繋がりやすい仕事ばかり熱心に行う従業員が生まれる可能性が出てきます。与えられた仕事や本来必要になる業務以外のことに熱心になる従業員が増えてしまうようでは意味がないでしょう。

導入するのに一定のコストがかかる

ピアボーナスを導入するためには、ツールなど専用のサービスを利用する必要があります。その時に、初期費用や毎月の利用料が発生してしまうのはデメリットの1つでしょう。また、ピアボーナスで支払う報酬を現金にした場合、そのための資金をある程度確保しておく必要が出てきます。

制度が定着するまでに時間がかかる

ピアボーナスは、導入したからといってすぐに機能するとは限りません。日本では上司が従業員を評価するのが一般的だったこともあり、誰かを評価することに慣れている従業員は多くありません。そういった環境でピアボーナスを導入した場合、従業員が遠慮してしまって上手く評価することができず、制度が正しく機能しないという可能性もあるでしょう。ピアボーナスを定着させるためには、ある程度の時間と労力が必要です。その体制が上手く整わない場合、失敗してしまうケースがありますので注意が必要です。

人気のピアボーナスツール!

ここでは、人気のピアボーナスツールをご紹介します。

Unipos (ユニポス)

Uniposは、2017年にFringe81株式会社が提供し始めたピアボーナスツールです。WorkplaceやChatworkなど、メジャーなビジネスチャットツールと手軽に連携できるということで人気になっています。投稿されたピアボーナスをすぐに確認できるタイムライン機能、企業の行動指針と簡単に紐付けができるハッシュタグ機能、投稿されたコメントに反応できる拍手機能などが搭載されています。

Unipos (ユニポス)

チームスイート(TeamSuite)

社内コラボレーションツールとして有名なTeamSuiteには、ピアボーナスの機能も備わっています。従業員のタスクや行動に対して手軽にポイントを付与できるクエスト、サンクスカードを送ることができるTeamStickerなど、従業員同士で気軽にコミュニケーションを取れる機能が充実しています。Microsoft Teamsなど、有名なチャットツールと連携することも可能です。

チームスイート(TeamSuite)

ピアボーナスの導入事例

有名なフリマアプリであるメルカリもピアボーナスを導入しています。メルカリはサービスを提供し始めてすぐに人気となり、急成長を遂げました。わずか2年足らずで社員数が1,000人以上増え、人事制度の構築やエンゲージメント向上を急ピッチで進める必要が出たのです。そこで、2017年にUniposを導入してピアボーナス制度を始めました。「mertip(メルチップ)」という独自のボーナスを作り、従業員に対して具体的な活用事例を提示することで制度の浸透を図りました。

その結果、部署や拠点を超えた従業員同士のやり取りが増え、社内全体のコミュニケーションを活性化させることに成功しました。他にもピアボーナスを導入し、従業員同士の関係性を改善した株式会社シンサナミ、従業員のチャレンジ精神に対して報酬を与えモチベーションをアップさせることに成功した株式会社フィードフォースなど、様々な企業でピアボーナスが有効活用されています。

ピアボーナスを導入することで企業が抱える様々な問題を解決できる!

ピアボーナスは、従業員のモチベーションアップや社内のコミュニケーションの活性化、優秀な人材が集まりやすくなるなど、様々な効果が期待できるということで注目を集めている人事評価制度です。ピアボーナスを手軽に導入できるツールも多くなっていますので、なかなか業績が上がらない、優秀な人材が流出してしまうといった問題を抱えている企業は導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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