はじめに

近年の日本は、以前と比べて、女性の社会進出が増加傾向にあるものの、国際的に見ると、低水準の状態にあります。私は大学時代、労働法の授業で日本の女性労働者の現状について触れました。女性は、出産や育児等により、長い期間継続して働くことが出来ないため、仕事において結果を残せなかったり、管理職に就くことが難しいといった課題が生じます。

身の周りでも、子供がいるからという理由で上司から気を遣われてしまい、せっかくの挑戦の機会が失われてしまったという悩みを聞きました。このようなことから私は、女性が生き生きと職場で働けるような環境づくりや研修を実現したいと強く思うようになりました。そこで今回は、ポジティブアクションに基づいた人材育成を行うことで、企業、そして女性社員にどのような効果をもたらすのかについて考察します。

ポジティブアクション

ポジティブアクションとは、固定的な男女の役割分担意識や過去の経緯から、「営業職に女性はほとんどいない」、「課長以上の管理職は男性が大半を占めている」等の差が男女労働者間に生じている場合に、このような差を解決しようと、個々の企業が行う自主的かつ積極的な取り組みのことをいいます。(出典:厚生労働省「女性が輝く社会の実現に向けて」平成26年5月)

日本企業のポジティブアクション取り組み事例 

日本アイ・ビー・エム株式会社

こちらの会社では、平成10年~平成15年1月までの間に、係長クラスで290名、課長クラスで67名、次長・部長クラスで85名、役員クラスで3名の増加を達成しています。成功の要因としては、女性管理職育成のための各種フォーラム、セミナーが充実しており、係長職前の女性を対象とした「ネクスト・ステップ・セミナー」、女性社員の半数が一同に会する「女性フォーラム」、エグゼクティブへの昇進意欲の向上を目的とした「女性専門職や女性管理職を対象とするセミナー」の実施が挙げられます。

株式会社高島屋

こちらの会社では、バイヤー、マネージャーの女性比率が上昇したと同時に目標値を達成しています。成功の要因としては、マネージャー研修において、男女共同参画に対する理解を深め、性差のない業務分担当を通じた部下育成の徹底や、マネジメントガイドの中で、女性の職域拡大を推進することを明記する取り組みの実施が挙げられます。(出典:厚生労働省 ポジティブアクション取組事例集)

ポジティブアクションに基づいた人材育成とは

企業側を対象とした研修

日本は、男性が家計を担う役割を果たし、女性は家事や育児を担うといった旧来的な考え方が根強く残っています。その結果、女性が役職者になることに対して職場や社会の中で、肯定的な評価を得られない可能性があります。まずは、その考え方を払拭するために、女性の採用経験が少ない管理職層に向けた研修を実施します。

この研修を実施することで、男性が多い傾向がある管理職層の方々に女性の働き方を理解してもらい、具体的に社内で活躍してもらうためにはどのような取り組みが必要になってくるのか等を検討することで、職場環境の活性化につながるきっかけになります。

また、このような取り組みを継続に行うことで、厚生労働省大臣が女性を含む若者の採用や育成に積極的で、雇用管理状況が優良な企業に認定する「ユースエール認定制度」に選ばれる可能性が高くなります。認定を受けた企業は、認定マークを商品や広告に使用することが出来たり、企業のイメージ向上で若い女性からの応募が増えたり、優秀な人材確保など、様々な効果が期待できます。

女性社員を対象とした研修

女性活躍を推進するには、企業側の理解も必要ですが、女性社員自身の職場に対する意識も重要になってきます。一般的に女性は、心の中では会社で活躍したいと思う気持ちがあっても、仕事と家庭の両立は難しいから普通に働ければそれでいいと考えてしまうことがあるかと思います。そのような考え方になってしまう一番の原因として挙げられるのは、身の周りにロールモデルとなるような女性の先輩社員がいないという点です。

さて、このような場合どうしたらいいでしょうか。それは、女性社員自身が今後ロールモデルになれるようなキャリアや職場に対する考え方を見直すきっかけをつくる研修の実施です。第三者が入ることによって、女性社員が抱いている職場への悩みや不安を出し合いながら解決策を検討したり、行動目標を策定し、キャリアプランを改めて見直すことで、更なる仕事へのモチベーション向上が期待できます。

まとめ

企業事例からもお分かりいただける通り、日本は以前に比べると、女性活躍推進の取り組みに前向きになってきています。今後も、各企業がこのような取り組みを継続的に行うことで、日本における男女の旧来的な考え方を払拭することに繋がります。女性活躍推進は女性だけでなく、今日における男性の長時間労働問題を見直すきっかけにもなるのです。

私自身、女性活躍推進に関するセミナーの登壇や人材育成研修を通して、働く女性の方々が社会で輝き続けていただけるようなご支援をしてまいります。

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