ESGという言葉が注目されていますが、どういうものなのか具体的によく分かっていないという人もいるかもしれません。ESG戦略は花王株式会社などの大手企業も取り入れている経営戦略です。では、実際ESG戦略を行うことで、企業にどのようなメリットがあるのでしょうか。今回は、ESGの重要性や経営に取り入れることで得られるメリットなどを、詳しく紹介していきます。

ESG戦略とはどういうもの?

ESG戦略とは、ESGを意識して経営を行う経営戦略の1つで、ESG経営などとも呼ばれています。ESGは「Enviroment(環境)」、「Social(社会)」、「Governance(管理体制)」の頭文字を組み合わせて作られた言葉です。2008年に起こったリーマンショック以降、ESGという言葉が使われるようになり注目され始めました。色々な場面で使われますが、主に投資家が企業を評価する時に用いられることが多いです。

投資家は企業の業績を見てどこに投資をするかを決めることが多かったのですが、環境への取り組みや社会的要因などが企業の評価に大きな影響を与えるようになり、ESGへの取り組みを重要視する投資家が増えました。そこで、企業側も自社の評価を高めるために、環境や社会、管理体制に配慮したESG戦略を行うようになりました。

ESGを意識して経営を行う重要性

ESGを意識した経営戦略がなぜ注目されているかというと、ESG投資を行う投資家が多くなっているからです。ESG投資を行っている投資家が、投資家全体の3割を占めるというデータがあるほどで、日本でも市場規模は年々拡大しています。そのため、ESGを意識して経営を行う企業の評価が高まり、投資家の資金が集まりやすくなっています。投資家から資金を集めるためにも、ESG戦略は欠かせないものになっているということです。

投資家だけではなく、顧客や従業員、取引先など様々なステークホルダーへ与える影響も大きいです。環境への影響を意識して商品を購入する顧客が多くなっているため、企業が自然環境への取り組みをしっかり行っているか注目されるようになりました。ESG経営を行うことで、商品自体の価値だけではなく、グリーン消費などの精神的価値を重視する顧客へアピールしやすくなるのです。他にもGovernance(管理体制)を見直すことで従業員の生産性が上がる、新たな顧客を開拓し取引先が増えるなど、様々なステークホルダーへ良い影響を与えることができます。

ESG戦略を行うメリット

企業のイメージアップに繋がる

ESG戦略は、自社の利益だけを追求するのではなく、社会問題への取り組みや自然環境への配慮などを積極的に行わなければなりません。そういった姿勢を顧客に見せることで、企業への信頼やブランド力が高まりイメージアップに繋がります。同じ商品やサービスを利用するなら、信頼できる企業のものを利用したいと考える顧客は多くいます。さらに、商品やサービスを利用することで社会貢献ができるのであれば、購買意欲も高くなるでしょう。ESGを意識することが、業績アップに繋がります。

人材を集めやすくなる

ESG経営を行うと、顧客だけではなく従業員からの評価が高くなります。仕事を探している人にとって、労働環境が整った働きやすい職場かどうかは重要な判断材料です。ESG経営に取り組むことで働きやすい環境が整った企業だと印象付けることができるため、「この企業で働いてみたい」と考える人が増えます。日本は少子高齢化が問題になっているということもあり、人材の確保に悩む企業は多いです。優秀な人材を確保するためにも、ESG経営を行うメリットは大きいと言えるでしょう。

資金集めがしやすくなる

会社を運営していくためには、資金集めを行わなければなりません。投資家や銀行など様々なところから資金を集めることになりますが、投資するかどうかは色々な材料で判断されます。ESGは投資家にとって、資金を提供するかどうかの重要な判断材料です。ESG経営を行い企業の評価が上がれば、投資家や株主、銀行など色々なところからお金を集めやすくなります。クラウドファンディングでお金を集める時も、有利になるでしょう。

ESGを意識した経営にデメリットはある?

経営者の行動に注目が集まりやすい

ESG経営というのは、環境問題や社会問題への取り組みを積極的に行い、クリーンなイメージを与えるというのが目的の1つです。その分、経営者にもクリーンな行動が求められます。ESG経営を行っている企業の経営者が、ESGに反するような言動をして大きなダメージを受けてしまうという事例は少なくありません。仕事だけではなく、プライベートでの振る舞いにも注目が集まるという点には注意しましょう。

評価基準にばらつきがある

ESGが注目されるようになってからまだ日が浅いということで、評価基準にはばらつきがあります。指標を出す調査会社が複数あり、基準が統一されていないため、どの指標を目安にすればよいのか分からなくなってしまうケースが多いです。正しい指標がなく、方向性を見極めにくいというのはデメリットになるでしょう。

短期間で効果を出すのが難しい

ESGは環境や社会、管理体制など様々なことに取り組みながら、会社の経営を行う手法です。そのため、はっきりとした効果が出るまでにある程度時間がかかってしまいます。時間をかけてコツコツ取り組んだ結果、数年単位で結果が出るというケースも珍しくありません。その時に問題になるのがコストです。費用が回収できるようになるまで時間がかかるため、資金力がない状態でESG戦略を始めてしまうと、途中で資金不足に陥ってしまいます。中長期的な戦略になることを覚悟し、資金管理をしっかりしておく必要があります。

ESG戦略を行っている企業の事例

花王株式会社

洗剤や化粧品など、様々な日用品を開発・販売しているメーカー花王は、ESG戦略を行っています。創業当初から様々な事業活動を行ってきた花王ですが、2019年にKirei Lifestyle Planを発表し、ESGを根幹に据えた経営に大きく舵を切ることを宣言しました。

地域社会や自治体、NPO、他企業など様々なステークホルダーと連携すること、社会的な課題へ取り組むために強固なガバナンス体制を整えることなどが、ESG戦略の内容として組み込まれています。会社に勤める従業員だけではなく社外のステークホルダーに評価してもらうという手法が特徴的です。ESG戦略を社内だけで完結するのではなく、消費者や株主など社外の人達を巻き込むことによって、より多くの人達にクリーンなイメージを広めることができます。

イオングループ

イオングループも、ESG戦略を積極的に行っている企業の1つです。特に環境問題への取り組みに力を入れており、2020年3月からは全モールにおいてプラスチック製ストローの提供を廃止しています。また、マレーシアで1200万本以上の植樹活動を行う、太陽光発電を活用するなどして大幅なCO2削減を目指しています。

TOTO株式会社

TOTO株式会社では、水に関わる環境問題への取り組みを行っています。代表的なものがTOTO水環境基金の設立です。2005年に設立してから、トータルで3億円にものぼる助成を行っています。他にも社会貢献や地域の活性化に繋がる様々な活動を行い、投資家や消費者から評価を得ています。水に関わる事業を行っている会社が、水問題に積極的に取り組む姿勢を示すことで、イメージアップやブランド強化に成功した事例の1つです。

ESG戦略を取り入れてブランド力の強化やイメージアップを図ろう!

ESG戦略は企業のブランド力強化やイメージアップを図ることができる経営戦略です。投資家からの評価基準にもなるということで、ESGを意識した経営を行うことは、資金集めのしやすさにも繋がります。しかし、短期的に効果が出る戦略ではないので、中長期的な目標として地道に活動していく必要があります。長期的に安定した経営を行うために、ESGへの積極的な取り組みを考えてみてください。

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