ビジネスシーンでは、しばしばベテラン社員の経験則や勘を頼りに経営判断を下す事があります。確かに優秀な人材の判断力は企業にとって大きな武器になり得ますが、有用な情報が溢れている現代社会において、それらのデータを有効活用しない手はないと言えるでしょう。今回は、マーケティングや人事にも応用が利く「データドリブン」と呼ばれる手法について解説します。

データドリブンとは何か?

データドリブン(Data Driven)を日本語に直訳すると「情報に突き動かされた」といった具合になり、集計・分析したデータを基にして意思決定や課題解決を行うビジネス的なアプローチを指しています。企業が蓄積したビッグデータをITツールによるアルゴリズムで解析し、明確な根拠と裏付けの下に事業を展開していく手法です。データドリブンは、大きく分けて「データ収集」「データの可視化」「分析」「施策実行」「結果検証」の5つのステップで成り立っていますので覚えておきましょう。このプロセスの中では顧客管理システムやWeb解析ツールなど、様々なアプリケーションが駆使されます。企業経営者はもちろんの事、営業・マーケティング・人事など社内の多様な部門で活用可能です。

注目を集める背景

データドリブンが注目を集めているのはなぜでしょうか。ここで詳しく見ていきましょう。

消費者動向の変化

インターネット技術の発達やITデバイスの普及が進む前は、消費者は店舗に足を運んだ上で直接商品を見定めて購入するのが一般的でした。商品情報を知り得るメディアは、テレビ・ラジオ・雑誌などが多かったと言えるでしょう。一方、現代社会ではWebサイト・動画・SNSなど消費者の情報仕入れ先が多様化し、顧客動向が複雑化しています。同一種のアイテムを購入するにしても、「もっと安く買えるところはないか」「同価格帯で高性能な商品はどれか」など消費者の選択肢が大幅に増えたのです。こうした背景から、従来のプロモーションやマーケティングでは顧客のニーズを的確に掴む事は難しくなったと言えます。データドリブンは複雑化する顧客動向に対応し得るアプローチ方法として、各業界で注目を集めるようになりました。

急速なIT化

IT技術の進歩によりDX化や市場のデジタル化が進み、大企業に限らず企業経営におけるテクノロジー導入はもはや中小企業でも当たり前のものとなりつつあります。つまり、競合他社のIT化が進んでいる間に自社が遅れを取ってしまう事は、企業の生存戦略にとって大きな痛手となるのです。また、デジタル分野ではビッグデータの他にもAIやIoT製品の開発など先進技術の運用が進んでいます。データドリブンは、こうした新しい技術を運用して革新的な価値を創出するためにも重要です。

データドリブンによるメリットとは

データドリブンにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

サービス品質向上

データドリブンは、膨大な情報によって顧客動向や消費者ニーズを的確に把握出来るようになります。そのため、知り得た情報を商品開発・改善に反映させれば、効果的にサービス品質を向上する事が可能です。場合によってはマジョリティの意見だけではなく、消費者個人のニーズに寄り添ったキメ細かいサービスを提供する事が重要になります。そのようなケースでも、データドリブンによって解析された情報が役に立ちます。

意思決定のスピードアップ

データドリブンでは多彩なツールを使い分けて必要な情報を的確に分析し、経営方針策定の判断材料を使いやすくしています。意思決定のスピードが向上する事によって事業展開がスムーズになり、先手を打ったマーケティングや市場への柔軟な対応が可能です。

再現性の向上

膨大な情報を根拠としているデータドリブンは、再現性の高さも大きなメリットです。担当者の経験則やノウハウによる判断は個人の能力に依存したものであり、業務の属人化に繋がる可能性もあります。データドリブンでは様々な情報を意思決定の根拠として社内で共有するため、判断の再現性が高く担当者が変更になっても同一のクオリティを維持出来ると言えるでしょう。

課題解決の効率化

自社が抱える課題点を把握するためには従業員の意見を聞いたり、現場を視察するなどして肌身で感じ取る事が大切です。しかし、その一方で数字やデータに基づく「事実」を客観的に受け止める姿勢も求められます。データドリブンで収集・分析された情報は、市場動向や自社の取り組み結果を可視化したものです。人間が頭の中で考えるだけでは中々気が付く事が出来ないヒントが豊富に含まれているため、課題解決のプロセスを効率化させる事が出来ます。

運用の注意点

ここでは、データドリブンを運用する際に注意したい点をご紹介します。

社内への周知徹底

データドリブンに必要となる情報は、社内の至る所に点在しています。それらをビッグデータとして一箇所に集約して運用するためには、関係各所の理解と協力が必要です。データドリブンを実践する際は前もって現場の従業員に周知し、必要に応じて話し合いの場を設けるようにしましょう。また、データを管理運用するためには新たにアプリやツールを導入する必要も出てきます。操作方法のマニュアル作成や情報の取り扱いに関わるコンプライアンス教育など、データを適切に運用していける地盤を整えておく事も大切です。

担当者の確保

データドリブンは再現性の高い意思決定による属人化の防止がメリットの1つですが、判断材料として情報をまとめたり分析するためには専門的な知識を持った人材が必要になります。例えば、データサイエンティストとして働ける人材やデジタルマーケティングに精通した人材が欲しいところです。ただし、IT人材は慢性的に不足しているため、社内で採用するにも中々ハードルが高いです。社内で育成しようにも、教える側にノウハウがなければ人材は育ちません。こうした事情から社内でIT人材を抱える事が難しい場合には、データ分析の外部委託も選択肢に入れておきましょう。

「手段」としての運用

何事も「目的」と「手段」が入れ替わってしまうと本末転倒であり、当初の目標を達成出来ないまま取り組みが終わってしまうというケースは珍しくありません。データドリブンについても同様であり、データの集計や分析は「目的」ではなくあくまで「手段」です。データドリブンの目的は根拠に基づいた的確かつ迅速な意思決定ですので、データを管理するだけで満足してしまわないように気を付けましょう。

データドリブンマーケティング

データドリブンによって得られた情報源や迅速な意思決定をマーケティングに活用するのがデータドリブンマーケティングです。DMP(データマネジメントプラットフォーム)・MA(マーケティングオートメーション)・CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)といったツールを活用しながら、市場動向にマッチした施策を打ち出していきます。重要なのはこうしたデータの運用を一過性ものとするのではなく、PDCAサイクルの一環として取り入れるという事です。目まぐるしく変化を続ける市場と消費者のニーズにデータで対応するため、PDCAサイクルを効率的に回転させられる社内環境を構築しましょう。

データドリブン人事

各業界の大手企業の中には、データドリブンを人事に活用するところも増えています。データドリブン人事は従業員の基本情報をはじめ、業務実績・社内評価・固有スキル・自社へのエンゲージメントなど、様々なデータを用いて人材を適材適所に配置するという取り組みです。従業員が自分の能力を活かせる環境作りは企業の命題であり、人材の早期離職防止に効果が期待出来ます。社内で優秀な人材を育てあげる事が出来れば組織力の向上に繋がり、業務の生産性が向上していくでしょう。従業員の満足度が上がるとこれからの採用活動にも良い影響が期待されます。

データドリブンでマーケティングや人事の強化を図ろう!

事業活動で収集してきた膨大な情報は、データドリブンを通じて様々な運用に繋がります。意思決定の早さを向上させて市場での優位性を確保するも良し、人事に活用して地盤を固めていくのも有効なアプローチ方法です。技術の進歩がビジネスシーンに与える影響は大きく、必要なトレンドを取り入れる事で経営改善に効果が期待出来ます。社内周知や人材確保など入念な準備を行い、データドリブンの運用で次のステップへ進みましょう。

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