ビジネスシーンとインターネットは切り離せない関係になってきています。そして、「メタバース」という概念も注目を集めるようになってきました。今後、メタバースの企業への導入が増えていけば、人事部の担う役割にも大きく影響するでしょう。この記事では、メタバースの意味や企業への影響、将来性などを解説していきます。
区切りのないオンライン空間!メタバースとは何か?
メタバースはやや曖昧な概念であり、明確な定義は難しいといえます。それでも、おおまかには「自由度の高いオンライン空間」と説明可能です。以下、メタバースの概要を紹介していきます。
インターネットに広がる仮想世界
そもそもメタバースとは、「メタ(超、高次)」と「ユニバース(宇宙)」を組み合わせた造語です。インターネットに広がる仮想空間であり、ユーザーは自分のアカウントやアバターを作成することで参加できます。その点は、従来のゲームやWebサービスと変わりありません。しかし、メタバースが画期的だったのは次の2点です。
- 世界観に区切りがない
- 現実世界と同じ経済活動が可能
メタバースはユーザーがログアウトすれば、世界が終わるものではありません。ユーザーが自身のアバターを操作していない間も、世界はずっと進行していきます。絶え間なく世界は構築や変化を繰り返し、新しい状態に成長します。さらに、メタバースの中でユーザーは、現実世界と同様に経済活動が可能です。買い物はメタバース内の専用通貨を用いて行われます。つまり、メタバースは現実の別の可能性を、インターネット上で作り上げた世界なのです。なお、専用通貨を現実の通貨に換金できるかどうかは、メタバース内のルールに基づきます。
メタバースの事例
一般で利用されているメタバースの代表例は、
- オンラインゲーム
- SNS
- イベント体験型プラットフォーム
などです。この中で、もっとも認知度が高いのはオンラインゲームでしょう。アカウントを取得したユーザーは、ゲーム内の生活を体験したり、別のキャラクターたちと交流したりします。次に、SNSでも仮想世界を構築するパターンが増えてきました。そして、インターネット上でイベントを視聴したり、自分でも参加したりできるプラットフォームも人気です。
メタバースとビジネスシーンの関係!導入はどれほど進んでいる?
エンタテインメントの分野でメタバースは発展してきました。一方で、一般企業もメタバースを取り入れつつあります。ここからは、ビジネスシーンでメタバースが果たす役割や、導入の状況を解説します。
プロジェクト管理や社内SNS
あるプロジェクトのチームメンバーがメタバースに参加し、進捗管理を行うことが可能です。メタバース内ではデータの保存場所が整理されているだけでなく、商品や資材を映像で具体的に確認できます。色や質感、操作方法から完成イメージまで、プロジェクトメンバーが受け取れる情報量は飛躍的に増えるでしょう。さらに、日々の報告、連絡、相談、会議などを行うための社内SNSとしても、メタバースは検討されてきました。
顧客へのプロモーション
商品、サービスの詳細な情報を伝えられるメタバースは、顧客へのプロモーション用ツールにも適しています。顧客はメタバース内で、商品やサービスの使用感を疑似体験できます。完成前の商品ですら、仮想世界の中ではあたかもそこにあるように感じ取れるのです。たとえば、投資先を募る際のPR材料でも、メタバースは効果的に使えます。
ビジネスシーンでは発展途上
2022年3月の段階で、メタバースのビジネスシーンにおける実用化は発展途上段階です。さまざまな用途が検討され、開発が積極的に行われているものの、広く浸透しているわけではありません。それでも、メタバースの可能性には多くの企業が熱い視線を注いでいます。情報漏洩やなりすましアカウントなどのセキュリティ問題について有効な対策が見つかれば、急速に導入が進むこともありえるでしょう。
企業がメタバースを導入するメリットと注意点
メタバースには将来性があり、今後、多くの企業が当たり前のように導入することも考えられます。この段落では、メタバース導入のメリットと注意点を挙げていきます。
メリット
まず、メタバース導入の主なメリットは以下の通りです。
- 臨場感のあるWeb会議
- 多様な働き方に対応可能
- シミュレーションの精度向上
Web会議の新たなシステムとして、メタバースは期待されています。実現すればオンライン上の空間でも、まるでお互いが対面しているかのような感覚を味わえるでしょう。従来のビデオ会議ツールに見られた反応の遅さもメタバースなら解決されます。また、メタバースによるバーチャルオフィスでは、社員の実際の所在が関係なくなります。自宅やコワーキングスペースから参加していても、全員が同じ空間を共有して働けるのです。そのほか、工事や建築、デザインなどのシミュレーション精度も、メタバースは向上させてくれるでしょう。映像や音、見る側の視点などを自由に調整できるのが大きな魅力です。
注意点
次に、メタバース導入の注意点を紹介します。
- リアルなコミュニケーションの価値が薄まる
- 社員の帰属意識を育てにくい
メタバースを利用するようになれば、現実世界の体験のほとんどを再現可能です。触覚や味覚、嗅覚なども、システムの発達次第ではメタバース内で呼び起こせてしまいます。そのため、実際に人と会ったり、ある場所に出かけたりする優先度が低くなりかねません。こうした現象が起こると、社員の帰属意識を育てにくくなります。職場への愛着がなかなかわかず、離職率が上がる危険も出てきます。
人事部が押さえておくべきメタバース導入のポイント
メタバースの強みを生かしつつ、課題を克服するには人事部の動きがとても重要です。ここからは、人事部にできるメタバース導入のポイントを紹介します。
全社員と拠点での均等な研修機会
導入直後のポイントは、すべての社員、拠点に対して、均等のスピードで研修を進めていくことです。なぜなら、メタバースの本格稼働には、全社員の理解が不可欠だからです。もしも社員や拠点によって理解度が遅れてしまうと、メタバース内での孤立を招きます。「アナログなコミュニケーションのほうが効率的だった」との疑念がわけば、ますます導入が遠ざかってしまうでしょう。社員の役職や年齢に関係なく、研修は同時進行で行うことが大切です。
アバターの工夫
メタバースではアバターが無機質で、やりとりが単調になってしまうリスクも考えられます。そこで、アバターの表情や仕草を工夫しましょう。表情やアクションに富んだアバターなら、社員も思い入れを抱きやすいといえます。相手の反応をうかがいながら会話できるので、コミュニケーションの活性化につながります。
交流イベントによる団結力の強化
職場への帰属意識を薄めないよう、人事部が実施したいのは交流イベントです。研修や簡単なゲーム、仕事のロールプレイングなど、メタバースは離れた場所から体験を共有する際に適しています。社員同士の共有体験が増えていけば、自然に帰属意識も高まっていきます。さらに、普段は関わりのない拠点、部署とも接点が生まれるのもメリットでしょう。こうして社員同士がお互いを認知するようになれば、会社全体の団結力も強化されていきます。
メタバース導入には人事部のアクションが大事!すべての社員に魅力を知ってもらおう
もしもメタバースを社内で導入するなら、人事部はすべての社員にしっかり魅力を伝えましょう。メタバースとは働き方の大きな変革であり、抵抗感を覚える人もいます。また、仮想世界に没入することで、職場への帰属意識を失ってしまうケースもあります。これらの課題を乗り越えるためには、人事部主導の研修や共有体験の企画が不可欠です。
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