現在は社内人事にも、マーケティング思考を取り入れる動きが加速しています。人事部門は転換期を迎えつつあり、人材の雇用や管理においても、市場戦略が欠かせなくなってきたのです。こう言われても、具体的なイメージが思い浮かばない時は、この記事に目を通してみて下さい。これから本格化する人材不足の時代を切り抜け、優秀な社員を確保するために、マーケティング思考がどう役立つかまとめていきます。

人事部門にマーケティング戦略が必要になった理由

これまで人事部門の役割は、労務管理などのマネージメントが中心でした。その大きな理由の一つが、終身雇用制度です。従来の日本は雇用された人材は定年を迎えるまで、同じ会社に勤務することがほとんどだったのです。このため、優秀なスタッフを集めさえすれば、後は管理業務が中心でも問題はありませんでした。また、人口も豊富だったため、求人ニーズに対して就職希望者が足りないケースも、多くはなかったはずです。

ところが現在は、終身雇用制度は崩壊し、人口減少によって就職希望者も不足気味になっています。この結果、優秀な人材を集め、雇用を維持するには、職場の魅力を高めることが重要となったのです。就職希望者は好条件の企業に集中してしまいます。しかも、終身雇用の前提がないため雇用した社員も、他に魅力的な職場があれば転職する可能性が高まってきました。つまり、人事部門は人材を探すことはもちろん、既存社員の流出を防ぐための戦略が欠かせなくなっています。

そこで用いるのが、マーケティング戦略です。マーケティングの手法を使って、働き手のニーズや自社の強みを分析し、アピールを行っています。

能力

人事マーケティングではファネルとペルソナを活用する

人事戦略におけるファネル

ファネルは、ある対象に興味を持った人間が、最終的に契約に至るまでのプロセスを4つ段階に分けて検討する手法です。人事マーケティングにおいては、下記のような形になるでしょう。
・第1段階「認知」:企業の名前や活動を知った状態
・第2段階「興味・関心」:企業に対する興味・関心が生じ、求人情報や企業サイトに目を通す
・第3段階「検討」:就職希望先の候補に選び、積極的に検討する
・第4段階「就職」:内定オファーを承諾し、雇用が成立
最初の「認知」から最後の「就職」に向かうにつれて、就職希望者の人数が減っていくのが特徴です。このため、人事マーケティングにおいては最初の「認知」の段階で多くの人間に知ってもらうことが、まずは重要と言えます。ただし、名前を知ってもらっても、興味がなければ他の企業に関心が移るでしょう。そのため、興味や関心を高め、自社に応募してもらうための工夫も必要です。

人材マーケティングにおいては各段階で、どのような対策を行うのかをまとめていきます。例えば、第1段階ではSNSの発信で企業名を知ってもらい、第2段階として企業の募集サイトに誘導する、と言った具合です。

ターゲットとペルソナ

ターゲットは企業が求める人物像のことです。一般的な企業なら、「30代までのIT経験者」と言うように、採用したいターゲットを絞っているでしょう。これに対してペルソナは、想定される応募者の、仮想的な人格を指します。例えば、「43歳男性の田中太郎。大手企業でSE経験あり」などと、架空の人物を作り上げるのです。ペルソナを用意すると、実際に「43歳の田中太郎」が応募してきた時、どう対応するかを検討するのに役立ちます。

もし、「ターゲットは30代まで」としていても、SE経験があれば、採用オファーを出す可能性もあるでしょう。このように個別具体的に検討して、人事戦略を掘り下げるためにペルソナは有益です。

ペルソナの使い方

ペルソナは個人の基本情報や職歴の他にも、趣味や将来の目標、職場に対する希望などを盛り込んでいくと効果的です。例えば、子供がいるので転勤がない職場を望んでいるとか、趣味でペットを飼っているなど、細かく設定していきます。すると、このような人物に、自社の魅力的をどう伝えれば良いのか、理解が深まるわけです。例えば、自社には転勤がなかったり、ペット可の社宅があったりすると、それが武器になるでしょう。このように自社のメリットを浮き彫りにして、求人情報に盛り込むことができます。

また、ペルソナは、自社内で採用したい人物のイメージを共有するためにも便利です。例えば、「30代までのIT経験者」だけだと、社員ごとに思い浮かべる人物像は多種多様です。これでは、部署によって想定する人物像が異なりかねません。人事担当者はターゲット通りの人物を採用したはずなのに、配属先にとっては想定外で困惑してしまう可能性があります。そこでペルソナを設定すると、どのような人物を採用するかの基準になるため、社内での意思共有に役立つのです。

マーケティングの分析技術を応用

3C分析を取り入れる


マーケティング手法として有名なのが、3C分析です。具体的には、Customer(顧客)、Competitor(競合他社)、Company(自社)の3つの要素について分析・検討を行います。ただ、人事戦略の場合は、Customer(顧客)をCandidate(候補者)に置き換えると良いでしょう。実際に分析を行うためには、各要素に検討すべき事項を設定します。まず、候補者については、就職希望先に対してどんなニーズを持っているや、転職を決断すると予想される条件をまとめていきましょう。競合他社に関しては、ライバルになる会社を調べ、どのような雇用条件を提示しているかをまとめていきます。自社の検討事項は、持っている魅力や提案できる雇用条件、将来のビジョンなどが相応しいはずです。

上記の点をまとめることで、自社の採用市場における立ち位置や強みを把握できます。ただ、これだけだと、やや具体性を欠いた分析になるでしょう。そこで、次の段階としてSWOT分析を行います。

SWOT分析とは

SWOT分析は、以下に記載している4つの要素を用いて、戦略の決定を行う手法です。
・Strength(強み):自社の長所
・Weakness(弱み):自社の短所
・Opportunity(機会):外部環境が自社に与えるプラス要素
・Threat(脅威):外部環境が自社に与えるマイナス要素
各要素を説明します。自社の「強み」は言うまでもなく、これまでの実績やネームバリューなどです。対して、自社の「弱み」は、シェアが低いなどが考えられます。後は、「機会」と「脅威」ですが、いずれも外部環境による影響のことです。例えば、経済関係の政策によって自社にメリットが生じれば機会と言えるでしょう。逆に、法改正で規制が強化され、自社にデメリットとなれば、脅威と判断します。

以上4つの要素を整理することで、自社の課題や採用すべき戦略が浮き彫りになってくるのです。何が弱点になっており、どんな武器を持っているかが明確になれば、ライバル企業との差別化や、就職希望者へのアピールに役立ちます。

具体的な手法

ネットメディアを駆使する

人事部門においても、ネットメディアの活用は要検討です。特に、求人情報サイトと自社の公式ページ、SNSの活用は採用活動の柱と言えるでしょう。基本的には、求人情報サイトで企業を見つけ、企業の採用ページなどを使って詳しく調べるケースが一般的です。加えて、近年はSNSを使った採用活動も加速しています。採用担当者がツイートを投稿して話題を集めたり、先輩社員の勤務状況を報告したりと、色々な活用方法があります。

一人一人の就職希望者にアプローチを行う

マーケティングの手法を活かして就職希望者を分析し、一人一人のニーズを理解した上で、自社のどんな魅力を伝えるかを決めていきます。これによって応募者数の増加やエントリーシートの提出率改善を期待可能。人事部門への負担が懸念される場合は、デジタルツールやアウトソーシングを検討してみてはいかがでしょうか。

採用活動で苦戦している時こそ戦略が大切

マーケティングの技術を応用すれば、就職希望者のニーズや採用市場の状況などを分析できます。上手に活用すれば、採用戦略の幅も広がるでしょう。もし、採用活動で苦戦していたり、時代の変化への対応を考えたりしている時は、積極的にマーケティング技術を取り入れていくのがおすすめです。実際に成功している事例も多いので、この機会にリサーチしておくと役に立つかもしれません。

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