人材育成とは?なぜ企業は人材を育成するのか

企業が人材を育成する意味は、その時々の時代背景によりさまざまに変化していきますが、いつの時代にも共通するのは、人材育成は未来を創るために行うということです。自ら築き上げた事業を引き継ぎ、さらに拡大させるための事業を育てるというのが最も根源的です。 世界的に有名なドラッカーの「マネジメント」や「プロフェッショナルの条件」にも、マネージャーの仕事やプロフェッショナルとしての貢献すべき領域に人材育成が挙げられています。企業を経営していく中で、人材育成は必須の領域となっています。

人材育成・人材開発・人材教育の違い

人材育成を語る際に言葉の定義として、“人材育成"、“人材開発"、“人材教育"と似たような言葉が出てきます。人を育てるという意味では一緒ですが、細かく見ると使い分けている場合がありますので、今回は下記のような定義をします。

人材教育

文部科学省によると、教育の目的は、一人一人の国民の人格形成と国家・社会の形成者の2点であり、このことはいかに時代が変わろうとも普遍的なものである、としています。今回は企業で人を育てるということがテーマになっているので、対象は人格形成が終わった社会人ですから、“人材教育"という言葉はあまり使われません。 参考:「教育課程をめぐる現状と課題」(文部科学省)

人材育成

人材育成は全社員対象のボトムアップを目的とした学習機会の提供を意味しています。具体的には、階層別や年次別に用意されたプログラムなどが該当します。社員一人一人のキャリア形成に寄り添った形で長期的に展開され、コンピテンシーやテストなどによって客観的に評価できます。 仕事の仕方、報連相、PDCA、財務諸表の見方、ロジカルシンキング、リーダーシップ、マネジメント、英語力などどの企業でも使える汎用性の高いスキルが対象です。

人材開発

人材開発は、配属された部署の特有な問題を解決するための学習機会を提供するということを意味しています。 具体的には、営業部署なら営業の仕方、内勤部署なら社内システムの使い方、請求書の作り方、調達部署なら調達先一覧と交渉の勘所など配属先で一人前の仕事ができるようになるために短期的に展開され、売上や成果物や作業時間などその人のパフォーマンスによって客観的に評価されます。このように各部署が抱えている課題によって、用意するプログラムは変化します。

人材開発>人材育成>人材教育というトレンド

VUCAと呼ばれて久しい昨今、変化の激しい時代の中で企業では、5年10年かけて長期的に人を育てるというよりも、今年、今月あるいは今日、最大のパフォーマンスが出せることが重視されているので、人材育成や人材教育よりも人材開発を重視した学習機会の提供がトレンドになっています。

人材育成の歴史

人材育成の歴史 今は人材開発がトレンドになっているということは理解できましたが、これまでも世の中の色々な影響を受けて今に至っているので歴史を理解しておくことは重要です。ここでは簡単に世の中の状況とその時の人材育成にはどんな流行があったのかを振り返ります。

1990年代

1989年にバブルが崩壊し、日本は冬の時代に突入します。それまでの伝家の宝刀であった「終身雇用」、「年功序列」などの「日本型雇用」を一部見直さざるを得ない状況となりました。そのため、「組織のフラット化」や「リストラクチャリング」、「成果主義賃金」などが数多く導入されました。 結果、職場の人員が減り、マネージャーの負荷が増大し、成果に直結しない若手の育成をしない職場も現れました。さらに、新卒採用を抑制したことにより、職場の世代間ギャップが生まれ、コミュニケーション不全に陥り、知識や技術の伝承が進まないうえに、育てられた経験や育てた経験の乏しい状態で大量採用した新人達がマネージャーになるという事態が起きました。職場が機能不全を起こした時期と言えます。

2000年代

1990年代後半から2000年代前半では、これまでの職場の機能不全を改善するべく、管理職研修で部下との関わりを見直す、コーチングが流行します。日本経済を支えてきた団塊の世代の大量退職を目前に、知識・技術の伝承、若手の育成が大きな課題となり、経営人材を育成するために、選抜型でミドル社員を強化して育成する「リーダーシップ開発」も活発になりました。

2010年代

2008年に起きたリーマンショックにより、長引く不況の中、雇用不安・キャリア不安がある中で人材教育にも変化が訪れます。研修の内製化、越境学習・異業種コラボ、研修開発のグローバル化、ダイバーシティを前提とした組織開発などが代表的なものとして挙げられています。 グローバル化・ダイバーシティなどは80年代とは異なり、そもそも会社の中に外国人がいることが当たり前になっている状況の中で世界中の人が一緒に研修プログラムを受けるという前提で設計が行われるようになっています。

2020年代

今まさに直面している新型コロナの影響で、リモートワークが加速度的に推進され、みずほ銀行のような大企業を含む多くの企業が副業を解禁し、これまでとは全く違う働き方に変化しています。 このような大きな変化の中で、大きく業績を落として倒産する企業も多い中、過去最高益を上げる企業も現れており、人材育成においてもより変化への対応がより求められるようになってきています。

人材育成の目的

人材育成の目的

人材育成は人材調達コストを下げる

ここでは実際に人材育成コストと人材調達コストを比べます。人材育成を怠ることによって、せっかく採用した人が退職してしまい、その穴を埋めるべく中途あるいは新卒採用社員で穴埋めするという状況を想定して、コストがかからないのはどちらかを考えることにします。

人材育成のコスト

「企業と人材」という本を出版していることで知られる、産労総合研究所が1976年から毎年行い、今年で44回目となる教育研修費用の実態調査で、上場企業及び会員企業から任意に抽出した3000社のうち、締め切りまでに回答した151社の集計結果になります。調査回答企業における一人当たりの教育研修予算は、2019年度実績ベースで35,628円と前回より1,021円アップしています。 参考:「2020年度 教育研修費用の実態調査」(産労総合研究所)

人材調達のコスト

リクルートの就職白書とツナグソリューションズの記事から算出してみると、雇用形態別の一人当たりの採用平均コストは中途採用で62.5万円、新卒採用で53.4万円、パート・アルバイト採用で5.1万円となっています。少子高齢化を迎える日本で、新卒人材の調達は年々厳しくなっていくことが予想されます。

人材育成<人材調達コスト

比べてみて頂ければ一目瞭然ですが、人材育成コストの方が圧倒的に安い結果になっています。人材育成は1年ではなく、キャリアを通じて行うということを考慮しても、15年は毎年投資できることになります。 逆に考えると、せっかく育てた人材が辞めてしまうと、15年分の育成コストが一気に無駄になってしまうということです。

企業戦略と人材育成

会議室 人材育成をする目的はコストダウンだけではありません。企業の戦略を実現するためというのがむしろ第一義として挙げられるでしょう。企業によって、戦略は異なりますのでそれに付随して求められる知識やスキル、あるいは仕事に向かう姿勢は異なります。 ですから、採用時にいくら能力の高い人でも、社内システムや社内ルールの理解がないと実際には活躍するのは難しいため、どのような人材にも育成の機会が必要です。

人材育成と生産性向上

人材育成には戦略実現以外にも目的があります。それは、既存の仕組みの改善です。生産性を向上させるとも言い替えられます。戦略を実現するための職務についてもらうのですが、いつも同じことを繰り返されては効率が上がっていきません。 いかに無駄を省き、最小の労力で、最大の成果を得るにはどうしたらよいのかを考え続け、試行錯誤を繰り返すことでしか生産性の向上はなしえません。ここには職人的な努力の積み上げが隠されているので、積み上げてきたものをきちんと共有し、できるようにするという育成段階が必要になります。

人材育成の基本的な企画・設計の考え方

人材育成の基本的な企画・設計の考え方

人は何から学ぶのか? 70:20:10の法則

人材育成を企画するにあたって、根本的に押さえておかないといけない大事な事実が一つあります。それは、人は何によって学ぶのか?という問いに対する答えです。 これまで人材育成という言葉の定義や、歴史を振り返ってきた皆さんならどう考えますか?科学的根拠に基づいた研修でしょうか?それとも日本的なOJTでしょうか? 2006年にアメリカのロミンガー社というリーダーシップ育成機関の調査結果で、経営幹部としてリーダーシップをうまく発揮できるようになった人たちに「どのような出来事が役立ったか」を聞いたら、70%が経験、20%が観察学習や他者からのアドバイス、残り10%が研修や書籍だったという興味深い研修があります。これは、70:20:10の法則と言われています。 つまり、「人は何から学ぶのか?」という問いの答えは「人は経験から学ぶ(アドバイスや研修ではなく)」ということになります。 ですから、人材育成を企画するときには、研修だけを企画することにはほとんど意味がありません。企画をするべきは、その人がどのような経験をするのかということです。まず、「経験をデザインする」、その過程でアドバイスや研修を補助としてデザインするというのが基本です。

コルブの経験学習モデル

経験をデザインするにあたり、もう一つ理解しておかねばならない重要な考え方があります。それはどのようなプロセスを経て、人は経験から学ぶのかということです。単なる経験だけだと効果的に学習することはできません。勝手に育つ人とそうでない人がいるというのは皆さんの経験でもお分かりかと思いますが、それがどのような違いからくるのかをここでは紹介します。 デビット・コルブの経験学習モデルが役に立ちます。これは、一般的な学習モデルが、すでに体系化・汎用化された知識を“受動的"に習い覚える「知識付与型」の学習やトレーニングであるのに対して、「経験学習モデル」は、学習者が自らの「経験」から「学び」を獲得していくというプロセスを体系化した学習モデルです。 経験学習モデルは、「経験」→「省察」→「概念化」→「試行」という4つのステップから成り立っており、この4つをグルグル回すようなイメージで学習を進めていきます。

ステップ1:経験/Concrete Experience

経験学習モデルは、原文通りで具体的な経験から始まります。 具体的であればあるほど、気づきが深くなるので、どんな場面で何を経験してどうなったのかを書き出して整理するのがポイントです。

ステップ2:省察/Reflective observation

具体的な経験をしたら、次は振り返りを行います。ここで大事なのは、いつもと同じ視点や考え方で振り返るのではなく、多様な視点で振り返ることです。例えば、良かった点、悪かった点、その時感じたこと、意図していたこととどう違ったか、相手に言われたことなどが挙げられます。これらを書き出して整理した後で、どうしてそうなってしまったのかという理由や原因を探します。

ステップ3:概念化/Abstract Conceptualization

原文通りだと“抽象概念化"と訳されますが、やや分かりにくいので、“持論化"、“セオリー化"と表現されることが多いです。皆さんにも仕事おける持論や、先輩や上司から持論を聞いたことがあると思いますが、まさにその持論です。 ただ、ここでいう持論は、省察のステップで考えた成功や失敗の分析を自分以外の人でも、似たような状況で応用できるように抽象化して、文言化、体系的に整えたものであることが条件です。 概念化された教訓は例えば人材育成をテーマにしたものだと下記が有名です。

  • “人は石垣、人は城、人は堀、情けは味方、仇は敵なり"(武田信玄)
  • “やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてやらねば 人は動かじ 話し合い 耳を傾け 承認し 任せてやらねば 人は育たず やっている 姿を感謝で 見守って 信頼せねば 人は実らず"(山本五十六)
  • “Still Day One" (ジェフ・ベゾス(amazon創設者))

時代や地域を超えて広く普及しているものですから、自分以外でも、似たような状況で使える概念になっています。

ステップ4:試行/Active Experimentation

原文通りだと、“能動的実験"ですが、これもやや分かりにくいので、“試行"とか“アクション"、“行動"と言われることが多いです。意味合いとしては、概念化で作った教訓を実際に新しい場面で試してみるということです。 このように経験をデザインするときには、ただ経験させるだけでなく、経験させた後にこの4つのプロセスをきちんと作ってあげるのが重要です。 1on1やOJTを行う際に、現場経験を基本としながら、社員の皆さんに振り返ったり、経験を概念化させ教訓を作ってもらったり、その教訓を使って実際の現場で実験してもらったりしていますか?定期的にそういった時間を取れていますか?自分ではなかなかとりにくい時間なので、1on1やOJTを担当する方が意識的にとるようにして頂ければと思います。

配置とローテーションを活用した人材育成

ここまで、「人は経験から学ぶ」、「経験からの学び方(経験学習モデル)」が人材育成を企画する際の基本となる考え方だと理解しました。次はいよいよ実践的に企画を考えていきましょう。 経験をデザインするというとまず思い浮かぶのは、どの部署に配属させるかということです。部署に配属すると、必然的に上司や同僚、先輩が決まりますから同じことをしても受ける影響は異なるでしょう。 この人に合いそうなのはどの人かなとか、ちょっときつめの仕事をしてもらいたいからここの部署に配属させるなど、人によってどのような経験を積ませるかは違いますし、相性もありますので最初に立てた計画通りに物事が進むことはほとんどありません。 また、もし配属された部署で相性が合わないと感じた場合、それを素直に発言する人は少ないでしょう。上司や周囲に波風を立てたくないのが普通の感情で、その時にとる行動は、退職です。しかし、先述のように人の採用には育成よりも大きなコストがかかります。 その意味で退職はなくしたい、しかし経験は積ませたい、というときに思いつくのが、ジョブローテーションという方法です。 予め期間を決めた状態で、配属部署や仕事を変えていくという方式です。メリットとしては配属先でもし相性が合わない人がいても配属期間が決まっているので、最悪そこまで我慢すれば次の部署へ行けるという希望があることです。 デメリットとしては、期間が決まっていて腰掛になりやすいので受入先が想定通りに経験を積ませてくれない可能性があるということです。 目的や現場の状況によってどのくらいの期間あるいは内容が適切かというのは異なりますので、各企業でどのくらい育成にコミットできるかに応じて、それこそいろいろ経験して、自社に合った教訓を作り出して頂ければと思います。

対象別研修企画のやり方

対象別研修企画のやり方

新入社員教育

新入社員の場合は、社会人経験がないので特に初期の時点では、社会人としてどう行動するべきなのかという意識付けが重要です。マインドチェンジやマナーを教えるような研修はたくさんありますが、研修をしただけでは変わりません。 研修をした後に、学んだことを実践させる場所をたくさん作ると良いです。その際、一つの部署や場面に長く配置させるのではなく、いろいろな部署やいろいろな社員と関係するような経験をさせてあげるのがポイントです。 また、お客様に触れる経験も重要です。新人は社会人としての仕事への向き合い方など相場観がないため、あえて高い基準で仕事をすることを求め、経験をたくさんさせるのが良いです。 そして、経験させた後に、必ず振返りと概念化させる時間をとってください。ここを忘れがちになりますが、新人は経験が浅くうまく概念化できないので手助けが必要です。慣れるまでは毎日、少なくとも1週間に1回は、そういった時間を取れるのが望ましいです。 時間がない場合には、日報にフィードバックするということでも代用できます。今は社内SNSなどで手軽に情報共有できますから、新人の日報は最初の1年くらいは全社員に公開し、たくさんフィードバックをもらえる状況にしておいた方がいいでしょう。

管理職教育

管理職研修については、リーダーシップ系とマネジメント系の2種類の経験を考えないといけません。 リーダーシップ系というのは、既存の仕組みではない新しい仕組みを作り、先陣を切って進むという経験です。ハードアサイン、ストレッチアサインと言われます。誰でもできるというわけではないので、人を選んで、さらにどの程度困難な目標を与えるのかということも考えないといけません。 研修を考えるのは、このハードな経験をする中で困りそうだなと想定されるテーマに対して、解決策やアイデアとなりそうなものをプログラムとして挟み込むとよいでしょう。最近では、自社でハードアサインを用意できない場合、大企業の社員がベンチャー企業に行って仕事をしたり、あるいは海外の企業に行ったりするような他社留学というサービスもあります。 マネジメント系というのは、既存の仕組みで想定通りに組織が動く、つまりパフォーマンスが出せるように、部下を正しく動かすという経験です。この領域は、「こんな高い目標誰がやっても無理でしょ」、「なんで俺の部下だけこんなに言うこと聞かないやつばっかりなんだ」とか、他責や隣の芝生が青く見えがちになります。 ですから、マネジメント系については、自社だけでなく、他社の人も混じるようなオープンな場所に行く機会を提供したほうが良いでしょう。自分の置かれている状況がいかに恵まれていて、他の会社に比べれば自分の悩みなんて取るに足りないということに気づけるかどうかがカギになります。 ここの壁を取り除けない限り、どんな研修をしても無駄です。逆にここが取り除けたのであれば、今困っているテーマについての研修を受講するように案内してあげれば自ずと成果は上がってきます。

次世代リーダー教育

次世代リーダー研修で重要なのは、立場が変わることの意味を理解させることです。責任者として報告し、あるいは会議に出たりするのは、それまでメンバーや代理として出席していたプレッシャーとは次元が違うものです。 従って、責任者であることのプレッシャー、責任を負うというのはどういうことなのかを体感的に理解させる経験をデザインしてあげるのが良いです。具体的には、新規サービスなど失敗してもよい領域で実際に人を率いて仕事をさせ、役員など責任ある立場の人への報告の機会を定期的に持つとよいでしょう。 そこで、自分の仕事への姿勢や会議での発言一つで、チーム全体にどのような影響を及ぼすのか、そのプレッシャーを経験させ、振り返って、概念化させましょう。 実際にリーダーになったときにその経験が活きてきますし、現在のフォロワーとしての考え方や行動も同時に変化していきます。

経営者向け教育

経営者に必要なのは、マーケットに出ていく経験です。取材、講演など会社の代表として世の中に自社の価値を発信する機会を作ってください。世の中に発信できるほどの価値を常に自社は生み出しているのかということを、取材されるか否かで常にマーケットに問うてフィードバックを受けてください。 取材される価値のない情報しか出せていないなら、もっと自社の経営に必死になるべきです。また、日本ではマーケットに出ているとしたら、次は世界に打って出てください。経営者の目線以上に会社が広がることはありません。その過程で必要になることであれば、経営者は何でも取り入れる必要があります。

スキルマップの作成と手順

そもそもスキルマップとは?

スキルマップとは従業員の業務遂行能力を一覧にして評価した表のことです。具体的には、縦軸に業務項目、横軸に所属している人の名前を並べて、項目ごとに習熟度を評価してまとめたものです。業務項目は人事評価に使われるような抽象化されたコンピテンシーのような項目ではなくて、現実的な作業が並んでいるようなイメージです。 例えば、Aさんは〇までできるけど、△はできない、のように一人一人の現状スキルの把握や〇までできる人は、A,B,Cさんで、△までできる人はBさんのみのように全体のスキルレベルの把握をして、育成計画を作るときに土台となる情報です。

スキルマップの作成方法

スキルマップは、業務項目の一覧と、能力評価指標の2軸からなっています。

業務項目一覧

主には同じ仕事をしている部署単位で業務遂行に必要な項目を上げていきます。 項目は大項目、中項目、小項目ぐらいの分類にして可能ならば難易度順に並べられるとその後の管理がしやすいです。項目をあげる粒度は小項目まで全部合わせて350個くらいまでが一般的と言われています。これ以上たくさんあると誰も管理できなくなってしまいますし、10や20だと少なすぎて総花的になってしまいます。 実際に育成をする際にも、現在の育成の主流はマイクロラーニングですから、一つの項目をできれば3分以内、長くても5分~10分くらいで終えられるような業務説明の動画を作るようなイメージで項目分類をしていってください。

能力評価指標

〇×のような簡単な分け方か、レベル分けかどちらかを選択します。レベル分けの場合は、下記の4段階くらいでよいでしょう。 レベル1:補助を受ければできる(独りではできない) レベル2:最後確認してもらえばできる(独りでできるが品質を決められない) レベル3:単独でできる レベル4:指導できる 営業の領域だと、レベル3をさらに2つに分けて、“覚えたことをしゃべることができる"レベルと“お客様のご要望に沿って、必要なことを伝えることができる"レベルなどとさらに細かく分けることもあります。

スキルマップの導入と活用方法

スキルマップの導入と活用方法 もしスキルマップがご自身の会社や部署にない場合には、作ってみることをお勧めします。最初作るのは大変ですが、ないということは知識やスキルの伝承は口伝で行われているということになりますので、効果測定は困難で、育成品質もブラックボックス化されているので非常に不安定です。 350個までとはいかなくても、まずは50個くらいから作ってみてください。部下と話をする中で、あれもこれもとご自身も気づかなかったような細かい作業が出てくると思います。 特に世代間のギャップがあることが課題になっている企業の皆さんはここの粒度が、若手と揃っていないことが育成の進まない大きな要因になっているので、「そんなの言わなくても分かるでしょ」というレベルまでかみ砕いてあげてください。恐らく、若手社員はそこが分からなくて聞きたいけど聞けないと思っているはずです。 そこまでかみ砕いて作ってあげると、何をするべきかが明確になるので、育成プランが計画しやすくなりますし、成長が見える化されます。若手社員は、次は何をすればいいのだろうか、今の僕に足りないものは何なのだろうか、全体像が見えないまま仕事をすることにとてもストレスを感じています。 このストレスがなくなり、将来を見据えて会話ができるようになるということは、まさに育成の目的である未来を創ることに他なりません。

人材育成の事例

コーポレートユニバーシティの活用

コーポレートユニバーシティは、文字通り企業内の大学です。独立した教育部門として、全社戦略に応じた育成企画をして実行することが目的です。CUを活用している有名な企業は下記です。

  • マクドナルド:ハンバーガー大学
  • ディズニー:ディズニーインスティテュート
  • トヨタ自動車:トヨタインスティテュート

選抜型育成プログラム

選抜型育成プログラムは、文字通り有能な社員を選抜して、選抜社員に手厚い育成を施すというものです。選抜型育成で有名な企業は下記です。

  • ソフトバンク:ソフトバンクアカデミア
  • P&G:Top Talent制度

OJTとタフアサインメント

OJTとタフアサインメントは、対象社員に負荷をかけて短期間で一気に成長させようという試みです。通常より負荷がかかるので、下記3点に注意する必要があります。

  • 「背伸び」と「ジャンプ」の段差の付け方とタイミング設計
  • アサインする仕事への対象社員の動機づけ
  • プロセスを見守りつつ、構いすぎないタイミングでフィードバックする

タフアサインメントで有名な企業は下記です。

  • 日立製作所:グローバルリーダーシップディベロップメント(GLD)
  • GE:ストレッチアサインメント

ここまで、人材育成の定番から最新まで、歴史を振り返りながら様々な手法を紹介してきました。最後に今回のまとめをします。

  • 人材育成は企業にとって未来を創ることなので必要不可欠なもの
  • 人材育成の歴史から見ても、今は働き方が根本から変わった大転換点
  • 新しい働き方には、新しい育成手法が必要
  • 「人は経験から学ぶ」ので人材育成を企画する際には「経験」をデザインする
  • 経験からの学び方の4ステップをデザインに組み込む
  • 育成対象によって、経験のポイントは異なる
  • 「背伸び」と「ジャンプ」の段差とタイミングを間違えないように
  • スキルマップで業務を350個に分解し見える化し、成長の進捗を見える化する
  • 最新の事例を参考に自社に合いそうなものを取り入れる

以上のようなポイントを参考に、皆さまの企業にあったやり方を見つけて、挑戦して頂ければと思います。

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