本稿のテーマ

本稿は筆者がコンサルティングを行う上で、もやもやしたことを整理していくシリーズの第一弾目である。テーマに関する論文や書籍を筆者が諸々読み込んだ上で、筆者や他のコンサルタントが経験したことも落とし込みながら、皆さまにもわかりやすく整理し、伝えていければと思う。

筆者は組織・人事のコンサルタントであり、人事制度の設計においても多種多様な業界や規模の企業と関わることがある。その中でいつも頭を悩ませるのが、「人事制度における平等・公平」についてである。なぜ悩ませるのかについては、至極単純なことである。企業によって何を平等・公平とみなすかが異なるからである。企業の理念、将来の方向性、社員のコミュニケーションスタイル、組織風土等々の要素で、その組織における平等・公平の基準は変わる。コンサルタントはヒアリングや企業訪問による観察を通して、それらを一つずつ紐解きながら、その企業における平等・公平の基準を明らかにし、制度に落とし込んでいけるように努める。筆者としては大変面白い仕事である。

閑話休題。今回は、筆者が頭を抱える「人事制度における平等・公平」について、本稿である前編と後編に分けて考えていきたい。前編では、平等・公平の定義を整理し、本稿における人事制度の平等・公平の定義を設定する。定義を踏まえ、人事制度における不平等・不公平とはどのようなものなのか、筆者が経験した事例や他のコンサルタントから聞いた事例を踏まえて見ていこう。もちろん事例は、実際の事例を参考にしているものの、あくまでも架空の会社を設定して説明する。事例を通して、不平等・不公平が発生する要因として、制度面での要因、制度の運用面における要因、2種類の要因を検討し、それぞれの要因に対する解決策を明らかにする。本稿では、制度面での要因を主に取り上げる。後編では、制度の運用面における要因を検討し、解決策へと進めていく。

平等・公平の定義 -equalityequityの違い

本稿のテーマとして平等・公平を掲げているものの、筆者も含め、かなり混在して使っていると認識している。改めて言葉の定義は重要であるため、見ていこう。

【図1equalityequityの違い(https://interactioninstitute.org/illustrating-equality-vs-equity/

平等equalityと公平equityの違いを分かりやすく示した図がある(図1)。読者の中にはご覧になったことがある方もいるだろう。これは3人の少年が野球の試合を観戦している絵である。彼らは身長が異なり、当然、身長が低い少年は木柵が高くて試合を観戦することが難しい。この絵では、「皆で野球の試合を観戦する」という求められる結果に対して、木柵という「障壁」が遮っており、満足に試合を観戦することができていない結果に至っていることを示している。いわゆる不平等inequality、不公平inequityの状態である。では、このような状態に対してどのように対応するかということを平等equalityと公平equityの観点から示したのがこの図である。平等equalityでは、3人の少年に皆、同じ木箱を同じ数ずつ配分している。木箱を与えられる機会が同等に割り振られているということであり、木箱を保持するという前提条件を一律にしている。公平equityでは、一番背の低い少年に木箱を2箱配分し、真ん中の少年に1箱木箱を配分することで、3人とも野球の試合が観戦できるように調整している。「個人で身長が異なる」という事情に合わせて、状態、前提条件を調整しているともいえる。調整の背景には、「野球の試合を全員が見ること」を優先する価値基準がある。つまり、公平equityには、物事を実現するために、判断基準の優先順位がある。そこには、人間の価値基準が含まれていることは想定する必要がある。野球観戦の事例を踏まえ、平等equality、公平equityの定義は、以下のように想定される(図2)。

【図2】平等equalityと公平equityの定義

定義に関しては、哲学や組織・人事関連の書籍を参照にしているものの、かなり幅広い定義がなされていたため、本稿では、「人事制度における」平等equalityと公平equityとして定義を設定している。人事制度における平等equalityと公平equityの定義を行った上で、どこに不平等inequalityと不公平inequityが発生するのか見ていこう。まず、人事制度は仕組みそのものである「プロセス」と、仕組みを通して決定される「アウトプット」に分けられる(図3)。

【図3】不平等・不公平が発生するところ

社員はアウトプットから、自身の扱いが平等equality・公平equityなのかどうか判断する。人事制度に当たるプロセスは、「前提条件を一律にする」平等equalityか、「人間の価値基準に基づく事情に合わせて前提条件を調整する」公平equityのどちらを重視するかという基準のもと設定される。その基準自体もグラデーションであり、完全に平等、完全に公平という人事制度は存在せず、仕組みにおける何らかの要素に対しては平等であるものの、別の要素では公平であるといったような設計思想が筆者の経験上、多い傾向にある。この「基準」が、「会社の方針」である。基準に基づきアウトプットを導き出すのが、「フロー」である。この「フロー」では、会社の方針でもある基準を遂行する運用者(評価者等)の価値観が反映される部分である。後編に当たる解決編は、主にこの「フロー」を対象とした内容になる。そして、不平等inequality・不公平inequityかどうか判断する基準となるのは、アウトプットである。社員が思う自身の貢献(パフォーマンス、スキル、専門性等)とアウトプットとのギャップや、その際に比較対象とする他の社員の貢献とのギャップから発生すると言われている。アウトプットに対して不平等・不公平感を抱くのは、プロセスの中にある、基準(=会社の方針)に課題があるのか、基準に基づきフローを遂行する運用側(=運用者の価値観)に課題があるのか、それぞれ切り分けながら課題を捉えていく必要がある。次章では、制度面での課題を事例に基づいて見ていこう。

人事制度における不平等と不公平

検討のための枠組み

本稿で設定した平等equalityと公平equityの定義に沿って、筆者が経験した事例や他のコンサルタントから聞いた事例を紹介していく。等級制度、評価制度、報酬制度におけるプロセスの基準とフローに分けて紹介する(図3)。プロセスの各制度における基準(=会社の方針)とは、アウトプットを出す上での判断基準となるものである。等級の格付けを決定する際、等級定義を基準とするのか、会社が設定した能力を基準とするのかという違いである。フローとは、アウトプットを出すまでの過程であり、フローを経て基準で判断する際には、運用者の価値観が反映され得る。基準とフローで構成されたプロセスに基づき、等級の格付けや評価結果、報酬といったアウトプットが決定される(図4)。

【図4】プロセスとアウトプットの関係

等級制度

等級制度におけるプロセスは、基準が等級定義、昇降格基準、フローは昇降格フローが中心となる。それぞれ、事例をもとに考えてみよう。

A社は全社統一で、職務に必要な能力を設定し、能力の発展段階を踏まえ等級を設定していた。いわゆる職能等級である。例えば、下位等級であれば、積極性や協調性、上位等級であれば、指導力や推進力、折衝力等の能力である。能力の内容は職種や部門によって違いはなく、具体的な基準については部門によって任せていた。仕組みにおける前提は「職能等級」であり、職能等級によって、「社員の能力を把握すること」を目的としていた。当然、昇格は能力を保持していることが基準で決定される。しかし、社員からは以下のような不満が寄せられた(図5)。

【図5】社員から寄せられた不満(等級制度)

一般社員Bさんは、同僚社員Aさんと比較し、職種が異なるにもかかわらず、同じ能力で等級が決定されることに不満があり、管理職Xさんは能力保持=経験年数という観点から、上位等級の中には、能力は保持しているものの、発揮しないベテラン層もいることに納得がいかず、能力を発揮し、活躍している若者は経験年数の不足から、昇格の機会を与えられていないことに不満がある。

制度における前提条件と社員が求める前提条件を比較し、何がずれているのか見てみよう(図6)。

【図6】平等・公平と不平等・不公平(等級制度)

第Ⅰ章の野球の試合の観戦の絵のように、仕組みにおいて平等・公平を担保したつもりでも、人によってはそれを不平等・不公平だと思う人がいる。しかし注意する必要があるのは、制度自体も何も不平等・不公平を生むために設計されたわけではないということである。設計当時においては、職能等級で能力保持を基準に昇格することが、「平等・公平」だったということである。当時は、誰しもが同じ作業を同じ工程で実施することが求められ、求められる能力は共通であった。そのような状態においては、職能等級というのは、「平等・公平」な基準ともいえる。しかし、A社は事業拡大により、部門も増え、職種も多様化している。そのような状況であれば、全社統一で共通の能力を設定することは「不平等・不公平」になり得るであろう。つまり、不平等inequality、不公平inequityを生む要因として挙げられるのは、“設計当時の思想や社会構造が時代を経るについて変化していること”である。しかし人によって、あるいは時代によって不平等・不公平だと感じる基準や内容は様々であり、それらの内容に対して、一つ一つ人事制度を改定するのは、パッチワーク的な人事制度、増改築を繰り返し、収集が付かなくなった人事制度になり得る。注意する必要があるのは、不平等感・不公平感に対する不満は個人の不満なのか、全体の不満なのかの見極めが必要であるということだ。その見極めもないまま、言われるがままに、声の大きい人の意見に合わせて修正を重ねていては、軸がぶれた人事制度になる。軸がぶれた人事制度は評価制度が分かりやすい。次項で見ていこう。

評価制度

評価制度におけるプロセスは、基準が評価基準、フローは評価結果を出すフローである。それぞれ事例をもとに考えてみよう。特に評価制度は評価者の好みや主観が入り込みやすく、人事制度における軸がぶれている場合、かなり制度に対する不満や不平は起こりやすくなる。次の事例はB社の事例である。

B社はMBOを導入している。半期ごとに目標を設定し、達成基準に応じて評価をつけている。達成基準は成果も行動も固定であり、行動の達成基準は期待を超えたかどうかによる5段階で設定されている。評価は一次評価が絶対評価であり、二次評価以降は相対評価で実施する。評価の基準、手続きについては公開されている。評価結果は、点数は公開せず、SABCD5つのランクで開示している。フィードバックで使用される評価結果は二次評価である。仕組みにおける前提は「統一の評価基準で成果・行動を評価すること」を前提とし、統一された評価基準により、「相対的に社員の実力値を把握すること」を目的としていた。しかし社員からは以下のような不満が寄せられた(図7)。

【図7】社員から寄せられた不満(評価制度)

管理職Yさんが管理する部門は、新規事業のため、全社統一で設定された評価基準では、なかなか目標達成することが難しい状況である。目標の難易度を調整すればよいものの、部門目標との兼ね合いもあるため、厳しい状況である。管理職Zさんは一次評価者であり、自身が行った評価が、二次評価、最終評価の相対評価を通して、変化することに対して、フィードバックの難しさを抱いている状況である。

制度における前提条件と社員が求める前提条件を比較し、何がずれているのか見てみよう(図8)。

【図8】平等・公平と不平等・不公平(評価制度)

評価制度において厄介なのは、仕組みにおける平等・公平も、社員の求める平等・公平もどちらも間違いではないということである。全社統一の評価基準や相対評価は、「会社全体における社員の位置づけを把握したいという目的を達成するため」であれば、個人の実態等は取っ払って遂行する必要がある。一方、「個人の実力値を確実に把握したい」あるいは、「個人や部門の実態に合わせて評価をすることが社員のエンゲージメントである」という目的や考え方があるのであれば、絶対評価で一貫した評価を実施することが必要であろう。ここで確認しておく必要があるのは、絶対評価というのは、評価者の価値観に基づく評価が認められるものである。そして相対評価というのは、順位をベースに色々な基準からその順位を組み替えていくことである。Yさんの事例の場合、全社統一で評価基準を設定することは、社員に皆平等に与えられた基準である。しかし、部門の状況によっては、統一された基準では実態と離れた基準となるため、不公平感を抱く人もいる。また、Zさんの事例の場合、「相対的に社員の実力値を把握すること」を目的とし、相対評価を前提に実施し、全社内、部門内の相対的な位置づけを明確にしていたが、「自部門とは関係ない他部門や全社の評価結果の傾向に応じて、勝手に自部門の評価も変わってしまう一貫性のなさ」に不平等感を抱いている。両者は「相対的に社員の実力値を把握する」という目的自体にも納得感を抱いていないと想定される。ただし、不平等感、不公平感を発生させているのは相対評価そのものなのだろうか。ここは慎重に考える必要がある。前述したように、相対評価は、何らかの基準に基づいて順位を組み替えていく評価方式である。とすると、順位を組み替える基準は、納得が及ぶものであれば、相対評価でも問題ないという考えもある。つまり、Yさん、Zさんが抱く不平等感、不公平感は評価基準や評価方式そのものに対するものではなく、その背景にある基準の決め方にあると想定される。B社の相対評価は、部門や全社での調整は行うものの、その調整基準は、「同期のAさんをA評価とするなら、かわいそうだからBさんも評価をあげよう」といったように、非常に恣意的なところもある。そのような基準で、評価が調整されているのであれば、不平等感、不公平感が発生するのは否めない。また、フィードバックで活用する評価結果は、どの評価を活用するのかという点も、平等・公平の担保には重要である。とはいえ、フィードバックに関しては、仕組みというより、運用の要素が強いため、後編で主に記載する。

 評価制度は、平等・公平を担保したつもりでも、人によってはそれを不平等・不公平だと思う人がいる。しかし、一人ひとりの不平等感・不公平感を解消するには限界がある。個人が抱く不平等・不公平の内容は千差万別であり、それぞれに仕組みで対応していると、それこそパッチワーク的な人事制度、軸がぶれた人事制度になりかねない。そこで重要なのは、“会社としてのルールは何か、実現したいことはなにか、仕組みに対するメッセージを明確にする”ことである。特に昨今は、多様な人が集まりやすい傾向にある。企業において、多様な人々が多様な働き方を行うというのは、昨今求められる姿ではあるが、だからといって、経済活動を行う上でも、その企業におけるルールは必要である。仕組みにおいて、多様な人々を公平に評価するためには、各々の事情に即して評価をする必要があるが、最低限守るべきルールは何か、仕組みは何か検討することが求められる。

報酬制度

報酬制度は比較的、仕組みによって平等equality・公平equityを担保しやすい制度である。しかしその仕組み自体に欠陥があれば、報酬に繋がる仕組みであるため、かなり不満をため込みやすい制度と言える。また、報酬を分配する判断として評価制度が一要素として挙げられるが、評価そのものが適切でない場合、報酬の分配も不平等inequality・不公平inequityなものになり得る。報酬における運用は後半で見ていくとして、制度における事例を、C社の事例を参考に見ていこう。

 C社はMBOによる評価結果に基づき報酬を決定する。上位等級は年俸制、下位等級は月給賞与制である。上位等級の金額の決め方は経営による判断であり、下位等級の金額の決め方は、本人の金額を基準に昇給していく積み上げ方式であり、昇給TBL は評価ごとに円で設定されている。月給賞与制の対象者は等級が高くなればなるほど、昇給TBLは評価が低い場合、降給が発生するメリハリのある設計となっている。報酬に関しては職種ごとの違いはなく、全社統一で設定している。手当は業務に関する手当とは別に家族手当を配偶者、子供それぞれに支給している。仕組みにおける前提は、「報酬は等級で統一すること」を前提とし、「等級ごとに評価に応じてメリハリをつけつつ報酬を分配すること」を目標とする。しかし社員からは以下のような不満が寄せられた(図9)。

【図9】社員から寄せられた不満(報酬制度)

一般社員Cさんは設計や企画に関する職種である。そして社内には組立を行う職種があり、同等級とはいえ、職種で見ると市場価値が異なる中で、分配される報酬が同一であるというところに不満を抱いている状況である。一般社員Dさんは、同等級・能力でありながら、結婚や子供の有無によって家族手当が支給され、その分支給される給料の額が変わるところに不満を抱いている。管理職Oさんは、管理職として、同じことを毎日コツコツやるような仕事は高評価を取りにくく、なかなか昇給ができない、あるいは降給することがあることを懸念している。 制度における前提条件と社員が求める前提条件を比較し、何がずれているのか見てみよう(図10)。

【図10】平等・公平と不平等・不公平1(報酬制度)

まずはDさんの事例から見ていこう。Dさんの事例は他の二人の事例とは異なる論点である。家族手当の支給が始まったのは数十年前のことである。当時は、地方自治体の子供に対する支援もそこまで進んでなく、会社として福利厚生の充実さをアピールするにおいて、家族手当を支給するという手段が取られた。しかし、時代が進み、共働きの家庭が増え、地方自治体の支援も増えてくると、改めて家族手当の存在意義が問われるようになった。これは、等級制度の要因でも述べた“設計当時の思想や社会構造が時代を経るについて変化していること”に当てはまる。解決編では、手当とも絡めながら、この要因に対する検討策を考えて行こう。

次はCさんとOさんの事例である(図11)。

【図11】平等・公平と不平等・不公平2(報酬制度)

Cさんの事例の場合、全社統一で報酬の分配を実施することは、「等級を基準として、評価に応じてメリハリをつけて分配する」という点では必要な前提条件である。しかし、職種によって市場価値が異なる場合、等級を基準に統一することは、外部環境の同職種との比較で不公平感を抱く人もいる。Oさんの事例の場合、昇給の仕組みにおいては、「業績に貢献した高評価者には高い昇給を、一方、業績に貢献していない低評価者には降給を設定することで、業績に貢献した人に報いる仕組みにする」という目的があるものの、Oさんにとっては、業績に貢献していないとしても、なくてはならない仕事があり、毎日コツコツやっている人が高評価を取れず、昇給されないこと、いわゆる、「業績貢献という軸から外れる人たちにも適切に報酬が分配されていないこと」に不平等感を抱いている。

 以上が報酬制度の事例である。Dさんの事例では、手当を取り上げ、共働きや地方自治体の支援の充実という観点から時代の変化を取り上げているが、新たな観点として少子高齢化が出てきている。手当が必要なのかどうかは、評価制度で述べたように、会社のメッセージとして支給意図を明確にする必要はあるが、解決編では、時代の変化も取り上げつつ、変化に伴い発生する手当の自己選択権と拒否権も取り上げ、平等・公平を判断する指標として検討してみたい。Cさん、Oさんの事例で明らかになったのは、C社における「貢献」とは何かが明確になっていないことである。貢献は簡単に使える言葉ではあるが、業績向上の貢献、育成の貢献等様々な貢献の在り方がある。また、業績向上の貢献も、直接的な貢献だけでなく、間接的な貢献も含むのか、含まないかで企業によって異なる。例えば、製造においては、物を組み立て、目安とする数まで作っていくことは、利益に繋がる貢献行動と言える。そして、物を組み立てるために必要な素材を運ぶ仕事は、直接、利益を生む行動ではないにしろ、間接的に利益を生み出す仕事であると捉えられる。この間接的な貢献を、企業としての貢献行動に含むか含まないかは、様々である。また、会社が認識している貢献と、個人が認識している貢献が異なることも起こり得る。第Ⅱ章で述べたように、不平等・不公平と感じるのは、社員が思う自身の貢献と結果のギャップによって発生しやすい。つまり、社員が思う貢献が会社の認識する貢献とずれていた場合、結果のギャップが発生するのは当然のことであり、そこから不平等感・不公平感を感じやすい。“会社として求める貢献行動は何か、明確にすること”が求められるであろう。

不平等・不公平が発生する要因

以上、等級制度、評価制度、報酬制度の事例から、仕組み自体は平等・公平を担保していたものの、いくつかの要因により、人によっては不平等・不公平に感じられてしまうことを紹介した。では、前編の最後に、平等・公平を担保しているはずの仕組みが、不平等・不公平になってしまう要因と、その解決の方向性についてまとめていく。要因とその解決の方向性として本稿では、以下の3点を取り上げる。

① 設計当時の思想と現状の社会構造の変化の不適合
→どのくらい価値観がずれたら人事制度を刷新するのか検討する(どのようにGAPを見つけるか)

② 企業における平等・公平の在り方が不明確
→仕組みを踏まえて実現することやメッセージを明確にする(どのような考え方でメッセージを設定するか)

③ 社員が思う貢献行動と会社が認識している貢献行動の齟齬による結果のギャップ
→会社として求める貢献行動を明確にし、周知する(貢献行動はどのように設定できるか)

要因を明らかにした上で、事例も踏まえながら総括として、簡単に不満が発生する全体像を以下のようにまとめてみた(図12)。

【図12】要因の全体像

以上を踏まえ、後編「解決編」では、仕組みにおける不平等・不公平が発生する要因に対する解決策、運用における解決策、組織全体での解決策を見ていこう。

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