通信技術・デバイス・ソフトウェアなどの開発が進むに連れて、ビジネス界でも環境のデジタル化が急務となりました。社内にデジタル環境を構築するにも、その環境を業務に活かすにもデジタル人材の存在が必要です。しかしデジタル人材は業界を問わず不足しているのが実情で、日本全体の課題として注視されています。今回はデジタル人材が不足している原因や、企業が人材確保のために取り組める施策について見ていきましょう。

デジタル人材の概要

デジタル人材の重要性を理解するために、まずはデジタル人材とは何かについて概要を押さえておきましょう。

デジタル人材の定義

デジタル人材は一般的に「最先端のデジタル技術を駆使して企業が行う事業に価値を提供する人材」のことを指します。ここで言う先端技術とはIoT・AI・ビッグデータなどです。デジタル人材は単にデジタル機器やツールの扱いに長けているというだけでなく、データ分析力やコミュニケーション能力など組織が抱える課題の解決に有用なスキルを身に付けている点が特徴と言えます。

デジタル人材とよく似た言葉

デジタル人材と混同されがちなワードとしては「IT人材」と「DX人材」の2つが挙げられます。似たようなニュアンスで用いられることも多いこれらの言葉ですが、実際には異なる意味を持つので注意しておきましょう。IT人材は中小企業庁が公表した「中小企業白書(2016年)」の中で「ITの活用や情報システムの導入を企画・推進・運用する人材」とされています。デジタル人材が幅広くビジネスへの付加価値提供を行うマクロな役割を担っているのに対して、IT人材が担う役割は比較的ミクロな視点で高度な技術力が要求されるのです。また、IT人材は得意分野に応じて「従来型IT人材」「高度IT人材」「先端IT人材」の3種類に分かれます。

DXとは「デジタル・トランスフォーメーション」の略称であり、デジタル技術の活用によって業務プロセスやビジネスモデルに変革をもたらす取り組みのことです。日本では経済産業省が旗振り役となって企業のDX化を推進しており、DX人材の需要が高まっています。DX人材は企業のDX化を牽引するポジションであり、リーダーシップ・マネジメントスキル・構想力などが必要です。技術的な側面で言えばUI/UXやデータサイエンスに関する知識が求められます。DX人材は広義で言えばデジタル人材の一部として捉えることが可能です。デジタル人材の中でも環境やビジネスの変革に特化した人材がDX人材であるとイメージすれば分かりやすいでしょう。逆に言えば、デジタル人材もまた企業のDX化に必要とされている人材なのです。

日本でデジタル人材が不足する背景

日本のデジタル人材不足は慢性化しているとされ、各業界ではデジタル分野での人材獲得競争がヒートアップしています。ではなぜ日本ではデジタル人材が不足しているのか、ここではその原因について深く掘り下げてみましょう。

少子高齢化の影響

総務省が公表している「日本の人口推計」によれば、2022年10月1日時点で日本の総人口に占める65歳以上の割合は29%となっており1950年の4.9%から右肩上がりで推移しています。高齢者の割合が増える一方で15歳未満の割合は2022年10月1日時点で11.6%、1950年の35.4%からほぼ右肩下がりです。経済の担い手である生産年齢人口(15~64歳)の割合は1990年の69.7%をピークに下落が続き、2022年10月1日時点で59.4%になりました。つまり日本では労働人口の母数が減少しているため、相対的にデジタル人材の数も少なくなっているのです。

技術進化の早さ

デジタル分野の成長は著しいものがあり、2000年代に入ってから市民生活の様々な場面でも利便性の向上が実感できるようになりました。しかし技術の進化スピードが早いのは良いことばかりでなく、人材育成が追い付かないというデメリットもあります。最新技術の習得が求められるデジタル分野では身に付けた知識やスキルがすぐに「古いもの」になってしまい、学習コストや労力がかさみがちです。企業側でもデジタル人材育成のノウハウが蓄えられていないケースが多く、効率的な学習環境が整っていないと言えるでしょう。

人材ニーズの高騰

DX化は業務効率化や生産性向上に大きな効果が期待されており、多くの企業がデジタル人材やDX人材を欲しがっています。需要が高まって積極的な採用活動が行われれば、当然市場に残るデジタル人材は少なくなるでしょう。2020年から流行が始まった新型コロナウイルスによる生活様式の変化も、ビジネスのデジタル化やDX化の必要性を高めました。いち早くデジタル人材の確保に乗り出した企業はその重要性を理解しているため、人材流出の抑制にも力を入れています。一部の企業にデジタル人材が集中することで、ビジネス界全体を見るとデジタル人材が不足している企業が増えるという現象も起きているのです。

IT職種へのネガティブイメージ

特定分野を担う人材を増やすためには、その仕事に就きたいと感じてもらうことが重要です。しかしIT系の職種が世間一般で持たれているイメージは、必ずしも良いものではありません。IT系職種は業務量が多くキツいというイメージが先行しており、需要が高まる一方で志望者の数は追い付いていないのが現実です。

デジタル人材不足解消に向けた企業の取り組みとは

業種や業界を問わず、デジタル人材が不足している状況を看過するのは市場優位性の放棄を意味しています。現状を打破するための施策としては以下のような取り組みが挙げられるので、自社で実践しやすいものをチェックしてみてください。

既存業務の自動化・効率化

デジタル人材不足の解消に取り組む際は、まず自社で行っている既存業務を見直してみるのが基本です。定型化している業務については外部ツールの導入によって自動化・効率化が可能なものも少なくないでしょう。社内で雇用しているデジタル人材が効率化されていない業務に従事していると、せっかくのスキルを最大限に発揮することができません。既存業務が最適化されればデジタル人材の負担が軽減され、業務指示や配置の見直しで能力を活かしてもらえる可能性が高まります。

採用強化

デジタル人材不足の解消にはスキルを身に付けた人材を採用するのが近道ですが、一般的な採用プロセスを展開するだけでは効果的にデジタル人材を募ることは難しいでしょう。デジタル人材の採用活動においては、中途採用やヘッドハンティングなど多様なアプローチを用いることが大切です。中高年であっても高度なデジタルスキルを身に付けている人材は積極的にチェックしましょう。また、デジタル人材は活躍の場が広いため「自社が必要としているスキル」を明確にして人材とのマッチング精度を高めるようしてください。福利厚生や労働条件の面で他社と差別化を図るのも有効です。

育成と定着

既存社員をデジタル人材として育成するというパターンもあります。そのためにはまず従業員が効率的に学習を進めるための「環境作り」が重要です。基礎的な知識を学ぶための座学は、外部の研修プログラムやeラーニングを活用するとスムーズに身に付けてもらえます。デジタル分野の知識はインプットとアウトプットをバランス良く行うことで定着するため、OJTを実施するなどして実務環境でのスキル運用経験を積んでもらいましょう。育成に成功すれば、中高年世代の従業員がデジタル人材としてDX化を牽引してくれるようになる可能性もあります。

また、せっかく育成した人材が転職で外部へ流出してしまわないようにするための対策も大切です。デジタル人材は業務と並行して知識やスキルのアップデートが必要になるので、リモートワーク・フレックスタイム制・休暇制度などでワークライフバランスを整えやすい環境を構築しましょう。

アウトソーシング

新規採用や社内での育成が難しい場合は、デジタル分野の業務をアウトソーシングするという選択肢を視野に入れましょう。委託コストが発生するものの、採用や教育にかかるコストと比較すると短期的には安上がりになるケースもあります。既に専門的な知識やスキルを身に付けた人材に依頼可能なので即効性が期待できる点もメリットです。ただし社内にデジタル分野のノウハウが蓄積される訳ではないので注意してください。

外部パートナー

デジタル人材の確保において取るべき方針が明確に見えないようであれば、デジタル分野に長けたコンサルタントを頼るのもおすすめです。外部パートナーによる指導を得られれば自社の課題がハッキリと分かるようになります。それだけでなく、コンサルタントはデジタル人材の育成や確保についても具体的な施策を提案してくれるため、人材不足の根本的な解決に効果が期待できるでしょう。経営に第三者の客観的視点を取り入れるという意味でも有用な選択肢です。

デジタル人材は未来を担う重要な役割を担っている!不足を補うための施策は早めに展開しよう

デジタルとビジネスは切っても切り離せない関係にあり、DX化の流れからもデジタル人材の需要は高い水準を維持しています。デジタル人材の不足は業務効率低下や機会損失にも繋がるため、早期の対応が重要です。採用や育成で自社に人材を確保するのがベストですが、場合によってはアウトソーシングや外部パートナーとの契約が有効なケースもあります。自社の状況を見極めてデジタル人材不足解消に有効な施策を実践しましょう。

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