1週間のうち3日間の休日を設ける週休3日制。働き方改革の一環として、徐々に導入する企業が増えてきています。しかし、選択的週休3日制はまだまだ浸透しているとはいえません。自身の会社で導入されていなくても、選択的週休3日制について気になっている方が多いのではないでしょうか。ここでは、選択的週休3日制がいつから導入されるのか、公務員は義務化されるのかなどについて解説します。

選択的週休3日制とは?

選択的週休3日制とは、希望すると1週間のうち3日間休める制度のことです。日本政府が発表した「骨太の方針2021(経済財政運営と改革の基本方針2021)」の中で、選択的週休3日制を促進していくことが盛り込まれました。選択的週休3日制は義務化される予定はありません。しかし、働き方改革の一環として一部の民間企業で導入されつつあります。選択的週休3日制は、「給与減額型」と「総労働時間維持型」、「給与維持型」の3パターンに分けられます。

総労働時間とともに給与が下がる「給与減額型」

給与減額型は、休日が増えた分だけ総労働時間が減り、給与も下がるというパターンです。1日あたりの労働時間が変わらず総労働時間も減少するため、給与が下がってしまうのです。給与減額型は、育児や介護などで短時間勤務を希望する社員向けに導入するケースが多い傾向にあります。給与減額型を導入する場合は、給与の減額を受け入れてまで週休3日制を選ぶ社員がいるかどうか考える必要があるでしょう。

総労働時間と給与のどちらも変わらない「総労働時間維持型」

総労働時間維持型は、総労働時間を維持することで給与も変わらないというパターンです。総労働時間を維持するために、選択的週休3日制になると1日あたりの労働時間が増えるのが特徴。もともと1日の拘束時間が長い企業の場合、残業代が少なくなるので給与の総支給額は減少する可能性が高いでしょう。

給与は変わらず総労働時間が減る「給与維持型」

給与維持型は休日が増えて総労働時間が減るものの、給与額は変わらないというパターンです。1日あたりの労働時間も毎月の給与も、週休2日制と同じです。労働者側からすると理想的なモデルですが、企業側は労働時間が減っても同じレベルの仕事が期待できるのか検討する必要があります。

選択的週休3日制のメリットとデメリット

選択的週休3日制には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

メリット

時間的余裕が生まれてストレスが減る

選択的週休3日制を導入するメリットの一つは、休日が1日増えることで時間の余裕が生まれることです。多くの会社員は、満員電車などの通勤で長時間拘束されています。1日でも多く満員電車で通勤する日が減れば、通勤時のストレスが大幅に減るでしょう。また時間に余裕が出てくると、副業やスキルアップなど自分の好きなことに時間を有効活用できるようになります。

コスト削減が期待できる

選択的週休3日制を導入すると、コスト削減も期待できるかもしれません。従業員の出勤日数が減れば、光熱費や交通費などが削減できます。また、総労働時間が減ったら、人件費を削減できる可能性もあります。

優秀な人材を確保できる

選択的週休3日制は、働き方の選択肢を増やす制度です。仕事とプライベートを両立しやすくなれば、育児や介護などの理由で離職を考えている優秀な人材がそのまま働いてくれる可能性があります。また、ワークライフバランスを重視する方にとって、十分なプライベート時間を確保できる選択的週休3日制は魅力的な制度だといえます。現状ではあまり普及していない制度なので、魅力的だと感じてもらえる可能性が高く求職者が集まりやすいはずです。

デメリット

1日あたりの労働時間が増える可能性がある

選択的週休3日制が導入されたとしても、これまでと同じ業務量をこなさなければいけない可能性が高いです。出勤日が1日減る分、1日あたりの労働時間を増やさないと、業務が終わらないかもしれません。勤務時間を増やさないためには、従業員一人ひとりがこれまで以上に生産性について考える必要があるでしょう。また業務内容を改めて洗い出し、効率化できるところがないか検討することをおすすめします。

給料が減る可能性がある

選択的週休3日制は、給与が下がる可能性があります。給与が下がらない方法を導入している会社もありますが、労働時間に応じて給与が下がるところが多い傾向にあります。選択的週休3日制で給与が減るのが嫌なら、より条件の良い企業を探したり副業を始めるなど、早めに対応策を考えておきましょう。

保活に影響が出てくる

特に都心部では待機児童が多く、「保活」という子どもを保育園に入れるために保護者が行う活動が盛んです。多くの自治体は家庭環境をポイントによって順位付けしており、保育園の必要性が高い家庭から入園できる方法を採用しています。自治体によって制度が異なりますが、週休3日制を取得すると保活に影響が出る可能性があります。例えば、東京都世田谷区の場合、「週5以上の勤務かつ週40時間以上の就労」は50点となりますが、「週4日以上の勤務かつ週35時間以上の就労」になると減点されてしまいます。育児のために週休3日制を検討している場合は、保活に影響しないかどうかも確認することが大切です。

週休3日制を導入する企業

実際に選択的3日制を導入している企業は、どのような制度で運用しているのでしょうか。

みずほファイナンシャルグループ

みずほファイナンシャルグループでも、選択的週休3日制が導入しているといわれています。休日を利用してスキルにつなげたり、家族のための時間を増やすなど、柔軟的な働き方を進めるのが目的。ただ、みずほファイナンシャルグループは給与減額型を採用しており、総労働時間が減る分だけ給与も下がります。

ヤフー株式会社

ヤフー株式会社では育児や介護など家族のサポートをしている社員向けに、給与減額型の選択的週休3日制が導入されています。制度を利用できる社員は、「小学生以下の子どもを養育する社員」「家族の介護や看護をする社員」が対象です。ヤフー株式会社の選択的3日制は、月単位で利用申請できるのが魅力。「子どもの夏休みに合わせて休みを増やしたい」、「入院した家族のサポートをしたい」といった場合などに制度を利用できます。

ヤマト運輸株式会社

ヤマト運輸株式会社では、「労働日数・時間選択制度」が導入されています。1日あたりの労働時間は4・5・6・7・8時間の中から選べますし、週休3日制や週休4日制が選択できるようになっています。一定の条件に該当する対象者に対する制度ではあるものの、ライフスタイルに応じた働き方が実現できるでしょう。

公務員の週休3日制は義務化される?

公務員の選択的週休3日制がいつから導入されるかは未定です。政府の方針として、まずは民間企業への導入を進めてから公務員に広めていきたいと考えられています。公務員が選択的週休3日制を取り入れる場合、まずは制度づくりが必要となるでしょう。担当者が休んだとしても、業務が回る体制を構築しなければいけません。また公務員は副業が禁止されているので、給与が減るようなら、副業を解禁するのかどうかも検討する必要が出てきます。制度の改正が必要になる場合が考えられるので、民間企業よりも導入に時間がかかるでしょう。

(※追記)人事院は2025年4月1日までに、勤務時間法を改正し、国家公務員に対して「週休3日」の制度を導入するよう、内閣と国会に提言しました。この制度は、総労働時間を変更せずに、土日以外にも休日を1日取る柔軟な働き方を実現するものです。政府はすでに2023年6月に「骨太の方針2023」を閣議決定し、その中で「週休3日制度の拡充」を重要な施策として位置づけており、民間企業にも同様の変化が広がることが予想されます。

選択的週休3日制について理解しよう

週に3日間休日が取れることはメリットもありますが、従業員側にも企業側にも少なからずデメリットが存在します。しっかり検討した上で選択的週休3日制を導入しなければ、企業にとって良い制度にはなりません。選択的週休3日制はまだ義務化されていないので、制度についてしっかり理解する時間があります。まずは選択的週休3日制について理解することから始めましょう。

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