企業の経営者や人事担当者にとって、インボイス制度は必ず知っておくべき重要な制度です。もっとも、そもそもそれがどのような制度であるのかや、具体的にいつから開始されるのかという点について詳しく理解しているという人は意外と少ないのではないでしょうか。そこで以下では、インボイス制度の内容と併せて、その導入時期や経過措置などについて見ていくことにします。

インボイス制度とは?

まずはじめに、インボイス制度の概要について見ておきましょう。

制度の概要

インボイス制度というのは、あくまでも通称であり、正式には適格請求書等保存方式という制度であるという点を頭に入れておくようにしましょう。ここでインボイス、すなわち適格請求書というのは、適用税率や税額の記載を義務付けた請求書のことで、この記載義務を満たした請求書によって消費税を計算して納付するというのがインボイス制度と呼ばれるものです。2022年時点において、日本の消費税率は原則10パーセントとなっていますが、例外的に食品や定期購読の新聞などには8パーセントの軽減税率が適用されるようになっています。そのため、商品の買い手が適用される税率が8パーセントと10パーセントのいずれなのかが分かるようにするために、売り手が買い手に対してインボイスを発行して税率を知らせるために設けられたのが、この制度の趣旨なのです。

適格請求書

従来の区分記載請求書には、「請求書発行者の氏名または名称」、「取引年月日」、「取引内容」、「取引金額」、「請求書受領者の氏名または名称」、「軽減税率の対象である旨の表記」、「税率ごとに区分して合計した税込対価の額」の7つの項目の記載が必要とされていました。これに対し、インボイス制度において求められることになる適格請求書には、この7項目に加えて、「インボイス制度の登録番号」、「適用税率」、「消費税等の額」を追加で記載しなければなりません。これらの項目の一つでも欠けていると、適格請求書として認められない可能性がありますので、まだ準備ができていないという事業者は必ず制度の導入までに対応するようにしなければなりません。

適格請求書発行事業者

適格請求書は、誰でも自由に発行できるというわけではありません。というのも、適格請求書を発行するためには、消費税の課税事業者である必要があるからです。日本国内で、事業者が事業として対価を得て行うサービスの提供や資産の譲渡・貸付については消費税が課されるというのが原則ですが、課税期間の基準期間(原則として個人事業者であれば前々年、法人であれば前々事業年度)における課税売上高が1,000万円以下である場合には納税が免除されています。そのため、この免除措置を受けられる事業者は、適格請求書を発行することはできません。

インボイス制度の開始時期とそれによる影響

では次に、インボイス制度がいつから開始されるのかと、それによってどのような影響が生じるのかという点について説明します。

開始時期

インボイス制度の開始時期は、2023年10月1日となっています。この開始日から適格請求書等を発行するためには、2021年10月1日から2023年3月31日までの間に所定の登録申請書を提出しなければいけません。(※追記「インボイスの実施が行われる前(2023年10月1日まで)であれば、登録申請を取り下げることが可能です。また、2023年9月30日までに登録申請を行っていれば、10月1日以降に発行される番号を取引先に伝えることで問題ありません。」)もしこの期限に申請書を提出しない場合には、翌年にならないと適格請求書等を発行できなくなってしまいますので、適格請求書等の発行を予定している事業者は、忘れないように必ず申請するようにしましょう。

区分記載請求書等保存方式の廃止

消費税法が改正されて8パーセントと10パーセントの税率が混在するようになったのは、2019年10月1日からであり、そこからインボイス制度が開始されるまでの間に、税率が正しく適用されるようにするために暫定的に設けられたのが区分記載請求書等保存方式という仕組みです。区分記載請求書等保存方式は、あくまでもインボイス制度が導入されるまでのつなぎの制度という位置づけであるため、2023年10月1日以降は役目を終えて廃止されることになっています。そのため、インボイス制度が開始された後は、消費税の納税義務を負っている事業者は、区分記載請求書ではなく適格請求書を発行しなければなりません。なお、これはたとえ軽減税率が発生しない、すなわち複数税率が発生しないような業種であっても同様です。

仕入税額控除の要件の変更

従来は仕入税額控除を受けるための要件は、2019年10月1日以降は区分記載請求書等保存方式とされていましたが、インボイス制度の開始以降は、適格請求書等保存方式へと要件が変更になります。また、それに伴って、買い手は一定事項の記載がある帳簿と請求書等を保存する義務が発生することになりますので、必要な書類が廃棄されないように、しっかりと管理しなければなりません。ただし、3万円未満の公共交通機関を利用した際の乗車券や3万円未満の自動販売機でのジュースの購入、ポスト投函での郵便サービスの利用などに該当する場合には、請求書の保存は必要でなく、帳簿のみの保存で足ることとされています。他にも、出入口で回収される入場券、従業員に支給する日当や宿泊費、適格請求書発行事業者でない者からの再生資源等の購入、古物商等が適格請求書発行事業者でない者から購入した棚卸資産といった場合も同様です。

売上1000万円以下の免税事業者への影響

インボイス制度の導入によって、適格請求書を発行することができない事業者からの仕入れについては仕入税額控除が認められなくなります。そのため、買い手としては、仕入税額控除を受けたければ、免税事業者以外の事業者から商品やサービスを購入する必要が生じます。一方、免税事業者としては、適格請求書を発行できないと取引先から取引を停止されてしまうおそれがあります。そういった事態を避けるためには、消費税課税事業者選択届を税務署に届け出て課税事業者になる必要があるでしょう。

インボイス制度の経過措置

前述のように、インボイス制度が導入されると、免税事業者は仕入税額控除を受けたい取引先から取引を打ち切られてしまうおそれがあります。その影響は非常に大きいため、少しでも免税事業者にネガティブな影響が生じるのを防止するために、制度の導入に際して国税庁は段階的な経過措置を設けているのです。

この経過措置の期間はインボイス制度の開始から6年間となっており、当初の2026年10月までの3年間については、免税事業者からの仕入れについては仮に適格請求書等がなかったとしても80パーセントまでは控除されることが認められています。2026年10月から2029年10月までの3年間については、同様に50パーセントまでは控除可能となっており、2029年10月以降は経過措置が終了して適格請求書等が発行されないと仕入税額控除の適用を受けることができなくなるのです。

なお、経過措置の期間中であっても、控除の適用を受けるためには、区分記載請求書等と同様の形式で作成された書類とその旨が記載された帳簿の保存が必要になるという点に注意しなければなりません。経過措置があるからといって、何も書類を用意していないと、控除が受けられなくなってしまいますので、そのような事態に陥らないように必ず必要な書類を保存しておくようにしましょう。

インボイス制度の内容を把握しておこう

以上で見てきたように、インボイス制度が開始されるのは2023年10月1日からですが、それ以降も2029年10月までの6年間については経過措置が設けられています。ただし、当初の3年間とその後の3年間では経過措置の中身はやや異なっていますので、制度の内容と併せて経過措置についてもしっかりと把握しておくようにしましょう。

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