福利厚生は必ずしも決まった内容でなければならないわけではなく、企業によって導入されている制度は様々です。では、なぜわざわざコストをかけてまで福利厚生を充実させる必要があるのでしょうか。以下では、その答えを知るために、福利厚生の目的とメリットについて見たうえで、ユニークな事例についても紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。

福利厚生制度の種類

まずはじめに、福利厚生には、法定のものと法定外のものの2種類があるという点を頭に入れておきましょう。以下、それぞれの意味について順番に見ていきます。

法定福利厚生

法定福利厚生というのは、文字通り、法律によって定められている福利厚生を意味します。福利厚生の内容は企業によって様々ですが、法定福利厚生については原則として全ての企業が導入しなければなりません。もし、導入せずにいると法律違反となって処罰を受ける可能性がありますので、必ず法律の規定を確認して漏れのないようにしましょう。なお、法定福利厚生にもいくつかの項目がありますが、代表的なものとしては、健康保険や厚生年金、雇用保険、介護保険、労災保険、子供子育て拠出金といった会社による社会保険料の負担があります。

法定外福利厚生

法定外福利厚生とは、法定福利厚生と相対する概念で、特定の法律の定めに基づかずに企業が独自に設けている福利厚生を意味します。例えば、通勤手当や家賃手当、扶養手当などは多くの企業が導入している制度ですが、実はこれらはいずれも法定外福利厚生であるため、必ずしも設けなくてもよいのです。また、それ以外にも、社員旅行や運動会といった各種レクリエーション、ホテルやエンターテイメント施設の割引券や招待券、社宅制度、財形貯蓄、従業員持ち株会、住宅取得融資なども法定外福利厚生として導入している企業の多い制度となっています。この法定外福利厚生は必ずしも導入しなくてよいだけにコスト面を重視するとどうしても軽視しがちですが、逆に多少の支出を覚悟して導入することによって他社との差別化が図れますので、そういった点も考慮してどういった制度を設計するかを検討する必要があります。

福利厚生を充実させることによって得られるメリットとは?

次に、福利厚生を充実させることによって企業が得られる様々なメリットについて紹介していきます。企業を経営されている方や人事を担当されている方にとっては、ぜひ知っておきたい大事なポイントですので、この機会にしっかり理解しておいてください。

優秀な人材を採用しやすくなる

就職先を探している学生や転職を検討している社会人にとって、新たな勤務先がどのような福利厚生を導入しているかは重要なポイントとなります。実際に、転職エージェントが実施したアンケートなどでは、就職先を選ぶ際に福利厚生を重視するという学生は少なくないという結果が示されています。少子化が進む日本においては、いかにして優秀な人材を獲得するかは、企業が厳しい競争を勝ち抜く上で避けては通れない課題ですので、少しでも魅力を感じてもらえるようになるためにも福利厚生を充実させるに越したことはないのです。

社員のエンゲージメントを高められる

福利厚生を充実させることによって、社員のエンゲージメントを高められるというメリットがあります。福利厚生を利用してワークライフバランスを良好に保ちやすくなるため、より仕事にも前向きに取り組めるようになり、その結果として労働生産性が向上するという効果も期待できるでしょう。限られた労働力をより有効に活用できるようになるので、コストをかけても制度を見直す価値があるのです。

節税効果が得られる

全てではありませんが、企業が福利厚生のために支出した費用は非課税対象となっています。一定の条件を満たせば福利厚生費を経費として計上でき、法人税の税額を算定する際に損金扱いにすることができるようになるので、法人税を節約できるのです。企業にとって税金の負担を抑えられるというのは見逃すことができない重要なメリットであると言えるでしょう。

企業のイメージが向上する

インターネットの発達によって、今や個人が気軽に様々な情報を発信できるようになっています。ネットで検索すれば企業の評判や口コミも簡単に調べられるようになっているため、いかにして良いイメージを発信するかは企業が円滑に事業を営むために必要不可欠と言っても過言ではありません。この点、福利厚生を充実させれば、自社の社員がそういった情報をSNSなどを通じて自ら発信してくれる可能性が高いので、結果的に企業のイメージアップにつながるというわけです。

ユニークな事例

ここからは、実際に導入されている福利厚生制度の中から特にユニークなものをいくつかピックアップして紹介します。

シニア層のモチベーションアップにつながる制度

ある大手住宅メーカーでは、シニア層の社員のモチベーションアップを目的として、65歳以降も継続して勤務し続けることができる制度を設けています。それに加えて、この企業では、親などの介護を行っている社員をサポートする制度も充実しています。長年にわたって経験を積んできた社員は企業にとって貴重な存在ですので、定年だからといって安易に退職させるのではなく、希望する者にはできる限り働いてもらおうというのが同社の意図しているところなのです。

社員の働きやすさを向上させる制度

あるスタートアップ企業では、社員が実家に帰省する際の費用を一定範囲で補助するというユニークな制度を導入しています。この企業では社員の働きやすさを重視しており、他にも男性社員が配偶者の出産に立ち会えるようにする制度やチャットを通じて業務提携先に医学的な相談ができる制度などを整えているのです。少しでも優秀な人材を集めるために、福利厚生にも工夫を凝らしているというのがよく分かる事例です。

子育てを支援する制度

あるアミューズメント企業では、産前・産後休暇や育児休業といった一般的によく導入されている制度に加えて、社員の子育てを支援するために子供が生まれた時にお祝い金を贈るという独自の制度をとり入れています。それに加えて、育児フレックスや時間短縮制度なども充実させるなど、社員が育児をしながら働きやすい環境を整えているのです。

女性が働きやすい職場にするための制度

あるIT企業では、女性社員が働きやすい職場にするために、女性特有の体調不良時に月1回を上限として休みを取得できる制度を設けています。また、不妊治療をしている女性社員が、治療や通院などの目的で取得できる妊活休暇なども導入されており、女性にとって魅力的な福利厚生制度が一通り整えられているのです。

社内をフラット化するための制度

あるゲーム会社では、毎月1回社員が役員を指名してランチに行けるという独自の福利厚生制度を導入しています。ランチの費用は全額会社負担となっており、今後のキャリアプランや仕事の悩みなど、何でも気軽に相談したり意見交換できるようになっているため、社内をフラット化するのに一役買っているのです。また、役員としても社員の生の声が聴ける貴重な機会となっています。

福利厚生のメリットを享受するために制度を見直してみよう

以上で見てきたように、福利厚生には優秀な人材を採用しやすくなったり、社員のエンゲージメントを高められるといった様々なメリットがあります。法定福利厚生だけで十分だと考えていると、競合他社に後れを取ることになりかねないので、これらのメリットを最大限に享受するためにも、これまで福利厚生の充実に取り組んでこなかったという企業においては、ぜひ制度の見直しを検討してみるとよいでしょう。

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