企業のマネジメントや人事育成に携わる人は、オンボーディングという言葉を耳にすることが多いのではないでしょうか?しかし、「オンボーディングについて詳しく知っている。」という人は案外少ないかもしれません。そこでこの記事では、人事とSaaS双方のオンボーディングについて、それぞれのオンボーディングを導入する流れを解説します。

人事のオンボーディング

人事で使われるオンボーディングとは、ビジネスシーンにおいて新入社員などの新しい人材を迎えた際に、組織や仕事に順応を促す取り組みのことです。ベースは一般的な企業研修や導入研修と同様ですが、オンボーディングは従来の研修教育よりもさらに深く人材育成を行う研修プログラムを導入しています。

オンボーディングを英語で表記すると「on boarding」で、直訳すると「ボード(乗り物)に乗る」です。具体的には、同じ船や飛行機などの乗り物に搭乗した仲間をお互いサポートしあうという意味を持っています。

中には、「OJTとオンボーディングはどのような違いがあるの?」と思った人がいるかもしれません。OJTとは、職場で実務に取り組みながら先輩から後輩に行う研修指導のことをいい、社員育成に大きな効力を発揮する研修方法の一つです。つまりOJTは実務面に特化した研修カリキュラムといえるでしょう。

人事におけるオンボーディングは、ビジネスを主軸として人間関係や企業の取り組みなど多方面から順応してもらうことを目的とした研修カリキュラムです。対象となるのは全ての新入社員で、新卒入社や中途採用を問わず研修期間終了後も継続的にサポートを受けられます。

近年、企業研修でオンボーディングは注目を集めていますが、その背景には新入社員の早期離職率の高まりがあります。早期離職は教育研修にかかるコストの負担増や企業成長率の停滞、人事に携わる従業員の負担増など、企業にとってあらゆる不利益を生じる要因です。そのため、企業は若手の人材育成をスムーズに、かつ継続的に行うオンボーディングに注目しているのです。

SaaSのオンボーディング

SaaSで使われるオンボーディングは、サービスを提供する企業がユーザーに対して用いる言葉です。英語表記は人事面で使われているオンボーディングと同様の「on boarding」で、同じく「乗り物に乗る」という意味があります。

SaaSとは「software as a service」の略称で、クラウド上にあるソフトウェアをネット経由で利用するサービスのことです。例えば、一定期間同額の料金を支払い、インターネットサービスを継続的に受けるサブスクリプション型クラウドサービスなどが該当し、企業のサービスをユーザーに継続的に使用してもらう取り組みの一環として導入している企業も見られます。

SaaSにおけるオンボーディングとは、SaaSサービスの利用を契約したユーザーがスムーズにサービスを導入することを目的としています。サブスクリプション型クラウドサービスは初期設定が特に重要です。スムーズに進まなければユーザーの満足度は大きくダウンし、導入に理解を得られなかった場合はサービスの解約につながる可能性があります。

そのため、購入から実際にサービスを受けるまでの期間は十分にサポートを行わなければいけません。しかし導入まで進めば、多くのユーザーは継続的にサービスを受ける場合がほとんどです。つまりSaaSのオンボーディングを充実させてサブスクリプション型クラウドサービスの有用性をユーザーに理解してもらうことが、サービスの長期継続、ひいては企業の利益拡大へとつながっていくのです。

オンボーディングの流れ

オンボーディングは前述したように、企業の人事で使う場合とサービスを提供する場合で意味合いが異なります。それぞれのオンボーディングの流れについて解説していきます。

人事におけるオンボーディングの流れ

人事におけるオンボーディングは、まず企業が目標設定を行うことからスタートします。目標設定は、仕事面におけるスキル習得と社内の雰囲気や人間関係に慣れるコミュニケーションの両面から設定することが大切です。目標を事前に設定することで、新入社員に明確なゴールが伝わり効率的にオンボーディングを進めていけるというメリットがあります。

次に、オンボーディングを進めるための環境作りを行います。具体的には、直接上司の指導を受けながら仕事の知識を習得するOJTの導入や先輩社員が個別にサポートを行うメンター制度の導入、連絡や意思疎通を円滑にするチャットツールを用いたグループ設定などです。そのほかに、SNSを使った連絡手段なども導入しておきましょう。一人ひとりに寄り添ったサポートを行うためにも、コミュニケーション手段はできる限り多方面で対応してください。

オンボーディングは計画的に進めることも大切です。入社当日のスケジュールはもちろん、その後も1週間単位、1カ月単位、3カ月単位、1年単位で細かくスケジュールを立てて計画的に進めていきましょう。

計画を立てたら実行に進みます。オンボーディングの目的を達成させるためには、研修に携わる人だけではなく全ての従業員がフォローするという心がけを持つことが大切です。また意思疎通を円滑にするためにもミーティングを定期的に実施し、一人ひとりの進捗状況や不明点・不満点を全員で共有しましょう。

意義のあるミーティングにするためにも、お互いに話しやすい環境で報告できるようなリラックスした雰囲気作りも重要です。そしてミーティング内容の記録を残し、最終的には反省点や改善点も踏まえて振り返る場を設けてください。

SaaSにおけるオンボーディングの流れ

SaaSにおけるオンボーディングは、まずサービス購入者の状況判断・理解からスタートします。チャットサービスなどのコミュニケーションツールを用いて顧客の抱えている不明点や状況を的確に洗い出すことが大切です。初期段階で手違いがあれば非効率的であるとともに、本来の目的であるユーザーの満足度・信頼度を獲得できなくなってしまいます。

状況や問題点を適切に把握したら、サービスの導入へと進みます。サービス導入時は、ユーザーのネットリテラシーなどを把握しておくことが大切です。例えばネットサービスに馴染みのないユーザーにとっては、初期設定のアカウント登録やプロフィール設定などに戸惑うことも少なくありません。初期設定の際に不安を与えてしまうと、今後使い続けることに弊害を及ぼす可能性が高まります。

そのほかに大切なのは、サービスを導入した時点でサポートを完了しないことです。導入後はレクチャーを行い、必ず購入者自身が自立してサービスを使いこなせているかを確認しておきましょう。実際にユーザーが手掛ける部分までサポートしておくと、サービス導入後のサポートやフォローが少なく済みます。購入者の満足度アップにつながるのはもちろん、効率性が良くなるのもメリットといえるでしょう。

SaaSにおけるオンボーディングとは、ユーザーと共に伴走することがスタートでありゴールでもあります。ユーザーがスムーズにサービスを受け成功体験を積み重ねてもらうことで顧客満足度を高め、さらに該当サービスを継続的に受けていきたいと思ってもらうことがSaaSオンボーディングの目標です。

オンボーディングはサポート体制が大切

オンボーディングを人事やSaaSで導入するときは、どちらもサポートを充実させることが大切です。サポート体制が充実していれば、自ずと新入社員やユーザーの満足度が高まります。新入社員を早期に独り立ちさせ、定着率をアップさせることやサービスをユーザーに継続的に利用してもらうことは、どちらも企業の利益につながる重要なポイントといえるでしょう。

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