企業が自社を活性化させるため、重要なカギの1つが従業員のメンタルヘルスへの配慮です。メンタルヘルスという言葉自体はよく聞かれますが、企業としてどのような対策が必要なのかよくわからないという方もいるかもしれません。本記事では、企業がメンタルヘルス対策を行う重要性やメリット、対策を実施する上での注意点などを解説。併せて、実際に企業で行われたメンタルヘルス対策の事例も紹介します。

なぜメンタルヘルス対策が必要なのか

メンタルヘルスはメンタルの健康状態を意味する言葉です。なぜ企業はメンタルヘルス対策をとる必要があるのか、まずはその理由や、対策することで得られるメリットなどを説明します。

従業員のメンタルヘルスの状態は事業に大きな影響を与える

企業で直接業務に携わる従業員のメンタルヘルスは、企業の生産性に大きく関わります。従業員のメンタルヘルスが良好であれば、意欲を持って業務に取り組めるため、生産性も高まり事業にプラスの影響が出ると期待できます。しかし、メンタルヘルスが悪化すると、仕事に対するモチベーションも維持しづらくなり、業務の効率が落ちやすくなります。結果、事業の生産性が低下するなどの悪影響に発展する可能性もあるでしょう。

メンタルヘルスの悪化は離職にもつながる

メンタルヘルスが悪化し仕事への意欲が失われた従業員は離職を選ぶ可能性もあります。企業にとって人材は貴重な宝。離職が増えることは大きな問題です。メンタルヘルスが悪化する原因はさまざま。例えば職場の人間関係に悩み、メンタルを病む人もいます。人間関係のトラブルは離職の理由として非常に多く見られます。また、業務量が多かったり、残業が頻繁にあったり、休みが取りづらかったり、仕事に負担が大きすぎてメンタルが不安定になる場合も。職場環境や業務状況によりメンタルに不調を来たし、離職するというパターンも珍しくありません。つまり、従業員のメンタルヘルスの悪化は、企業の財産である人材の流出に発展しかねないということです。

メンタルヘルス対策を行うことで企業が活性化する

メンタルヘルス対策を行うことで企業が得られる大きなメリット、それは企業の生産性の低下を防ぎ、活性化させられることです。従業員のメンタルヘルスが良好であれば、事業は活発に行われ企業の成長につながっていくでしょう。そのためにも、従業員のメンタルヘルスを良い状態で維持するための対策が必要なのです。

メンタルヘルス対策を行う上での注意点

メンタルヘルス対策を実施するにあたり、押さえておきたいポイントもいくつかあります。メンタルヘルス対策を行う上で注意したいポイントを解説します。

専門家のサポートを活用する

メンタルヘルス対策を行う場合、企業の中だけでは解決しきれない部分もあるかもしれません。メンタルヘルス分野は専門的な知識を理解していなければ、対応が難しいところもあります。例えば、従業員のメンタルケアなどがそうです。より効果的なメンタルヘルス対策を実施するなら、産業医や保健師など、専門家のサポートを活用することも重要です。メンタルヘルス対策としてよく挙げられるストレスチェックは、2015年から労働安全衛生法によって、常時50人以上を雇用する事業所で義務付けられています。このストレスチェックにおける実施者は、医師や保健師など、法令で定められた資格者に限定されます。この実施者と連携しながら、メンタルヘルス対策を考えていくと良いでしょう。また、メンタルヘルス対策を専門的に扱っている企業・施設などもあるので、利用するのも1つです。

プライバシーに十分配慮する

メンタルヘルスに関することは非常にデリケートな部分です。メンタルの不調を自覚していても、「もし相談内容が社内に漏れたら」と不安に思い、相談できないという従業員もいるかもしれません。メンタルヘルスに不安を抱える従業員が安心して相談し、支援を受けられるよう、プライバシーに十分配慮することを忘れないでください。

メンタルヘルスに関して社内に周知する

企業のメンタルヘルス対策を効果的に実施するためには、従業員がメンタルヘルスに関し理解している状態が不可欠です。メンタルヘルス対策は、従業員がその目的を理解していなければ効果は発揮されません。例えば従業員向けにメンタルヘルス研修を開催する、チラシ・リーフレット・ポスターを作成するなど、社内にメンタルヘルスの重要性を周知する活動も行いましょう。

企業のメンタルヘルス対策の事例

自社にとって効果的なメンタルヘルス対策が何か考える上で、他社がどのような取り組みを行っているのか参考にすることも大切です。ここでは、企業が実際に行ったメンタルヘルス対策の事例を紹介します。

ストレスチェックの結果を踏まえた職場環境改善活動の実施

国内の大手電子機器メーカーであるオムロン株式会社は、メンタルヘルス対策として職場環境改善活動に取り組みました。従来はストレスチェック後のフォローとして管理職に結果をフィードバックなどしか行っていない状況でしたが、結果を踏まえた職場改善まで踏み込むことを決定。ストレスチェックの共同実施者である保健師と連携を取りながら、ストレスチェックの結果を分析して各部署の問題点を明確化。問題解決につながるようなテーマのワークショップなどを実施し、従業員から好評を得ています。また、ストレスチェックの診断結果の見方や現状などを管理職が把握できるよう、保健師主体の管理職向けの説明会を実施し、管理職教育にも努めています。

メタルヘルスサポーター体制など制度の導入・改善

東海旅客鉄道株式会社では、メンタルヘルスサポーターの体制づくりが行われました。従来は社内の人事部署や健康管理センターがメンタルヘルス対策を担っていましたが、現場の従業員の中からメンタルヘルスサポーターを選出。このサポーターたちが中心となり、自分たちの職場に必要なメンタルヘルス対策を考えていくというものです。メンタルヘルス講習会や独自ストレスチェックの導入、コミュニケーション不足を防ぐための挨拶の実施などが企画され、実際に実施されました。この体制で、より現場に密着したメンタルヘルス対策が行われたとともに、部署におけるメンタルヘルスに関する理解も深まったようです。

また、ストレスチェックの結果を詳しく分析し、若年・中堅社員それぞれの課題を明確化し、ワークエンゲージメントをアップさせるために必要な制度などを導入しました。例えば若年社員に向けては表彰制度の改善や社員の提案を汲み取り活かすためのプロジェクトの実施、中堅社員に向けてはトレーナー制度の改善などです。さまざまな年代の社員が参加できるレクリエーションの企画など、コミュニケーション強化を図るための取り組みもなされました。職場環境の改善や新しい制度の導入などにより、従業員が意欲を高めやすく、つながりのある職場づくりに活かされています。

相談窓口の仕組み改善

通信教育や出版の大手企業である株式会社ベネッセコーポレーションでは、従業員の相談窓口の間口を広げる取り組みを行いました。具体的には、最初に全体の相談を受け付ける窓口にコンタクトし、窓口側で相談内容から適切な支援につなげるという仕組みです。悩みを抱えても、その悩みがどのような種類のものであるのか、誰に相談するのが適切なのか、よくわからないという従業員もいるはずです。相談先が明確でないと、悩みを打ち明けるハードルが高くなり、メンタルヘルスの悪化につながっていってしまう可能性も。窓口サイドで悩みと適切な支援をつなぐ役割を担うことによって、より相談しやすい体制づくりが叶えられています。

メンタルヘルス対策は従業員・企業にどちらにとっても重要

企業が効果的なメンタルヘルス対策を実施できれば、従業員はメンタルを安定させやすくなり、安心して仕事に取り組むことができるでしょう。また、従業員に配慮した職場環境整備に力を入れる姿勢が評価され、企業のイメージアップや求人の応募者増などにつながる可能性もあります。ぜひこの記事を参考にしながら、自社に必要なメンタルヘルス対策を検討してみてください。

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