職場や家庭など、様々な場所でストレスは発生する可能性があります。ストレスへの対処が上手くできないと、心身に大きな悪影響が出るため、いわゆるメンタルヘルス対策が重要となります。そんなメンタルヘルス対策で基本となるのが、セルフケアです。そこで本記事ではメンタルヘルス対策の重要性やセルフケアの方法について解説していきます。

メンタルヘルスとは

「メンタルヘルス」という言葉を耳にする機会が増えていますが、この言葉に対し、どのようなイメージを持っているでしょうか。中には心の病気といったネガティブなイメージを持っている方もいるかもしれません。しかし実際には違います。メンタルヘルスとは「精神面における健康」や「心の健康状態」を表す言葉です。更に、この「心の健康状態」が失われている状態をメンタルヘルス不調と言います。また、精神的なケアを行う場面において、「メンタルヘルスケア」や「メンタルヘルス対策」といった形で使われることも多いです。

メンタルヘルス不調になると、集中力が落ちる、決断力が鈍るなど、精神的な症状が表れて業務に支障をきたす恐れがあります。また、症状を放置しておくとうつ病などの疾病を発症し、最悪の場合は自殺してしまう可能性もあります。メンタルヘルス不調というと、うつ病や適応障害などの精神疾患をイメージする方も多いかもしれません。しかし、厚生労働省はメンタルヘルス不調を「ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活及び生活の質に影響を与える可能性のある精神的及び行動上の問題を幅広く含むもの」と定義しています。つまり、うつ病や適応障害といった精神疾患の問題だけでなく、業務上のストレスや職場の人間関係上の悩みなど、人の心身の健康や生活に影響を及ぼす問題全般を指しているのです。

企業がメンタルヘルスケアに取り組む背景

ここでは企業がメンタルヘルスケアに取り組む背景について解説していきます。

人手不足への対策

企業がメンタルヘルスケアに取り組む背景の1つが人手不足への対策です。厚生労働省の労働安全衛生調査(2020年)によると、過去1年間にメンタルヘルス不調を理由に連続1ヵ月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた企業の割合は平均で9.2%です。意外に少ないと思う方もいるかもしれませんが、日本は生産年齢人口が減少し、人材を確保するのが難しくなっています。生産年齢人口とは、生産活動でメインの労働力となるような15歳から64歳までの年齢の人口のことで、この生産年齢人口は1990年代をピークに減少を続けています。このように人材確保が難しく、休職・退職者が出ると人手不足に陥りやすい状況なので、退職者や休職者を減らすことが期待できるメンタルヘルスケアが重要視されているのです。

生産性の向上

生産性の向上も、企業がメンタルヘルスケアに取り組む背景の1つです。少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少、働き方改革などによる労働時間の減少もあり、多くの企業が生産性の向上をめざしています。そんな生産性の向上にメンタルヘルスも関係しているのです。例えば、2015年のカナダにある依存症・メンタルヘルス研究センター(CAMH)による研究では、うつ病によって生産性は33%も低下することが明らかになりました。また、仕事のパフォーマンスは、人の心が前向きで意欲的な状態のときに上がると言われています。つまり、メンタルヘルスケアによって従業員の心身が安定すれば、生産性の低下を防ぎ、結果として生産性の向上に繋がることも期待できる訳です。

セルフケアとは

セルフケアとは、4種類のメンタルヘルスケアの内の1つで、従業員が自分自身で行うケアのことです。4種類のメンタルヘルスケアとは厚生労働省が発表している「労働者の心の健康保持増進のための指針」において提示されたもので、セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケアの4種類で構成されています。ラインによるケアは企業の管理監督者が行うケアで、事業場内産業保健スタッフ等によるケアは産業医や産業保健師が行うケアで、事業場外資源によるケアは外部の専門機関によるケアです。これら4種類のメンタルヘルスケアの中でも、働く人全員がそれぞれ個人で取り組むセルフケアはメンタルヘルスケアの基本と言われています。

セルフケアの具体的な方法

メンタルヘルスケアの基本となるセルフケアですが、具体的にどのような方法があるのでしょうか。

十分な休息と睡眠

セルフケアの方法の1つ目は十分な休息と睡眠です。睡眠不足は、疲れや情緒不安定などストレスが増す要因となり、メンタルヘルス不調の原因になると言われています。また、1日に4時間半ほどしか眠らない睡眠不足が5日間続くと、不安や混乱、抑うつ傾向が強まるという国立精神・神経医療研究センターによる研究もあります。このように睡眠時間はメンタルヘルスに大きな影響を与えるため、十分な休息と睡眠の時間を確保できれば、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことに繋がるのです。

では、十分な睡眠時間とはどの程度なのでしょうか。理想的な睡眠時間は1日7時間と言われています。ただし、理想の睡眠時間には個人差があるため、必ずしも7時間が最適とは限りません。起きたときに気持ちが良く、日中に眠くならない睡眠時間を目安とし、自分に合った睡眠時間をみつけましょう。また、時間だけでなく睡眠の質も重要です。例えば、寝る前にカフェインの入った飲み物を摂取したり、パソコンやスマートフォンを見たりするのは、睡眠の質を下げる要因となるので避けましょう。

気分転換できる趣味を持つ

気分転換できる趣味を持つことも、セルフケアの方法として挙げられます。仕事以外に気分転換できる趣味を持っている人の方が、ストレス耐性が強いといわれています。趣味を持つことで仕事から離れた時間を作れますし、趣味に没頭している時間は日々のストレスから解放され心がリフレッシュされるでしょう。趣味は気分転換できるものなら何でも良いですが、体を動かすものがおすすめです。運動をするとセロトニンやエンドルフィンといった脳内物質が分泌され、ストレス解消の効果が期待できるからです。

企業側の支援

セルフケアは従業員が自分自身で行うケアのことですが、企業側もセルフケアに対して支援できる取り組みがあります。1つ目はストレスチェックの実施です。自分の知らないうちにストレスを溜めていて、メンタルヘルスが不調になっているのに、それに気づかない場合があります。このようなメンタルヘルス不調に気づいていない従業員に、自身のメンタルの状態を認識させるのがストレスチェックの役割の1つです。2つ目はセルフケアに関する情報提供です。まずメンタルヘルスやセルフケアについて知らない従業員は、ストレスに気付くことも、それに対する適切な対処も難しいでしょう。そのためメンタルヘルスとセルフケアの基礎知識や重要性について情報提供することも、企業側の重要な役割となります。

3つ目はセルフケアを行いやすい環境づくりです。セルフケアを行うためには職場環境も重要になります。例えば、セルフケアでは十分な休息と睡眠が重要ですが、余りに残業が多い職場では睡眠時間の確保が難しくなるでしょう。このようなセルフケアを行いたくてもできない状況も考えられるので、企業としてはセルフケアを行いやすい環境づくりが求められます。

セルフケアはメンタルヘルスケアの基本

メンタルヘルス不調に伴う従業員の休職・離職、生産性の低下を防ぐために、メンタルヘルスケアに取り組む企業も増えています。そんなメンタルヘルスケアの基本は従業員が自分自身で行うセルフケアです。セルフケアには十分な休息と睡眠、気分転換できる趣味を持つなどがあります。またセルフケアを従業員任せにするのではなく、企業側も従業員がセルフケアに取り組めるような情報提供や環境整備を行いましょう。

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