世界的に見れば、雇用において男女平等というのは既に当たり前になっており、日本でも男女格差を感じるケースは少なくなっています。とはいえ、現状で管理職の男女比率を見たとき、やはり女性管理職の割合が少ないというのは実感できるでしょう。こちらでは、女性管理職が少ない理由やその比率、女性が社会でもっと活躍できるようにするための取り組みについて見ていきます。

女性管理職の割合は?

社会で女性の立場が向上しているのに伴い、女性管理職の割合も徐々に増えています。しかし、やはり根強い慣習や管理職を目指す働き方ができるようになって時間がそれほど経過していないなどの事情から、日本での割合は少ないと言わざるを得ません。まずは、日本で女性管理職の比率はどれくらいなのかを見ていきましょう。

株式会社帝国データバンクによれば、全国2万超の企業にアンケートを行った結果、2020年の女性管理職の比率は7.8%、2021年では8.9%と一割を大幅に割り込んでいる状況です。女性従業員の割合が26%を超えていることから見ても、職場における女性の割合はおよそ4分の1程度とそれほど少なくないにもかかわらず、未だに能力を十分に発揮できる機会がなかなか得られないことが分かるでしょう。

ちなみに、海外に目を向けてみれば、日本よりも女性が活躍できる職場環境になっている国はたくさんあります。フランスの女性役員の割合は45.3%と男女比率がほとんど同じですし、イタリアやスウェーデン、イギリス、ドイツなどはいずれも35%を超えています。実際、日本は教育水準こそ146か国中1位となっていますが、管理職の男女平等という点では130位と、先進国どころかアジア各国や新興国よりも低い順位に甘んじている状況です。これは、日本に先駆けて海外が女性管理職の割合を高めるために様々な政策を行っていることも一因となっています。例えば、フランスやドイツ、ノルウェーなどでは2011年に役員の男女比率が40%に達するまでペナルティを課す取締役クオータ法を制定していますし、アメリカでは女性役員の配置や最低数の引き上げなどを行っている州もあります。

日本では、女性の社会進出に関する数値目標を、男女共同参画基本計画にまとめています。2023年6月の男女共同参画会議では、東証プライム市場上場企業に対し、2025年をめどに女性役員を1名以上、2030年までに女性役員の比率を30%以上にするという目標を設定しました。他にも、女性が起業している優良なスタートアップ企業の割合を、2033年までに20%にするという新目標も掲げています。この条件で、2022年の女性役員が全くいない企業の比率は18.7%となっており、既に目標を達成している企業は2.2%です。

女性管理職が少ない理由とは

何故、日本はこれほど女性管理職が少ないのでしょうか。以下で、女性管理職が少ない理由について見ていきましょう。

そもそも管理職を目指す女性が少ない

女性に限らず、近年ではワークライフバランスを重視する従業員が増えています。その結果、労働基準法の規定が適用されずに時間的、心理的な負担が大きい管理職を希望しないという人も少なくありません。地位の向上や報酬アップに負担の大きさが見合わないと認識されているためです。特に女性は、管理職になっている先輩社員が身近にいないというケースが多く、具体的に自分が管理職として働くビジョンが浮かびにくくなっています。目標となる女性の存在がない、そもそも女性が管理職になれると思っていないなどの理由で、従業員側も昇進に対して消極的です。

職場の環境が整っていない

比較的安定した状態で仕事ができる男性とは異なり、女性はプライベートの変化が仕事に大きく影響を及ぼします。例えば、結婚した時に夫の転勤先に引っ越すため、女性が仕事を止めるというケースは多いですし、出産や育児は女性がほとんど対応するため、仕事にブランクが生じる恐れもあります。企業によっては、時短勤務や出産・育児休暇制度を充実させていたり、リモートワークや転勤先の地域にある支店への異動で引っ越し後も働けるようにしたりして対応しているところもありますが、全体的に見ると女性が仕事と家庭の両立をしづらい環境になっているケースがまだまだ多いです。

昇進基準で男性有利になっている

企業によっては、昇進の基準があいまいで、経営者や上司が判断して昇進させることがあります。この場合、裁量権があるのは年配の男性が多く、昔ながらの管理職は男性がすべきという考え方の影響を受けやすいです。同じような成果を出していても、この影響で女性がなかなか管理職になれないケースも少なくありません。基準があいまいなため、残業が多くても問題ないか、長期的に働く意欲があるかなど、女性では実現が難しい条件で選考されている可能性もあります。昇進基準を明確にしたり、女性管理職の前例を作ったりすることで、このような事情は改善していくでしょう。

女性管理職を増やすには

2015年には、女性が活躍しやすい社会の実現を目指して女性活躍推進法が制定されました。この法律では、従業員数が多い企業に対して、自社の管理職の女性比率や賃金格差などの調査や分析を行い、その結果から行動計画を立てることを求めています。さらに、その内容を都道府県労働局に届け出て、社内外に公表することも義務付けています。従業員が100人以下の企業ではこれらの作業は義務付けられておらず努力義務となっていますが、企業としてできる対策は取り入れることをおすすめします。

女性の活躍促進を目指す取り組みは様々で、自社にあった計画を行わなければなりません。例えば、管理職でネックとなっている頻繁な出張や長時間の残業などを見直し、女性管理職が家庭と両立しやすい環境づくりをします。働き方改革やDXなど、近年ではシステムやAI、タスク管理などを活用して業務負担を軽減させる動きが広まっていますので、工夫すれば管理職の負担を減らすことも可能でしょう。同時に、福利厚生の制度を見直して産前産後や育児、介護などの休暇を取りやすいようにすることも大切です。時短勤務やリモートワーク制度、健康診断の補助など、企業が女性従業員をサポートするような制度も増えています。

また、女性管理職に対して偏見や忌避感を持たないように、会社の意識や社風を変えていくことも重要です。老舗の企業では特に、昔ながらのやり方を重視するケースが多々ありますので、昇進の裁量権を持つ管理職や経営陣の意識改革をしていきましょう。

一方で、女性従業員の意識改革も欠かせません。前例がない、自信がないという理由で、管理職に興味があっても二の足を踏んでいる女性は意外と多いです。まずは管理職で求められるスキル、キャリア形成を支援するための知識などを学べる社内研修を実施して、女性従業員の適性チェックや意識改革を行うというのもよいでしょう。あるいは、現在の管理職に話を聞く機会を設けて、不安に思っていることにアドバイスをもらうというのもおすすめです。従業員と個別に話をする場を用意して具体的なキャリアプランや管理職に興味があるかなどについて聞いておくと、上司にとっても、将来的に昇進の判断をする際に役立つ情報となるでしょう。

女性管理職を増やすことで会社にもよい影響が生じる

女性管理職が増えることで、新しい視点から業務を遂行することになり、企業の多様性が生まれます。また、努力しても女性管理職に中々なれない企業とは異なり、女性の離職率を減らすメリットも得られるでしょう。グローバルな視点から考えても、女性が今よりも活躍できる組織体制にすべく、検討することは重要です。できるところから取り組んでみてはいかがでしょうか。

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