今重要性を増している福利厚生

少子高齢化に伴う労働人口の減少、また転職市場の活性化による人材流動性の加速により、企業は人材の確保、リテンションに苦労している状況にあります。対して、求職者にとっては「売り手市場」であり、報酬面、ステータス、勤務形態、そして福利厚生といった労働条件においてより良いものを選べる状況になっております。また、働き方の選択肢は企業に勤めるだけではなく、企業やフリーランスと多岐にわたり、福利厚生を重視する層としない層といった広がりが出ている状況です。従って、福利厚生を重視する層に対して、福利厚生施策は自社に人材を呼び寄せ 、そして留めるために非常に重要な役割を果たします。加えて、福利厚生施策は報酬面以上に時代のトレンドを反映し、生活の基盤を支えるものだけではなく、様々なライフスタイルの充実に向けて、多様化している状況になっております。

本コラムでは、現在の福利厚生のトレンドを読み解き、令和の時代における福利厚生施策の役割について考えようと思います。

採用を取り巻く環境

先述の通り、労働人口の減少と人材流動性の加速を受け、従来の「企業が人材を選ぶ時代」から「労働者が働き方を選ぶ時代」になっております。ここでポイントになるのは労働者が選択するのは「企業」ではなく「働き方」である点です。現在の労働者は企業に所属し、雇用されて働くだけではなく、フリーランスとして業務委託を受け収入を得る方法や本業を持ちながら、兼業/副業によって収入を増やしたり、自身のキャリアの選択肢を広げたりする時代になっております。最近上場した株式会社タイミーはこれらの時代の流れの中で「スポットワーク」という新しい働き方を提案し、成長を続けています。

現在の労働者はこれらの時代背景を受け、自らの「キャリア」を重視し、仕事を含めた自身の人生をどの様に設計すべきか、そのために必要な働き方は如何なるものかを考え、企業で働くことを選択しています。この点を理解せず、「高い給料を払えば」「福利厚生で生活に必要な手当てを払えば」といった事で採用やリテンションを測る事は大変難しいと考えます。

福利厚生のトレンド

元来、企業が自社の判断にて提供する法定外福利は「従業員とその家族のために提供するもの」であるとされており、「住宅手当」や「家族手当」といった形で仕事に対する報酬とは別に一定の条件にもとづき金銭的な報酬を提供してきた。すなわち、従来の福利厚生は従業員の生活基盤の安定に寄与するものであった。しかし、先述のような従業員の志向の変化から、生活基盤を安定させる報酬だけでは従業員にとって魅力的なものではなくなっております。

実際に近年のトレンドとして、住宅手当や家族手当は減少傾向にあります。対して、増加しているものとして、その一つに育児に関連する福利厚生は年々増加傾向であります。これは、女性の社会進出の加速や男性の育児への積極的な参加が一般化してきているトレンドをとらえたものになっていると言えます。加えて、高齢化社会といった時代背景を踏まえた介護や看護に関する福利厚生も増加しております。そして福利厚生はこのような家族に関する施策だけではなく、従業員のキャリア形成を支援する研修の提供や趣味に用いることのできる施策も増加傾向にあります。更には、これらの福利厚生のメニューを数多くそろえ、従業員各員の嗜好によって選択できるカフェテリアプランを導入する企業も大変多くなっています。このような時代のトレンドや従業員の多様なニーズに応えるために、福利厚生施策は多様化、拡大していくものと推測します。

福利厚生の新たな役割

上記の様なトレンドに加えて、近年は各社が工夫を凝らした個性的な福利厚生施策も登場しております。例えば、深夜帯に多く開催されるサッカーの試合観戦のため、試合の翌日に午前休暇を取得できる「サッカー観戦休暇制度」、恋人やパートナーとの別れだけではなく、近年トレンドになっているアイドル等の推しが引退した際に、心の傷をいやすために休暇を与える「失恋休暇」、あるいは職場にペット同伴を許可する事や13時から16時までを自由時間とする「シエスタ制度」等、遊び心があり企業のカラーを押し出した福利厚生施策も見られます。

これらの制度は勿論従業員のためであり、生産性を高める狙いがあります。しかしながら、これらの施策は自社の社風を対外的に示すものであるともいえます。実際にこの様な個性的な取り組みをメディアに取り上げられる場面を見ることもあります。従って、福利厚生は従業員確保において重要なマーケティングツール=自社の社風に合った求職者を集めるツールと言えます。

福利厚生の分類

これまでの分析にもとづき、現在の福利厚生施策を分類しました。ぜひ検討の参考になればと思います。

労働環境改善系

オフィスの休憩スペースの改善やテレワークの支援等、勤務中の環境を改善する事で働く従業員の健康やモチベーションを高めたり、また、従業員の健康維持や保険制度等により、従業員の健康を守ったりする。デスクワークを中心とする企業にマッチすると推測
例:マイチェア制度、仮眠室の準備、オフィスでのマッサージの提供、フリードリンク/スナック/アルコールの提供、GLTD保険 etc.

キャリア支援系

従業員の自己研鑽やキャリア形成に関する研修や機会を提供し、従業員のキャリアを支援する。成長へのモチベーションの高い新卒や若手社員が多い企業にマッチすると推測
例:E-ラーニングの提供、書籍購入支援、コーチング費用補助、リカレント教育休暇、副業の許可 etc.

家族支援系

子育てや高齢の親族の介護に関する休暇等を提供し、家庭と両立した働き方を支援する。また、近年はペットも家族とする考え方も定着しており、ペットに関する施策も登場。家庭を持つ30代から40代の社員や女性社員が多い企業にマッチすると推測
例:キッズディ休暇、ベビーシッター補助、社内託児所、子育て支援金制度、介護休暇、帰省旅費補助、ペット同伴出勤制度etc.

趣味・レジャー支援系

従来の保養所の提供ではなく、趣味やレジャーに関する休暇や施設利用、備品の割引購入等を提供し、休暇の充実を支援する。ワークライフバランスを重視する近年では多くの従業員にマッチすると共に、休日の活動が仕事に反映させやすいホテル業界や飲食、アミューズメント系企業にマッチすると推測
例:趣味手当、海外旅行補助、スポーツジム費用補助、食事会費用補助etc.

自社ブランディング系

社長の趣味に基づく施策や現在の従業員からのニーズに基づく支援を幅広く提供する。自社の社風やカラーを前面に押し出し、広報ツールとしても機能する。ベンチャー企業のように企業ブランディングを推し進めるフェーズの企業にマッチすると推測
例:失恋休暇、サッカー観戦休暇、二日酔い休暇、クラブ活動支援、ディズニーランド遠足 etc.

メッセージ発信系

SDGsや社会貢献性の高いメニューにより、企業としての役割を社会に対して発信すると共に、従業員に対しても自社の価値の理解を深め、エンゲージメントを高める。自社ブランディング型と同様に企業ブランディングに貢献するため、そのような目的を持った企業にマッチすると推測。
例:奨学金返還支援制度、社食サービス、不揃いお菓子の提供 etc.

全方位型

数多くいる従業員のニーズに応えるため、上記の様々なメニューを取り揃え、従業員が自身に必要なものを選択できるようにする支援。従業員数が多く、また属性にばらつきがある企業にマッチすると推測
例:カフェテリアプラン

おわりに

これまで述べてきた通り、現在の労働者は生活基盤の安定だけではなく、自身のキャリアを充実させられる環境を求めています。その中で、各社がどんな人材を求めているか、その人材はどんなキャリア志向があるかを考慮し、自社の福利厚生施策を検討する必要があります。福利厚生施策は単なる報酬ではなく、従業員の確保、定着に向けて非常に重要な人事戦略の一つであると考えます。

当社にて提供している福利厚生サービス

  1. キャリア支援系:他社の人材と交流しながらスキルアップが測れる研修サービス「アクティベーションカレッジ」
    https://www.aand.co.jp/service/service_jinzai/kenshu/activation-college/
  2. メッセージ発信系:従業員の奨学金返還を支援し、キャリア実現へ貢献する「奨学金バンク」
    https://shogakukinbank.jp/

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