企業でも注目されているAIの技術に「AGI(汎用人工知能)」があります。AGIや日本語訳の人工知能と聞いて、AIの仲間だと気づく人もいるでしょう。しかし、普段使われているAIとは大きく異なる点があります。そこで、今回は「AGI(汎用人工知能)」の意味と歴史、労働・職場環境に影響をもたらす理由から登場した際の活用方法までを詳しく解説します。

AGI(汎用人工知能)とは

AIに詳しい人なら、「AGI(汎用人工知能)」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。AGI(汎用人工知能)とは、どのような意味やAIとの違いがあるのか解説していきます。

AGI(汎用人工知能)の意味

AGIは、「Artificial General Intelligence」の略で、「汎用人工知能」と訳される人工知能分野の用語です。現状のAIに比べて自律性能が高く、システムが自ら学習を通じて判断し、人間のような知能を持つ人工的なシステムを指します。そのため、知識の獲得、言語理解、感情の理解、創造性の発揮など、人間の知能に近い多様な能力を持つことがAGI(汎用人工知能)の特徴です。

「AGI(汎用人工知能)」は「Narrow AI(特化型人工知能)」と対照関係にある

AGI(汎用人工知能)の対義語が「Narrow AI(特化型人工知能)」です。Narrow AI(特化型人工知能)は、特定の作業や分野・領域に特化した人工知能システムを指します。

例えば、将棋・囲碁のAIシステムや画像認識システム、音声認識、自動運転などが該当します。現存するAIのほとんどがこのNarrow AI(特化型人工知能)の技術によって企業に導入されています。将棋に特化したシステムは、他の知識の学習や全体的なことを考慮した返答などは出来ず、使い道に制限があるのが特徴です。

AGI(汎用人工知能)の完全なシステムはまだ存在しない

AGI(汎用人工知能)の開発は、人工知能の分野における最終目標の1つです。しかし、2023年の現時点では、完全なAGIはまだ実現されていません。実際に、対話型の自然言語処理システム(ChatGPT、Bard)は汎用的な人間の知能を持っているように見えますが、一般的な知能を持つわけではありません。つまり、AGIではありません。

AGIはさまざまな認知的プロセスを理解し、経験を通じて学習し、柔軟に対応する能力を備えることが求められます。現在のAIモデルやシステムは、特定の作業において高い能力を発揮することもありますが、シンギュラリティの限界を突破した完全なAGI(汎用人工知能)とは程遠いのです。

AGI(汎用人工知能)が登場した歴史・背景

AGI(汎用人工知能)は、それを目指すAIの歴史でもあります。AIには3つの波があり、1960年代、1980年代、黎明期を経て、2010年代の盛り上がりを見せます。特に2010年代にAIの画像認識によるディープラーニング(深層学習)の発展を契機に、AGI(汎用人工知能)の可能性が広がります。

幅広い学習を可能にする統計的な手法もこの10年で進化を遂げています。AIの第3の波の発展は、ビッグデータの活用や画像認識技術(防犯カメラやロボットの視覚的な行動制御技術)によるさまざまな応用が可能になったことが背景にあるのです。

AGI(汎用人工知能)が労働・職場環境に影響をもたらす理由

AGI(汎用人工知能)がどのようにして労働・職場環境に影響をもたらすのでしょうか。その理由を2つの場合にわけて紹介します。

AGI(汎用人工知能)を目指したマルチタスク型のAIが登場した場合

AGI(汎用人工知能)の研究は途上ですが、その中でマルチタスク型のAIが姿を見せ始めています。先程挙げた対話型の自然言語処理システム(ChatGPT、Bard)やロボティクス技術の画像認識処理などです。総合的判断ができるまでには至っていませんが、将来、AGI(汎用人工知能)にまで手が届くと期待されているディープラーニングが使われています。この場合、企業に導入されて、労働・職場環境は変化が求められることになります。

例えば、IT企業で技術職の場合は、業務の一部がAIに取って代わることです。人手不足の企業には改善に良いですが、多くの社員を抱える企業では問題もあります。リストラや給与の縮小、AIを前提とした研修の実施など、その労働・職場環境に変革の波が押し寄せる危険があるのです。特に上司の指示を受けて業務を担っていた社員にとっては、AIが高性能であるほど仕事を奪われやすいのです。

もちろん、完全なAGI(汎用人工知能)ではないため、人間の制御は不可欠です。管理する人材も必要になるため、企業側の体制の構築も必要となり、専門の部署も増えることになるでしょう。

完成されたAGI(汎用人工知能)が企業活用された場合

万が一、開発の難しいとされる「完成されたAGI(汎用人工知能)」がほぼ人間のような存在で企業に使われ始めた場合、経営者層などを除いて多くの人員が解雇されるか、業務内容の大部分が変化することになります。

AGI(汎用人工知能)は自ら学習できるため、最初は学習対象の人手が必要ですが、最終的にはAIの判断で汎用的な判断が下せるようになります。特に人事分野では、人の採点や採用時の見極めなどもAIがすべて取って代わることも出来ます。この点はNarrow AI(特化型人工知能)と大きく違う点で、人の補助がほとんどなくても「学習さえ積んでいれば総合的な判断ができてしまう」というシステムの長所があるためです。

その上で、人よりも計算能力が高く、ルーチンタスクに強いという機械の長所も合わさるため、単純作業を人がすることはほとんどがなくなる形です。

AGI(汎用人工知能)の企業活用が期待される場面

将来的にAGI(汎用人工知能)が完成された場合、活用できる場面は下記の通りです。

経営判断のサポート

まずは、AGI(汎用人工知能)は学習を通じて総合的な経営判断が可能となることが期待されています。企業は、経営判断をするときに、さまざまなデータや判断材料を通じて経営を担う人間が決定を下します。

具体的には、収益性、費用、予算、キャッシュフローなどの財務諸表データ、市場分析や競合他社の動向、運営や業務プロセス、労働力の人材管理などです。それには大きな責任と判断能力が試されます。経営者の中には、その判断で失敗も経験します。そのため、AGI(汎用人工知能)が会社のデータを踏まえて、人間のように経営判断を下すことで、高い確率に基づいて、データ分析を踏まえた正確な決定が行なえます。

事業計画書の作成や投資・借り入れ、人事における採用の判断

企業を運営する上で、事業計画書の作成や投資の判断は業績や資金繰りを左右する大きな要素です。しかし、AGI(汎用人工知能)は、上記を得意としています。例えば、人間が判断するときに、見通しの立たない事業の先行きを判断することや、投資のリスクカット、採用における人材の見極めなど、AIの長所と人間的な判断を組み合わせられる方法が最適です。AGI(汎用人工知能)は、それらを容易にこなすことが可能ですから、企業導入の活用できるポイントとなります。

人手を補う業務の代替や高度な作業(データ解析など)の実施

AGI(汎用人工知能)は、必要に応じて機械的な計算の可能なシステムです。そこで、人手を補う業務の代替や高度な作業(データ解析など)にも自己判断で行うようにすれば、多くの人手を削減した状態で、会社内の業務が成立するようになります。特に自動のデータ解析や分析、収集作業などは業務の効率化を助けてくれます。

まとめ

AGI(汎用人工知能)は、人間のような知能で会社のさまざまな業務をこなせる可能性があります。Narrow AI(特化型人工知能)には出来なかった、総合的な判断はもちろんのこと、経営や人事での採用判断、投資など企業に欠かせないことを任せられる将来が来るかもしれません。企業はAIの動向に注目しつつ、AGI(汎用人工知能)を目指した技術をその都度、活用していきましょう。

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