特に大都市部だと高卒で就ける仕事の選択肢は狭く、お金に余裕が無くても奨学金を借りて「大卒」や「専門卒」の学歴を手にする学生は跡を絶ちません。ただ奨学金は借りたら返さなければいけないものです。そのため、まだ年収に余裕がない若年層を中心に奨学金返済で苦しい生活を余儀なくされている人がたくさんいます。ここでは、奨学金を借りるデメリットや、各自治体などで行っている奨学金返済の支援例を紹介します。

新卒の収入で奨学金の返済は難しいのが現状

一般的な大卒の平均年収は250万円程度、平均月収は21万円程度と言われています。この収入での生活ぶりはどのようなものなのでしょうか。月収21万円の人の生活費の内訳を見ていきましょう。

  • 税金などの控除額43,000
  • 家賃6万円
  • 食費3万円
  • 光熱費・通信費2万円
  • 被服費・日用品代2万円
  • 医療費1万円
  • 交際費1万円

合計193,000

この数字からわかることは、1ヶ月の収入のうち手元に残るのは17,000円程度です。また、労働者福祉中央協議会が2019年に実施した『奨学金や教育費負担に関するアンケート調査』によると、奨学金を借りた人の1ヶ月の返済額の平均は16,680円と発表されています。この金額を見ると、新卒の若者がお金を貯蓄に回す余裕はなく、奨学金の返済は大きな負担になっているとわかります。そして年々社会保険料や税金が上がっている日本の状況では、さらに返済が苦しくなっていくことが予測されるでしょう。昨今の物価上昇に伴って、一部の企業においては給与改定などがあり、月例給や年収の改善が行われていますが、それらはあくまで物価上昇に伴うもの。奨学金を借りた若者たちにおける、奨学金返済の負担が軽減されるものではありません。

奨学金を借りるデメリット

奨学金を借りなければ大学や専門学校に進学できない人はたくさんいますが、その中には学校を卒業して自分が返済する番になったときのデメリットを考えていない人も多いです。それでは、奨学金を借りるデメリットを確認していきましょう。

返済が滞ると個人信用情報に影響が出る

奨学金の延滞が長期化すると、個人信用情報機関に事故情報が掲載されてしまいます。個人信用情報機関とは、ローンなどお金が関わる契約の支払い情報が掲載されているものです。ローンやクレジットカードなどお金が関わる契約はこの個人信用情報機関の情報がチェックされます。事故情報とは、延滞や債務整理などお金に関わるトラブルを起こした履歴のことであり、事故情報が一度掲載されるとローンなどお金が関わる契約だけでなく、家賃保証会社の審査にも通りにくくなります。

事故情報が消える条件は、事故情報が登録される原因となった債務を完済してから5年〜10年時間が経過していることです。奨学金は基本的に数百万円、人によっては1,000万円に到達することもあり、一生でも上位に入る金額の借金でしょう。奨学金が原因で一度個人信用情報機関に事故情報が掲載された場合、この膨大な借金を完済しないと事故情報は消えません。しかしお金に余裕がない状態だとこの金額の借金を完済するまでにかなり時間がかかりますし、その間は当然クレジットカードを作ったりローンを組んだりすることはできません。

このように奨学金を払えずに延滞すると、その後の人生において大きな買い物は現金一択になってしまいますし、またクレジットカードなどの契約ができるようになるまで時間がかかります。

基本的に返済義務から逃れられない

一般的な借金は自己破産をすると返済の義務がなくなることが多いですが、奨学金はそうもいきません。奨学金を借りる際には連帯保証人と保証人を立てる必要があります。機関保証を利用した際も保証人は必須です。そのため、万が一奨学金を借りた本人が返済できずに自己破産をした場合、返済義務は連帯保証人へ、機関保証を利用した場合は一旦奨学金を返済し、当人には保証機関への返済義務が残ります。したがって、最終的に奨学金はかなり重大な病気にかかったり、亡くなったりしない限り、返済義務から逃れられません。そのため、学校を卒業した後に体調を崩すなどして働けなかったり、低賃金の職にしか就けなかったりすると、いつまでも返済義務から逃れられず、お金に余裕のない生活を余儀なくされてしまいます。

奨学金返済の支援事例を紹介

少子高齢化でどの会社も人材の確保が難しくなっています。また、それだけでなく学歴指向が強くなり、地方の若者が都市部の大学や専門学校に進学し、仕事の選択肢の少なさから地元に戻ってこなくなることで、地方の高齢化も進んでいます。そこで人材を確保する目的で、若者の奨学金返済をサポートしてくれる企業や自治体が年々増えています。ここでは奨学金の肩代わりをはじめとする奨学金返済の支援事業を行っている企業や自治体の事例を紹介します。

東京エネシス

エネルギー事業を行っている東京エネシスでは、新卒及び卒業後3年以内の第二新卒の人材を対象に、奨学金の代理返還を行っています。肩代わりしてくれる金額は毎月最大2万円で最大360万円。人によっては返済を全額会社に肩代わりしてもらうこともできます。東京エネシスは過去に3年連続で新卒の採用人数が当初の計画を下回っていました。そこで新卒をはじめとする若い人材の確保を目的として、2023年度から奨学金の代理返還制度を導入しています。

奨学金の代理返還制度は奨学金を肩代わりする代わりに会社に長く務めてもらうことが条件。転職サイトなどで人材を募集した場合、スピーディーに人材を探せますが、1人あたり100万円〜200万円のコストがかかるうえに、売り手市場の現代では短期間で離職してしまうことも少なくありません。代理返還制度の場合、数年〜十数年かけて返済を肩代わりするので、その間社員が会社を離れるリスクを小さくできます。金額も1人あたり100万円〜200万円程度と考えると、奨学金の代理返還制度は人材を確保するにあたってコストパフォーマンスが良いと言えるでしょう。そのため、導入する企業は年々増えており、2023年の段階で導入する企業は1,000社を上回っています。

山口県下関市

山口県下関市では、学校を卒業した後に下関市に定住する意思を見せた若者に対して、奨学金の一部を支援する「下関市奨学金返還支援補助金制度」が用意されています。制度の利用条件は、通っていた学校や居住地に関係なく、下関市が指定する中小企業に勤務し、下関市で暮らすことです。この条件を満たすことで、就職後2年目から5年目までの間に最大60万円の支援が受けられます。

奨学金バンク

弊社、株式会社アクティブアンドカンパニーでは、自社が紹介した企業に就職した人の奨学金を肩代わりする事業を行っています。元々株式会社アクティブアンドカンパニーは人材派遣事業や人材の教育事業、コンサルティング事業など人材に関連する事業を取り扱う企業です。事業を運営していく中で、奨学金の返済のせいで自分が望むキャリアだけでなく、結婚や出産も諦めてしまう若者が続出しています。

そこで弊社では、若者が安心して自分が望むキャリアを築ける機会を設けるための新規事業として、奨学金返済を肩代わりする転職支援サービス「奨学金バンク」を立ち上げました。奨学金バンクでは、自社の転職支援サービスに登録し、支援企業に就職した場合、その人が紹介企業で働いている間、奨学金の支払いを支援いたします。

奨学金返済は若者にとって大きな負担

税金などの比率が年々高くなっており若者は年々経済的な余裕がなくなっています。そんな中での奨学金の返済は若者にとって大きな負担です。そのため、奨学金の代理返還制度は若者がその地域に定住したり、就職先の決め手になったりとかなり魅力的な制度とわかります。したがって、人手の確保に苦戦しているなら奨学金の代理返還制度の導入もぜひ検討してみてください。

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