新聞やニュースなどでSDGsという言葉を耳にしたことがあるという方は、少なくないのではないでしょうか。SDGsはもともとは国連において提唱された概念ですが、今やビジネスを行う上で必須のものとなっています。そこで以下では、SDGsの意味について見たうえで、それを踏まえたビジネス戦略の在り方について説明していきますので、ぜひ参考にしてください。
SDGsとは?
まずはじめに、SDGsとは、Sustainable Development Goalsという英語の略で、日本語では持続可能な開発目標などと訳されています。これは、2015年9月に開催された国連サミットにおいて採択されたもので、2016年から2030年までの15年間の間に国連に加盟している193の国と地域が達成すべきものとして掲げた17の目標の総称です。17の目標は、貧困や飢餓、健康や教育、安全な水といったものから、クリーンエネルギー、働きがいや経済成長、産業と技術革新の基盤、人や国の不平等、住み続けられる街づくりといったものに至るまで多種多様です。ほかにも、気候変動、海や陸の豊かさなども含まれますが、これらに共通するのは、いずれも持続的な社会を実現するために必要なものばかりであるという点です。
このような国連の動きを受けて、各国においてもSDGsを踏まえた様々な政策が打ち出されています。日本においては、2016年5月に総理大臣を本部長とする持続可能な開発目標(SDGs)推進本部会合が開催され、そこには全ての国務大臣がメンバーとして参加しました。それ以降も、この会合は定期的に開催されており、SDGsに関する数多くの決定を行っています。例えば、第2回目の会合では、「持続可能な開発目標(SDGs)の実施指針」が制定されており、それを踏まえて、国際保健機関に対して総額約4億ドルの支援を行うこと、難民問題に対応するために5億ドル規模の支援を行うこと、女性活躍を推進するために総額約30億ドル以上の取組を行うことといった新たな政策が打ち出されました。また、2019年末に公表された「SDGsアクションプラン2020」では、SDGsと連携する「Society(ソサエティー)5.0」の推進、SDGsを原動力とした地方創生、強靭かつ環境にやさしい魅力的なまちづくり、SDGsの担い手として次世代・女性のエンパワーメントという3つの項目が骨子として取り上げられています。
ビジネスにおけるSDGsの重要性
このようにSDGsは国を挙げて取り組んでいる重要なテーマだけに、企業活動を行う上でもそれを重視した経営が不可欠のものになってきています。その理由は必ずしも一つだけではありませんが、まず言えるのはSDGsはビジネスチャンスにつながるため、経営上も無視するわけにはいかないということです。例えば、クリーンエネルギーを実現するためには、従来のガソリン車から電気自動車や水素自動車への転換が欠かせません。これは、そういった新時代の自動車を手掛ける会社にとっては見過ごすことができない大きなビジネスチャンスとなるはずです。一方、これまで大きなシェアを握ってきたような自動車メーカーであっても、このような時代の流れを無視してガソリン車ばかりにリソースを投入していては、あっという間に市場から淘汰されるかもしれません。そのため、新興企業だけでなく、伝統的な大企業にとっても、SDGsを意識した経営を避けて通ることはできないのです。
また、SDGsはステークホルダーとの関係を強化するためにも重要となります。企業にとってのステークホルダーには、株主に加えて、取引先や従業員など様々な人々が含まれますが、それらの中にはSDGsの達成に向けた経営のかじ取りを期待する者が少なくありません。上場企業の株を多く保有している機関投資家の中にはSDGsへの積極的な取り組みを求めているところが多く存在していますし、SDGsに関する何らかの取り組みを行っていることを取引の条件とする企業も増えてきています。そのため、SDGsを経営戦略に取り込むことは、そういったステークホルダーとの関係を維持し、より一層強固なものにしていくためにも大切なのです。
さらに、企業のレピュテーションを守るためにもSDGsを重視した経営は欠かせません。もし、環境悪化につながるような事業を営んでいるといった評判が広まれば、その企業の信頼はあっという間に地に落ちてしまうでしょう。インターネットが普及し、多くの個人が自由に自らの意思を表明できるようになった現代においては、経営者が思っている以上に悪い噂は早く広まります。一度失ってしまった信頼を取り戻すのは至難の業ですので、そうならないようにするためにも、常日頃からSDGsを意識した経営が求められるというわけです。
SDGsを踏まえた経営戦略の立て方とは?
では、実際にSDGsを意識した経営戦略を立てるためには、どのようにすればよいのでしょうか。まず最初にしなければならないのは、自社の経営においてSDGsのどの項目が重要であるのかを明確にするということです。SDGsの範疇は多岐にわたるため、その全てを網羅した経営戦略を立てようとすると、かえって実効性を伴わない内容になってしまいかねません。そういった事態に陥らないようにするためにも、企業として重要だと考える課題をピックアップして明確に示せるようにしておく必要があるのです。例えば、自動車メーカーであれば、クリーンエネルギーや気候変動などは、ビジネスを営む上で避けては通れない重要な課題であると言えるでしょう。そういった課題をリストにして示せるようにしておけば、投資家などのステークホルダーからも信任を得ることができるはずです。なお、企業にとっての重要課題を指して、マテリアリティと呼ばれる場合もあります。特に、上場企業ではこのマテリアリティを積極的に開示する流れが強まってきていますので、もし他社の事例を参考にしたいのであれば、企業が出しているアニュアルレポートが参考になるはずです。
もっとも、マテリアリティを明確にしただけでは、経営戦略としては十分ではありません。マテリアリティとして掲げた課題を解決するために、具体的にどのような取り組みを進めていくかが大事になってくるのです。自動車メーカーの場合には、気候変動を抑制するために、電気自動車などの新たな自動車の開発に力を入れるというのも一案ですし、既存のガソリンエンジンをより効率の良いものにするために投資を行うという手もあります。必要となる取り組みは企業によって違ってきますので、マテリアリティを定めたら、それを解決するために自社が何ができるかを経営レベルで徹底的に議論して整理することが肝要です。
また、取り組みはやりっぱなしではいけません。企業価値を向上させるためには、取り組みの結果を検証した上で、足りない点があればそれを改善するためのさらなる方策が求められるのです。そのためには、定量的な目標を定めて定期的にその達成度合いをチェックする必要があります。このような定量的な目標はKPIとも呼ばれますが、SDGs戦略を推進する上でもマテリアリティとして掲げた課題ごとにこういったKPIを設けることは有効なのです。このように、マテリアリティを明確にして、それに対する取り組みとKPIを打ち出し、定期的にモニタリングして、絶えず改善に努めるというPDCAサイクルを回すという点を意識して経営戦略を立てるようにするとよいでしょう。
SDGsは全ての企業にとっての重要テーマ
以上で見てきたように、この地球上で事業を営むすべての企業にとって、SDGsはもはや他人ごとではない重要なテーマとなっています。そのため、SDGsを無視した経営を続けていては、いずれ市場から淘汰されることになりかねません。そうならないようにするためにも、SDGsを踏まえた経営戦略を早期に立案し、その達成に向けての取り組みを強化するようにしましょう。
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