企業の経営者や人事担当者は将来的な事業計画を考え、マネジメントや人材獲得・育成に取り組んでいるでしょう。そのような立場の方が認識しておきたいのが「ムーンショット目標」です。こちらでは、ムーンショット目標の詳細をお伝えするとともに、企業としていつから取り組みを始めるべきかを決める要素、メタバースとの関係についてご紹介します。

ムーンショット目標とは

ムーンショットとは本来月に向けてロケットを打ち上げることを指しますが、前人未到で達成が非常に困難な目標を設定し、成し遂げることでイノベーションを起こす計画や挑戦を「ムーンショット目標」と呼んでいます。日本では、内閣府が主導する形の「ムーンショット目標」が大きく分けて9つ設定されています。一つ一つ取り上げて見てみましょう。

2050年までに人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現

遠隔操作できるアバターやロボットを組み合わせ、大規模で複雑な仕事を実行できる技術を開発しつつ、運用基盤を構築する目標です。望む人は誰でもトップレベルの身体・認知・知覚能力を有して社会生活を送れるようになることがゴールです。

2050年までに超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現

2030年までに人の臓器の包括的なネットワークを解明し、2050年までには疾病の予測や未病を評価する仕組みとともに、未病段階で健康的な状態に戻るための方法の確立を目標とします。

2050年までにAIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現

AI開発を加速させ、2030年までには自立して動き、違和感がなく人と共存し、特定の問題の解決策を見いだせるAIロボットを開発します。そして、感覚的に不安を感じることなく操作でき、その人と同等以上の身体能力を持つAIロボットを開発し、人生に寄り添うパートナーのような存在を各自が持てるようにするのが2050年までの目標です。

2050年までに地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現

2030年までに温室効果ガスの循環技術や環境汚染物質を有用な資産に変えたり無害化する技術を開発し、それらが有効であることを確認します。2050年までには、資源を循環して利用する技術を商業規模のプラントや製品作りに生かせるよう、世界に普及させることを目標としています。

2050年までに未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出

世界的な人口増加と地球環境の保全を両立できるよう、地球規模で無理のない食糧生産システムを構築し、限りある資源を効率よく活用することを目指します。それには、微生物や昆虫などを食糧生産システムに取り入れることも含まれます。

2050年までに経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現

2030年までに今までのコンピュータでは実行できないことを可能にするNISQ量子コンピュータを開発し、2050年までに大規模化を達成して有効性を実証するとしています。良質なNISQ量子コンピュータの開発はさまざまな分野でイノベーションを起こし、世界の産業全体に波及効果をもたらすと期待されています。

2040年までに主要な疾患を予防・克服し、100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現

日常生活の中で自然に予防ができる社会を実現するのが、2040年までの目標です。また、世界のどこにいても必要な医療にアクセス可能なネットワークを確立し、負担を強いられずに生活の質を維持・改善できる社会にしていくことを目指します。

2050年までに激甚化しつつある台風や豪雨を制御し、極端風水害の脅威から解放された安全安心な社会を実現

台風や線状降水帯を含む豪雨を制御できるシステムを2050年までに確立します。そのために、台風や豪雨による被害を軽減できるシミュレーションを探すとともに、それらを実行する野外実験を2030年までに始めるとしています。

2050年までにこころの安らぎや活力を増大することで、精神的に豊かで躍動的な社会を実現

多様性を重視しつつ、共感や創造性を高める技術を作り出し、心豊かに暮らせる社会を目指します。ムーンショット目標により、現実社会から仮想空間にシフトしていく上で、社会が大きく変わることによる心の揺らぎを解消する施策は重要です。2030年までには心と深く関係がある文化・伝統・芸術を調査し、安らぎや活力を増大させる要素を解明する技術を作り出していくのが目標です。

会社としてムーンショット目標をいつから始めるかを決める要素

ムーンショット目標9つのうち8つは2050年までが期限とされ、残りの1つはさらに早く2040年が期限です。ゴールを達成すべき時期は明確にされていますが、それぞれの目標の難易度は企業の実情により異なります。そして、各企業がムーンショット目標を達成するのに必要とされる次のことにどれだけリソースを割けるかにも依存します。登用できる資産やスキル、リソースが潤沢であれば、短期間に目標を達成することも可能かもしれませんが、そうでない企業は早くから準備する必要があるでしょう。

ターゲット設定

ムーンショット目標を達成するには、各企業が独自のターゲットを絞ることが大切です。ターゲットは社内全体で共有することがポイントになりますので、キーワードを決め、考え方や取り組み方を明確にする必要があります。長期的なターゲットのほかに、ルーフショットも決めておきます。ルーフショットとは屋根に届くほどのショットのような、少しの努力や改善により達成できる目標です。大きな目標の達成に至る難易度の低いステップを細かく設定することで、実現の可能性が高まります。

プロジェクトマネジメント

実現にはハードルがいくつもあるムーンショット目標の達成には、綿密な計画が欠かせません。いつまでにどのレベルに達するべきかに加え、到達すべきクオリティを決定し、進捗状況を管理することが重要です。

チームワーク

ムーンショット目標は経営者が旗を振るだけで成し遂げられるほど簡単なものではありませんが、社内が一致団結して目標に向かう上で情熱を伝えられるのは経営者と言えます。組織力やチームワークが発揮できる環境を作るのも、経営者並びに人事担当者の重要な任務です。

モチベーションの維持・向上

ムーンショット目標は、達成までに長い時間がかかります。そのため、モチベーション維持は欠かせません。モチベーションを維持したり向上させるには、人事評価の質を高め、働く従業員が納得できる人事システムの確立も大事になります。

ムーンショット目標とメタバースとの関係

ムーンショット目標に取り組む上で、メタバースの理解を深めておくことも大切です。こちらでは、メタバースの定義や必要性が増した理由について考えたのちに、ムーンショット目標とメタバースとの関係を考察します。

メタバースの意味と意義

メタバースとは、アバターを使ってネットワーク上に設けられた仮想空間にアクセスする技術のことですが、仮想空間そのものを指す場合もあります。世界各地からアクセスし、コミュニケーションできる仮想空間では自分の分身であるアバターを使って活動します。空間内を自由に移動したり、他の人と交流したり、仕事や買い物など現実の日常生活と変わらない行動が仮想空間でできます。アバターでの活動は年齢による体の衰えや居住地などの制約がなく、現実社会よりも自由度が高いところがメリットとされます。

メタバースの必要性が増した理由

メタバースがとりわけ注目されるようになった一つの要因は、新型コロナウイルスと言われています。感染症蔓延により移動制限が設けられたり、非接触のコミュニケーションを取る必要がありました。さらに、オンラインゲームの普及やVR映像技術の向上もメタバースを現実的に考えるうえで役に立っています。ゲームや映像にアクセスする一人一人が遠く離れていても同じ体験をし、容易に意思疎通ができることでメタバースは身近な存在になりつつあります。

ムーンショット目標とメタバースとの関係

現時点でもメタバースは遠隔地医療を可能にしたり、世界中の人が集まってコミュニケーションする場を提供しています。この点がムーンショット目標にも生かされると考えられます。会社から離れた場所に住んでいたり、身体的な障がいを抱えて通勤できない人でも、自分の経験や能力、個性を生かして自由に仕事ができるようになれば、社会全体の生産性を上げられます。誰もが必要とされて制限が壁にならず、各個人が幸福や自由を獲得できる世の中になることがムーンショット目標のゴールと言えます。

ムーンショット目標を現実のものとするために各企業が取り組めること

ムーンショット目標は、内閣が主導する形で2050年または2040年までの実現を目指しています。企業としてムーンショット目標に資する努力を続けることは、会社の成長や良質な人材獲得に役立つはずです。まずはムーンショット目標の趣旨を理解することから始め、自社で取り組める分野を探した上で、経営者や人事担当者が主体的に関わっていくことが大事になります。

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