最近、働き方改革や労働力人口の減少を背景に人材を有効活用する取り組みが注目されています。エンゲージメント向上や離職防止など、組織の生産性を高める施策を検討する企業が増えてきました。こうした人材活用の取り組みを行うのに不可欠なのが人事データ分析です。効果的な施策を行うには現状から課題を発見して最適な打ち手を選ぶことが不可欠です。そこで今回は人事データ分析について解説します。
人事にもデータ分析が求められる時代
近年の働き方改革や人材の多様化など、雇用環境変化から人的資源管理の最適化は企業にとって重要な課題の一つになっています。こうした背景をもとに、人事でもデータに基づいた報告や問題解決が求められています。
人事はこれまであまり結果を求められない部門の一つでした。なぜなら新卒一括採用や年功序列、終身雇用制など、比較的管理が簡単な日本型人事制度ではただ社内にいる社員の管理を行っていればよかったからです。しかし最近ではこうした日本型人事制度の終焉とともに、人事も戦略的な人材調達や組織生産性向上の取り組みが求められるようになってきました。また最近ではITツールの発達により、簡単にデータ活用・分析ができるようにもなっています。
こうした雇用環境の変化とITツールの発達により、人事にもデータ分析が求められるようになりました。
データが散在している人事部
一方で人事部はこれまでデータに基づいた施策立案が求められてこなかったため、データの整理ができていない場合も多いです。
多くの人事部ではデータが分散しています。勤怠データは勤怠管理システム、研修結果はアンケート、組織調査はコンサルからのレポートなどデータが散在しているのです。また、給与計算に関する手順書や評価データの反映方法は各担当者の頭の中にあるケースもあります。また人事部は機密情報を扱うため、誰にも知られていないデータが役職者の引き出しの中やPCのローカルフォルダに存在している場合もあるでしょう。
このように人事部では、データ化されていないどころか、紙にさえなっていない情報が多く存在しています。人事部で働いている方であれば、情報を探すのに一苦労、という経験をしたこともあるのではないでしょうか。
データや情報がバラバラに存在している人事部では、情報共有や人事領域における問題解決においてこれまで非効率が存在してきました。
勘と経験はもう古い
人事データの中でも特にやっかいなのが担当者の「勘と経験」です。人事部には少なからずその道のプロがいます。給与計算や勤怠管理など、その企業固有の運用に詳しいベテラン社員などです。
彼らはプロであるが故に、自分自身が他者に代替されないようにノウハウを積極的には出したがらないこともあります。またある意味職人のような気質を持っている方も多く、彼らが持っている情報を引き出そうと思ってもなかなか全体像をつかむことができない場合もあるでしょう。
こうしたベテラン社員にデータを求めても、彼らの「勘と経験」は言語化がなかなか難しいものです。しかし最近ではRPAやタレントマネジメントシステムなどのITツールにより、データの見える化や整理が容易にできるようになりました。特にHRオートメーションシステムのようなツールを使用すれば分散したデータの一元管理ができるようになります。
もうベテラン社員の「勘と経験」に頼る時代は終わりました。これからはITツールを活用したデータの見える化と集約化の時代なのです。
人事データの分析方法
人事データを集めてみたのはいいものの、そこから何を読み取ればいいのかわからないこともあります。そこで人事データの分析方法をご紹介します。
人事データを分析するには大きく3つのステップがあります。ここでは離職を例に考えてみましょう。
離職を例にした人事データの分析方法
①ひとつのデータから傾向を探る
まず離職者数の傾向を見ます。最近増えているのか、減っているのかを見ましょう。データを細分化できるなら、どの年齢層や役職で退職者がいるのかを検討します。
②関連するデータとの相関関係を見る
次に関連するデータを見ます。離職と関連性があるのはエンゲージメントや賃金、勤怠データなどです。こうしたデータの中から最も関係のありそうな変数を探します。
③総合的にデータからどんな示唆があるか考える
関連性の高い変数をいくつか見つけたら、どんなことが原因なのかを考えましょう。特に重要なのが離職の一番の原因となる要因を見極めることです。他のデータと比べ、相対的に離職への影響が強い変数があるはずです。データを比較して、職場の人間関係改善、賃金設計見直しなど対応の方向性を検討しましょう。
人事の問題は複合的に起こるものです。一つのデータだけではなく、複数のデータを変数として考えましょう。
人事ITツールを活用して分析しよう!
こうした人事データ分析には膨大な時間と作業工数がかかります。またExcelを使用したデータ分析の場合はPCスペックによって処理時間が発生することもあるでしょう。
最近の人事ITツールは使い勝手もよく、データ分析もかなり簡単にできるようになっています。クラウド型のシステムであればPCスペックに依存しないのでどの端末からもすぐにデータ分析ができます。
人事ITツールを使えば、人事データ分析の工数も時間も大幅に削減されます。ぜひ活用してみましょう。
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