上司と部下の関係性において、世代間ギャップが時に壁となって立ちはだかります。世代間ギャップがあるために、不要な対立が生まれ業務に支障を来すことになるのは避けなければいけません。今回の記事では、上司と部下の世代間ギャップとはどのようなものなのか、世代間ギャップを乗り越えて相互理解を実現するためにはどうすればいいのか、令和の時代に求められるマネジャー像などを解説していきます。
令和の時代に見聞きする昭和世代のマネジャーのあるある話
まず昭和世代のマネジャーについて、令和の時代で見聞きするあるある話を紹介していきましょう。一つ目は、「自分の言うことに対して“Yes”以外の返事をすると不満を持つ」です。言い換えれば、部下に“Yes”を強要するタイプで、筋が通っていない話であろうと“Yes”以外の返事を認めようとはしません。そのような上司は、“Yes”以外の返事を聞きたくないので、部下を選り好みして“Yes”を言う部下だけを周りに置きたがります。
このタイプの上司の部下は、常にマネジャーの顔色を伺うようになってしまう危険性を孕んでいます。こうしたことが長く続けば、部下は顧客視点でものごとをとらえず、上司が気に入るであろう答えを用意するようになってしまいます。これによって、部下は客観的にものを考えないようになってしまいます。このような部下が昇格したとしても、管理職という役割を果たすことができない名ばかり“管理職”になってしまいます。
二つ目のあるある話は、アドバイスと言う名目で武勇伝を語ることです。経験することで学べることはあるので、未熟な部下に経験豊富なマネジャーがアドバイスをすることを否定はしません。しかし、アドバイスと言う名目の武勇伝であった場合、自分を尊敬して欲しいと言う狙いが隠れています。そうしたマネジャーの気持ちに部下も気づいているので、余裕があれば狙い通りに武勇伝を気持ち良く称えてくれるでしょう。しかしながら、そうしたことを繰り返していると、次第に部下も嫌気がさしてマネジャーのアドバイスを聞くのが苦痛になります。結果として上司と部下の間に、見えない溝が生まれてしまうのです。
三つ目のあるある話は、強きものに巻かれ、弱きものを叩くことです。激しい出世競争を生き抜くために、昭和世代のマネジャーは、強きもの、すなわち自分の上司には逆らわない、自分自身が“Yes”マンになってしまっています。また、自分を押し殺して会社に尽くしてきたことで蓄積されたストレスのはけ口として、今度は自分より下の立場の部下をターゲットにするというのはよく聞く話です。上の命令には唯々諾々と従い、部下を暴言や暴力で脅すこと(ハラスメント)を繰り返していれば、上司と部下の関係性が険悪になるのは言うまでもありません。
Z世代と昭和世代のギャップを確認しよう
Z世代と昭和世代のギャップは、教育による部分が大きいと言われています。子どもが多く受験戦争を勝ち抜かなければ大学に入れない昭和世代に対して、入学志望者総数が大学の定員を下回る全入時代のZ世代は選り好みをしなければ大学生になれるという違いがあります。そのため、昭和世代に比べて、Z世代はハングリー精神が失われたと感じる人は少なくありません。他には、精神論で成長を促すスポ根指導を受けた昭和世代に対して、Z世代は潜在能力を引き出すために何をするべきかを考えさせる指導を受けています。理由も説明をせずに上から命令を出すだけでは、Z世代は動くことがありません。このように、生まれ育った環境や教育が大きく異なることがギャップの原因と考えられます。
続いて社会情勢からギャップを見てみます。昭和世代は昭和末期から平成初期に、バブル経済とバブル崩壊を経験しました。バブル崩壊時には大企業でさえ倒産をする事態を目にしてきました。そうした中で就職をした会社で、定年まで安定した生活を描いているものの、常に雇用や生活への不安を感じていました。
一方でZ世代は、バブルの崩壊とリーマンショックがもたらした世界的な不況を子供時代に体感しました。終身雇用制度で安定した職を得ていたはずの親世代が、困難に遭遇している様子を見て、自分の将来を真剣に考えるようになります。また、教育制度改革による多様性を尊重する学びは、Z世代の価値観に大きな影響を与えました。その結果、Z世代は正社員として安定した生活を得たいと考える人もいれば、雇用形態にこだわらず自分らしく生きたいと考える人もいて、多様な働き方の価値観を持つ世代となっていきました。
多様な価値観を持つようになったことは、出世に関する考え方のギャップにも繋がっています。昭和世代は、より良い暮らしを目指し、高い報酬を獲得できる立場(管理職)を目指す出世意欲が高い世代と言えるでしょう。一方でZ世代は、自分らしく生きることを望み、重い責任を負うことに消極的な人も増えています。そのため、出世意欲が低く、転職も抵抗なく行えるのです。
エンゲージメントができればZ世代と昭和世代のギャップは問題ない
Z世代と昭和世代に存在するギャップを確認できたら、エンゲージメント、すなわち両世代の結びつきを考えなければなりませんそこでやらなければならないのは、内発的動機を促すコミュニケーションです。内発的動機とは、人の内面から生まれる要因が行動を起こす動機となることです。両世代がお互いに強い関心を持ち理解し合おうとするコミュニケーションを取れば、両世代の結びつきが強固なものとなります。
コミュニケーションを取る際には、価値観の対立を招かないように注意しましょう。人は自分と違う価値観を否定し排除する傾向にあります。しかし、そのようなことをすればギャップは修復できないほど大きなものとなります。両世代がお互いの価値観が違うことを理解することが、エンゲージメントには必要です。特に昭和世代のマネジャーは、相互理解のためのコミュニケーションが大事であることを強く認識しなければいけません。昭和世代のマネジャーは、今までの経験から自分の価値観に自信を持っていることが多く、部下の価値観が間違っていると思いこんでしまうことがあります。そうした考えから脱却し、Z世代の価値観を受け入れましょう。
Z世代の価値観を昭和世代が理解できれば、Z世代が何に訴求されるのかを知ることができます。従来のやり方では命じたことをやってくれなかった部下も、Z世代に合わせた指導をすることで的確に仕事をこなすようになり貴重な戦力となってくれるはずです。
一方でZ世代も、なぜ昭和世代の上司が自分には理解できないマネジメント・指導をしてしまうかを考えなければなりません。過去のやり方・考え方を否定する前にまずは上司の考えを受け止めることをお勧めします。そうすることで相互理解が生まれ、よりよいコミュニケーションへとつながります。
相互理解を深める1on1
Z世代と昭和世代のギャップがもたらす問題は、相互理解によるエンゲージメントで解決できます。そこで相互理解を進めるための手法である1on1について見ていきましょう。1on1とは、上司と部下が余人を交えず1対1で行う面談のことを言います。異なる価値観を持つ相手と向き合うことで、理解しあう事が可能となります。一般的に1on1は、週に1回、月に1回と定期的に実施し継続するものなのですが、頻度が多いほど効果がより高まります。
1on1でやることは、まず傾聴です。相手の話を聞かなければ、価値観を理解することなどできません。傾聴をする際には、相手の話を遮らないこと、片方だけが話をするようなことがないように心がけましょう。傾聴でお互いの価値観を確認した後は、問い掛けです。問い掛けはよく分からなかった部分を確認する意味合いもありますし、問いかけを通じて相手に気づきを促す目的もあります。場合によっては問いかけに答えにくいこともあるので、その場合には自由回答の質問ではなく選択肢が用意されている質問を用意するのも良いと思います。
1on1の最後に行うのはフィードバックです。上司が部下に話し合いを通じて気になる点や客観的な評価を伝えることで、部下の成長を促します。その際には、部下の価値観を否定せずに成長を阻害する要因を一緒に取り除いていったり、今後の期待なども交えた会話を心がけたりすると良いと思います。また、最初に「気になる点を伝えたいのだけれども良いですか」と許可を求めておけば、相手の受け止め方も変わります。念のため、フィードバック後に部下がどう感じたのかを確認しておけば、不要な誤解を招くことはなくなります。
令和に求められるマネジャー像を目指そう
Z世代と昭和世代のギャップに翻弄されることなく、良好な上司と部下の関係を築きたいのであれば、令和の時代に求められるマネジャー像には、多種多様なZ世代にみられる個人の特性に向き合い、意味なく個人に“責”を求めないという姿勢が必要です。Z世代に過剰に“責”を求めると、彼らは押しつぶされてしまいます。それを踏まえた上で、仕組みや行動を注意深く見守り、個々の変容を支援していく懐の大きさも必要です。
時代に合わせた上司と部下の良好な関係を築く
Z世代と昭和世代のギャップがあるために、部下をどう扱えば良いのか悩んでいるマネジャーや人事担当者の方々は少なくありません。しかしながら、戸惑うだけで問題は何も解決しません。時代が変化していることを受け入れ、Z世代の価値観を理解できるように1on1などを通じてエンゲージメントを高める行動を取ることで相互理解が進み、良好な上司と部下の関係を築くことができます。今までのやり方に固執せず変化に対応する勇気を持ちましょう。
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