健全な職場環境を整えるために、「ストレスチェック」は非常に重要です。メンタルヘルスの専門家である産業医と協力しながら、多くの企業がストレスチェックを行ってきました。そして、その際には上司が部下にできることもあります。この記事では、ストレスチェックの内容や、上司が果たすべき役割や義務について解説していきます。

ストレスチェックとは?目的やメリットも知っておこう

経営者や人事担当者ならそもそも「ストレスチェック」という言葉を正確に理解しておくことが大事です。以下、その内容やメリットを説明します。

従業員のストレスを分析するための方法

産業医学の一種であり、従業員の精神衛生を客観的に分析するための方法がストレスチェックです。多くの場合、ストレスチェックはアンケート形式で行われます。その中では従業員に対し「非常にたくさんの仕事をしなければならない」「活気がわいてくる」といった設問が出されます。従業員は「1~4」の度合いで回答し、データが集計されるシステムです。分析結果をもとに、経営者は従業員にしかるべき対応をとらなくてはなりません。もしも、従業員にメンタルヘルスの不調が見られたら、配置転換や作業量の見直しなどを行う必要があります。

職場の問題点が判明するチャンス

ストレスチェックの目的は3つで「不調の予防」「不調の発見」「不調をきたした従業員の職場復帰支援」です。このうち、もっとも重要なのは「不調の予防」だといえるでしょう。メンタルヘルスが悪化する前に職場の問題点を発見し、早急に処置をしていくことが経営者の義務です。ストレスチェックは、職場の問題点を可視化できる大きなチャンスなのです。

制度化されているストレスチェック

2015年に施行された「ストレスチェック制度」によって、常時50人以上の労働者が働いている職場ではストレスチェックの実施が義務付けられました。ストレスチェックは1年に1回、非正規雇用も含む全労働者に対して行われます。労働者が50人未満の職場については、ストレスチェックはあくまで「努力義務」とされてきました。しかし、従業員の安全を守るには、可能な限りストレスチェックを実施することが望ましいといえます。

ストレスチェックが制度化されたのは、仕事に関係する問題でメンタルヘルスに支障をきたす社会人が増加したからです。メンタルヘルス悪化は精神疾患につながるだけでなく、最悪の場合は自殺や過労死を招きかねません。厚生労働省は2006年に「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を打ち出し、メンタルヘルスの対策に努めてきました。それでも、職場で不調を訴える労働者の増加は食い止められず、ストレスチェックが制度化されたのです。

悩み

ストレスチェック後の大切なケア!産業医面談とは何をするのか?

企業がストレスチェックを行った後、産業医が本人に結果を通知します。その際「高ストレス」とみなされた従業員には産業医面談が継続的に実施されることもあります。産業医とのやりとりはメンタルヘルス改善のために大きな鍵を握る機会です。以下、産業医面談について解説していきます。

産業医の役割

そもそも産業医とは、従業員の健康を守るための指導、助言を行う仕事です。産業医は経営者と従業員に対して中立な立場をとります。つまり、産業医は誰かに肩入れをしながら働いているわけではありません。もしも、産業医が企業に問題点があるとみなしたときには「勧告権」を行使し、改善を促すこともあります。従業員にとっては本音で話せる存在だといえるでしょう。そのかわり、産業医は具体的な治療を行うわけではありません。治療が必要な従業員に対しては、産業医が別の医療機関を紹介します。

産業医面談の内容

高ストレス者に行われる産業医面談では、従業員の現状を詳しく聞き出していきます。体調や精神状態などを産業医は把握し、そのうえで不調の原因を探ることが目的です。そのため、産業医面談では仕事内容や労働時間の話になるケースも少なくありません。なお、産業医面談自体は企業側の義務ではないものの、従業員のメンタルヘルス改善に向けた取り組みとして、実施することが得策です。

産業医面接の対象者は「残業・休日出勤が1カ月で80時間を超えて」おり「疲労が蓄積している」人です。面談が行われた後で、医師から労働者に具体的なアドバイスがなされます。アドバイスの内容は、生活習慣やストレス解消法、働き方など多岐にわたります。もしも、職場環境そのものに問題があると考えられる場合、産業医は経営者に対して「意見書」を作成することも珍しくありません。意見書は職場の問題点を具体的に記した書類であり、改善するべき部分も指摘されています。

休職や復職にあたって面談が行われることも

従業員が休職や復職を希望している際にも、産業医面談は行われてきました。休職希望の場合、産業医は従業員の話を聞いて就業能力や不調の原因などを意見書にまとめます。復職希望者がいるときも、基本的な手順は変わりません。ただ、復職希望者との面談では上司が同席することもあります。作成された意見書は経営者や人事担当者、上司などで共有されます。意見書を参考に、企業側は休職や復職の最終判断を下す流れとなるのです。

ストレスチェックを受けた部下に上司ができることは?

原則として、ストレスチェックは産業医の主導で進んでいきます。ただ、部下に対して上司ができる心遣いも少なくありません。以下、上司がストレスチェックで果たせる役割について解説します。

産業医面談をすすめる

高ストレス者であっても、産業医面談を受けることは義務ではありません。従業員によっては「メンタルヘルスが不調だとキャリアに響く」「面談を受けている時間が惜しい」と考えてしまいます。そのため、高ストレス者に産業医面談をすすめるのは上司の役割だといえるでしょう。決して強制するわけではなく、面談のメリットを冷静に伝えることが大事です。なお、ストレスチェックや産業医面談の結果が、従業員の不利益になる状態は法律で禁止されています。面談に二の足を踏む部下には、その点もあわせて説明するのが賢明です。

ストレッサーを取り除く

人間のストレスの原因になっている要素を「ストレッサー」と呼びます。ストレスチェックや産業医面談を経て部下のストレッサーが判明したなら、上司がそれを取り除いてあげましょう。職場で多いストレッサーのひとつは「人間関係」です。部下の所属チームに問題がないのか、再検討してみることが大切です。相性の悪い顧客、取引先も見直しましょう。人間関係以外では、仕事の量や適性もストレッサーになりえます。過剰労働に苦しめられていたり、不得意な案件ばかり任されていたりすると、部下のメンタルヘルスは悪化しかねません。適材適所の人材配置は部下のストレス解消に役立ちます。

自分自身を振り返る

上司自身が部下のストレッサーになっている可能性も考えましょう。部下から上司に対しては、なかなか本音をぶつけられないものです。上司が気づかないうちに、部下を苦しめているケースは珍しくありません。部下への態度、言動などを振り返って反省していくことが肝心です。また「自分ならできるはず」「自分はもっとやっている」と、上司の物差しで部下を評価することも危険です。自分は自分、部下は部下と考えなければ、相手の能力を超えたタスクまで押し付けてしまいかねません。部下のストレスチェックや産業医面談を機に、接し方を変えてみるのもひとつの職場改善です。

ストレスチェックと産業医面談で上司と部下の関係を見直そう

職場環境や上司の問題点を見直す機会として、ストレスチェックと産業医面談はとても大切です。産業医から意見書が寄せられたとしたら、その内容は冷静に受け止めましょう。仮にネガティブな項目が並んでいたとしても、それらを改善できるチャンスだといえます。社内の悪しき習慣をなくし、全従業員が健康に働ける職場を目指しましょう。

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