効率的な人材管理は、ビジネスにおいて不可欠です。企業が直面する人材管理の課題に対する一つの答えとして、ヘイ・システムが注目されています。ヘイ・システムは、従業員のモチベーションを高め、企業の競争力を強化するための戦略的な人事制度です。従業員一人ひとりのポテンシャルを最大限に活用し、組織全体のパフォーマンスを向上させるための鍵だと言えます。今回は、ヘイ・システムについてご紹介します。

ヘイ・システムとは

ヘイ・システムとは、エドワード・ヘイによって提唱された職務評価手法の一つであり、ホワイトカラー労働者の処遇を決定するために開発されました。この手法では、仕事の「大きさ」に基づいて人のポジションを評価し、以下の3つの側面を定量的に評価します。

ノウハウ

ノウハウは、職務を遂行するために必要な知識や経験の広さと深さを指します。具体的には、実戦的・専門的なノウハウ、マネジメントのノウハウ、対人関係のスキルなどです。実戦的・専門的なノウハウでは、特定の職務において、どれだけ専門的な知識や技術が必要かを評価します。マネジメントのノウハウは、チームやプロジェクトを管理するために必要な能力です。対人関係のスキルには、他者と効果的にコミュニケーションを取り、協働する能力が求められます。

問題解決

問題解決の評価については、主に思考の自由裁量性と思考チャレンジの2つの側面から考えられます。思考の自由裁量性は、個人がどの程度自由に思考し、独自の解決策を生み出せるかを評価します。例えば、既存の枠組みや手法にとらわれず、新しいアプローチを考案できる能力などです。思考チャレンジでは、問題に対してどの程度深く考察し、複雑な問題を解決するためのアイデアを考え出せるかを評価します。困難な状況や予期せぬ問題に直面した際に、創造的かつ効果的な解決策を提案できるかが重視されます。

行動とその結果に対する責任

行動とその結果に対する責任は、個人や組織が自らの選択と行動の結果に対して負うべき義務や責任を指します。自由裁量性(自己決定の自由)と成果に対する影響力(インパクト)の両方で評価されるのが一般的です。自由裁量性は、個人が自分の行動を自由に選択し、決定する能力を意味します。具体的には、選択肢を理解し、意思決定をおこない、行動を実行する自由などです。成果に対する影響力は、その行動がもたらす結果にどのように影響を与えるかという意味です。行動の意図や目的、行動がもたらす可能性のある正の影響や負の影響を考慮します。

ヘイ・システムの評価チャート

ヘイ・システムは、職務評価の手法として広く用いられており、職務の大きさや責任の程度に基づいて人の処遇を決定するためのものです。公平性や透明性を確保するために、多くの企業で採用されています。ヘイ・システムには、以下のような評価チャートがあります。

ヘイ・ガイドチャート法

ヘイ・ガイドチャート法は、職務評価の手法の一つです。人々の処遇を仕事の性質に基づいて決定するための「職務型人事制度(ジョブ型人事制度)」の設計に使用されます。1950年代にアメリカで公民権運動の時期に、コーン・フェリーによって開発されました。仕事の内容を評価し、給与や職位を決定するために用いられるのが特徴です。職務の価値を測定するには、知識と経験、課題の複雑さ、対人関係のスキルなど、複数の要素が考慮されます。ヘイ・ガイドチャート法のメリットは、職務の価値に基づいて均等な処遇を実現できることです。また、同一労働・同一賃金の政策やグローバル化に対応しやすいという特徴があります。

コンピテンシー評価

コンピテンシーは、ある業務において優れた成果をもたらす能力やスキル、行動特性を指します。個々の能力や知識、態度、動機などを包括的に評価するための基準です。コンピテンシー評価は、個人のパフォーマンスを特定のコンピテンシーに基づいて評価する方法で、従業員の行動や成果が企業の目標と適合しているかどうかが評価できます。コンピテンシー評価の主なメリットは、評価基準が明確になることです。組織内の不満が解消されるだけでなく、評価者の負担が軽減されます。また、採用時に適切な人材を選別しやすくなる利点もあります。

動機

動機は、個人の行動を推進する内的な力です。職場においては、従業員が仕事に対してどのような意欲を持って取り組んでいるかを理解するために重要です。ヘイ・システムにおける動機の評価手法は、個人の動機要因を明らかにし、それが仕事の成果にどのように影響するかを分析します。具体的には、「PSE(Picture Story Exercise)」という診断手法が用いられ、個人が描く物語を通じて動機要因を評価するのが特徴です。動機を評価すると、従業員が持つ潜在的な動機を理解し、仕事の成果向上につなげられます。また、個々の従業員に合わせたモチベーションの向上策を考えるのにも役立ちます。

EQ(Emotional Intelligence Quotient)

EQ、または感情的知性(Emotional Intelligence)は、個人が自分自身と他者の感情をどのように認識、理解、管理し、それらを行動に活かす能力を指します。自己認識、自己管理、社会的認識、関係管理の4つの能力から成り立っているのが特徴です。EQを評価する手法には、自己報告式のアンケートや心理テストなどがあります。EQが高いメリットは、ストレス耐性が強くなり、対人関係が良好になるなどです。また、良いリーダーシップを取れるようになり、プラス思考になりやすい特徴もあります。

ヘイ・システムの問題点

ヘイ・システムは、企業の人事評価において革新的なアプローチを提供し、多くの組織に採用されています。しかし、どのシステムにも限界や課題が存在するものです。ヘイ・システムの具体的な問題点には、以下のようなものがあります。

職務評価の主観性

職務評価は、評価者の主観に左右される可能性があり、一貫性や公平性を欠く場合があります。評価基準の不透明さを生み出し、評価者の個人的な好みやバイアスによって評価され、従業員の成果や努力が適切に評価されないリスクが生じてしまうのです。具体的には、評価者によって評価にばらつきが起きてしまう場合が挙げられます。同じ業績や成果でも、評価者によって評価が大きく異なる場合があり、従業員は公正な評価を受けていないと感じ、モチベーション低下や組織全体の動揺につながる恐れがあります。

柔軟性に欠ける

ヘイ・システムは、特定の職種や業界に適用する際に柔軟性に欠けるという問題点があります。職種によっては、職務内容が非常に多様で、ヘイ・システムムのような一般的な評価基準では適切に評価できない場合があるのです。新しい技術やビジネスモデルの出現により、従来の評価システムではカバーできない可能性もあります。また、ヘイシステムの評価基準が文化的に適合しない場合があり、職務評価において不公平感を生じさせる場合もあります。

均等処遇の理念との齟齬

ヘイ・システムは、人種や性別、年齢、家柄に関わらず、仕事の大きさによって人の処遇を決めるべきだという均等処遇の理念(同一労働同一賃金)に基づいています。しかし、実際の職場では、この理念が完全には実現されていない場合があります。例えば、同じ職務を担っているにも関わらず、正規雇用と非正規雇用の間で賃金や福利厚生に差がある場合などです。職務評価が個々の職務の内容だけでなく、雇用形態によっても左右されることを意味しており、均等処遇の理念との齟齬が生じていると言えます。

また、ヘイ・システムは職務の大きさを評価するためのものであり、個々の従業員のパフォーマンスや貢献度を直接評価するものではありません。そのため、個人の成果や能力が適切に評価されず、均等処遇の理念に反する結果を招く可能性もあります。

ヘイ・システムについてまとめ

優れた人事評価システムであるヘイ・システムは、組織の成長と従業員の能力開発を促進するための強力なツールです。このシステムを通じて、企業は人材の真の価値を見極め、適切な評価と報酬を提供することができます。しかし、問題点もあるため、導入する際は解決しなくてはいけない課題について考慮する必要があります。ヘイ・システムの効果を最大限に発揮するためには、適切な導入計画と継続的な評価が不可欠です。

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