この記事はシリーズです。前回分は以下リンクから確認できます。
労働人口の減少、人材流動性の加速に伴い、従業員の離職が企業の抱える大きな課題となっております。当社にも「離職防止を行いたい」「従業員を定着させたい」といったご要望を持ったお客さまからの問い合わせを本当に多くいただいております。
当社では離職防止に向けた取り組みの支援はもちろん行っておりますが、その中でふと「離職」そのものを無くすことが本当に正しい事なのだろうかといった疑問がわきました。また、過去と比べると確かに離職は増えておりますが、海外に目を向けるとまだまだ転職回数は低い水準にあります。
そこで今回は離職が本当に問題なのか、考えてみる機会としたいと思います。第一回では離職者数や現在の労働人口のトレンドから、なぜ離職が問題視されるようになったかを述べました。第二回では、企業が取るべき離職との向き合い方について考えていこうと思います。

離職をうまく活用している事例
既に述べた通り、離職をゼロにすることは困難であると考えます。従って、ここでは考え方を変え、従業員が「離職しても良いケース」を検討するといったアプローチで考えていこうと思います。
上記のアプローチの代表例ともいえる企業がリクルートです。リクルートでは退職者の事を「卒業生」と呼び、離職後も変わらない良い関係を築いてきた企業です。特にこの卒業生には在職時にハイパフォーマーであった事も多くあり、通常の企業では「辞めてほしくない」人材であっても「卒業」といった形で送り出しています。この方法が先述の様な労働人口の減少する状況でも効果的である理由は、離職後も卒業生を外部リソースとして確保し続け、協業や業務委託といった形で活用し続けることが出来るためです。この手法によって、正社員ではない形の労働力を確保し続ける事が出来、また離職に対してネガティブではない会社として新たな求職者にとってもチャレンジしやすい環境があるといった印象を与えることが出来ると考えます。勿論、リクルートの様なブランドや規模の企業であるため成功する方法であることは否定できませんが、この様に離職に対する考え方を変えていく事が求められていると考えます。
令和の時代に必要となる「離職ポリシー」
リクルートの様な方法が全ての企業に当てはまるわけではないかもしれないですが、各社が離職に対してどの様なスタンスで向き合うべきか考える必要があると考えます。その中で必要となるのは、どの人材を自社に残したく、どの人材に関しては離職を許容するのか、といった「離職ポリシー」として整理する事です。
残したい人材としてほとんどの企業が考えることは「優秀で自社に大きな利益をもたらしてくれる人材」を思い描くと思います。しかし、このような人材はほかの企業にとっても魅力的であったり、独立しても成功するポテンシャルを持っていたりするため、離職リスクが高い人材であると言えます。そこでさらにこの人材を深掘りし、「優秀で自社に大きな利益をもたらしてくれる人材」はなぜ自社に残ってくれているのか、といった事を考える必要があります。
離職の理由が多種多様であるように人材が残る理由も様々です。残ってくれる人材は仕事にやりがいがあるのか、成長できる環境があるのか、といった自身のキャリア実現のために残っているのか、労働時間が柔軟、あるいは転勤がないといった労働条件が自身のライフイベントにも対応してくれるから残っているのか、あるいは単純に報酬が高いからなのか、といった事を特定し、それらの人材に対してのインセンティブを高くしていく事でより残ってくれる確率は高まります。また、これらの仕組みを整え経営していく事で、その環境を求めている人材がより集まる事も期待できると共に、採用時のターゲットとすべき求職者、求職者に向けてのメッセージもより明確になっていくと考えます。
また、離職を前提とする場合、何時頃までに成果が出せるように育成や業務をマニュアル化し、その成果をどの位残してくれれば費用対効果が得られるのか、といった事も考慮する必要があります。昇格に伴うポストの数は減っていくため、ハイパフォーマー全員を残す事は難く、人材の損益分岐点を超えてくれば快く送り出し、リクルートの様な関係を築いていく事も可能であると考えます。これらを考慮した「離職ポリシー」を構築する事で離職と向き合い経営していく事が可能になると考えます。
「離職」は決して別れではない
離職ポリシーを整え、離職を許容していく事は企業として非常に勇気のいる事であり、これまで述べてきた通りにすぐにうまく行くわけではないと考えます。しかしながら、離職率の推移はこれからも変わらず、また労働人口の減少も変わらず進んでいくため、自社に従業員をとどめる事を目指すだけでは企業を継続させることは難しいと考えます。昨今では離職者のコミュニティーである「アルムナイ」を準備する企業も増えており、この考え方は今後スタンダードになる可能性は十分にあります。今一度、離職は悪い事ではなく、離職者も含めて経営資源としていく考え方に切り替えていく事で、企業も労働者も多くの選択肢を持って発展できるようになればと思っております。
本コラムが皆様にとって有益な情報になっていれば大変うれしく思います。
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