企業組織における組織変革

企業組織では、市場変化や競争激化に対応するために様々な変革が行われている。例えば、ビジョンやミッションの見直し、事業計画の再構築といった戦略的変革や、価値観や行動様式、コミュニケーション様態の変容といった文化的変革などが挙げられる。しかしながら、このような変革は必ずしもスムーズに進むとは限らない。そもそも人間そのものが変化を嫌う生き物であることから、不確実性・不安定性を伴う組織変革はネガティブに捉えられても全く不思議ではない。また、変革に至る背景や意図が正確に伝わらない/伝えられない「コミュニケーション上の不具合」や、変革の意義は認識されていても実際に行動に移す余力がないといった「リソース上の問題」も進まない原因としては考えられる。このような“うまくいかない”組織変革に対して、どのようにアプローチすればよいのかをサイエンス(化学)の分野からヒントを得ようとする試みが本稿の趣旨である。

組織変革はまるで化学反応

組織において変革が行われる過程では、現在の状態(Before)から理想の状態(After)へ到達するために、必ず、ある一定のエネルギーを要する。これは、物質の変化を意味する化学反応において、反応物(Before)が活性状態を経て生成物(After)へと変化する過程と類似している。組織変革が単なる計画の実行ではなく、まるで物質同士が結びつくように組織メンバーが連携し、新しい状態へと到達する過程と捉えるとどのような考察が得られるのだろうか。

化学反応とは

まず、そもそも化学反応とは何かを再確認する。化学反応とは、「物質が、化学的変化によって他の物質に変わる過程」と定義されている。具体的には、変化前の物質(反応物)同士が衝突を起こすことにより活性状態を経て、熱の放出を伴いながら新たな物質(生成物)へと変化する(※1発熱反応)、という意味である。反応物同士が衝突し、生成物へと変化するためには、化学反応ごとに定めらる活性化エネルギーを超えるエネルギーを必要とする。この活性化エネルギー(超えなければならない障壁)の大小によって、反応の速度が変化し、活性化エネルギーが大きいほど(障壁が高いほど)、反応の速度は低下することが知られている。

反応を定義するアレニウスの式

活性化エネルギーと反応速度の関係を法則化したものとして、1884年にスウェーデンの科学者スヴァンテ・アレニウスにより定義された「アレニウスの式」がある。

(k:反応速度定数、A:頻度因子、Ea:活性化エネルギー、R:気体定数、T:絶対温度)

ここでは、上式を直感的に理解するために、右辺の各因数を以下のように解釈することとする。

 

このように解釈すると、化学反応の反応速度は、反応物同士の衝突回数と活性化エネルギー以上のエネルギーを獲得する確率の積である、と考えられ、これは化学反応が生じる確率と一致する。簡単に言えば、「よりぶつかりあって、よりエネルギーをゲットするほど、変化は起きやすい」ということである。

化学反応を組織変革にあてはめる

ここで、化学反応のメカニズムが組織変革にもあてはまるのではないかという仮説が立つ。化学反応における、変化前の系(※2)を変革前の組織、変化後の系を変革後の組織、そして反応物を個々の組織メンバー、生成物を各メンバーが連携(融合)した組織と解釈した場合、以下のようなモデルが浮かび上がる。すなわち、個々の組織メンバーが組織共通の目的である計画実現やプロジェクト完遂等に向かって、議論百出し衝突を重ね、また組織メンバーが(に)やる気・モチベーションを維持している(させている)可能性が高いほど、変革実現の確率が高まるということである。なお、化学では実に様々な構造をした物質が存在し、「衝突」ひとつをとっても、立体的に衝突しやすい/しにくい、電気的に衝突しやすい/しにくい、など実際の機構は複雑多岐に渡る。これは、人間同士でも同じことが言えるかもしれない(このような衝突しにくい物質同士を引き寄せ意図的に衝突頻度をコントロールする役割として、触媒が存在するが、組織変革における触媒とは何かについては本稿では割愛する)。ちなみに、化学反応における反応熱(生成物生成に伴い系外へ放出される熱)は、組織変革という文脈では、新しい組織が外部へ及ぼす“熱”、つまり新しい製品・サービスの提供や、顧客満足度・ロイヤリティの向上、魅力的な職場環境といった様々なポジティブな要素と解釈することも可能と考えられる。

組織変革の条件は備わっているか

本稿では、組織変革を実現する上でのヒントを、化学反応のメカニズムを用いて考察した。組織変革では、組織に属するメンバーが互いに衝突を起こしているか、またメンバーがモチベートされる可能性が高められているか、この2点が重要である。変化を起こそうとしているがいつも失敗に終わる、あるいは、これから変化を起こそうとしている方々へ、ぜひ上記2点が今どのような状態かを確かめてみて欲しいと思う。そして、世の中には、衝突を意図的に起こす方法や、モチベートの可能性を高める方法が多数あるので、それらを実践していただきたいと思う。


※1 発熱反応の他に吸熱反応があるが、今回はよりイメージしやすい発熱反応を例に扱う
2 観測や解析を単純化するため、周囲の環境とは切り離して考えた部分空間のこと

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