
はじめに
シニア人材活用は、いまや多くの企業にとって無視できないテーマになっています。少子高齢化による労働力人口の減少、若年層採用の難化、法制度の整備、行政の後押し――こうした流れを受けて、定年延長や再雇用制度の見直しに着手する企業は確実に増えています。
一方で、ここで注意したいのは、「世の中がそうなっているから」「法制度がそう求めているから」という理由だけで、シニア人材活用を推進すべきだと考えてしまうことです。人事制度は本来、“社会的な見栄え”のためではなく、自社の事業を支え、競争力を高めるためにあります。であるならば、まず問うべきは、「自社にとって、シニア人材を労働力として本当に必要としているのか」という点ではないでしょうか。
本稿では、シニア人材活用をめぐる最新の環境変化を踏まえながら、推進ありきで進めることの危うさと、企業が本来持つべき判断軸について整理します。
シニア人材活用は、もはや「検討を避けられないテーマ」になった
シニア人材活用は、もはや一部企業だけの先進的な取組みではありません。多くの企業にとって、少なくとも「検討しない」という選択が取りにくいテーマになっています。背景にあるのは、言うまでもなく少子高齢化の進行と労働力人口の減少です。
若年層人口が縮小し、採用市場では新卒・中途ともに獲得競争が激化しています。かつてのように、若手を採用すれば組織が回るという時代ではなくなりつつあります。採用強化だけでは必要な人材量と質を安定的に確保しづらい。そうした現実が、多くの企業に「入口戦略」だけでなく、「出口戦略」まで含めた人材戦略の再設計を迫っています。
制度面でも、この流れは明確です。厚生労働省の公表によれば、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は、2025年6月1日時点で99.9%に達しています。もはや、65歳までの雇用確保は「一部企業の努力」ではなく、企業経営の標準装備と言ってよい状況です。また、70歳までの就業確保措置は努力義務ではあるものの、実施済み企業は34.8%まで拡大しており、こちらも着実に広がっています。企業にとってシニア人材の問題は、「やってもよい」テーマではなく、「どう向き合うかを決めなければならない」テーマに変わったと言えます。
実態面でも、高齢期の就業は着実に一般化しています。総務省統計局によれば、2024年の65歳以上の就業者数は930万人と過去最多で、21年連続の増加となりました。就業者全体に占める割合は13.7%に達し、働く人のおよそ7人に1人が65歳以上です。65~69歳の就業率は53.6%、70~74歳でも35.1%と、働く高齢者はもはや特別な存在ではありません。社会全体が、「高齢になったら働かない」前提ではなく、「高齢期も働き続ける」前提へと移行しているのです。さらに、政策の方向性も一貫しています。厚生労働省が2026年に公表した新たな高年齢者等職業安定対策基本方針では、2029年までに65~69歳の就業率を57.0%以上、70歳までの就業確保措置の実施率を40.0%以上とする目標が掲げられました。行政としても、高齢者が年齢にかかわらず、希望と能力に応じて活躍し続けられる環境整備を、今後さらに進めていく姿勢を鮮明にしています。
もっとも、ここで重要なのは、「検討を避けられないこと」と「どの企業も同じように積極推進すべきこと」は別だという点です。シニア人材活用は、確かに時流です。しかし、時流であるからこそ必要なのは、横並びで制度を厚くすることではなく、自社としてどう位置づけるのかを明確にすることです。いま企業に求められているのは、「活用を進めるべきか否か」という二択ではなく、「自社にとってどこまで必要か」を定義することではないでしょうか。

「活用すること」が目的になると、制度は空回りする
近年、シニア人材活用は前向きな施策として語られることが増えました。高齢者が活躍できる会社、年齢に関係なく働ける会社というイメージは、社外から見ても好意的に受け止められやすくなっています。また、法制度の流れとも整合しやすいため、「シニア人材活用を進める」という方針自体に異論が出にくいのも事実です。だからこそ、企業の中ではしばしば、「活用すること」そのものが目的化してしまいます。
しかし、本来、人事制度は社会的評価を得るために存在するのではありません。人事制度の役割は、自社の事業を支え、必要な人材を適切に配置し、持続的な競争力をつくることにあります。にもかかわらず、「世の中がそうだから」「法対応として必要だから」「先進的に見えるから」といった理由で制度整備を進めると、肝心の中身が置き去りになりやすくなります。どの仕事を任せるのか、どこまで責任を持ってもらうのか、若手との役割分担をどうするのか、何をもって貢献とみなすのか――こうした核心部分が曖昧なままでは、制度はあっても運用が空回りします。
実務上、よく起きるのは「制度は整えたが、現場で活かせない」という状態です。再雇用制度を設けても、配属先に明確な役割がなければ、現場はシニア人材を持て余します。定年延長を行っても、若手への権限移譲や昇進機会との整理がなければ、組織に停滞感が生まれます。評価制度を整えても、成果と処遇の関係が見えなければ、本人の納得感は得られません。つまり、制度そのものが悪いのではなく、制度を支える“前提設計”が甘いと、結果として誰にも使われない制度になってしまうのです。
その意味で「シニア人材活用は一律の制度運用ではなく、個々の役割や状況を踏まえた柔軟な設計が必要だ」と考えます。これは、活用が単なる延命措置ではなく、人材確保のための「出口戦略」であることを示しています。
ただ、今回あえて強調したいのは、そのさらに前段階にある問いです。つまり、「自社は、なぜシニア人材を活用するのか」「そもそも、どの程度まで必要としているのか」という問いです。この問いがないまま制度の議論に入ると、議論はどうしても手段論に流れます。再雇用にするか、定年延長にするか。賃金を何割下げるか。役職をどう扱うか。こうした論点はもちろん重要ですが、それらはすべて「何のために行うのか」が定まっていてこそ意味を持ちます。目的が曖昧なまま制度だけ整えれば、制度は必ず現場で解像度を失います。シニア人材活用を機能させたいのであれば、まず先に「活用すること」を目標にしないこと。この順番を守ることが、出発点になります。
まず見極めるべきは、「自社にとって本当に必要か」である
シニア人材活用をめぐる議論で、最も重要でありながら、最も飛ばされやすいのがこの論点です。自社にとって、シニア人材は本当に必要なのか。社会的には答えにくい問いかもしれませんが、経営の現場では、ここを曖昧にしたまま進めてよいはずがありません。
まず考えたいのは、労働力の量の問題です。若手・中堅・現役世代で必要人員が相応に確保できており、今後も採用や育成を通じて担保できる見込みがある企業では、シニア人材を労働力として大きく取り込む必要性は相対的に低いかもしれません。もちろん法令対応は別として、経営戦略上、積極的な戦力化まで必要かどうかは慎重に見極めるべきです。逆に、慢性的な採用難が続く業種や、技能・知見を持つ人材の代替が容易でない領域では、シニア人材は明確に重要な戦力となり得ます。ここで重要なのは、「シニア人材活用がよいことか」ではなく、「自社の事業継続に本当に必要か」で考えることです。
次に見るべきは、仕事の中身です。シニア人材が長年培ってきた経験やノウハウが、そのまま事業価値につながる仕事であれば、必要性は高くなります。たとえば、高度な専門判断、熟練技能、顧客との長期関係、現場の暗黙知、後進育成などは、シニア人材が力を発揮しやすい領域です。一方で、市場変化が速く、過去の経験よりも新しい感覚や俊敏な適応力が優位に働く領域では、シニア人材の経験が必ずしも競争力に直結しないこともあります。経験は資産ですが、どの事業でも同じ価値を持つわけではありません。必要性は、シニア人材の側にあるのではなく、自社の仕事の側にあるのです。
さらに見落とせないのが、世代交代との関係です。企業によっては、若手への要職登用や難易度の高い仕事の早期移管こそが競争力の源泉になっています。新陳代謝の速さ、抜擢の早さ、若手の成長速度が企業力を左右する場合、シニア層の雇用延長や役割維持が、意図せず世代交代を遅らせることもあります。ここは非常に重要で、シニア人材活用と若手登用は、放っておけば自然に両立するものではありません。両立させるには、役割とポストの設計が必要です。逆に、その設計がないまま「どちらも大事」と言っても、現場では競合が生まれやすくなります。
加えて、収益構造との整合も欠かせません。業種や事業モデルによっては、比較的低コストの若年労働力を厚く活用することが、競争力そのものになっているケースがあります。その場合、理念先行でシニア人材活用を厚く進めることが、本当に経営合理性にかなうのかは別問題です。必要性が低いのに制度だけ拡張すれば、コスト構造にも組織運営にも無理が生じます。
結局のところ、シニア人材活用の必要性は、「世の中がそうだから」では判断できません。人手不足の度合い、仕事の性質、競争力の源泉、若手登用の重要性、収益構造との相性――こうした要素を踏まえて、自社なりの答えを出す必要があります。シニア人材活用の成否は、制度をつくる段階より前、この「必要性の見極め」の段階でかなり決まります。ここを丁寧に考えない限り、どれだけ制度を整えても、本質的な活用にはつながりにくいのです。
必要性が高い企業は、「雇用を延ばす」だけでなく「戦力として設計する」
自社にとってシニア人材の必要性が高いと判断したなら、そこから先は本気で設計する必要があります。ここで言う本気とは、単に雇用を続けることではありません。どの仕事で、どの役割を担い、何を成果として期待するのかを明確にすることです。必要なのは「雇用維持」ではなく「戦力化」です。
シニア人材の活かし方は、一つではありません。高度な専門性を持つ人材であれば、専門職やアドバイザーとして難度の高い判断を担ってもらう道があります。顧客との信頼関係が強みであれば、営業支援や重要顧客対応に力を発揮してもらえるかもしれません。現場の暗黙知や技能の継承が重要な企業であれば、若手育成や教育担当、標準化・マニュアル化の推進役として大きな価値を持ちます。大切なのは、「シニアだから残ってもらう」のではなく、「この役割を担ってもらうために必要だから残ってもらう」という順番で考えることです。
そのうえで、役割に見合った処遇設計が欠かせません。シニア人材活用が機能しない企業では、役割と処遇がかみ合っていないことが多く見られます。仕事の重さや責任が大きく変わらないのに、年齢到達だけを理由に一律で大幅減額されれば、本人の納得感は得られにくくなります。一方で、企業としても従来の賃金体系をそのまま延長するのは難しい場合があります。だからこそ必要なのは、年齢ではなく、担う役割、期待成果、勤務形態、責任範囲に応じて処遇を組み立て直す視点です。年齢給の発想を引きずったままでは、戦力化と処遇の整合は取りにくくなります。
実際、シニア本人の課題感として最も大きいのは処遇であり、新たなスキル習得やモチベーション低下も大きなテーマになっています。近年の調査では、処遇に課題を感じる人が57.9%、新スキルを十分に習得できていないと感じる人が55.7%、モチベーション低下を感じる人が47.8%に上ります。また、魅力を感じる役割としては「専門分野のエキスパート業務」が最も高く、自分の経験や専門性が活かされることへの期待が強いことが分かります。
さらに、戦力化を本気で目指すなら、働き方の柔軟性やリスキリング支援も不可欠です。年齢を重ねれば、体力差や家庭事情、健康面への配慮が必要になることがあります。にもかかわらず、働き方は現役世代と同じ、学び直し支援も限定的、デジタル活用への移行支援も弱い、という状態では、シニア人材の能力を活かし切れません。特に、ITツール・AIツールや新しい業務プロセスへの適応支援は、戦力化に直結する論点です。AIツールは習得に高い専門性を必要としません。その点ではシニア人材には非常大きな武器にもなり得るとも考えられます。
いずれにしろ、必要性が高い企業ほど、シニア人材活用を「善意の延長」で扱ってはいけません。人手不足の穴埋めとして、とりあえず残ってもらうのではなく、どの機能を担い、どう評価し、どのように処遇し、どう働いてもらうのかまで設計して、初めて活用は戦略になります。制度を持つことと、戦力として機能することの間には大きな差があります。その差を埋めるのが、人事設計の仕事です。
必要性が低い企業は、「厚くやらない勇気」も必要になる
シニア人材活用の必要性が高い企業は、積極的戦略としてシニア人材の活躍の場づくりを推進することに合理性があります。一方、自社にとってシニア人材の必要性が相対的に低い場合まで、世の中の流れに合わせて制度を厚くする必要はありません。ここは誤解されやすいところですが、必要性が低い企業が慎重な対応を取ることは、「シニア人材を軽視すること」とは違います。法令に基づく対応は当然として、その先をどこまで制度として持つかは、各企業の事業構造や人材戦略によって異なってよいはずです。
たとえば、若手・中堅層で一定の人員が充足しており、今後も採用や育成で対応できる企業、あるいは若手への権限移譲や早期抜擢が競争力の源泉になっている企業では、シニア人材の雇用延長を広く進めることが、必ずしも組織にとってプラスになるとは限りません。役職や難度の高いポストが限られている中で、シニア層の滞留が長くなれば、若手の成長機会や昇進余地を狭める可能性もあります。また、収益モデル上、比較的低コストの労働力を厚く活用することが前提になっている事業では、理念先行の制度拡張が経営合理性を損なうこともあります。
こうした企業に必要なのは、「積極推進しないこと」へのためらいではなく、制度の目的を絞ることです。たとえば、全面的な定年延長ではなく、一定期間の知識継承に特化した再雇用とする。あるいは、特定技能を持つ人材だけを限定的に活用する。繁忙対応、教育担当、品質維持など、必要機能に絞って役割設計する。こうした対応は、決して後ろ向きではありません。むしろ、自社の実態に即している分だけ、運用可能性は高くなります。
大切なのは、必要性が低いのに、“期待だけは高く見せる(魅せる)制度”をつくらないことです。制度上は活躍の場があるように見えても、実際には任せるべき仕事がない。あるいは、本人には意欲があっても、組織としては中心的な役割を期待していない。こうしたズレがあると、制度は最も不幸な形で機能不全を起こします。本人は「活かされていない」と感じ、現場は「扱いが難しい」と感じ、人事は「制度はあるのに使われない」と悩むことになります。
だからこそ、必要性が低い企業ほど、方針を明確に説明することが重要です。なぜ一律の定年延長をしないのか。なぜ役割を限定するのか。なぜ若手登用を優先するのか。こうした説明が、経営戦略や組織設計と一貫していれば、現場にも本人にも納得感は生まれやすくなります。重要なのは、「よく見える(魅える)制度」をつくることではありません。「実態に合う制度」をつくることです。
シニア人材活用は、積極推進か消極対応かの単純な二択ではありません。必要性が高い企業には厚い設計が要りますし、必要性が低い企業には限定的で合理的な設計がふさわしい。その違いを曖昧にしたまま、横並びで制度をつくることこそが危ういのです。時流に流されず、自社に必要な濃度を見極めること。それもまた、人事に求められる重要な判断です。
制度をつくっても活用されない会社は、どこでつまずいているのか
シニア人材活用がうまくいかない会社には、いくつか共通したつまずき方があります。
第一に多いのが、役割が曖昧なまま制度だけが先行するケースです。再雇用制度や定年延長制度はあるものの、どの仕事を任せ、どこまでの責任を期待し、若手とどう役割分担するのかが整理されていない。その結果、本人は在籍していても、現場から見ると「何を期待すればよいのかが見えない」状態になりやすくなります。
第二に、評価と処遇の不整合があります。シニア人材、特に再雇用には評価制度が導入されていないケースは多いですが、仮に形式上は評価制度が存在していても、その評価が役割や処遇に十分反映されていなければ、本人の納得感は得られません。特に問題が大きいのは、仕事の重さや責任が大きく変わらないのに、年齢到達を境に賃金だけが大きく下がる場合です。企業としては制度上の整理かもしれませんが、働く側から見れば、「期待はするが、対価は払わない」というメッセージに映りやすくなります。
近年の調査でも、その実態はかなりはっきり表れています。シニア本人の57.9%が処遇に課題を感じ、55.7%が新しいスキルの習得不足を、47.8%がモチベーション低下を課題として挙げています。また、評価プロセスはあるが処遇に反映されていないという回答も見られます。さらに、人材育成面では、受講したいが社内に整備されていない研修が多く、ITツール関連や外部研修費用補助へのニーズも強い。人材育成制度はあるが、処遇と育成が伴っていない。これでは活用が進まないのも無理はありません。
第三に見逃せないのが、企業側と本人側の期待のズレです。企業は補助的な役割を想定しているのに、本人は中心的に貢献したいと考えている。逆に、企業が高度な専門性発揮を期待しているのに、本人は負荷を抑えた働き方を望んでいる。こうしたズレが事前に言語化されないまま制度だけが動くと、現場では違和感が積み重なります。シニア人材活用が難しいのは、年齢が高いからではありません。企業と個人の期待値調整が、これまで以上に重要になるからです。
要するに、「制度をつくったのに活用されない会社」は、制度の有無ではなく、制度と実態の接続でつまずいています。役割が曖昧で、評価と処遇が連動せず、学び直しの支援も弱く、期待のすり合わせも足りない。その状態で制度だけ整えても、活躍は起こりにくいのです。シニア人材活用を機能させるために必要なのは、制度の名称ではありません。何を担ってもらい、その価値をどう評価し、どう対価を払い、どう支えるのか。そこを詰め切れるかどうかが問われています。
シニア人材活用の本質は、「高齢者対応」ではなく人材戦略の再設計にある
ここまで見てきたように、シニア人材活用は単なる高齢者雇用の延長線上で捉えるべきテーマではありません。法制度の整備も、労働市場の変化も、行政の方向性も、このテーマを企業に突きつけています。実際、65歳までの雇用確保措置はほぼ全企業で実施済みであり、70歳までの就業確保措置も着実に広がっています。65歳以上の就業者は過去最多で、高齢期の就業は社会の標準になりつつあります。しかし、それでもなお、シニア人材活用を「高齢者への対応策」としてだけ捉えると、本質を見失います。本当に企業が向き合うべきなのは、「何歳まで雇うか」という年齢の問題ではありません。「どのような人材構成で競争力をつくるか」という戦略の問題です。採用をどうするか、若手にどこまで機会を渡すか、中堅に何を期待するか、専門性をどう蓄積するか、技術や顧客基盤をどう継承するか。その中で、シニア人材をどこに位置づけるのかを決めることが、本来の論点です。
この意味で、シニア人材活用とは、「高齢者にも活躍してもらいましょう」というスローガンではありません。自社の事業、組織、競争力に照らして、必要な人材ポートフォリオをどう描き直すかという、人材戦略の再設計そのものです。必要性が高い企業であれば、専門性発揮、知識継承、顧客対応、教育機能などの中核としてシニア人材を再定義し、役割・評価・処遇・働き方を本気で設計する必要があります。必要性が低い企業であれば、法令対応を前提としつつ、目的を絞った合理的な制度運用に徹する方が、むしろ健全です。
重要なのは、「どちらが“正しい”か」ではありません。自社にとって、「どちらが“合理性”があるか」です。世の中の流れに合わせて制度を厚くすることが、人事の仕事ではありません。社会的な評価と経営合理性が一致する場面もあれば、一致しない場面もあります。その中で、人事が果たすべき役割は、時流に流されず、必要性を見極め、実態に合った制度を設計することです。
シニア人材活用は、今後も重要なテーマであり続けるでしょう。だからこそ、推進ありきで考えてはいけません。必要であれば本気で設計する。必要性が低ければ合理的に限定する。その判断を曖昧にしないことが、定年延長時代の人事に求められる姿勢ではないでしょうか。シニア人材活用の本質は、制度を増やすことではありません。自社の競争力に照らして、人材戦略を正しく描き直すことにあります。

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