── 「誰が費用を持つか」より先に答えるべき問いがある
「これは人事の仕事じゃないですか?」
「いや、採用の予算で動かすべきでしょう」
「現場の定着の話なら、現場マネジャーが考えることでは?」
奨学金返還支援の導入を検討し始めると、こういう会話が社内で起きることがあります。
誰がやるか。費用はどこから出すか。他の社員に不公平じゃないか。
その議論自体がおかしいとは言いません。大事な視点です。でも、その前に一度立ち止まって考えてほしいことがあります。
そもそも、なぜ自社に若手が来ないのか、答えを持っていますか?
なぜ採用した人が定着しないのか、原因を把握していますか?
「業界全体の問題だから仕方ない」で終わっていませんか?
費用と不公平の話が真っ先に出る前に、この問いに向き合えているかどうか。そこが、若手に選ばれる組織とそうでない組織を分ける分岐点だと、私は現場の相談を通じて感じています。

検討が止まる企業の「9割」に共通する、たった2つの原因
企業の担当者と奨学金返還支援の相談をしていると、何回目かの打ち合わせで急に検討が止まる、という経験を何度もしてきました。
原因を聞くと、面白いことに9割以上が同じ2つです。
① 「費用はいくらかかるのか」「コストに見合うのか」
② 「奨学金のない社員に不公平では」「誰がやるのか」
逆に、相談から導入までスムーズに進む企業に共通していることがあります。不公平の話がほとんど出てこないのです。
なぜか。「若手が定着しない状況を何とかしたい」という目的が最初から明確だからです。目的があれば、「不公平かどうか」より「どう設計すれば公平に機能するか」という話になります。費用も「高いか安いか」ではなく「投資対効果があるか」で判断されます。
つまり、「費用と不公平が先に出る」という現象は、導入できないことの原因ではなく、目的が曖昧であることのサインです。黄色信号はそこに立っています。

「たらい回し」が起きる会議室の風景
では、検討が止まる企業ではどんな会話が起きているのか。具体的なパターンを見てみます。
人事担当者:「奨学金支援を導入したい。採用強化につながる」
採用担当者:「定着の話なら人事でやるべきでは?予算もないし」
人事部長:「制度設計は人事でできるが、費用負担の話は経営判断」
経営者:「コストに見合う効果があるのか?不公平にならないか?」
→ 誰も動かないまま、検討が止まる
誰か一人が悪いわけではありません。それぞれの立場から見れば、言っていることは筋が通っています。
ただ、この会話に共通しているのは、「自分ごとにしていない」という点です。
人事は採用に押しつけ、採用は人事に押しつけ、経営者はコストを理由に結論を出さない。結果として、誰も若手社員の現実に向き合っていません。
費用・不公平が先に出る組織が見落としていること
「コストはいくらかかるのか」「奨学金のない社員に不公平では」という話が真っ先に出る組織には、共通した思考のパターンがあります。
問題を「制度の話」として見ている
奨学金返還支援を「福利厚生の一つを追加するかどうか」という制度論として捉えると、コストと公平性の話になります。でも本質は違います。福利厚生は「制度があるかどうか」ではなく、「それが社員の現実の課題に届いているかどうか」で価値が決まります。
今この瞬間も、毎月1〜2万円の奨学金返済を抱えながら「もっと稼げる会社に移ろうか」と考えている社員が、自社にいるかもしれない。その人の現実から出発するかどうかで、議論の入口がまったく変わります。
定着率の悪化を「業界の問題」として外部化している
「飲食業界はもともと離職率が高いから」「建設業界では人が集まらないのは仕方ない」という言葉をよく聞きます。
業界の構造的な問題であることは事実です。でも、同じ業界の中でも離職率に差がある企業は実在します。その差はどこから生まれているのか。「業界のせい」で思考が止まってしまうと、自社にできることが見えなくなります。
縦割りで動いているので横断的な施策が通らない
人事・採用・現場・経営が縦割りで動いている組織では、「誰の仕事か」という議論が必ず起きます。奨学金支援に限らず、若手の採用・育成・定着に関わるあらゆる施策が同じ壁にぶつかります。福利厚生の充実を「人事の仕事」と定義してしまうと、予算は取れず、経営者は動かず、現場は待ち続けます。
これは制度一つの問題ではなく、組織として若手人材をどう扱うかという経営判断の問題です。

「何をしたいのか」が決まれば、費用は後からついてくる
「採用して、定着させて、若手を育てたい」という目的が先にあれば、話の順番が変わります。
「若手の早期離職を止めたい。年間で採用費がいくら出ていくか計算してみた」
「奨学金支援を入れたら、月いくらかかって、何名に効くか」
「採用費と比べて、どちらが投資対効果が高いか」
「部門をまたがる話だから、経営判断として決めよう」
→ 議論の質がまったく違う
費用感の話は大事です。でもそれは「目的が決まってから」する話。目的が曖昧なまま費用の話をしても、どんな施策も「高い」か「安い」かしか判断できません。
採用費(1名あたり80〜150万円)と比べて、奨学金支援の年間コストは月1万円×10名で実質74万円程度(税制活用後)。目的から逆算して考えれば、「高い」という結論にはならないはずです。
不公平感の問題は、設計で解決できる
「奨学金のない社員に不公平では?」という問いは正当です。ただ、この問いを理由に「だから何もしない」という結論になるとしたら、本末転倒です。
不公平感の問題は設計で解決できます。そもそも、福利厚生は「全員が同じ恩恵を受ける」必要はありません。育児支援は子どものいる社員向け、住宅手当は賃貸住まいの社員向け、と同じように、奨学金支援は「奨学金を返還中の社員」向けの福利厚生として位置づけることができます。
- 奨学金を返還中の正社員全員を対象にする(大卒・専門卒・短大卒を問わず)
- 高卒採用が多い場合は、資格取得支援・住宅手当など別の施策をセットで設計する
- 「奨学金のある人だけ得をする」ではなく「定着支援」として社内に打ち出す
「不公平になりそうだから導入しない」より「不公平にならないよう設計して導入する」の方が、組織として前に進んでいます。

「誰の仕事か」より「誰がやるか」を決める
奨学金返還支援の導入で最初に決めることは、実は「誰の仕事か」ではなく「誰がやるか」です。
人事でも採用でも経営者でも、旗を振る人が一人いれば動き出せます。部門をまたぐ調整が必要なのは事実ですが、それは制度を決めてからの話。まず「やる」と決める人が必要です。
そしてその人が「費用対効果」「不公平感への対処」「導入手順」を整理して経営者に提案できれば、たらい回しの会議は終わります。
□ 離職率・早期退職の原因を数字で把握していない
□ 採用費の総額を計算したことがない
□ 奨学金支援の検討で「費用」「不公平」が最初に出た
□ 「業界全体の問題だから仕方ない」と言ったことがある
□ 制度の担当部門を決めないまま会議が終わったことがある
3つ以上当てはまった場合、若手が「この会社は自分たちのことを考えていない」
と感じている可能性が高いです。
迷ったときは、外から問いを持ち込む
「自社の問題は自社で解決すべき」という考えは正しい。でも、社内で議論が止まっているなら、外から問いを持ち込むことも一つの手です。
奨学金バンクでは、業種・規模を問わず多くの企業の人事担当者・経営者と、こういった「そもそも論」から話をすることが多くあります。奨学金返還支援は特定の業界だけの話ではなく、若手採用・定着に悩む組織すべてに関係する、福利厚生の新しい選択肢です。
「うちの会社はどこから手をつければいいか」「社内で説得するための材料がほしい」──そういう段階からのご相談を歓迎しています。答えを押しつけるのではなく、一緒に問いを整理するところから始めます。
奨学金バンクができること
奨学金返還支援は、制度を導入すること自体が目的ではありません。本来は、「なぜ若手が定着しないのか」「自社は何を解決したいのか」という問いに向き合うところから始まります。
とはいえ、その整理を社内だけで進めるのは簡単ではありません。部門間の調整や、費用対効果・公平性の検討など、検討が止まってしまうポイントが多いのも事実です。
「社内で説明するための材料がほしい」
「自社に合った制度設計を知りたい」
奨学金バンクでは、単なる制度導入の支援にとどまらず、
貴社の採用・定着課題の整理から、最適な施策設計、社内合意形成までを一貫してサポートしています。
まずは情報収集だけでも構いません。
貴社にとって本当に必要な一手を、一緒に考えるところから始めてみませんか。
この記事を読んだあなたにおすすめ!





















