最近は「Z世代」という言葉も耳になじんできました。テレビでは「Z世代特集!」と銘打って、世代間のギャップを楽しむような番組も多く見受けられますね。Z世代は1990年代後半から2010年代前半に生まれた人を指す言葉で、かく言う私も、自分ではそのような意識はありませんでしたが、実はZ世代に括られる世代のようです。
Z世代を面白おかしく特集してもらうのは、世代間のギャップを埋めるためにとても良いことだと思います。しかし、ネットを見てみるとZ世代にネガティブな印象や意見を持つ方も少なくないようです。特に、会社で人事として働く方にとっては悩みの種となっているがZ世代なのかもしれません。ふと疑問に感じたのは、「Z世代のどのようなところに悩みや難しさを感じているのか」という点です。自分たちが属するZ世代に対して様々な印象や意見があることは理解していますが、自分たちが属するZ世代を客観視して考えたことはありませんでした。そこで、このコラムでは、「Z世代がZ世代の視点でZ世代の特徴を考えてみる」ことを目的に、特にZ世代におけるコミュニケーションの在り方について、Z世代である筆者が自由気ままに意見や考えを述べるものです。ぜひ最後までお付き合いくださいね。
Z世代が考えるZ世代の特徴
試しに「Z世代 人事 悩み」と検索してみると、いろいろな記事が出てきます。興味を持った記事の中に、「人事担当者はZ世代のマネジメントに対して半分以上が苦労をしている」とのアンケート結果が掲載されてありました。どのような点に難しさを感じるかについては、「考えが異なるので、ハラスメント扱いされることが多い」や「上司の世代の社員が価値観をシフトできていない」などの回答が寄せられたそうです。ご興味あればぜひ一読ください。
(参考:https://www.hrpro.co.jp/trend_news.php?news_no=2072)
この記事から、私は2つのことを感じました。
1つ目は、人事の方やZ世代周りの上司は、Z世代社員との「コミュニケーション」に苦労しているという点です。情報の変化や社会の変化が激しい時代を中心に生きているZ世代は、同然ですが人事の方や周りの社員、上司の方が生きてきた時代とは異なる時代を生きています。私も実際に働いていると、先輩社員や上司と考え方が異なるなと感じることが多々あります。そして実は、人事や上司が苦労すると同時に、Z世代社員もまた上司とのコミュニケーションに苦労していることも事実だと感じています。私自身、上司に意見を伝えるときやコミュニケーションをとる際に、細かなニュアンスでの意思疎通がスムーズにいかないなと感じることがあります。それが顕著に表れるのがチャット文での会話です。
例えば皆さんの会社には社用チャットがありますか?そのチャットにて、Z世代社員のチャットを見返してみてください。文末に句点である「。」が付いていなかったり、「!」が多いなという印象を受けたりしていないでしょうか。これが、Z世代ならではのコミュニケーション方法ではないかと感じています。Z世代は文末に「。」が付いた文章を見た場合、かなり固い形式的な印象を受けることが多いです。試しにZ世代社員に次の2つの文章を見せて、「どちらの方が、元気がなさそうな印象を受けるか」を訪ねてみてください。
「元気だよ」「元気だよ。」
おそらく後者の「元気だよ。」の方が何となく元気がなさそうと答えるZ世代社員が多いはずです。よく「マルハラ」という言葉で言われますが、「。」を付けた方が何となく怖い印象や怒っているような印象を受けてしまうのです。これが元気かどうかを確認するだけならよいのですが、例えば「来週までに資料作成をお願いする」という場面において、「来週までに資料作成お願いします。」というチャットと「来週までに資料作成お願いします!」というチャットでは、かなり印象が異なって感じますし、後者のように依頼された方が前向きな気持ちで資料作成に臨むことができます。この依頼チャットについても、ぜひZ世代社員に印象を聞いてみてください。すごく面白い反応が返ってくるはずです。
Z世代の中には、これまで自分のライフスタイルの中心にあった学生生活の中で、世代を超えた方々とのコミュニケーションをとる機会が滅多になかった方も多かったと思います。そのためZ世代の間では、ある意味で社会から隔絶された独自のコミュニティーの中で形成された独自のコミュニケーション方法が存在していると感じます。今回は例としてチャットを出しましたが、Z世代は短い文章でいろいろな要素を伝える(あるいは「伝えなければならない」と言ってもいいかもしれません)文化の中心にいて、その能力にとても長けていること、またそれがZ世代間においては共通の能力や認識となっているということは、Z世代の大きな特徴の一つと言っても過言ではないと思います。だからこそ「マルハラ」などという新しい概念でのハラスメントが生み出されるのだと思います。
一方で、世代間におけるコミュニケーションにZ世代側もまた悩んでいる可能性があることを、人事の方や周りの社員が認識をする必要があるかもしれません。よく「Z世代は意見を言わない、考えがない」というような話をよく耳にしますが、それは意見を言いやすい環境や関係性の構築が進んでいない事に原因があるかもしれません。まずはZ世代社員と周りの社員との間のコミュニケーションにおいて、どこで苦労しているのかの認識を持つことが、活発なコミュニケーションを取ることができるヒントになるかもしれませんよ!
価値観のアップデートの必要性
2つ目に記事から考えたことは、Z世代社員とその周りの社員の両方が価値観をアップデートしていく必要があることです。これまで述べている通り、Z世代社員とその周りの社員は異なる時代を生きています。つまり、これまでの常識と言われていたことは、Z世代にとっては非常識に映ることがあるかもしれないということです。先ほどの「マルハラ」もそうですが、文末に「。」を付けることなんて当たり前だと思われがちですが、実はその常識がすでに変わりつつあることを確認しました。(もちろんメール等社外への文章に「。」を付けるのはビジネスマナーの基本として押さえておく必要はあります。)
またこれもマルハラの話につながりますが、価値観の違いでよく挙げられるのはハラスメントだと思います。ハラスメントの種類を調べてみると、本当に驚くほどの数のハラスメントが出てきます。パワハラなんかは良い例で、昔は上司が部下を口頭で叱責することは社内では当然の光景だったかもしれませんが、今ではパワハラになりかねません。これだけハラスメントの数が増えたことや、叱責することが即パワハラになることなどは、時代によって価値観が移り変わった最たる例ですね。
このように価値観は移り変わりゆくものであるため、その変化に柔軟に対応していく必要があります。Z世代社員の上司に当たる方であれば、仮に注意をしなければならない場面の際には、声を荒げて感情に任せるのではなく、丁寧に諭すように注意を伝えるように変えていく必要があるでしょう。また前述したようなZ世代の価値観に寄り添い、コミュニケーションにて誤解を生まないようにしてく努力も必要です。
一方、価値観のアップデートはZ世代社員にも求められます。先ほども述べた通り、これまでの学生生活では世代を超えたコミュニケーションを求められなかったために、社会に出てからのギャップに悩んでいることは事実だと思います。しかし、ビジネスはまさにこれまで自分たちが経験してこなかった実社会で行われるものです。Z世代社員もまた、悩みながらではあるとは思いますが、社会の価値観や考え方を徐々に吸収し、会社や組織、または社会の一員としての価値観を身に付けていく必要があります。
Z世代社員とのコミュニケーション施策
ここまでZ世代社員のコミュニケーションの特徴や、価値観のアップデートの必要性を述べてきました。「そうはいっても実際にどうやってコミュニケーションを取ればよいのか…」と頭を抱える人事の方や上司の方も多いと思います。もちろん人同士のコミュニケーションの話なので、特効薬のような素晴らしい取り組みがあるわけではありませんが、効果的な取り組みをいくつか紹介させて頂きます。
オンボーディング
オンボーディングとは、新しい社員が企業にスムーズに適応することや、他の社員とのコミュニケーションの活性化を目指した取り組み全般を指します。例えばオンボーディングランチでは、昼食の時間に事業部や世代、役職を越えた社員が一緒にランチを行うことで、業務外のコミュニケーション促進を図り、結果的に社員同士のコミュニケーションの活性化を目指す取り組みなどがあります。このオンボーディングランチをZ世代社員と多世代の社員が一緒に参加できるように企画することで、Z世代社員とその他の世代の社員のコミュニケーション活性化を目指すことができます。弊社でも実際に事業部、世代問わず、社長も一緒に参加するランチ会が企画され、トークサイコロをそれぞれ回して出たトピックを話しながらランチを楽しむ取り組みが行われています。
メンター制度
メンター制度とは、入社間もない社員に対して既存の社員が一人ついて業務上の相談やサポートを行う制度のことを指します。本来は年齢や入社年数が近い社員同士(新入社員には2,3年目の社員など)が付くことが一般的ですが、それに加え、世代の離れた社員が付いてメンターとしてサポートすることも可能です。普段の業務で、年の離れた上司や部下が一対一で面と向かって話をするような場はなかなかないと思います。だからこそ、Z世代社員や上司にとっては、お互いに新たな価値観に触れる機会を社内に生み出すことができるような取り組みでもあります。また話す内容も、上司からの一方的な内容ではなく、特にZ世代社員に共感をしたり、傾聴したりするような姿勢を持つことが必要です。私は、Z世代は人の気持ちや考え共感する力が強いと感じます。だからこそ「この人は自分に共感してくれない」と感じてしまえば、心理的な距離は一気に広がってしまう感覚を持ってしまうZ世代も少なくないと思います。上司からの一方通行な時間とならないように、お互いに話に耳を傾けることができる時間とする工夫が必要ですね。
まとめ
このコラムをご覧いただいた皆様の会社にも、今年度、また来年度も新卒で入社してくる社員がいるかもしれません。その社員はZ世代社員です。Z世代社員の価値観に寄り添い、会社や組織全体として価値観をアップデートしていく必要があります。また、もしこのコラムを見ている新入社員の方がいれば、私たちZ世代側も社会の価値観を理解していく必要があります。様々にギャップを感じることは多々あると思いますが、(かく言う私もいろいろなギャップを感じています)そのギャップもあと数年もすれば慣れてしまうものかもしれません。新卒というフレッシュさがあるからそこ、あらゆるギャップに悩んでしまうことがあると思いますが、貴重なこの瞬間で感じているギャップに、一度向き合って自分なりに答えを出してみるのもよいかもしれませんね。
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