2024年3月、日銀は17年ぶりにマイナス金利解除を発表しました。今後、金利の上昇が予想され、預金金利にはプラスの影響が期待できる一方で、借入金利の上昇が懸念されます。貸与型奨学金を変動金利で返済している場合、返済負担が増加する可能性があります。

今回は、その影響と奨学金返済が困難になった場合の対処策について考えていきます。

日銀によるマイナス金利解除

2024年318日と19日の両日にわたり開催された金融政策決定会合において、日銀はマイナス金利政策を解除し、金利を引き上げることを決定しました。マイナス金利政策は、黒田総裁時代の20161月に導入されたもので、物価目標の達成が見通せない中で、金融緩和策をより強化するためのものでした。この政策により、企業への融資金利や個人の住宅ローン金利が大幅に低下しましたが、金融機関の収益圧迫や年金基金の運用への悪影響ももたらしました。今回の日銀の決定は、賃金上昇を伴う形で物価が安定的に2%上昇するとの見通しに基づいています。

しかし、賃金の上昇がどの程度実現するかは未知数です。マイナス金利政策の解除は、日本の金融政策の正常化を示すものとも言えます。具体的には、短期金利の操作を主な政策手段とし、日銀当座預金の金利を0.1%とすること、無担保コールレートを0.1%程度で推移させることが公表されています。これにより、20169月から導入されていた長短金利操作も終了することになりました。

貸与型の第二種奨学金について

日本学生支援機構の奨学金には、返済不要の給付型奨学金のほかに、無利子の第一種奨学金と利息付きの第二種奨学金があります。第二種奨学金は、卒業後に返済が必要で、利息が付くため返済が困難になる人も少なくありません。利息は、利率固定方式か利率見直し方式を選ぶことができます。奨学金の申込時と在学中に金利情勢が変動した場合、貸与期間が終了する年度まで選択を変更することが可能です。

しかし、貸与期間が終了した後は、返済中に金利方式を変更することはできません。

貸与型奨学金の金利方式と金利の状況

利率固定方式では、貸与終了時に決定した利率が返還完了まで適用されます。一方、利率見直し方式では、おおむね5年ごとに利率が見直されます。市場金利の上昇に伴い、利率も上昇するため注意が必要です。今回のマイナス金利解除により、奨学金の金利も高くなることが予想されますが、基本月額に係る利率は3.0%が上限です。

過去3年間の奨学金の金利推移を比較すると、利率固定方式の金利は令和44月時点で0.468%、令和54月で0.737%、令和64月で1.140%です。利率見直し方式の金利は令和44月で0.020%、令和54月で0.200%、令和64月で0.500%です。

固定金利方式を選んだ場合、令和64月時点からスタートした方は1.140%が適用され続けますが、利率見直し方式では、5年後には固定金利を大きく上回る可能性もあります。

在学中にできること

現在、奨学金の貸与を受けている学生は、マイナス金利解除を踏まえて、今後の金利上昇を考慮し、利率固定方式を選択することが返済負担を抑える一つの手段です。進学時に利率見直し方式を選択してしまった場合でも、在学中に固定金利方式へ変更することが可能です。手続きには、学校を通じて第二種奨学金利率の算定方法変更届を提出し、人的保証を得ている場合は連帯保証人及び保証人の自署と実印の押印、印鑑登録証明書が必要です。変更期限は年度ごとに異なるため、貸与が終了する年度の4月以降に確認することが重要です。

ただし、利率固定方式が必ずしも有利とは限らない点には注意が必要です。市場金利の動向や経済状況によっては、利率見直し方式の方が有利になる可能性もあります。

返済中の対応

既に社会人となり、奨学金の返済を行っている方がマイナス金利解除の影響で返済が困難になった場合、いくつかの対処法があります。月々の支払いを減額する減額返還制度や返還期限を先送りする返還期限猶予が利用可能です。これらの制度は、一定の条件を満たし、申請後の審査を経て認められるものです。

減額返還制度は、傷病や経済困難などにより返還が難しくなった場合、月々の返還額を2分の13分の14分の1または3分の2に減額し、返還期間を延長する制度です。返還期限猶予は、1回の申請で1年以内、通算で10年まで返還期限を先送りすることができます。審査結果によっては認められないこともあります。その場合、収入の増加を目指して転職やキャリアアップ、生活費の節約や資産運用などで対応する必要があります。

まとめ

マイナス金利解除に伴い、貸与型奨学金の変動金利を選択している場合、返済負担が増加する可能性があります。在学中であれば金利固定方式への変更を検討することが重要です。

ただし、固定金利が必ずしも有利とは限らないため、市場金利の動向を慎重に見極める必要があります。既に返済中の社会人は、減額返還制度や返還期限猶予の利用を検討し、必要に応じて収入増加や生活費削減などの対策を講じることが求められます。

[詳細情報はこちら]https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/taiyo/taiyo_2shu/riritsu/2007ikou.html

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