人事評価のための基準は企業にとって重要な意味があるため、必要時には見直しをして現状に合わせるのが理想的です。ただ、基準を見直すのにはメリットだけでなくデメリットもあることが知られています。この記事では、人事評価の基準をどのような考え方で定めると良いのかと合わせて見直しのメリットとデメリットをご紹介していきますので、今後の改革の参考にしてください。
人事評価制度を設ける目的
人事評価の基準を考える上で、まず理解する必要があるのが人事評価制度の目的です。人事評価制度を定めて運用するのは企業にとって義務ではありません。メリットがあるからこそ独自の制度を整えているものですから、見直しを見据えて何を目的としているのかを確認しておきましょう。
1.企業が社員に求めていることを正しく理解させる
人事評価制度の目的としてまず挙げられるのが、企業が社員に何を求めているかを正確に理解させることです。人事評価の基準に従って評価するのが制度の基本的な仕組みですので、その基準が企業にとって重要な価値を示していると言えます。基準を明確にして社員に示すことにより、社員が何をすると企業に対する貢献になるのかが明らかになります。このように、社員が何に対して努力すべきかを明示し、企業の成長や事業の方向性を理解させられるのが人事評価制度です。
2.社員の貢献の様子や能力に応じて適切な配置に繋げる
人事評価制度は社員を適材適所に配置することにも繋がるのが特徴です。人事評価制度による評価で社員が昇進や昇格をしたり、人事異動の対象になる仕組みが一般的ですが、これによりリーダーとしての資質がある人材をリーダーにし、マネジメントスキルがある人材を管理職に引き上げるといったことができます。評価に応じて営業職からマーケティング担当に異動させたり、研究職から営業職に移らせることも可能です。社員の貢献の様子や今まで挙げてきた成果、社内でのコミュニケーションの状況や能力的な高さなどを基準にして適正な配置をすることは、業績を上げることにも繋がります。
3.処遇の改善によって社員のモチベーションを上げる
人事評価制度は社員の仕事に対するモチベーションを上げる目的も持っています。社員は自分が果たすべき役割を考えて働き、企業に貢献することで評価されることを望みます。高い地位や給料を与えられれば、モチベーションが上がるのは明らかでしょう。人事評価の基準が設けられていれば、その基準を満たすように働き、正しく評価されようとします。努力や貢献の程度に見合った評価を受けられると社員は満足し、さらに企業のために働こうという意欲が湧くでしょう。
4.社員が自ら成長する意欲を高める
人事評価制度の内容によっては、社員が自分で努力して成長することを促進できます。業績だけでなく能力や資格を評価したり、行動を評価することもできるからです。単純に評価基準が設けられているだけで、より大きな貢献をして高い評価を受けようと努力する社員もいます。このような成長の方向性も人事評価制度を参考にする場合が多く、評価されるとわかっていれば意欲も高まります。社員の希望する成長の方向性と合っていればエンゲージメントも高くなり、企業への帰属意識も向上するでしょう。
人事評価基準を公開して周知させる目的
人事評価制度の中で明確な基準を周知させるのにも目的があります。人事評価制度を整えても基準が曖昧だったり、社員に公開していない場合もあります。全員に周知させることによって何を達成できるのでしょうか。
1.企業として向かう方向性を明確に示す
人事評価基準を周知させることで、企業が向かいたいと考えている方向性を示せます。評価基準が見えない状況では事業をどのように展開したいのか、現場をどのように運営したいのかがわからなくなりがちです。組織として誰もが同じ方向を向いて取り組めるようになるため、チームワークも生まれて業務効率も向上するでしょう。
2.人事評価を一律で実施できるようにする
人事評価基準を設けると一律で評価が実施できます。組織規模が大きくなると、経営者が全員の状況を把握して評価するのは困難です。管理職の上司が評価を実施し、その結果報告を受けて最終的な評価を決定するという仕組みがよく用いられています。管理職が複数いると評価基準がずれてしまうリスクがありますが、誰もが基準を知っていれば一律で平等な評価をすることが可能です。管理職の評価責任も小さくなりますので、人事評価制度を運用する価値があるでしょう。
3.社員に平等な評価を受けていると理解させる
人事評価基準を設けると社員は平等な評価を受けていると理解できます。基準が明確にされていないと自分の受けた評価が正当なのかどうかを社員自身が判断できません。基準が共有されているだけで社員は安心し、もし不当な内容だった場合には上司や担当部署へ不満を告げることもできます。
人事評価基準を見直すメリット
人事評価基準を見直すのにはメリットがたくさんあります。その中でも、代表的なポイントを押さえておきましょう。
1.事業の方向性に合わせた意識改革ができる
社員の抜本的な意識改革を起こせるのが人事評価基準を見直すメリットです。事業が進むにつれて、方向性を変えなければならないことはよくあります。局面に合わせて基準を見直すことで、社員に何を目指して働けば良いかを具体的に理解してもらうことが可能です。
2.組織改編による改革を進められる
基準の見直しをすると大きな組織改編を進めることが可能です。大きな事業展開をするときには組織体制から見直すことが必要になりがちですが、社員に状況を正しく把握してもらうには人事評価基準を合わせて見直すのが効果的です。組織改編後の人材配置も適正に行えるようになり、新体制で業務を進めやすくなります。
3.社員のモチベーションアップができる
人事評価基準の見直しは社員のモチベーションアップに繋げられるのがメリットです。基準を社員の希望する成長の方向性に合わせてエンゲージメントを高めることで、高いモチベーションを持って業務に取り組むようになるでしょう。
人事評価基準を見直すデメリット
人事評価基準を見直すとデメリットが発生する可能性もあります。事業を進める上で大きな支障になるリスクもありますので、何が起こり得るのかを把握しておきましょう。
1.社員が動揺して業務に支障が生じるリスクがある
人事評価基準を見直すと社員が動揺することは否めません。評価軸が変わった際には、今まで同じようには働きにくい可能性があります。改正された箇所を正しく理解し、業務で意識できるようになるまでには月日がかかります。その間は業務の停滞が起こる可能性もありますので注意が必要です。
2.コストアップになる可能性が高い
人事評価基準の見直しは一般的にコストアップに繋がるのがデメリットです。給与や昇進の基準を変更した際には給料を下げることはあまりしません。評価が急に下げられたと認識して、辞職するリスクが高いからです。そのため、給料は据え置きにするか昇給させる対応になります。長期的にはコストが減る可能性もありますが、短期的には人件費がかさむようになりますので注意しましょう。
人事評価基準は見直すかどうかから議論しよう
人事評価制度における評価基準は、企業にとっても社員にとっても大きな意味を持ちます。事業の方向性や社員の期待に合っていないと、歯車がかみ合わずに事業が遅滞してしまいがちです。見直しをすれば抜本的な改革になりますが、現場に動揺が走ることは否めません。そのため、適切なタイミングかどうかを見極めてから見直しを進めるのが大切です。
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