近年、問題になっているカスハラですが、何をもってカスハラというのでしょうか。カスタマー、いわゆる顧客は取引先には適切にサービスや商品を受ける権利もあるので、それが満たされない場合には正当に主張する権利があります。どんな事例がカスハラにあたるのか、現場ではどう対応すべきなのか、企業はどんな対策を採るべきなのか、カスハラの事例や防止法について見ていきましょう。

カスハラとは

カスハラとは、カスタマー(顧客)が正当な権利にもとづく主張や礼儀や常識を弁えた主張の範囲を超え、無理強いしたり、いわれのないクレームをしたり、理不尽な要求をしてくるような行為を指します。カスハラにはさまざまなケースがあり、飲食店やスーパーやコンビニなどの小売店など、顧客と対面する形態のお店をはじめ、電話で顧客と応対をするコールセンターなどでも頻発しています。カスハラは、業界や業種を問わず、顧客がいるケースではあらゆる場面で起こるリスクがあるものです。近年、増えているカスハラの事例は以下のようなものです。

店員を怒鳴りつける

スーパーのレジや飲食店のテーブル席など、さまざまな場所で起きている事例です。会計を間違えるなどミスが原因になるケースもありますが、作業がのろいなどと言いがかりをつける場合やいわれのない怒りをぶつけてくる場合も少なくありません。「自分を見る目が人を馬鹿にしている。」「態度が悪い。」などです。客観的に見れば、問題なくサービスを提供しているのにもかかわらず、いきなり怒りをぶつけてくる人も増えています。

店員に土下座を要求する

注文のミスをした場合や料理が出てくるのが遅い、品物が破損していたなどのミスに対して、店員が謝罪をしているにもかかわらず、土下座を要求してくるようなケースです。土下座は正当な権利の主張の範囲を明らかに超えています。

暴力を振るう

店員の態度が気に食わないと胸ぐらを掴まれる場合やほかの客に迷惑をかけているのを注意したところ殴られるなど、暴力を振るわれるケースです。

商品や料理をばらまく

注文した料理と違う、マズいなどと料理をぶちまけたり、器を割ったりするような行為です。

不手際や不満に対して常識の範囲を超えたお詫びを要求する・脅す

料理の提供ミスなどがあり、それについて代替品の提供や返金対応をしているにもかかわらず、家族全員の分を無料にしろと強いることや要求に応じなければ、SNSに投稿するなどと脅してくるケースです。

顧客の自作自演

提供された料理に自ら髪の毛を入れるなどして、「髪の毛が入っていた。」と代金無料を要求する場合や次回使える金券などを提供させるケース、送られてきた商品を自ら破損して壊れていたと返金などを求めてくるケースです。

コールセンターへの執拗なクレーム

商品やサービスの不満を執拗に述べ、返金や謝罪の品などを要求したり、コールセンタースタッフの対応が悪いと怒鳴りつけたり、何度も繰り返し同様の電話をかけてくるようなケースです。「今からそこに押し掛けるぞ。」など脅すようなケースもあります。

過度な要求や解決の難しいクレーム

人身事故や天候などの影響で電車が一時的にストップした際や遅延した際に、駅員に対して、観に行くことができなかったコンサートやスポーツの試合などのチケット代の賠償を求めてくるようなケースです。

SNSへの悪質な書き込みや炎上

レビューサイトなどに嫌な対応を受けたと書き込んだり、サービスやスタッフの質が悪いなどと根拠もなく書き込んだり、お店側が炎上するような内容を書き込んだりするケースです。
SNSやネットを通じた拡散効果は非常に高いため、恐れる企業が多いカスハラ事例になります。

カスハラを放置するリスク

カスハラなんて頻繁に起こることではない、たまたま機嫌が悪かっただけ、頭を下げれば済む話などと放置してはいけません。同じようなことが続いた場合やカスハラが起きても上司や企業側が何のフォローをしてくれないとわかれば、スタッフもストレスを感じ、不満を抱くことや離職するといったリスクも発生します。上司や店長など責任者にとっても、カスハラが起こる度にいわれのないクレームや暴力、脅しなどに対応しなくてはならないとなると、ストレスも溜まり、責任もより重く感じるようになります。

カスハラが野放しにされていると、カスハラの現場を目にするほかの顧客も増え、お店の雰囲気が悪い、対応が悪いと足が遠のいてしまうケースも少なくありません。来店数が減少し、売上や業績にも影響を与えるので注意が必要です。こうしたリスクを避けるためにも、現場に任せるだけでなく、企業が一丸となってスタッフを守り、お店や企業のブランドを守る必要があります。

カスハラの防止法

企業には、顧客に対して高品質な商品やサービスを提供する義務がある一方で、従業員を守る役割もあります。そのため、カスハラは現場レベルで対応すれば良いのではなく、企業をあげて防止法を構築していかなくてはなりません。カスハラの防止法として、以下のような取り組みが求められます。

企業をあげてのカスハラに対する強いメッセージ

企業のトップが顧客や社会に対してメッセージを発信するなど、理不尽なカスハラは許さないという強いメッセージを出すことが必要です。トップがリードしてくれれば、現場の責任者やスタッフもカスハラを我慢することなく、適切に対応できるようになります。

事例の明確化

どこまでが正当な主張で、どこからがカスハラなのか、その判断が難しいケースもあります。お店の業態や実態、職種ごとの対応業務などに合わせ、こうしたケースはカスハラで、これはセーフなどとわかりやすい事例を提示することが必要です。これは、社内向けにとどまらず、ホームページや店頭でも案内を出すなど、顧客にもカスハラ行為を認識してもらうことが大切です。

マニュアルの作成

カスハラが起こった際に、どのような対応をすべきか、具体的なトークスクリプトを作成することや上司や責任者への報告やサポートを依頼する流れなどを明確化しましょう。適切に対応する方法がわかると、カスハラに対して遠慮することなく対峙できます。

ロールプレイなどの研修

マニュアルに定めるだけでは、実際に対応しきれないことも少なくありません。実際にロールプレイをしたり、上司へのフォローの求め方を実践したり、カスハラが起きた時の流れをお互いに確認するなど研修やトレーニングも必要です。

上司や責任者による従業員のフォロー

カスハラを直接受けたスタッフに対応を任せるのではなく、上司や店長など責任者がすぐに対応を代わってフォローすることが欠かせません。高校生アルバイトなど、社会人経験の浅いスタッフが狙われるおそれもあるので、すぐに正社員などが対応を代われる体制を整えましょう。

店頭やホームページへの掲示

カスハラは許さないといったメッセージの発信に加え、より具体的な警告を発信しましょう。店頭にチラシやポスターを掲示した際やホームページなどにカスハラが起きた際には、警察に通報することがあることや出禁にするなどの処置を講じることをしっかり伝えましょう。あらかじめの警告がカスハラ予防にもつながります。

選択

まとめ

カスハラとは、カスタマー側の正当な権利にもとづく主張を超えて、無理強いすることや理不尽な行動でスタッフを追い詰めるような行動を指します。カスハラを放置すると、スタッフが委縮し、お店の雰囲気なども悪くなり、集客や売上にも影響が出る場合があります。企業はスタッフを守る責任があり、マニュアルの作成や研修を実施するだけでなく、顧客や社会に対して強い態度で、カスハラは許されないことをアピールすることが大切です。

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