「うちはちゃんと賃上げしているのに、若手が辞めていく。」そんな声を人事担当者や経営層の方から聞く機会が増えています。 物価上昇に伴い、多くの企業が賃上げを進めていますが、その裏で“昇給が生活を圧迫する”という矛盾が生まれています。
背景にあるのは、奨学金の返還による経済的・心理的負担――。給与を上げただけでは救えない若手社員の現実が、静かに広がっています。

賃上げの裏で起きている“静かな逆転現象”
政府の賃上げ要請を受け、企業による給与改定が進んでいます。しかし、「昇給したのに生活が苦しくなった」と感じる若手社員が増えています。
背景にあるのは、日本学生支援機構(JASSO)の「減額返還制度」。年収400万円という上限をわずかに超えただけで制度の対象外となり、支援が突然打ち切られるケースが相次いでいます。
「減額返還制度」が “最後の砦”
制度の目的と仕組み
「減額返還制度」は、奨学金返済が困難な場合に、一時的に返還額を2分の1や3分の1に減らすことができる制度です。月16,000円の返済が8,000円になることで、生活の立て直しを支えてきました。しかし、この制度には年収400万円以下という条件があります。1円でも超えた瞬間に支援が打ち切られる“崖”が存在します。賃上げによって401万円に到達した途端、返還額が倍増するという現実です。
給料が上がっても生活が苦しくなる理由
東京都に住む会社員のAさん(28歳)の事例です。年収395万円だった当時、彼は「減額返還制度」を利用し、月々8,000円の返還で生活を維持していました。
ところが、昇給によって年収が405万円になった途端、状況は一変します。制度の対象外となり、返還額は16,000円へと倍増しました。昇給による手取りの増加分は月8,000円前後だったため、奨学金の返還額が上回り、結果的に実質的な可処分所得はマイナスになってしまったのです。
このような、「昇給したのに生活が苦しくなる」という逆転現象が、今、奨学金利用者の間で全国的に起きています。
賃上げ後の苦境が社員の転職意欲を煽る
2025年8月以降、弊社にもAさんのケースのような相談が急増しています。
「減額返還制度が使えなくなった」
「生活が成り立たないので転職を考えている」
賃上げをきっかけに「より高い給与を求めて転職するしかない」と考える若手が増え、結果的に企業がそれまで育てた人材を失うリスクが高まっています。
企業ができる3つの実践策
奨学金を抱える社員は、給与の「額面」よりも「手元に残る金額」を重視します。減額返還制度の壁によって手取りが減ると、モチベーション低下・離職・転職意欲の高まりにつながります。
つまり、賃上げ=定着率向上ではない時代が来ています。企業が、奨学金返還という“もうひとつの家計構造”に目を向けることが求められます。
奨学金返還支援制度(代理返還)の導入
企業が従業員の奨学金を一部返還する「代理返還制度」は、給与とは異なる次元での経済的支援策です。
導入企業では「奨学金に関する相談が消えた」「若手の定着率が上がった」という声が多く、福利厚生施策として確実に成果を上げています。
実態把握のための社内アンケート
奨学金返還について社員が自ら申告することは稀です。
匿名アンケートなどで実態を可視化し、支援ニーズを定量的に把握することが重要です。
社内相談・金融教育の整備
ライフプラン設計や家計管理をサポートできる体制を整えることで、経済的不安を抱える社員の離職を防ぎ、エンゲージメント向上につながります。
まとめ
賃上げは必要な取り組みです。しかし、それだけでは“安心して働ける職場”は実現しません。
奨学金返還による若者の経済的・心理的負担を正しく理解し、『賃上げ+返還支援』の両輪で社員の生活を支える企業こそ、これからの時代に選ばれ続ける存在となるでしょう。
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