世界規模でSDGsが提唱されており、企業もSDGsに関連する取り組みが求められるようになってきています。日本でも共働き家庭が増えていること、少子高齢化が進んで働き手の確保が難しくなってきていることから、キャリアにおけるジェンダー間の格差の解消は急務です。そこで、ここではSDGsとは何か、SDGsにて提唱されているジェンダー間の格差にはどんな課題があるのかなどについて解説していきます。
そもそもSDGsとは?
多くの企業が取り組んでいるSDGsですが、そもそもSDGsとはどんなものなのか理解していない人も少なくありません。SDGsとはSustainable Development Goalsの頭文字を取った言葉であり、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」という意味になります。世界は急速に発展しています。しかし、それとともに新たに社会問題が露わになったり、発展に伴って自然環境が犠牲になっていたりもしています。そこで、人類と地球がこれからも共存していける社会、人類がみな平等に生きていける社会を作るための指針がSDGsです。
SDGsは元々国連総会にて定められたミレニアム開発目標で期限としていた2015年に到達したことで、改めて2030年までに実現すべき目標として採択されました。17の世界的目標と169の達成基準で構成されており、ジェンダー間に関連する項目としては5番目の「ジェンダー平等を実現しよう」が挙げられます。こちらの項目では、具体的には「男女平等を実現し、すべての女性と女の子の能力を伸ばし可能性を広げよう」という目標が設定されています。
日本が抱えるジェンダー間の格差問題
世界経済フォーラムでは毎年男女間のジェンダーギャップ報告書にて、ジェンダー格差に関連するランキングを発表しています。2021年に発表されたものでは、世界153カ国を対象にしたランキングのうち、日本は120位。G7はもちろん、中国や韓国よりも下という結果になりました。このように日本のジェンダー間の格差問題は先進国の中でも特に深刻であるとわかります。それでは、日本が抱えるジェンダー間の課題・問題点にはどんなものがあるのか見ていきましょう。
雇用機会・賃金
キャリアに関しては、女性は男性と比べて賃金が低い、出世の機会が限られているなどが課題とされています。日本では未だに男性は働いてお金を稼ぎ、女性は家を守るという考えが強いです。そのため、結婚・出産を機に仕事を辞めてしまう女性も少なくありません。また、企業によっては子育てのための休暇を取得することで退職を余儀なくされる、出世の道が絶たれてしまうなどの問題点もあります。しかし、日本は少子高齢化が進み、働き手の確保が急務となっています。この問題点を解決するためにも女性が男性と同じようにキャリアを諦めずに仕事ができる環境を整える必要があるでしょう。
さらに、キャリアにおける男女平等を実現するためには、女性が仕事と家庭の両立がしやすい環境を整えると同時に、男性が子育てに参加することに対する理解も必要です。現代では共働き家庭が増え、男性も女性も家事を同じ割合で行うケースが増えています。徐々に育児休暇を取得する男性も増えつつありますが、まだ浸透しているわけではありません。したがって、男性も女性と同じように仕事と家庭を両立しやすい環境を整える必要があります。
仕事内容
女性だから、男性だからという理由で本来の業務に無い仕事が実質義務となっている企業も日本には多いです。例えば、女性のお茶出しや掃除など。「女性は気が利くから」という理由で女性社員だけに義務付けられるのは不平等でしょう。そもそもお茶出しは打ち合わせの担当者などが自分ですべき仕事であり、特に会社上層部の認識を変える必要があります。
ハラスメント
現代ではセクシュアルハラスメントを違反とする企業も増えつつありますが、価値観がアップデートされておらず、悪気なくセクシュアルハラスメントをする人もいます。特に男性が女性に体型など外見に対する指摘したりプライベートの男女関係に関する質問をしたりすることをコミュニケーションの一貫と捉えている人も少なくありません。そのため、仕事とプライベートをきちんと切り分ける考え方を会社全体でしっかりと共有し、実践していく必要があるでしょう。
また、男性から女性に対するセクシュアルハラスメントばかりが取り上げられがちですが、女性から男性に対するセクシュアルハラスメントに対しても積極的に取り組んでいく必要があります。まだ声をあげる人が少ないためあまり社会的に取り上げられていませんが、女性から男性に下品な話を持ちかけるのは良しと考えている人も少なくありません。ハラスメントは男性から女性に対するものが取り上げられやすいですが、同時に女性から男性に対するハラスメントもなくしてこそ男女平等な社会の実現に繋がるでしょう。
企業ではジェンダー間の格差を埋めるためにどんな取り組みを行っている?
主に大手企業を中心にSDGsを意識してジェンダー間の格差を埋めるための取り組みを行う企業が増えています。しかし、実際にジェンダー間の格差を埋めるための取り組みを行っても、なかなか上手くいかない企業も多く存在しているのが現状です。そこで、男女平等のための取り組みの成功例を紹介します。実際に自社で男女間の格差を埋める取り組みを始める際の参考にしてください。
社内託児所で働くパパ・ママをサポート
特に大都市圏で働く子育て世代が悩んでいるのが託児所です。定員問題で認可保育園に入ることができず、育休期間を延長したり、仕事を一旦辞めてしまったりする人も少なくありません。そこで、大手企業の中には社内託児所を設置する企業が登場しています。社内託児所は子供の送り迎えの負担がないのが大きなメリットでしょう。
企業によっては蓄積してきた技術を生かして子どもたちに対する教育カリキュラムを実施しているところもあります。親が働く企業に対して子供が親しみを持てるというのも社内託児所ならではの魅力です。社内託児所の運営には費用がかかるのでまず大手企業から始めるべき取り組みではありますが、社内託児所が広まることで待機児童問題の解消、預け先が見つからないことによる退職の防止が期待できます。
育児短時間勤務・看護休暇制度
子育てをしながら働くうえで大変なのが、子供の急病です。特に子供が小さいうちはいきなり熱を出してしまうなどして、急に仕事を休まなければいけない場面はよくあります。このような場合、職場での立場が悪くなり、出世の道が絶たれてしまうことも多いです。そこで、産休・育休だけでなく育児短時間勤務制度や看護休暇制度も整えることで、より働く子育て世代の活躍が見込めます。
女性のキャリア開発のための講習会・ワークショップ
女性のキャリア実現に対する理解はまだ浅いのが現状です。そこで、結婚・出産・育児を前提とした女性のキャリア実現に対するワークショップ・講習会を実施する企業が増えています。特に年齢が高い上層部は女性が活躍する前の社会でキャリアを実現してきた人が多く、それが当たり前となっているので、女性のキャリア実現に対する理解が若年層と比べて浅いでしょう。そこで、一般社員だけでなく上層部に対しても女性のキャリア実現に対する理解を求めることで、より子育てと仕事の両立がしやすい企業づくりに繋がります。
ジェンダー間の格差を意識した企業運営で男女問わず活躍できる企業を目指そう
社会の仕組みの変化により、共働き家庭が増えていることから、男性も女性も子育てや家庭と仕事を両立できる環境の整備が急務となっています。日本は少子高齢化が進んでおり、働き手の確保という意味でも女性が退職せずにキャリアを実現できる環境づくりが必須でしょう。そこで、大手企業を中心に男女間の格差を埋める制度の整備が進んでいます。実際の成功例を参考にし、性差によって活躍の場が狭められない企業を目指しましょう。
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