日本企業を取り巻く環境は急速に変化しています。
VUCA時代の到来や2030年問題、DX・SXの加速により、企業には単なる管理職ではなく、経営視点を持つ次世代リーダーの育成が急務です。
しかし、多くの企業では従来型の階層別研修やOJTだけでは、未来の経営判断を担える人材を十分に育てられないという共通課題があります。

本記事では、次世代リーダー育成の企業内プログラムが単なる研修ではなく、企業戦略そのものであることを解説します。

次世代リーダー育成とは?企業内プログラムが注目される理由

次世代リーダーの定義(将来の経営層・変革推進者)

次世代リーダーとは、将来的に経営層として企業の意思決定を担い、環境変化に対応しながら組織変革を推進していく人材を指します。 単なる「優秀な管理職候補」ではなく、経営視点で事業全体を捉え、長期的な企業価値向上を実現できる存在であることが特徴です。

一般研修・階層別研修との決定的な違い

一般的な階層別研修や管理職研修は、現在の役割を円滑に遂行するためのスキル習得を目的としています。 一方、次世代リーダー育成のための企業内プログラムは、「将来の経営判断」を見据えた先行投資であり、視座を現場レベルから経営レベルへ引き上げる点に決定的な違いがあります。

「育成=経営戦略」と言われる背景

VUCA時代と呼ばれる先行き不透明な経営環境において、外部採用だけで経営人材を確保することは年々難しくなっています。 そのため、多くの企業では自社の文化や事業を深く理解した人材を、戦略的に育成する必要性が高まっています。 次世代リーダー育成が「人事施策」ではなく「経営戦略」と位置づけられるのは、企業の持続的成長を左右する重要な取り組みだからです。

次世代リーダー育成のための企業内プログラムに求められる5つの要件

次世代リーダー育成のための企業内プログラムを設計する際には、単なるスキル研修ではなく、 「将来の経営を担う人材に何を身につけさせるのか」を明確にすることが重要です。 ここでは、多くの成功事例に共通する5つの要件を解説します。

ビジョン構想力と実行力

次世代リーダーには、先行きが見通しにくい状況でも企業の進むべき方向性を描き、 周囲を巻き込みながら実行に移す力が求められます。 企業内プログラムでは、ビジョン策定だけでなく、それを現場に落とし込み、 成果につなげるプロセスまで経験させることが重要です。

不確実性下での判断・決断力

経営判断においては、常に十分な情報が揃うとは限りません。 不完全な情報の中でも意思決定を行い、その結果に責任を持つ経験が、 次世代リーダーの成長を大きく促します。 実際の経営課題をテーマにしたアクションラーニングなどは、 この力を鍛える有効な手法です。

情報感度と学習継続力(DX・AI含む)

DXやAIの進展により、ビジネス環境は急速に変化しています。 次世代リーダーには、最新の技術動向や社会変化を捉え、 自ら学び続ける姿勢が不可欠です。 企業内プログラムでは、知識のインプットだけでなく、 「学び続ける習慣」を身につけさせる設計が求められます。

人と組織を動かすマネジメント力

成果を出し続けるためには、個人の能力だけでなく、 人と組織を適切にマネジメントする力が必要です。 次世代リーダー育成のための企業内プログラムでは、 メンバーの育成、エンゲージメント向上、組織文化の形成といった 中長期視点のマネジメント力を養うことが重要になります。

経営視点(全体最適・ROI思考)

次世代リーダーに欠かせないのが、部門最適ではなく全社最適で考える経営視点です。 投資対効果(ROI)を意識しながら意思決定を行うことで、 企業価値を最大化する判断が可能になります。 企業内プログラムにおいても、財務・戦略・組織を横断的に捉える視座を 意識的に育成する必要があります。

企業内プログラムで得られるメリットと見落としがちなデメリット

次世代リーダー育成のための企業内プログラムは、多くの組織に大きな効果をもたらします。 一方で、設計や運用を誤ると、組織の分断や優秀人材の流出といったリスクを招くこともあります。 ここでは、導入前に押さえておくべきメリットとデメリットを整理します。

企業内プログラムで得られるメリット

意思決定スピードの向上

経営視点を持つ人材が現場に増えることで、上位判断を待たずに意思決定が行えるようになります。 その結果、変化の激しい環境下でも迅速な対応が可能となり、組織全体の意思決定スピードが向上します。

変革推進力の内製化

次世代リーダー育成のための企業内プログラムを通じて、変革を主導できる人材を社内に蓄積できる点も大きなメリットです。 外部コンサルティングに依存せず、自社の文化や事業特性を理解した人材が変革を担うことで、 施策の実行力と定着率が高まります。

優秀層のエンゲージメント向上・離職防止

将来の経営層候補として明確に位置づけられることは、成長意欲の高い社員にとって大きな動機付けになります。 キャリアの見通しが可視化されることでエンゲージメントが向上し、 結果として優秀層の離職防止にもつながります。

見落としがちなデメリットと注意点

選抜漏れによる不満

一部の社員のみを対象とする選抜型プログラムでは、 選ばれなかった社員のモチベーション低下や不公平感が生じやすくなります。 選抜基準を明確にし、評価プロセスを透明化することが、 組織全体の納得感を高める重要なポイントです。

育成後のミスマッチ

時間とコストをかけて育成したにもかかわらず、 研修後に以前と同じ業務へ戻してしまうと、視座が高まった人材ほど不満を感じやすくなります。 育成と同時に、裁量ある役割や重要プロジェクトへのアサインをセットで設計することが不可欠です。

現場負荷・反発

次世代リーダー候補は現場の中核人材であることが多く、 研修による業務負荷増加が現場の反発を招くケースも少なくありません。 経営層が育成の重要性を明確に打ち出し、 業務量調整やサポート体制を整えることで、現場との摩擦を最小限に抑えることができます。

次世代リーダー育成プログラムで失敗する企業の共通課題

次世代リーダー育成プログラムは、設計や運用を誤ると十分な成果を得られません。 ここでは、多くの企業に共通して見られる失敗要因を整理し、 同じ落とし穴に陥らないための視点を解説します。

選抜基準が曖昧・属人的

「上司の推薦」「なんとなく将来性がありそう」といった曖昧な基準で候補者を選抜すると、 本人のキャリア志向とのミスマッチや、組織内の不公平感を招きやすくなります。 選抜にあたっては、コンピテンシーや評価指標を明文化し、 客観的なデータに基づいて判断することが重要です。

プログラムがOJT任せ・場当たり的

体系的な設計がないまま現場任せのOJTに依存すると、 育成内容や成長スピードに大きなばらつきが生じます。 次世代リーダー育成には、経営戦略や財務、意思決定といった 共通して身につけるべき要素を整理し、計画的に学ばせるプログラム設計が欠かせません。

育成と配置(ポスト)が分断されている

育成後の役割やポストを想定せずにプログラムを実施すると、 せっかく視座を高めた人材が能力を発揮できず、モチベーション低下や離職につながります。 育成はゴールではなく、適切な配置や権限付与まで含めて設計する必要があります。

経営層が本気で関与していない

次世代リーダー育成を人事部門任せにしてしまうと、 現場の理解や協力を得ることは難しくなります。 経営層自らが育成の重要性を発信し、意思決定やリソース配分に関与することで、 プログラムは初めて組織全体に根付きます。

成功する企業内プログラム設計の基本ステップ【6ステップ】

次世代リーダー育成のための企業内プログラムを成功させるには、 場当たり的な研修ではなく、経営戦略と連動した設計が不可欠です。 ここでは、多くの成功事例に共通する基本的な6つのステップを紹介します。

Step1:経営戦略から逆算したリーダー像定義

最初に行うべきは、「どのようなリーダーが必要か」を明確にすることです。 中期経営計画や事業戦略を起点に、 自社が今後どの領域で成長・変革を目指すのかを整理し、 その実現を担うリーダー像を具体的に言語化します。

Step2:客観的な選抜基準・評価指標の設計

リーダー像が定まったら、それを測るための選抜基準と評価指標を設計します。 コンピテンシーや多面評価、アセスメントなどを活用し、 主観に左右されない客観的な選抜プロセスを構築することが重要です。

Step3:体系的な育成プログラム設計

選抜後の育成は、OJT任せにせず体系的に設計します。 経営知識のインプットと、実践・内省を組み合わせることで、 段階的に視座を引き上げるプログラム構成が効果的です。

Step4:育成対象者の選抜

設計した基準に基づき、育成対象者を選抜します。 選抜結果については、対象者本人だけでなく、 周囲にも一定の説明責任を果たすことで、 組織全体の納得感を高めることができます。

Step5:実践中心の育成実行

次世代リーダー育成では、実践の比重を高めることが不可欠です。 アクションラーニングや重要プロジェクトへのアサインなどを通じて、 不確実な状況下での意思決定やリーダーシップを体験させます。

Step6:成果測定とPDCA

プログラム実施後は、育成成果を定量・定性の両面から測定します。 定期的に振り返りを行い、内容を改善していくことで、 企業内プログラムの質を継続的に高めることが可能になります。

次世代リーダー育成のための企業内プログラム手法5選

次世代リーダー育成のための企業内プログラムでは、 単一の研修手法に頼るのではなく、成長段階に応じて複数の手法を組み合わせることが重要です。 ここでは、代表的な5つの育成手法について、 「向いているフェーズ」と「得られるスキル」を簡潔に整理します。

集合研修・経営塾

向いているフェーズ:育成初期

得られるスキル:経営戦略・財務・組織論などの基礎知識、共通言語の形成

経営塾や集合研修は、次世代リーダーとして必要な基礎知識を体系的に学ぶ場として有効です。 受講者同士のネットワーク形成にもつながり、 育成プログラム全体の土台を作る役割を担います。

OJT・重要プロジェクトアサイン

向いているフェーズ:育成中期〜後期

得られるスキル:意思決定力、実行力、現場を巻き込むリーダーシップ

実際の業務や重要プロジェクトを通じた育成は、 座学では得られない実践的な経験を積むことができます。 経営に近いテーマを扱うことで、視座を一段引き上げる効果があります。

アクションラーニング

向いているフェーズ:育成中期

得られるスキル:課題設定力、仮説思考、チームでの意思決定力

実際の経営課題をテーマに、チームで解決策を立案・実行するアクションラーニングは、 不確実性の高い状況下での思考力と判断力を養うのに適しています。

部署異動・出向

向いているフェーズ:育成中期〜後期

得られるスキル:視野の拡大、全体最適思考、他部門理解

異なる部門や役割を経験することで、 自部門視点に偏らない全社的な視野を身につけることができます。 経営層を目指す人材にとって、複数部門の理解は不可欠です。

越境学習・他社武者修行

向いているフェーズ:育成中期〜後期(座学との併用が効果的)

得られるスキル:コンセプチュアルスキル、適応力、価値観の転換

自社の常識が通用しない環境に身を置く越境学習は、 リーダーとしての視座を大きく引き上げます。 異なる文化や事業環境を経験することで、 経営判断に必要な本質的な思考力を養うことができます。

次世代リーダー育成のための企業内プログラム成功事例

次世代リーダー育成のための企業内プログラムは、 理論やフレームワークだけでなく、実際の成功事例から学ぶことで理解が深まります。 ここでは、国内を代表する企業の取り組みを中心に、 実践的な育成事例を紹介します。

三井化学:キータレントマネジメントと後継者準備率200%

三井化学では、将来の経営を担う人材を「キータレント」として定義し、 戦略的に育成・配置するタレントマネジメントを推進しています。 特に注目されるのが、主要ポストに対して常に複数の後継候補を育成する体制で、 後継者準備率200%を実現している点です。

これにより、経営環境の変化や突発的な人事リスクにも柔軟に対応できる 持続可能なリーダー育成基盤を構築しています。

サントリー:グローバル経営者育成プログラム

サントリーでは、早期から海外拠点での実務経験や グローバル共通の経営教育を組み合わせた育成プログラムを展開しています。 単なる語学力や海外経験にとどまらず、 多様な価値観の中で意思決定できる経営者人材の育成を重視しています。

経営層自らが育成に関与する点も特徴で、 企業文化と経営哲学を次世代に継承する仕組みとして機能しています。

ヤマト運輸:DX人材を次世代リーダーへ昇華

ヤマト運輸では、デジタル変革を担うDX人材を 次世代リーダー候補として育成する取り組みを進めています。 業務改革プロジェクトへの参画を通じて、 現場理解と経営視点の両立を図っている点が特徴です。

単なる専門人材に留めず、 事業全体を俯瞰できるリーダーへと成長させることで、 組織変革を内製化しています。

越境学習の成功事例:大日本印刷/帝人訪問介護/カルモア

大日本印刷、帝人訪問介護、カルモアなどでは、 他社や異業種での実務経験を通じた越境学習を 次世代リーダー育成の一環として活用しています。

自社とは異なる文化や事業モデルに触れることで、 視野の拡大や固定観念の打破につながり、 経営視点を持った人材育成に大きな効果を上げています。

企業が次世代リーダー育成を成功させるための実践ポイント

選抜基準の公開と納得感の設計

次世代リーダー候補の選抜は、基準を明確にし社内で公開することが重要です。評価の客観性を示すことで、非選抜者も納得感を持てる仕組みを作ります。

育成と「裁量あるポスト」をセットにする

研修や育成で視座を高めても、通常業務に戻るだけではモチベーション低下や離職リスクがあります。育成後にプロジェクトリーダーや経営直下のタスクをアサインし、実践機会と裁量をセットで提供します。

現場負荷を数値で軽減する経営判断

候補者は現場の中核人材であることが多く、育成期間中の業務負荷が増大します。経営層が業務量削減など数値目標を明示し、組織的にバックアップすることで、現場の反発や疲弊を防ぎます。

外部専門家・越境学習・助成金の活用

社内だけで育成プログラムを完結させず、外部専門家や異業種への越境学習を組み合わせると、学びの幅が広がります。助成金制度を活用することで、コストを抑えつつ戦略的な研修を実施可能です。

まとめ|次世代リーダー育成の企業内プログラム成功のポイント

次世代リーダー育成は、企業の将来を左右する重要な経営戦略です。優秀な人材を早期に選抜し、体系的な育成プログラムでビジョン構想力や判断力、経営視点などのスキルを身につけさせることが不可欠です。
また、育成と裁量あるポストをセットにし、現場負荷を数値で管理することで離職リスクを最小化できます。集合研修やOJT、アクションラーニング、越境学習など多様な手法を組み合わせることで、実践的な能力を高められます。
成功事例からも、権威ある手法と戦略的な人材投資が成果に直結することが明らかです。まずは自社に最適な育成プランを設計し、次世代リーダーを着実に育成する一歩を踏み出しましょう。

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