「奨学金返済支援制度」や「奨学金代理返済制度」の対象範囲がどこまでなのか、制度設計や導入検討の参考にしたい方へ。
この記事では、企業や自治体が提供する支援制度について、対象者がどう決まるのか、具体的な適用範囲を整理します。高卒・専門卒、正社員以外、JASSO以外も対象かといった論点を取り上げながら、企業の制度は福利厚生としてどのように設計され、自治体の支援制度はどのような条件で運用されているのかを解説します。企業や自治体がどのような条件で対象者を設計しているのかを整理し、制度検討時に確認すべきポイントが把握できるよう解説します。

奨学金代理返済制度の対象者はどう決まるのか|対象範囲を決める基本ルール
奨学金代理返済制度を設計する際、人事コンサルタントの視点から最も重視すべきは「制度の柔軟性と企業の裁量権」です。
本制度は公的な義務ではなく、企業の経営課題解決に向けた戦略的な投資であり、その対象範囲をどこに設定するかは、各企業の労働コストの最適化や人材ポートフォリオの構築に直結します。本章では、制度設計の自由度とその根拠となる基本ルールについて詳説します。
企業が対象者を自由に設計できる理由
奨学金代理返済制度は、国や地方自治体によって義務付けられた制度ではありません。企業が従業員のために任意で導入する「法定外福利厚生」に分類されます。この「任意」という点が、企業が対象者を自由に設計できる最大の理由です。企業は、自社の経営戦略や人材戦略、採用目標、従業員の定着率向上といった目的を達成するために、どのような人材を支援すべきかを検討し、独自の基準を設けることができます。
例えば、若手人材の確保を重視する企業であれば新卒・第二新卒を対象としたり、特定の専門スキルを持つ人材の獲得を目指す企業であれば、そのスキルを持つ従業員に限定したりすることが可能です。このように、企業の目的や課題に合わせて柔軟に制度をカスタマイズできるため、対象者の範囲も多岐にわたります。
福利厚生制度としての位置づけ
奨学金代理返済制度は、労働基準法などで定められた「法定福利厚生」(社会保険料の企業負担など)とは異なり、企業が従業員の満足度向上やエンゲージメント強化を目的として独自に導入する「法定外福利厚生」の一つです。法定外福利厚生は、企業が従業員に対して提供する報酬以外のサービスや制度全般を指します。具体的には、住宅手当、社員食堂、健康診断の充実、育児支援制度などがこれに該当します。
奨学金代理返済制度も、これらと同様に、企業の裁量で導入の有無や内容が決定されるものです。この制度を導入することで、企業は求職者へのアピールポイントを増やし、採用競争力を高めることができます。また、既存の従業員にとっては、経済的な負担軽減となり、企業への帰属意識やモチベーションの向上に繋がると期待されています。
対象範囲が企業ごとに異なる理由
奨学金代理返済制度の対象範囲が企業ごとに異なるのは、主に以下の要因が関係しています。
- 経営戦略・人材戦略: 企業がどのような人材を獲得し、定着させたいかによって対象が絞られます。例えば、特定の専門職種の人材不足に悩む企業は、その職種に限定して支援する場合があります。
- 予算規模: 制度に充てられる予算の規模によって、支援できる人数や支援額、ひいては対象範囲が変動します。大規模な企業ほど、より広範な対象者をカバーできる可能性があります。
- 企業の文化・理念: 従業員への支援に対する企業の考え方や文化も影響します。従業員の生活全般を支援する姿勢が強い企業ほど、幅広い対象者を設ける傾向があります。
- 制度導入の目的: 「新卒採用の強化」「若手社員の離職防止」「特定のスキルを持つ中途採用者の確保」など、制度導入の具体的な目的に合わせて対象範囲が設定されます。これらの要因が複合的に作用することで、各企業が自社にとって最適な対象範囲を設定することになります。そのため、同じ業種や規模の企業であっても、対象者の条件が大きく異なるケースも珍しくありません。次章では、これらの背景を踏まえた、より具体的な「企業における対象範囲」の区分と詳細な論点について整理していきます。
【企業編】奨学金代理返済制度の対象者範囲を整理
企業における対象者の定義は、戦略的人材配置の考え方を具現化するためのレバーです。「学歴」「雇用形態」「条件設定」といった各項目をどう設計するかは、単なる福利厚生の提供範囲を決める作業ではなく、採用コストのコントロールや長期的なリターン(ROI)の最大化に直結します。
ここでは、実務担当者が設計時に直面する具体的な検討材料を整理します。
【学歴】高卒・専門卒は対象になるのか
奨学金代理返済制度の対象学歴は、企業の方針によって多岐にわたります。一般的に大卒者を対象とする企業が多いと思われがちですが、高卒者や専門卒者、短大卒者も十分に制度の対象となり得ます。企業が制度を導入する目的は、優秀な人材の確保や定着、従業員のエンゲージメント向上など様々です。そのため、特定の学歴に限定せず、企業が求めるスキルや経験を持つ人材であれば、学歴を問わずに支援の対象とするケースも増えています。特に、技術職や専門職など、特定の専門知識や技能が求められる職種では、専門学校や高等専門学校を卒業した人材も重要な戦力となるため、積極的に対象に含める企業もあります。
ただし、制度導入の背景には、大卒採用における競争激化や、特定の職種での人材不足解消といった目的があることも少なくありません。そのため、企業によっては「大学卒以上」といった学歴要件を設ける場合もあります。自社がどのような人材を求めているか、どのような職種で支援が必要かによって、対象となる学歴の範囲は大きく変わると言えるでしょう。
【高卒】
・対象:あり
・判断基準:特定の技能職、製造業、サービス業など、実務経験や資格を重視する企業
【専門卒・短大卒】
・対象:高い
・判断基準:ITエンジニア、医療・介護、クリエイティブ職など、専門知識や技術を求める企業
【大卒】
・対象:非常に高い
・判断基準:総合職、研究開発職、管理職候補など、幅広い知識や論理的思考力を求める企業
【雇用形態】正社員以外も対象にできるのか
奨学金代理返済制度は、多くの企業で福利厚生制度の一つとして位置づけられています。そのため、長期的な雇用と貢献を期待する観点から、対象者を正社員に限定するケースが一般的です。しかし、これもまた企業の方針によって柔軟に対応が可能です。例えば、特定の専門スキルを持つ契約社員や、将来的に正社員登用を見込んでいる準社員を対象に含める企業も存在します。これは、優秀な人材の確保や定着という制度本来の目的を、雇用形態にとらわれずに追求する姿勢の表れと言えるでしょう。
一方で、パートタイマーやアルバイトといった非正規雇用者については、制度の対象外となるケースがほとんどです。これは、福利厚生制度の設計上、雇用期間の安定性や企業への貢献度を考慮するためです。ただし、一部の企業では、特定の条件(例:週〇時間以上の勤務、一定期間以上の勤務実績など)を満たす非正規雇用者を対象とする制度を設ける可能性もゼロではありません。
【奨学金の種類】JASSO以外も対象になるのか
日本国内の奨学金制度で最も広く利用されているのは、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の奨学金です。そのため、企業の奨学金代理返済制度も、JASSOの奨学金を主な対象とするケースが多数を占めます。しかし、JASSO以外の奨学金も対象になり得ます。具体的には、地方公共団体(都道府県、市町村など)が運営する奨学金や、民間育英団体が提供する奨学金なども、企業の判断で対象に含めることが可能です。
企業が制度を設計する際には、どの奨学金を対象とするかを明確に規定し、従業員に周知することが重要です。海外の奨学金や、大学独自の奨学金など、さらに広範な奨学金を対象とするかどうかは、企業のグローバル戦略や採用対象者の多様性によって判断が分かれるでしょう。制度設計の柔軟性を活かし、自社の従業員が抱える奨学金の種類を考慮して対象範囲を決定することが求められます。
【その他条件】勤続年数・年齢などの制限
学歴や雇用形態、奨学金の種類以外にも、企業は様々な条件を設けて奨学金代理返済制度の対象者を絞り込むことがあります。これらの条件は、制度の目的をより効果的に達成するために設定されます。
【勤続年数】
・条件:入社後1年以上、または3年以上の勤務
・目的:早期離職の防止、長期的な定着促進、企業への貢献意欲の確認
【年齢】
・条件:30歳未満、または新卒入社後〇年以内
・目的:若手人材の確保・育成、キャリア形成支援、特定の世代へのアピール
【職種・部署】
・条件:特定の技術職、研究開発職、営業職など
・目的:人手不足の解消、特定の専門分野における人材強化、戦略部門へのインセンティブ
【勤務地】
・条件:特定支店、地方拠点、海外拠点など
・目的:地域活性化への貢献、特定エリアの人材確保、転勤支援
【成績・評価】
・条件:入社後の評価が一定基準以上、資格取得など
・目的:従業員のモチベーション向上、成果主義の推進、自己成長の支援
「どこまで対象にするか」だけでなく、「どの条件で設計すべきか」まで整理したい場合は、制度設計の具体的な進め方や投資対効果の考え方も確認しておく必要があります。
制度の投資対効果や回収の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
これらの条件設定が、実際の企業の運用現場においてどのようなパッケージとして機能しているのか、次章で代表的なケースを確認します。
企業ごとの対象者の範囲設定例|どこまで対象にできるのか
対象範囲の設計は、企業の投資対効果(ROI)を左右する重要な経営判断です。どこまで対象を広げ、どこにリソースを集中させるかは、単なるコストの多寡ではなく、自社の採用力・定着率というKPIに対するインパクトで評価されるべきです。
どの範囲まで対象を広げるべきかは、企業ごとの採用戦略や予算によって最適解が異なります。自社に合った制度設計に迷う場合は、専門家に相談することで無駄なコストを抑えながら設計できます。
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ここでは、企業が実際に採用しやすい対象範囲の設計パターンを整理し、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
全社員を対象とするケース
最も広範な対象設定であり、企業全体の従業員満足度向上や公平性の確保を重視するDashboard場合に採用されます。全ての従業員が制度の恩恵を受ける可能性があるため、企業への帰属意識を高める効果が期待できます。
対象者の設定例
- 雇用形態:正社員、契約社員、パート・アルバイトなど、全ての雇用形態の従業員
- 勤続年数:勤続年数不問
- 学歴:高卒、専門卒、大卒など、学歴不問
- 奨学金の種類:JASSO(日本学生支援機構)の奨学金、地方公共団体や民間団体の奨学金など、種類不問
メリットとデメリット
- メリット:従業員全体のエンゲージメント向上と定着率の改善、公平性の高い福利厚生として、企業イメージの向上に寄与、採用活動におけるアピールポイントの強化
- デメリット:対象者が広範になるため、企業が負担するコストが増大する可能性、制度の運用・管理が複雑になる場合がある
若手・新卒に限定するケース
特に若手人材の採用競争力強化や早期離職防止を目的とする企業で多く見られます。新卒や第二新卒など、奨学金返済の負担が大きいとされる層に焦点を当てることで、入社後の経済的安定を支援し、定着を促します。
対象者の設定例
- 雇用形態:正社員(新卒入社、第二新卒入社など)
- 勤続年数:入社後〇年以内(例:3年以内、5年以内)
- 年齢:〇歳以下(例:20代限定)
- 学歴:大卒、専門卒、高卒など、企業が求める新卒採用の学歴
メリットとデメリット
【メリット】
- 若手人材の採用競争力を高め、優秀な人材を確保しやすい
- 奨学金返済負担による早期離職の抑制につながる
- コストをある程度抑えつつ、戦略的に人材投資ができる
【デメリット】
- 既存の中堅・ベテラン社員から不公平感が生じる可能性がある
- 対象外となる層のモチベーション低下につながるリスクがある
特定職種に限定するケース
特定の専門スキルを持つ人材の確保や育成が急務である企業が採用するケースです。例えば、ITエンジニア、研究開発職、医療従事者など、市場価値の高い職種や、企業の中核を担う職種に絞って支援することで、戦略的な人材投資を行います。
対象者の設定例
- 職種:エンジニア、研究開発職、データサイエンティスト、医療専門職など
- 雇用形態:正社員(該当職種に限定)
- スキル・資格:特定の専門スキルや資格の保有を条件とする場合がある
メリットとデメリット
- メリット:特定の専門人材の確保と定着を促進、企業の事業戦略と連動した効果的な人材投資が可能、限定的な対象とすることで、コストを管理しやすい
- デメリット:対象外の職種の社員から不満が出る可能性、制度の公平性に対する疑問が生じやすい、対象職種以外の人材が奨学金返済に苦しんでいても支援できない点がある
制度の投資対効果や回収の考え方については、以下の記事で詳しく整理しています。
民間企業の動向を確認してきましたが、次に視座を移すべきは「自治体」による支援制度です。そこには「地域活性化」という、公的な視点からの戦略的枠組みが存在します。
【自治体編】奨学金返済支援の対象者範囲
自治体が主導する奨学金返済支援制度には、民間企業とは異なる「地域活性化」や「人口定住」という明確な公共的戦略が存在します。地域に必要な人材を呼び込み、定着させるための強力な施策として機能しているのが特徴であり、自治体の政策目的(産業育成や公共サービスの維持)に基づいた対象設定が行われています。
居住地・就業地域による制限
地方自治体が提供する奨学金返済支援制度は、地域の活性化や若者の定住促進を主な目的としています。そのため、対象者の要件として、特定の地域への居住や就業が義務付けられることがほとんどです。
例えば、「制度を実施する自治体内に〇年以上居住すること」や、「当該自治体内の企業や事業所に〇年以上継続して就業すること」といった条件が設けられます。これは、UターンやIターンを促し、地方における人材不足の解消や地域経済の発展に貢献してもらうことを期待するものです。制度によっては、転入者だけでなく、既にその地域に居住している若者も対象となる場合がありますが、その場合も「卒業後〇年以内に地域内で就職した者」などの条件が付くことがあります。
対象となる業種や職種の条件
自治体の奨学金返済支援制度は、特定の産業分野における人材不足を解消するために設計されるケースが多く見られます。そのため、対象となる業種や職種が限定されていることが一般的です。
特に支援の対象となりやすいのは、医療・福祉分野(医師、看護師、介護士など)、農林水産業分野(農業従事者、林業従事者など)、IT・ものづくり分野(プログラマー、技術者など)、教員・公務員など、地域に不可欠な公共サービスを担う職種です。これらの職種に就業し、一定期間継続して働くことを条件に、奨学金の返済支援が受けられる仕組みです。自治体は、自地域の産業構造や人材ニーズに合わせて、支援対象とする業種・職種を柔軟に設定しています。
支援期間・支援額の違い
自治体による制度は、その支援期間や支援額が多岐にわたります。各自治体の財政状況や制度の目的によって大きく異なるため、事前に詳細を確認することが重要です。
【支援期間】
・例:最長5年間、就業期間中、卒業後10年間など
・補足:自治体や制度によって大きく異なる
【支援額(月額)】
・例:月額1万円~3万円程度
・補足:返済額の上限や総額上限が設定される場合も(月額定額支援や返済額の一部補助など)
【支援額(総額)】
・例:総額50万円~300万円程度
・補足:一括支給、分割支給など形態も様々(総額上限設定が行われる場合も)
【対象となる奨学金】
・例:日本学生支援機構(JASSO)の奨学金、地方公共団体や民間団体の奨学金など
・補足:制度により対象範囲が異なる
【支援継続条件 】
・例:対象地域への居住継続、対象業種・職種での就業継続
・補足:条件未達の場合、支援停止や返還義務が発生することもあるため注意が必要
支援の枠組みを理解した上で、次に留意すべきは、制度設計上の限界からどうしても「対象外」となってしまうリスク条件の把握です。
奨学金代理返済制度の対象外になりやすいケース
制度を導入・運用する際、あらかじめ「どのようなケースが対象外となるか」を定義しておくことは、リスク管理と従業員との期待値調整(Expectation Management)の観点から不可欠です。制度の限界や対象外となる論理的背景を把握することで、不公平感によるモチベーション低下を防ぎ、安定的な制度運用を可能にします。
非正社員が対象外になりやすい理由
奨学金代理返済制度は、企業が従業員の福利厚生の一環として導入するケースがほとんどです。このため、制度の設計段階で、企業の長期的な人材確保や従業員の定着を目的としていることが多く、非正社員(契約社員、派遣社員、パート・アルバイトなど)は対象外となる傾向にあります。
主な理由としては、「長期雇用の前提が制度の目的と合致しにくいこと」「福利厚生の公平性の観点から正社員に限定することで管理を簡素化すること」、そして「費用対効果(ROI)の視点から、より長期的に貢献が期待できる正社員に投資を限定したいという企業の考え」が反映されています。しかし近年では、特定の専門職や技術職の非正社員を対象に含める企業や、正社員登用を前提とした設計も増え始めています。
対象条件から外れる主なパターン
企業独自の制度設計により、以下の条件を満たさない場合、対象外となることがあります。【学歴 】
・対象外例:特定の学歴(例:大卒以上)に満たない場合
・補足:特定の専門知識やスキルを持つ人材確保を目的とする制度で、学歴要件が設けられることがあります。ただし、高卒や専門卒も対象とする制度も増えています。
【勤続年数 】
・対象外例:入社直後、または勤続年数が短い場合
・補足:制度の恩恵を受ける前に離職するリスクを回避するため、一定期間(例:入社後1年以上)の勤続を条件とする企業が多いです。
【年齢】
・対象外例:制度が定める年齢制限(例:30歳未満)を超える場合
・補足:若手人材の定着促進や新卒採用の強化を目的とする制度で、年齢制限が設けられることがあります。
【奨学金の種類】
・対象外例:日本学生支援機構(JASSO)以外の奨学金である場合
・補足:制度設計の簡素化や事務手続きの容易さから、JASSOの奨学金のみを対象とする企業が多く見られます。地方自治体や民間の奨学金は対象外となることがあります。
【特定の職種・部署 】
・対象外例:制度が定める対象職種・部署以外に所属している場合
・補足:特定の専門職(例:ITエンジニア、研究職)の人材確保を目的とした制度で、対象が限定されることがあります。
【過去の返済状況】
・対象外例:奨学金の返済を滞納した履歴がある場合
・補足:企業の信頼性維持や公平性の観点から、過去に返済遅延があった場合は対象外とする制度もあります。
対象外だった場合の代替手段について
もし制度の対象外となってしまった場合でも、以下の代替手段を検討し、負担軽減を模索することが重要です。
日本学生支援機構(JASSO)の返還救済制度
- 減額返還制度:災害、傷病、経済困難などの理由で返還が困難な場合、月々の返還額を減らすことができます。返還期間は延びますが、総返還額は変わりません。
- 返還期限猶予制度:同様に経済困難などの理由で返還が困難な場合、一定期間返還を待ってもらうことができます。この期間は返還額が発生せず、利息もかかりません(無利子奨学金の場合)。詳細は日本学生支援機構のウェブサイトで確認できます。
- 自治体の奨学金返済支援制度:一部の地方自治体では、特定の地域への移住・定住や、特定の業種への就業を条件に支援を行っています。居住地や勤務地、職種によって対象となるか確認してみましょう。
- 企業独自の福利厚生・手当:住宅手当、家賃補助、資格取得支援、自己啓発支援などを活用し、経済的負担を軽減することで返済原資を確保します。
- 家計の見直しと資金計画:自身の収入と支出を詳細に見直し、無理のない返済計画を立てます。固定費の削減や副業の検討など、多角的に家計を改善することで負担を軽減できる可能性があります。
制度の全体像を補完するための、よくある疑問点(Q&A)について、実務的な観点から解説します。
奨学金代理返済制度の対象者に関する Q&A
実務担当者が直面する法的・税務的疑問、および運用上のコンプライアンス・リスクを解消することは、制度の永続性を担保するために極めて重要です。ここでは、現場で想定される具体的なQ&Aを整理します。
企業と自治体の制度は併用できるか
奨学金返済支援制度には、企業が従業員の福利厚生として独自に設けるものと、自治体が特定の地域や産業への定住・就業を促す目的で提供するものがあります。これらの制度はそれぞれ異なる目的と財源に基づいて設計されているため、原則として併用が可能です。ただし、制度によっては「他の公的な奨学金返済支援制度を利用している場合は対象外」といった制限を設けているケースも稀に存在します。
そのため、企業と自治体の両方からの支援を検討している場合は、必ずそれぞれの制度の利用規約や申請条件を事前に確認することが重要です。特に自治体の制度では、居住地や就業地域、対象となる業種や職種、支援期間などの詳細な条件が定められていることが多いため、状況が両方の要件を満たすかを確認しましょう。
支援は課税対象になるのか
企業が従業員の奨学金返済を支援する際、その支援金は原則として従業員の給与所得とみなされ、所得税および住民税の課税対象となります。これは、企業が従業員に提供する経済的利益は、基本的に給与として扱われるという税法の考え方に基づくものです。しかし、2023年度の税制改正により、特定の条件を満たす奨学金返還支援制度については、従業員への経済的利益が非課税となる特例措置が創設されました。この特例措置が適用されるためには、企業が以下のような厳格な要件を満たす必要があります。
- 企業が従業員から奨学金返済に関する情報(貸与機関、残高など)を適切に管理すること。
- 企業から貸与機関へ直接返済すること。
- 従業員が退職した場合でも、支援金の一括返済を求めないこと。
- 支援を受ける従業員が特定の勤続年数や職種に限定されないこと。
- その他、国が定める詳細な要件を満たすこと。
これらの要件は非常に細かく、全ての企業が適用できるわけではありません。そのため、多くの企業が提供する奨学金返済支援は、引き続き課税対象となるケースが一般的です。勤務先の人事・経理担当者への確認や、国税庁のWebサイトで最新情報を確認することをおすすめします。
転職・退職時の扱いはどうなるか
支援の取り扱いは企業が定める制度の規約によって大きく異なります。一般的には、以下のケースが考えられます。
- 支援の打ち切り: 転職や退職が決定した時点で、以降の支援が打ち切られるケースが最も一般的です。
- 返還義務の発生: 特に「一定期間(例:3年、5年)の勤続を条件」としている場合、その期間内に退職すると、それまでに受けた支援金の一部または全額の返還を求められることがあります。これは、企業が人材定着を目的として支援を行っているためです。
- 返還義務なし: 勤続年数に関わらず、退職後も返還義務が発生しない制度もありますが、これは比較的稀です。転職や退職を検討する際は、必ず事前に規約を詳細に確認し、不明な点は人事担当者に問い合わせて確認しましょう。奨学金代理返済制度は、対象範囲の設計次第で効果が大きく変わります。
奨学金代理返済制度は、対象範囲の設計によって効果が大きく変わります。自社だけで判断が難しい場合は、採用・定着の観点から最適な制度設計をご提案可能です。
▶ 奨学金代理返済制度の設計について相談する
https://keieijin.jp/reliable_agent/
まとめ|対象者は「制度」ではなく「設計」で決まる
奨学金代理返済制度の対象範囲は、国やJASSOによって一律に決まるものではなく、企業や自治体が目的に応じて設計するものです。重要なのは、「誰が対象になるか」ではなく、「どの人材に投資する設計にするか」という視点です。
採用強化・若手定着・特定職種の確保など、自社の課題によって最適な対象範囲は変わります。制度は自由に設計できるからこそ、対象を広げるか絞るかの判断が、そのまま制度効果に直結します。
奨学金代理返済制度は単なる福利厚生ではなく、人材戦略として機能する施策です。対象範囲の設計こそが、その成果を左右する最も重要なポイントになります。
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