大学進学においては、学生は学費の負担を求められます。しかしながら、経済的な困難に直面する学生も決して少なくありません。このような状況に対処するために設けられたのが奨学金制度です。奨学金は世界中で様々な国で実施されていますが、特に充実した制度が整っているのがアメリカです。本記事では、アメリカの奨学金事情についてみていきます。

アメリカは奨学金大国?

アメリカの学費は日本に比べて著しく高額です。例えば、アメリカの私立大学に1年在籍するだけでも、4万ドル近い学費が必要です。それにもかかわらず、アメリカの大学進学率は70%前後を維持しています。この高額な学費にもかかわらず、アメリカ人がなおも大学に在籍し続ける理由は何でしょうか。

その答えは、充実した奨学金制度にあります。アメリカでは、学生の約7割が奨学金を活用しています。また、後述するように、国や州だけでなく、大学や民間団体からも奨学金が提供されています。こうした制度の整備により、学生は財政的な心配なしに大学へ進学することができるのです。

アメリカの奨学金は返済不要?

しばしば、日本の奨学金制度との比較をする際、アメリカでは奨学金を返済する義務がないと言われることがあります。

結論から言うと、これには一部誤解が含まれています。アメリカでは返済不要の奨学金と返済が必要な奨学金の両方が存在するからです。アメリカでは国や州が提供する奨学金の一部は返済義務があるものの、大学や民間団体が提供する奨学金には返済義務がありません。このような仕組みが可能なのは、この奨学金は大学や民間団体の寄付によって支えられているからです。彼らは、経済的に困難な状況にある学生にも高品質な教育を提供することを信条とし、そのために寄付が行われています。この精神に基づいて、返済不要の奨学金が提供されているのです。

アメリカの奨学金はどこから給付されているのか

アメリカは地理的に広大な国土を有し、そのために多数の自治体が設置されています。この複雑な地方統治構造に伴い、奨学金制度も複数の自治体レベルで給付されています。

まずは、連邦政府からの奨学金が挙げられます。アメリカは50の州から成り立っており、それぞれの州を統括する機関に連邦政府が存在します。ここから給付される奨学金は一般に「Federal Grant」として知られています。さらに、各州からも給付される奨学金があり、「State Grant」と呼ばれています。また、大学が独自で運営する学生専用の支援機構から奨学金が提供される「Institutional Grant」もあります。さらには、企業が従業員の教育を支援するために提供する「Employee Aid」もあります。これは、アメリカでは社会人が大学に通うことが一般的であり、会社がその学費を援助するという形態を取っています。このような多様な奨学金支給機関の存在は、アメリカの奨学金制度の柔軟性と豊かさを示しています。

アメリカの奨学金にはニーズベースとメリットベースの2種類がある

アメリカの奨学金は決して全ての人が利用できるものではありません。日本の奨学金申請と同様に、アメリカの奨学金もいくつかの条件を満たさなければ支給されません。アメリカではニーズベースとメリットベースの2つのタイプの奨学金があります。まず、ニーズベースの奨学金は、学生の経済的ニーズに基づいて支給されます。つまり、学費の不足分を補うために支給されます。大学は学生の親の収入状況などを調査し、必要に応じて奨学金を提供します。こうしたニーズベースの奨学金は一般的に返済義務がないことが多いです。

メリットベースの奨学金の種類はさまざま

ニーズベースの奨学金が学生の家庭の経済状況に着目するのに対し、メリットベースの奨学金はそれとは異なります。ここでは、学生の才能や能力が評価されます。典型的な審査項目としては、学力が挙げられます。日本の奨学金制度とは異なり、アメリカでは審査がより厳格です。

例えば、日本の基準評点が5段階評価で平均3.5であるのに対し、アメリカでは4段階のうち平均3.5を超えなければ返済不要の奨学金を得ることはできません。このような厳格さは、返済不要の奨学金が授与されるためには、相当な優秀さが求められることを示唆しています。メリットベースの奨学金は、学生が大学にとってどれほどの価値を持つかを評価するものと言えます。学力に限らず、スポーツや芸術などの分野でも奨学金が設けられています。アスレチック奨学金は、スポーツで優れた成績を残した学生が対象となります。

同様に、芸術系の学生向けにアート奨学金があります。また、リーダーシップ奨学金は、学生時代にボランティア活動や社会貢献活動で成果を上げた学生に支給されます。これらの奨学金は、日本の奨学金制度にはない要素も含まれており、アメリカならではの特徴と言えるでしょう。さらには、インターナショナル奨学金も存在します。これは、アメリカ以外の国籍を持つ学生に支給される奨学金であり、アメリカの大学が国際化を推進していることを反映しています。

まとめ

今回はアメリカの奨学金事情について解説しました。アメリカは世界有数の高水準な大学を複数有する国であり、これらの機関を維持・発展させるためには、学生が経済的負担なく教育を受けられる環境を整備することが必要です。そのため、奨学金の制度が十分に整備されています。これにより、アメリカは世界をリードする国となっていることが言えるでしょう。

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